ネットオヤジのぼやき録

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連続初回KOが止まったバーランガ,王座復帰を目指すJ・ウィリアムズ,キューバの元至宝が登場 - フューリー VS ワイルダー III アンダーカード・プレビュー II -

2021年10月09日 | Preview

<5>10月9日/T-モバイル・アリーナ,ラスベガス/NABOS・ミドル級王座決定10回戦
王者 エドガー・バーランガ(米) VS マルセロ・E・コセレス(ニカラグァ)

今年4月の前戦で、連続初回KOが16で途切れたバーランガ。ニカラグァの中堅選手を相手に、空位のNABO(WBO直下の北米)王座を懸けた決定戦で、仕切り直しの早期決着を目指す。

アンダードッグとして呼ばれたコセレスは、2年前(2019年11月)にビリー・ジョー・サンダースのWBOタイトルに挑戦して、善戦及ばず11回に3度倒されストップ負け。レコード自体は大変立派なもので、ボクシングもよくまとまっている。

反面、1発の迫力に欠ける点も含めて怖さや意外性に乏しく、大物食いを予感させる要素がほとんど感じられない。


そうしたマイナス評価が響いたのか、オッズはとんでもない大差が付いた。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
バーランガ:-5000(1.02倍)
コセレス:+1200(13倍)

<2>5dimes
バーランガ:-3000(約1.03倍)
コセレス:+1500(16倍)

<3>betway
バーランガ:-3333(約1.03倍)
コセレス:+900(10倍)

<4>ウィリアム・ヒル
バーランガ:1/66(約1.02倍)
コセレス:14/1(15倍)
ドロー:25/1(26倍)

<5>Sky Sports
バーランガ:1/50(1.02倍)
コセレス:10/1(11倍)
ドロー:25/1(26倍)


世界タイトルマッチにおいて、10ラウンドまではそれなりの展開を作ることが出来たのは、あくまで「相手が(省エネ安全運転の)サンダースだから・・・」という事のようである。

前戦で判定まで持って行かれたとは言えダウンを4度奪っており、そもそも初回はバーランガも様子を見ていた。

記録の更新にこだわる様子はほとんど見られず、一応ローカル・タイトル歴のある対戦相手を警戒して、「リサーチ・サーベイに努めました」という感じ。


第2ラウンドに早々と右フックをヒットして、相手のデモンド・ニコルソンがダウン。追撃を耐えたニコルソンに余力が十分あると判断したのか、続く第3ラウンドにも右から左を返して2度目のダウン。

それでもバーランガは深追いせず、プレスを継続しつつも、万が一の反撃に備えて見る時間がやや長め。

いつもの強引な出足と豪快なパワーショットが影を潜めた印象もあり、「どこか傷めていたのでは・・・?」と、仕上がりについて心配する声もチラホラ。


チャンスに詰め切れなかったことについて、「ニコルソンがまあまあ上手かった。」と見立てるファンも多く、「バーランガにはまだまだ経験が必要。」との評価に概ね落ち着いた感も有り。

「経験を積めた事は良かった。永遠にワン・ラウンドKOは続けられない。遅かれ早かれどこかで記録はストップする。それがあの日だったということ。」

「ただ、もう少しやれることはあったと思う。そこは今後の課題になる。まだまだ学ぶべきことがたくさんある。立ち止まることは許されない。」


やる前から早倒れが丸分かりのアンダードッグを引っ張って来なかった点は、良しとすべきだろう。

この水準を倒し切れないようでは、スーパースターは見果てぬ夢で終る。ファンの期待を裏切ることなく、リアルなKOセンセーション足り得るのか。

答えを出すべく、バーランガがラスベガスのリングに上がる。


◎バーランガ(24歳)/前日計量:168ポンド
戦績:17戦全勝(16KO)
アマ戦績:162勝(詳細不明)
2015年ユース(U-19)全米選手権準優勝
2014年ユース(U-19)全米選手権3位
2013年ジュニア(U-17)全米選手権準優勝
2013年ナショナルPAL準優
※階級:ミドル級
身長,リーチとも185センチ
右ボクサーパンチャー


◎コセレス(30歳)/前日計量:166.5ポンド
戦績:33戦30勝(16KO)2敗1分け
身長:182センチ,リーチ:175センチ
右ボクサーファイター


○○○○○○○○○○○○○○○○○○

□リング・オフィシャル
審判団:未発表
スーパーバイザー(立会人):クレイグ・ハッブル(米/カリフォルニア州)


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<6>S・ウェルター級10回戦
前WBA・IBF統一王者 ジュリアン・ウィリアムズ(米) VS ウラディーミル・エルナンデス(メキシコ)



昨年1月の初防衛戦で、ジェイソン・ロサリオ(ドミニカ)に5回TKO負け。折角手にした2団体統一王座を手放したウィリアムズが、ロシア名を名乗る無名のメキシカン(?)を相手に、1年9ヶ月ぶりとなる再起戦。

エリスランディ・ララ(ミドル級に進出/WBA正規王座を奪取)を番狂わせの2-1判定に下して、IBFに続いてWBAのベルトを吸収したジャレット・ハードに小差の3-0判定勝ち。154ポンドの新たな統一王者となったのは2019年5月。

パンデミックによるブランクについて、「(コンディショニングとキャリアメイク両面において)何の影響も無いとは言えない。でも、こればかりは世界中のボクサーが同じ条件だから・・・」と言葉を濁しつつ、「何にしても、試合ができるようになったことは素直に嬉しい。」と、険しい眼差しを少しだけ和ませる。


「(KO負けの)ショックを払拭するのは簡単じゃないけど、とにかく前に進むしかない。あの日をやり直す事は、永遠に不可能なんだから。」

確かに。


昨年12月26日に予定されていたデニス・ホーガン戦が、自らのcovid-19(陽性反応/無症状)で中止となり、6月25日開催でフィックスされたブライアン・メンドーサ戦も、練習中に肘を故障してキャンセル。

ベルトを失ってからというもの、ツキに見放された感が拭えない。


「おそらく彼(エルナンデス)は、皆さんが考えているよりもずっとタフで手強い。油断はしないし、警戒も十二分にするけれど、リスペクトし過ぎないことも大事になる。」

「(世界タイトル戦について問われ)この試合が終わってからでないと、具体的な事は何1つ話せない。ただ、条件が整いさえすれば、チャーロ(ジャーメル/WBOを除く3団体統一王者)と戦いたい。」

「チャーロへの挑戦交渉が難航するようなら、ブライアン・カスターノ(WBO王者)。彼が挑戦者選びに困っているなら、是非とも私と戦って欲しい。(チャーロとカスターノの)どちらが先になっても構わない。」

やや慎重に言葉を選びながらも、再挑戦への意思をはっきりと語るウィリアムズに迷いはない。


直前のオッズも、ウィリアムズの圧勝と読んだ。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ウィリアムズ:-1600(約1.06倍)
エルナンデス:+800(9倍)

<2>5dimes
ウィリアムズ:-1050(約1.10倍)
エルナンデス:+675(7.75倍)

<3>betway
ウィリアムズ:-1408(約1.07倍)
エルナンデス:+600(7倍)

<4>ウィリアム・ヒル
ウィリアムズ:1/16(約1.06倍)
エルナンデス:7/1(8倍)
ドロー:22/1(23倍)

<5>Sky Sports
ウィリアムズ:1/16(約1.06倍)
エルナンデス:8/1(9倍)
ドロー:16/1(17倍)


◎ウィリアムズ(31歳)/前日計量:156.5ポンド
前WBA・IBF統一S・ウェルター級王者
戦績:31戦27勝(16KO)2敗1分け1NC
アマ通算:75勝10敗(77勝10敗説有り)
2009年ナショナル・ゴールデン・グローブス初戦敗退
2009年全米選手権2回戦敗退
※階級:ウェルター級
身長:178センチ,リーチ:184センチ
右ボクサーファイター

◎エルナンデス(32歳)/前日計量:153.5ポンド
戦績:16戦12勝(6KO)4敗
身長:172センチ,リーチ:175センチ
左ボクサーファイター


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<7>フェザー級10回戦
ロベイシー・ラミレス(キューバ) VS オルランド・ゴンサレス(プエルトリコ)

2019年8月のデビュー戦を大失敗(4回判定負け)した後、8連勝(4KO)をマークして巻き返し中の五輪連覇のキューバン・ヒーローが、17戦負けなしのプエルトリカンを相手に、自身2度目の10回戦。

パンデミックの最中も、トップランクとESPNがMGMグランドの協力を得て作った「ザ・バブル(無観客専用の小ホール)」で戦い続け、長期のブランクを回避したラミレスは、昨年5度びリングに上がり、プロの水に慣れるべく奮戦。

今1つ力強さと逞しさに不満を感じさせる戦い方が影響しているのか、ゴンサレスの無敗レコードに対する警戒感なのか、直前のオッズは想像していた程に離れなかった。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ラミレス:-650(約1.15倍)
ゴンサレス:+430(5.3倍)

<2>5dimes
ラミレス:-1000(1.1倍)
ゴンサレス:+650(7.5倍)

<3>betway
ラミレス:-400(1.25倍)
ゴンサレス:+699(7.99倍)

<4>Sky Sports
ラミレス:1/8(1.125倍)
ゴンサレス:5/1(6倍)
ドロー:20/1(21倍)


前日計量は2人ともフェザー級リミット丁度でクリア。ところが・・・。
Boxrecのスケジュールを再チェックすると、「vacant NABF Junior Feather Title」の文字が・・・。

126ポンドの契約ウェイトなのに、122ポンドのベルトを懸けてしまう。米国内では時折り見かけるパターンだが、それは幾らなんでもないだろうと。

WBAの杜撰極まるチャンピオンシップ運営を非難する資格が、そもそもあるのかという話になる。


◎ラミレス(27歳)/前日計量:126ポンド
戦績:8戦7勝(4KO)1敗
アマ通算:400勝30敗(概ね)
2012年ロンドン(フライ級)・2016年リオ五輪(バンタム級)金メダル
2011年(バクー/アゼルバイジャン/フライ級3回戦敗退),2013年(アルマトイ/カザフスタン/バンタム級ベスト8)世界選手権代表
2012年ユース世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)金メダル(バンタム級)
2011年パン・アメリカン・ゲームズ金メダル(フライ級)
身長:165センチ,リーチ:173センチ
左ボクサーファイター

◎ゴンサレス(26歳)/前日計量:126ポンド
戦績:17戦全勝(10KO)
アマ戦績:160勝18敗
身長:171センチ,リーチ:170センチ
左ボクサーファイター


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24歳の軽量級ホープ,ブルース・キャリントン(ニューヨーク出身)が、いよいよプロ・デビュー戦を迎える。

幼い頃から父の手解きを受け、9歳の頃には地元TV局の取材を受けたという早熟の天才児。リオ五輪への出場は叶わず、2020年に照準を合わせて努力を続けて、見事代表の座を射止めたが、パンデミックによる1年の延期。

そして1年を経た結果、米国のアマ統括機関はキャリントンではなく、1年前の最終予選で退けた筈のデューク・ラガンを推挙した。

「衝撃だった。何も考えられなかった。小さな子供のように泣いた。でも、僕には何もできない。ただ、決定に従うしかない。」


目標をプロの世界チャンピオンに切り替えることは、「そんなに簡単な事じゃなかった。」と率直に述べる。

「オリンピック(でメダルを獲った)後にプロに進む。当然その予定だったけど、子供の頃からずっと夢に描いていたオリンピックに出場が決まっていたのに、突然目の前から消えて失くなったんだ。でも、起きてしまった事は取り返しがつかない。前に進むしかない。」

階級はアマ時代と同じフェザー級。「すぐに変えるつもりはない。でも、無理をしてまで留まることもしない。階級は自然に上がって行くと思う。」