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ネットオヤジのぼやき録

ボクシングとクラシック音楽を中心に

またもやドネアに神風吹く? /WBSS第2シーズン,バンタム級準決勝 1st - テテが故障で戦線離脱/代役は30歳の黒人サウスポー -

2019年04月28日 | Preview

■4月27日/ケイジャン・ドーム/ルイジアナ州ラファイエット/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
WBAスーパー王者 ノニト・ドネア(比) VS WBA5位 ステファン・ヤング(米)



一時は継続が危ぶまれた(?)WBSSシーズン2の準決勝が、無事王国アメリカ(南部ルイジアナ)で幕を開け、我らが井上尚弥と決勝を争う(気が早過ぎる?)相手が決まる。

そして、十中八九勝利は堅いと見込まれていた南アの雄ゾラニ・テテが、本番直前の24日(現地時間)、右肩の負傷を理由にドタキャンするハプニングが発生。トーナメントからの撤退を決めた理由について、失意のWBO王者は次のように語った。

「公開練習で突然右肩に痛みが走り、1日休んだが回復しない。ドクターに見て貰ったら、炎症で試合は難しいと診断を受けた。ビッグネーム(ドネア)と戦うチャンスは滅多にあるものじゃなく、何としても出場したかったが、ドクターの診断に従うしかないとの結論に至った。」

「ラスベガスのメイウェザー・ジムで密度の濃いキャンプを過ごし、最高の状態に仕上がっていた。残念極まりない決断だが、ドネアやイノウエ,ロドリゲスとはいずれ必ず戦って、このクラスのNo.1を是非とも証明したい。」

□テテの撤退を報じる記事
<1>ZOLANI TETE INJURED, FORCED OUT OF NONITO DONAIRE BOUT AND WBSS TOURNAMENT
4月24日/リング誌
https://www.ringtv.com/560163-zolani-tete-injured-forced-out-of-nonito-donaire-bout-and-wbss-tournament/

<2>STEPHON YOUNG REPLACES INJURED ZOLANI TETE AGAINST NONITO DONAIRE IN WBSS SEMIS
4月24日/リング誌
https://www.ringtv.com/560215-stephon-young-replaces-injured-zolani-tete-against-nonito-donaire-in-wbss-semis/

<3>Stephon Young to replace injured Zolani Tete against Nonito Donaire
4月24日/The Sowetan(ソウェタン:南アの著名な新聞)
https://www.sowetanlive.co.za/sport/boxing/2019-04-26-stephon-young-to-replace-injured-zolani-tete-against-nonito-donaire/

<4>Stephon Young set to face Nonito Donaire in World Boxing Super Series replacement fight
4月24日/Bad Left Hook
https://www.badlefthook.com/2019/4/24/18514774/stephon-young-vs-donaire-world-boxing-super-series-tete-injured-replacement-fight-april-27-dazn

<5>Nonito Donaire vs. Stephon Young Finalized For WBSS
4月24日/Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/nonito-donaire-vs-stephon-young-finalized-wbss--138317




ピンチヒッターのお鉢が回ったのは、同じリングでアンダーカードに登場する予定だったステファン・ヤング。

セントルイス出身のローカル・ホープは、昨年10月20日のWBSS興行(フロリダ州オーランド)に呼ばれて、エマニュエル・ロドリゲス VS ジェイソン・マロニー戦の前座に登場。コロンビアの中堅選手を相手に印象的なファイトをやってのけ、リザーバーのポジションを手に入れていた。

タッパはテテより大分低いが、”サウスポーの黒人(+機動力)”という共通項があり、不利の予想から一転して圧倒的優位に立ち、トーナメント優勝への意欲に燃える5冠王に異存があろう筈がない。

2年前に対戦して引き分けたニコライ・ポタポフ(ロシア)との再戦が組まれ、決着を着ける予定でいたところへ、思いもしなかった朗報(?)が舞い込んだ30歳のローカル・ホープは、「涙が溢れて止まらなかった。」と奮い立つ。
※ポタポフにはダニエル・ロツァーノというフロリダの中堅選手(15勝6敗/2連敗中)が用意された


もっとも、スポーツブックのオッズは天文学的な数字でかけ離れている。スーパー・サブというより、ドネアを決勝に送る為に選ばれた「最強のアシスト王」といった様相。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
ドネア:-1200(約1.08倍)
ヤング:+700(8倍)

<2>5dimes
ドネア:-1100(約1.09倍)
ヤング:+700(8倍)

<3>SportBet
ドネア:-1040(約1.1倍)
ヤング:+760(8.6倍)

<4>ウィリアム・ヒル
ドネア:1/66(約1.01倍)
ヤング:14/1(15倍)
ドロー:25/1(26倍)

<5>Sky Sports
ドネア:1/33(約1.03倍)
ヤング:12/1(13倍)
ドロー:25/1(26倍)


いつもなら常識的な値を弾き出す英国が極端な数字になっているのは、身銭を切って懸けるファンの多くが、ヤングというボクサーをまったく知らないからだろう。

セントルイスからやって来た左構えの黒人ボクサーは、昨年3月23日にフロリダ州ハリウッドで行われた興行に参戦し、フィリピンの新鋭レイマート・ガバーリョ(22歳/21戦全勝18KO)とWBAバンタム級の暫定王座を争い、第3ラウンドにダウンを奪われ大差の0-3判定負けに退いている。

この敗戦がキャリア唯一にして最大の黒星ということになるが、3度記録しているドローのうちの1つは、我らがモンスターの米国デビュー戦でワンサイドのTKOに散ったアントニオ・ニエヴェスとの8回戦(2015年6月)。

ただし、この時の契約ウェイトは122ポンドのS・バンタム級。アマ時代、最軽量のL・フライ級で北京五輪を目指していたヤングは、フライ級に上げて次なるロンドン大会本戦にターゲットを合わせたものの、米国最終予選でラウシー・ウォーレンに敗れてプロ入りを決断。

2011年8月に114ポンド1/2のS・フライ級でデビュー(4回戦)すると、2戦目を123ポンドで戦い、3戦目以降フェザー級に定住する。2014年頃からS・バンタムに階級を戻し、2017年まで122ポンドを主戦場にしていた。


日本のファンの中にも、ニエヴェス戦の映像をご覧になった方は結構いらっしゃると想像するが、身体がしっかり絞り切れていないとの印象が強く、スピードとキレが不足しているのは勿論、本来のストロング・ポイントでもある運動量そのものが落ちている。

2016年4月(116ポンド1/2)と9月(118ポンド)に、それぞれバンタム級で1試合づつこなしたのは、S・バンタムが適正階級ではないと感じていたからに違いない。その後2017年1月に120ポンドでチューンナップをこなした後、同年5月に128ポンド超のS・フェザー級まで増量。

短期間にウェイトの増減を繰り返しているのは、自らのフィジカルに最もフィットしたクラスを見極める為だろうが、幾ら相手が格下の負け役とは言え、随分と思い切ったことをやるものだ。

この後実戦から遠ざかったのは、家庭内のトラブル(離婚)が原因らしい。1年近いスパンを置いてオファーを受けた試合が、ガバーリョとの暫定王座戦という流れ。ひたすら追い求め続けた世界戦が、S・バンタムではなくバンタム級で実現したことについて、「運命的なものを感じる。」と話していた。


がしかし、念願の世界タイトル奪取に向けて現地入りしたヤングは、前日計量の直前に養育費の滞納を理由に逮捕拘留されてしまい、5,100ドルの保釈金を払って何とか計量には間に合ったものの、「万全な準備」に大きな狂いが生じたことは否めない。

「自分が冒した過ちだから、止むを得ないことだと思っている。誰のせいにもできないし、してはいけない。お前にはチャンピオンになる資格がない、まだそのタイミングではないと、神様に言われているような気がした。」

「WBSSの興行に呼ばれた時は、これがボクサーとしてのラスト・チャンスになるかもしれないと思った。それまで以上に練習に打ち込み、日々の節制に努めた。ただ勝つだけではダメで、皆の心に残るファイトをしなければいけない。」


その言葉通り、ヤングは自他共に過去最高と認めるパフォーマンスを披露。キレキレの動きと鋭いパンチ&ステップで、コロンビアから招聘された29歳のローカル・ボクサーを寄せ付けなかった。

「この選手の適正階級は、やはりバンタム級。」

試合映像を見た感想は、その一言に尽きる。S・バンタム~フェザー級で戦っていた頃のナマクラぶりが、別人のようにキレまくっている。ドネアの優位は致し方のないところではあるものの、反応に衰えが目立つ現在のドネアが、気持ち良く左フックのカウンターを一閃させようとして倒し急ぐのはまずい。

素早く動くヤングを簡単に捕まえようとムキになり、攻防のキメが粗くなると、ギジェルモ・リゴンドウにやられたように、距離を詰め切る前に当て逃げされるリスクが増す。ガードを簡単に緩めず丁寧にジャブを突いて、西岡を圧倒した時のように、じっくり時間を使ってプレッシャーをかけて行くのが得策。


「悪いけど、彼(ヤング)にはノーチャンスだと思う。だって、相手はあのノニト・ドネアだよ。スキルも経験も全然足りない。」

ヤングの代理出場を伝え聞いたガバーリョは、考える間もなくそう答えたという。いかに優れた駿馬であったとしても、アマチュアを含めて100戦超の実戦経験を持つ30歳が、22歳の若造に「技術と経験が不足」と真っ向から切り捨てられるのはたまったものではない。

どんな事情があったにせよ、その若造に完敗したのだから、取りあえずは言われっ放しで耐えるしかないけれども・・・。


ドネアのトーナメント参加が正式に報じられた時には、「無残な結果にならなければいいが・・・」と心配ばかりが先に立ってしまったけれど、ライアン・バーネットが試合中の故障でよもやの途中棄権に続いて、今度はテテが本番直前に肩を故障して欠場。

バーネットに完敗して引退するんだろうと、多くのファンだけでなく、私もそう信じて疑っていなかったが、今のドネアには妙な幸運が付いて回る。

WBSSの現場を取り仕切るプロモーターの1人で、アメリカ側の顔となっているリチャード・シェーファー(デラ・ホーヤの右腕としてGBPの隆盛を築いたスイスの元銀行家)率いるリングスター・スポーツと契約したことが、WBSS出場へのきっかけとなったのは間違いのない事実で、バーネットとテテの怪我について、”あらぬ噂(裏でシェーファーが手を回した?)”が立つのもわからなくもない。

だからと言って、井上と並んで優勝候補の筆頭に挙げられていたバーネットが、目先のカネに転ぶとは到底考えられない。同様に、ビッグマッチにあれほど飢えていたテテが、やはり目先のカネと引き換えに、ドネア戦という千載一遇の機会を自ら捨てるだろうか。

愚にもつかない与太話の類に過ぎないと、個人的には考える。


◎ドネア(36歳)/前日計量:117ポンド1/2
5階級制覇王者/戦績:44戦39勝(25KO)5敗
IBFフライ級(V3),WBA S・フライ級暫定(V1),WBC・WBO統一バンタム級(V1),WBO J・フェザー(第1期:V3/第2期:V1),WBAフェザー級スーパー(V0)王者
アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:171センチ,リーチ:173センチ
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)

◎ヤング(30歳)/前日計量:117ポンド1/4
戦績:22戦18勝(7KO)1敗3分け
アマ通算:86勝13敗
2011年ナショナル・ゴールデン・グローブス/フライ級準優勝
2006年ナショナル・ゴールデン・グローブス/L・フライ級ベスト8
身長:165センチ,リーチ:170センチ
左ボクサー




WBSS参戦が正式に決まったドネアは、ラスベガスの重鎮ケニー・アダムスをチーフに招いた。高齢にもかかわらず、ケニーはコーナーに立って直接指示やアドバイスを送っているが、傷や腫れのケアといった実務まではできない。

不利の予想で迎えたライアン・バーネットとの初戦は、フィジカル強化を長年に渡って担当してきたマイケル・バゼル(1試合だけチーフの重責を担った)が任されていたが、今回は実父のノニト・シニアが帯同している。

リディック・ボウらに付いていた最晩年のエディ・ファッチは、コーナーに立つこと自体が困難で、愛弟子のトレーナーたちにコーナー・マネージメントを託し、伝令係りを使って、リングサイドに腰掛けたまま指示を出していた。

1分間のインターバルの間、アダムスは実際にリングに上がり、立ちっ放しで背後から指示を出す。ラスベガスで数多くのボクサーを世に出した老匠に、現場を去る気はさらさら無いように見える。立派なものだ。


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■リング・オフィシャル:未発表