■9月22日/ウェンブリー・スタジアム,英ロンドン/WBA・IBF・WBO3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ12回戦
3団体統一王者 アンソニー・ジョシュア(英) VS 元WBA王者 アレクサンダー・ポベトキン(ロシア)
7万3千とも8万とも言われるチケット・セールスに、A・J人気の凄まじさをあらためて実感する。
ポベトキンは3月末に行われたジョシュア VS ジョセフ・パーカー戦のセミに登場し、北京の銅メダリスト,デヴィッド・プライス(英/イングランド)を第5ラウンドで撃沈しており、昨年4月のクリチコ戦に続く「五輪S・ヘビー級 新旧ゴールド・メダリスト対決」も、前景気を煽る一助になった模様。
とは言うものの、不惑を目前にしたポベトキンへの期待値は低く、オッズは大きな差が開いた。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
ジョシュア:-833(約1.12倍)
ポベトキン:+700(8倍)
<2>5dimes
ジョシュア:-905(約1.11倍)
ポベトキン:+705(8.05倍)
<3>シーザースパレス
ジョシュア:-1200(約1.08倍)
ポベトキン:+600(7倍)
<4>ウィリアム・ヒル
ジョシュア:1/8(約1.13倍)
ポベトキン:7/1(8倍)
ドロー:33/1(34倍)
<5>Sky Sports
ジョシュア:1/8(約1.13倍)
ポベトキン:7/1(8倍)
ドロー:33/1(34倍)
今回のタイトルマッチ決定に釈然としないのは、2016年~2017年にかけて勃発した、ポベトキンのドーピング違反騒動に原因がある。プロ転向当初のポベトキンは、クリチコ兄弟との対戦を意識してウェイトを増やしていたが、年齢を重ねた今は逆に絞り気味。2メートル級の巨漢選手と戦う為に、パワーではなくスピード&機動力を選択した。
体重を落とすにしても、年齢的な衰えをカバーする意味でも筋肉量は何としても維持したい。その過程で、禁止薬物に手を染めた・・・と見る関係者,マニアは少なくない。何事も無かったかのように、39歳のポベトキンにタイトルマッチが用意されるのは、年々歳々深刻の度合いを増す人材の枯渇、ヘビー級の駒不足に解決の目処が立たないからだ。
手回しのいいプロモーターのエディ・ハーンは、早くも来年4月上旬にウェンブリー・スタジアムを押さえている。WBCのベルトを持つ王国アメリカの(最後の?)星、ディオンティ・ワイルダーを招聘する為だが、中盤~後半まで持てば、ポベトキンは充分な善戦と評価されていい。
ただし、ジョシュアの長い右をポベトキンが上手いことかいくぐり、下からオーバーハンド・ライト(もしくは左フック,アッパー)を叩きつけることができれば、確率がどれだけ低かろうと、デヴィッド・プライス戦の再現はまったくの夢物語ではなくなる。
ディリアン・ホワイト戦とクリチコ戦で露呈した、ジョシュアの打たれ脆さとガードの隙。その穴を突く以外、ポベトキンに勝機は有り得ない。「ジョセフ・パーカー戦の二の舞い(安全策に閉じこもり大差の3-0判定)」を心配する声が上がるのも、無理はないと素直にそう思う。
◎ジョシュア(28歳)/前日計量:245ポンド1/4
戦績:21戦全勝(20KO)
アマ通算:43戦40勝3敗
2012年ロンドン五輪S・ヘビー級金メダル
2011年世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)銀メダル
身長:198センチ,リーチ:208センチ
右ボクサーファイター
◎ポベトキン(39歳)/前日計量:222ポンド
戦績:35戦34勝(24KO)1敗
アマ通算:125勝7敗
2004年アテネ五輪S・ヘビー級金メダル
2003年世界選手権(バンコク)金メダル
2002年(ペルミ/ロシア),2004年(プーラ/クロアチア)欧州選手権優勝
身長:188センチ,リーチ:191センチ
右ボクサーファイター
ポベトキンの身体はナチュラルで、とてもステロイドを使っているようには見えない。プロ入りしてから計画的な増量に取り組み、アマ時代よりも2回り近く大きくなったジョシュアの方が、ムキムキのボディでいかにもアヤしく見えてしまう。
10センチの身長差(リーチは17センチ)以上に、23ポンド(あくまで計量時)の体重差が気にかかる。例えガードの上からでも、ジョシュアの右は当たれば確実に効く。ポベトキンが上手く懐に潜り込めたとしても、クリチコのように上から圧し掛かられて動きを封じられてしまえば、ポベトキンに打開する術はなくなる。
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□オフィシャル
主審:スティーブ・グレイ(英/イングランド)
副審:
カルロス・スクレ(ベネズエラ/米在住)
ジャン・ロベール・ウール(モナコ)
マテオ・モンテッラ(伊)
立会人(スーパーバイザー)
WBA:フランシスコ・ピーニャ(コロンビア/予算管理担当)
IBF:アニバル・ミラモンテス(米/ニュージャージー州,IBFランキング委員長)
WBO:フランシスコ・パコ・バルカルセル(プエルトリコ/WBO会長)
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■主なアンダーカード
<1>WBCライト級挑戦者決定12回戦
WBC1位/前シルバー王者 イヴォン・メンディ(仏) VS WBC2位 ルーク・キャンベル(英)
昨年9月、カリフォルニアでホルヘ・リナレス(ベネズエラ/帝拳)に惜敗したキャンベルが、再起2戦目のリングに登る。プロ13戦目(2015年12月)に衝撃の初黒星を喫した黒人ボクサーを相手に、マイキー・ガルシア(米)への挑戦権を懸けた3年越しのリベンジ・マッチ。
5月の復帰第1戦(※)は、同じイングランドの中堅選手に5回TKO勝ち。実力差があり過ぎて試合にならない状況ではあったものの、キャンベルの仕上がりはまずまず良好で、リナレスの肋骨を折った左ボディも健在。危なげのない内容でラウンドをまとめ切り、本人も周囲も一安心。
※メインはポール・バトラー(英)とエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)のIBFバンタム級王座決定戦
さらに7月、陣営は体制の一新を発表。メンディ第1戦からの捲土重来を託し、以来コーナーを任せてきたホルヘ・ルビオ(キューバの代表チームを率いたトップレベルのコーチ)を更迭し、なんとシェーン・マクギガンを新たなチーフとして招聘。80年代のアイルランドを代表するヒーロー、バリー・マクギガンを父に持ち、自身もアマチュアで活躍したが、怪我を理由にプロでの成功を諦め指導者となった。
カール・フランプトンを親子で発掘し、トップ・スターにまで育て上げた実績を買われての登板だが、心血を注いで支えてきたフランプトンに去られた(昨年夏にマクギガン親子との関係を清算しフランク・ウォーレンと契約/ジェイミー・ムーアが新ヘッドに就任)シェーンにとっても、キャンベル陣営のプロポーザルは大歓迎だったに違いない。
「(シェーンとのトレーニングに)とても満足している。彼(メンディ)に負けて以来、リマッチは常に念頭にあったし、雪辱への自信も同様だ。この3年間で私も様々な経験を積み、多くを学んで成長した。その手応えを、シェーンがより明確なものにしてくれたと実感している。」
「(マイキーへの挑戦について問われ)非常に良い準備が出来ている。ただし今は、土曜の試合に勝つことしか考えていない。リベンジを果たした後のことについて、具体的に話せることはまだ何もない。マイキー・ガルシアが今後どうするのか。135ポンドで戦い続けるのか、140ないしは147に上げるのか。」
「ベルトを持っているマイキーの動向次第にはなるけれど、ホルヘ・リナレスとの再戦も視野に入れている。いずれにしても、土曜の晩に勝たなければ何も始まらない。目の前の試合に集中しないと・・・。」
ウェルター級まで一気に上げて、クラス最強の呼び声も高いキース・サーマン(米/WBA王者)へのアタックに言及するマイキー。メキシカンとメキシコ系アメリカ人のスターを何よりも大切にするWBCが、態度を留保したまま越年も辞さない(?)マイキーからベルトをはく奪する可能性(名誉王者への横滑りも含めて)は、ゼロではないにしても相当に低い。対戦交渉が難航するのは火を見るよりも明らかで、ベルトがマイキーの手にある間は、指名挑戦権など無きに等しいことを、キャンベルもよくわかっている。
最悪の場合、正規ではなく暫定王座決定戦となる場合も想定して、イングランドにリナレスを呼んで再戦・・・との目論みらしい。もっとも、今月29日に再起戦(米/カリフォルニア州)を予定するリナレスも、140ポンドに参戦して4階級制覇を狙うと宣言しているが・・・。
33歳のメンディは、2006年デビューの10年選手。安定した好レコードを残しているが、キャンベル以外に国際的な認知を持つオポーネントは見当たらない。経験値と攻防の技術に不足はなく、1発の心配も少なくて済む。典型的なローカル・ランカーとの位置づけであり、だからこそキャンベルのテスト・マッチにも選ばれた。
評判の高い五輪金メダリストとは言え、プロ転向後に得たのはWBC直轄の下部タイトルのみ。修行途中のメダリストに一泡吹かせて、そのローカルタイトルを奪い取ったというだけで、中堅の位置に留って長いローカル・ボクサーに、ビッグ・チャンスが直ちに巡って来るほど甘くはない。
その後も母国フランス領内でのローカル・ファイトで勝ち続け、昨年6月、WBCシルバー王座を獲得(ニカラグァの中堅選手との決定戦で大差の判定勝ち)。10月にチューンナップをこなした後、12月には29歳のローカル・メキシカンを呼んで8回KOに退け初防衛に成功。
WBCのランクアップは、一にも二にもこのベルトの賜物ということになる。そして昨年6月の決定戦から、引退してプロモーターに転身したブライム・アスロウム(シドニー五輪L・フライ級金メダリスト/元WBA L・フライ級王者)の下で戦い始めたことが、停滞を余儀なくされていた状況を一変させたという。
※チーム・メンディ
左から:メンディ,メディ・ラフィフィ(マネージャー),ジョヴァンニ・ボギア(チーフ・トレーナー)
※プロモーターになったブライム・アスロウムと
9歳の時からボクシングを始めて、戦績と戦果は不明ながら、アマで相応の活躍をしたのは間違いないようだ。
「ルーク・キャンベルとの再戦は、ずっと頭の中にあった。英国のみならず、試合を観戦した多くのファンが、私の勝利はマグレだと思っていた筈だから。そうではないんだと、私は実力で勝ったんだと証明したかった。その機会がようやく実現したんだ。」
「心配しているのは、レフェリングとジャッジ(地元判定)だけだね。前回は彼(キャンベル)もデビューして間もなかったし、試合を見ていた人たちはびっくりしただろうけど、どんなにアマで実績があったとしても、プロではキャリアの浅いグリーンボーイだ。私のようなベテランに敗れることは、けっして恥ずかしいことじゃない。」
「事実私に喫した敗北は、彼にとって大きな傷にはならなかっただろう?。だが今は違う。彼は世界タイトルに挑戦したコンテンダーで、しかもホルヘ・リナレスのような王者に善戦した。今度また私に負けるような事態になれば、彼のキャリアは重大な危機に晒される。審判団がどこまでフェアに仕事をやってくれるのか。そこに安易な期待を抱く訳にはいかない。だから今回は、ノックアウトを狙って行く。誰にも私の邪魔はさせない。」
「(ブライム・アスロウムの傘下に入ったことで)大きく状況が動いた。彼には本当に感謝している。この試合に勝って、世界タイトルに進む。相手が誰だろうと私は戦う。そして必ず世界チャンピオンになる。」
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
メンディ:+325(4.25倍)
キャンベル:-450(約1.22倍)
<2>5dimes
メンディ:+400(5倍)
キャンベル:-500(1.2倍)
<3>SportBet
メンディ:+415(5.15倍)
キャンベル:-485(約1.21倍)
<4>ウィリアム・ヒル
メンディ:3/1(4倍)
キャンベル:1/4(1.25倍)
ドロー:22/1(23倍)
<5>Sky Sports
メンディ:3/1(4倍)
キャンベル:1/4(1.25倍)
ドロー:20/1(21倍)
3年前の第1戦、キャンベルは常にポジショニングで後手を踏み、ガードの真ん中を右ストレートで直撃された。その上距離を潰されると、メンディが下から放つ右フックをよけられず、”プロの飯の違い”をこれでもかと味あわされた。海千山千のベテランが仕掛ける駆け引き&プレッシャーを跳ね返すパンチとフィジカルが、決定的に不足していたということなのだが、キャンベルも手痛い敗北を糧に研鑽を積み、立派なメイン・イベンターに成長。
リナレス戦のコンディションと集中力があれば、雪辱はそれほどの困難にはならないだろうし、現時点での比較においてキャンベルの優位はうなづけるけれど、オッズほどの乖離があるかどうかは・・・?。
◎キャンベル(30歳)/前日計量:134ポンド1/4
元WBCシルバー同級王者(V2/返上)
戦績:20戦18勝(15KO)2敗
アマ通算:153勝24敗
2012年ロンドン五輪金メダル
2011年世界選手権(バクー)銀メダル
2008年欧州選手権(リヴァプール)金メダル
※階級:バンタム級
身長:175センチ,リーチ:180センチ
左ボクサーファイター
◎メンディ(33歳)/前日計量:134ポンド1/4
前WBCシルバー同級王者(V1/返上)
戦績:46戦40勝(19KO)4敗1分け1NC
アマ戦績:不明
身長:174センチ,リーチ:センチ
右ボクサーファイター
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<2>英国(BBBofC British)クルーザー級タイトルマッチ12回戦
王者 マティ・アスキン(英/イングランド) VS ローレンス・オコリエ(英/イングランド)
リオ五輪ヘビー級代表のオコリエが、プロ10戦目で英国王座に挑む。医師から肥満を注意され、ダイエット目的でジムに通い始めた17歳のオコリエは、気が付くとアマの選手になり、あっという間に英国(イングランド)を代表する重量級として認知される。
「アマでやったのは、たぶん15戦だと思う。たったそれっぽっちでオリンピックに行ったのかってみんな驚くけど、本当にそれで行けたんだからしょうがないよね。」
記録上確認できるオコリエの試合数は、2014年(21歳)~2016年(23歳)までの2年間で13戦(9勝4敗)。ただし、全英大学選手権(2014年と15年)の記録は含まれておらず、ご本人の弁を信用するなら、大学でやったのは僅か2試合ということになってしまうが、何にしても凄い。これでもしも金メダルを獲っていたら、ジョージ・フォアマン級(ボクシングを始めてから2年足らずでメキシコ五輪を制覇)の天才児である。
一家のルーツはナイジェリアで、オコリエは2人の兄妹と一緒に、ロンドンのハックニーで生を受けた。運動神経は良かったとのことだが、スポーツ経験を含めた詳しい来歴は不明。このまま勝ち続けてくれれば、そのうち詳細なインタビューが行われるだろう。
身長&リーチだけを見れば、2人とも文句無しのヘビー級。しかし、スピード&アジリティには相当な差がある。順当ならオコリエが前半で倒す筈だが、まだまだ身体能力とセンスに依存した直線的なボクシングだけに、”万が一の1発”が絶対に無いとは言い切れない。
フィジカルの強化を今後も続けて、然るべき時期に最重量級へと参入する腹つもりなのだろうか。深刻なタレント不足に悩むヘビー級故に、ジョシュアの好敵手足り得る可能性が少しでもあるなら、プロモーターたちは好条件を惜しまず眼前にぶら下げ、容赦なく増量を迫るだろう。
◎アスキン(29歳)/前日計量:199ポンド1/2
戦績:27戦23勝(15KO)3敗1分け
アマ戦績:不明
2008年英国(ABA)選手権クルーザー(86キロ)級優勝
身長:193センチ,リーチ:196センチ
右ボクサーファイター
◎オコリエ(25歳)/前日計量:199ポンド1/4
戦績:9戦全勝(7KO)
アマ戦績:15戦(勝敗不明)
2016年リオ五輪代表(2回戦敗退)
2016年リオ五輪欧州最終予選優勝
2014~15年全英大学選手権優勝
WSB(World Series of Boxing):3戦2勝1敗
※階級:ヘビー級
身長:196センチ
右ボクサーファイター
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<3>ヘビー級10回戦
デヴィッド・プライス(英) VS セルゲイ・クスミン(ロシア)
北京で銅メダルを獲り、鳴り物入りでプロ入りしたプライスも、既に30代半ばを過ぎてしまった。白人の巨漢として大成を望まれたが、ローカルクラスのトップに止まった。今年3月、カーディフでポベトキンに5回KOで敗れており、捲土重来の再起戦となる筈が、ジョシュアへの挑戦が期待されるロシアの重戦車に、咬ませとしてあてがわれる破目に・・・。
公称193センチのタッパに240ポンド超の重量を蓄えたクスミンは、けっして小型ヘビー級という訳ではないが、2メートル級の巨人を前にすると流石に小さく感じてしまう。前に出た左腕をうるさく動かし、ハンド&パンチ・フェイントを操りながら、前後の直線的なステップとともに、左右フックとワンツーを主体に波状攻撃を繰り返す。
豊富なアマ・キャリアに裏付けされた攻防の技術に不足はなく、パンチの重さと前に出る突破力も及第点だが、いかんせん機動力とボディワークに不満が残る。2メートル級の巨人と伍して行く為に止むを得ないのだろうが、180センチ後半~190センチ台前半のヘビー級に、240~250ポンドのウェイトはやはり負担が大きい。
今現在の両雄の勢いの差、年齢と蓄積されたダメージを考慮すれば、クスミンの前半KOでもおかしくはないけれど、「身体全体のスピード不足+頭を余り振らない前後のステップ」という、現代トップアマの多くに共通する課題をクスミンも抱えている。
ロートル化が顕著な銅メダリストを早い時間帯で破壊し、首尾よくジョシュア(ポベトキン?)戦へと歩みを進められれば良いが、アジリティとボディワークの不足は、思わぬ墓穴へと自らを誘い込むリスクを常に内包する。
◎プライス(35歳)/前日計量:265ポンド1/4
戦績:27戦22勝(18KO)5敗
アマ戦績:75勝15敗
2008年北京五輪銅メダル
2007年世界選手権(シカゴ)ベスト8敗退
2006年コモンウェルス・ゲームズ(メルボルン)優勝
※階級:S・ヘビー級
身長:203センチ,リーチ:208センチ
右ボクサーファイター
◎クスミン(31歳)/前日計量:244ポンド3/4
戦績:13戦12勝(9KO)1NC
アマ通算:227勝23敗
2011年世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)初戦敗退
2013年欧州選手権(ミンスク/ベラルーシ)準優勝
2010年欧州選手権(モスクワ)優勝
2014年ロシア国内選手権3位
2012年同選手権準優勝
2010~2011年同選手権連覇
※階級:S・ヘビー級
身長:193センチ,リーチ:192センチ
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<4>ウェルター級6回戦
シャフラム・ギヤゾフ(ウズベキスタン) VS フリオ・ラグーナ(ニカラグァ)
アマチュア出身の全勝ホープ同士の激突。とは言うものの、ナチュラルなウェルター級のギヤゾフに対して、遥々ニカラグァから呼ばれた好戦的なサウスポーは、140ポンドのS・ライト級が本来の主戦場。ギヤゾフの計量も144ポンドを切っており、142ポンドで調整したラグーナとの体重差は、数字だけで判断するなら許容範囲ではある。
渡米してブルックリン(N.Y.)に拠点を構え、今年3月、6回戦でプロデビューしたギヤゾフは、リオのウェルター級で銀メダルを獲り、昨年の世界選手権(ハンブルク/ドイツ)でも金メダルに輝いた文字通りのエリート・アマ。現在ポベトキンをハンドリングするアンドレイ・リャビンスキーと契約を結び、米本土での成功を目指して奮闘中。
手足と身体全体のスピードに恵まれ、一瞬の踏み込みとパンチの速さ,鋭さは一見の価値有り。公表されている身長は、この階級で戦うには充分なサイズだが、硬さとともに線の細さが感じられる。今回ウェイトを絞ったのは、S・ライト級への階級ダウンを見据えてのことかもしれない。
一方のラグーナも、詳細は不明ながらアマで一定の実績を残しているらしく、2015年に4回戦でプロデビュー。なかなかセンシブルな動きをするサウスポーで、キレと鋭さではギヤゾフに及ばないが、左ストレートの威力と中南米特有の柔軟性は魅力的。ギヤゾフの出足にしっかりラグーナが反応できれば、面白い試合になりそう。
◎ギヤゾフ(25歳)/前日計量:143ポンド1/4
戦績:4戦全勝(3KO)
アマ戦績:不明
2016年リオ五輪銀メダル
2017年世界選手権(ハンブルク)金メダル
2017年アジア選手権(タシュケント/ウズベキスタン)優勝
※階級:ウェルター級
身長:176センチ
右ボクサーファイター
◎ラグーナ/前日計量:142ポンド
戦績:14戦全勝(10KO)
年齢,身体データ等:不明
左ボクサーファイター
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<5>ウェルター級4回戦
クリス・コンゴ(英) VS ピョートル・アレクサンドロフ(ブルガリア)
リオ五輪の代表になり損ねてプロに転じたコンゴは、180センチ超の長身を武器に戦う黒人選手。高くコンパクトに保持されたガードに、しっかり引いた顎と顔を隠したセミ・クラウチング。ハスにした上半身の斜め加減といい、前後左右に動くステップワークも含めて、構えた姿は実にいい。久し振りに見る、伝統的かつ本格的なボクサーファイター。
ただし、全体的に動きが重い。計量後のリバウンドの影響もあるとは思うが、全盛のヒットマン・ハーンズは別格にしても、ポール・ウィリアムズや若い頃のアントニオ・マルガリートと比べても、シャープネスに物足りなさが感じられて残念。S・ウェルター級に上げても、今のスピードのまま世界の上位を生き残るのはキツいか。
中盤から後半にかけてのスタミナにも難があり、イスマイル・シラク(ウクライナ)に似た脆さを垣間見せる。まだプロ9戦と捉えるべきだが、対戦相手のレベルアップに伴うリスクの拡大に不安を禁じ得ない。
◎コンゴ(25歳)
戦績:9戦全勝(6KO)
アマ通算:70勝20敗(?)
2016年リオ五輪代表候補
身長:183センチ
右ボクサーファイター
◎アレクサンドロフ(21歳)
戦績:5戦2勝(KO)3敗
身体データ,スタンス等:不明