goo blog サービス終了のお知らせ 

ネットオヤジのぼやき録

ボクシングとクラシック音楽を中心に

WBSS Season 2 FINAL II 若き剣客が老いた剣豪を介錯・・・できるのか - 尚弥 VS ドネア 直前ショート・プレビュー -

2019年11月07日 | Preview

■11月7日/さいたまスーパーアリーナ/WBA・IBF世界バンタム級王座統一12回戦
IBF・WBA正規王者 井上尚弥(大橋) VS WBAスーパー王者 ノニト・ドネア(比)



「グラスゴーの惨劇」から、早や半年。ラグビーワールドカップも無事に閉幕し、五輪プレ・イヤーもあと2ヶ月を切った東京に、とうとうあの男がやって来た。

プライヴェートでのお忍びも含め、これまで何度も日本に来ているけれど、真剣勝負の為に来日するのは無論これが初めてだ。我らが西岡利晃を引退に追い込んだのは、ちょうど7年前の10月のことになる。

カリフォルニアで西岡を倒し、僅か2ヵ月後にはヒューストンへ飛び、老いらくのホルヘ・アルセを血祭りにあげ、年が明けた2013年4月、ギジェルモ・リゴンドウの専守防衛をあと1歩のところで突き崩せずに敗北。

S・バンタムの完全制覇は成らず、フェザー級まで上げて5階級制覇を成し遂げたのも束の間、”アックス・マン”ことニコラス・ウォルタースが振り下ろした鋭く重い斧の一撃でキャンバスに沈んだ。


増量の限界を思い知り、S・バンタムに出戻ってWBOのベルトを再び巻くも、ジェシー・マグダレーノのアウトボクシングを詰め切れず、5年9ヶ月ぶりのラスベガスで中~大差の判定負け。

夢よもう一度と126ポンドへのリトライに挑み、まだまだ肌寒い春先の北アイルランドでカール・フランプトンに完敗。バンタム級で圧巻のパフォーマンスを繰り広げ、リング誌P4Pランキングに常連として定着し、我が世の春を謳歌した”フィリピンの閃光”も、気がつけば30代半ばを過ぎた。

新たに契約したプロモーター,リチャード・シェーファー(リングスター・スポーツ)のおかげで、WBSS第2シーズンへの参戦が決定。7年ぶりとなる118ポンドへの階級ダウンを決断すると、圧倒的な不利を押して再び渡英し、WBAスーパー王者ライアン・バーネットに想定外の4回終了TKO勝ち。

流れとペースは完全にバーネットの手中にあったが、突然腰を抑えて膝を着いたスーパー王者は、激烈な痛みに耐えかねて棄権。まさかの王座転落に泣く。ほどなくして「腰椎分離症」と報じられ、かなり前から腰痛に悩まされていたことも判明。今年5月にフィリピンの中堅選手をKOして再起したが、つい先日引退の一報が舞い込む。


望外(?)の勝利で準決勝に駒を進めると、初戦よりも厳しい相手と見る者も多かったWBO王者ゾラニ・テテが、本番直前に肩を傷めてトーナメントから撤退。リザーバーの黒人選手を伝家の宝刀左フックで昏倒させ、決勝まで生き残ってしまう(失礼)。

30代半ばを過ぎての階級ダウンにもかかわらず、しっかり戦える状態に仕上げて来るのは流石の一言だが、ウェイトを戻したからと言って、傷つき疲れた36歳の肉体が、いきなり28~29歳当時に若返ることはけっして無い。

対戦相手の小型化により、相対的なパワーだけはアップしても、フラッシュの呼び名に相応しいスピード&シャープネス、芸術的なまでに研ぎ澄まされ、達人の域に達した”後の先”を体現するカウンターもまた、7~8年前と同じ水準まで蘇ることはけっして無いのである。



どんな時もジェントルで明るく優しく、どこまでも勇敢かつクリーンに戦うドネアを嫌う日本のファンは、おそらく皆無に違いない。思い出の地を訪れる企画の民放番組に出演し、引退後初めてラスベガスを再訪問した西岡を、サプライズゲストとして迎えてくれたドネアの姿に、思わず涙したマニアも少なくなかった筈だ。

私もまったく同じ思いを抱いているし、ドネアへの心からのリスペクト、ファンとしての愛情は誰にも負けない自信もあるけれど、今回ばかりはどうしようもない。10歳年下の若く野心に燃えた剣客の前に、年老いた剣豪が無慈悲なまでに打ち砕かれる。

勝敗を予想するのではなく、どういう勝ち(倒し)方でトーナメントの有終を飾るのか。ファンの興味と関心は、まさしくその一点に集約されると言っても過言ではない。それほど現在の両雄の力には、大きな開きがある。


主要なスポーツブックのオッズを見てみよう。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
尚弥:-700(約1.14倍)
ドネア:+450(5.5倍)

<2>5dimes
尚弥:-900(約1.11倍)
ドネア:+600(5.5倍)

<3>シーザースパレス
尚弥:-750(約1.13倍)
ドネア:+525(6.25倍)

<4>ウィリアム・ヒル
尚弥:1/7(約1.14倍)
ドネア:9/2(5.5倍)
ドロー:25/1(26倍)

<5>Sky Sports
尚弥:1/10(約1.1倍)
ドネア:6/1(7倍)
ドロー:25/1(26倍)


これでもまだ、思ったほど離れていない。シドレンコとモンティエルを立て続けに粉砕した、バンタム級時代の神がかりの強さを目の当たりにしている在米ファンは、ステファン・ヤングを失神KOに屠った左フックを見て、「ドネアはまだまだやれる」と思い直したのだろうか。

最も差がついたスカイスポーツ(1対7)でさえ、「老雄に甘過ぎる」と、私にはそう思えて仕方がない。

118ポンドに進出した井上尚弥は、文字通りの”モンスター”に大化けした。S・フライ級の尚弥も凄かったが、慢性化した右拳の負傷に腰痛まで加わり、コンディションが安定せずに苦しむ様子に、海老原博幸の悪夢を重ね合わせ、怪我による一時的な失速だけで済めばいいがと、一時は本気で余計な心配をした。



バンテージ職人(?)のフィジカル・コーチを招いてからは、メスを入れた右の拳を決定的に傷めることが無くなり、厳しい減量からも開放され(既に楽ではなくなっているとのことだが)、腰痛に悩まされることも無い。

フィリピンに長期滞在して、ドネアのスパーリング・パートナーに指名された赤穂亮(横浜光)は、タフで頑健なフィジカルを見込まれ、尚弥のパートナーを頼まれることも多く、石井会長とともに予想を語る短い動画が、youtubeにアップされている。

ドネアの勝負勘と左フックは怖いが、現在の尚弥の敵では無いと赤穂は見立てているが、やはりドネアとのスパー経験を持つ伊藤雅雪(横浜光)も、同じように動画をアップしていて、赤穂以上に尚弥有利と断言。

「スピードとパワーだけでなく、ディフェンスを含めた攻防の技術でも井上。」

コワモテ・フェイスとは裏腹に、色々と気を遣い過ぎる赤穂と違って、甘いマスクの優男にもかかわらず、はっきりと言い切ってしまうのが伊藤らしいが、私もまったく同感。伊藤は中盤までに倒すだろうと予測しているが、ドネアの出方次第では序盤の決着もあるというのが、私の偽らざる本音。


伊藤が言うように、初回は探り合いになる確率が高い。そして赤穂が語る通り、「バンタムの井上は、相手の力を見切るのが異常に早くなった。」ことも確かで、「以前のように中途半端に勝負を躊躇せず、一気に行く。」のも間違いのない事実。

2010年~2011年当時ならともかく、反応と見切りに衰えが隠せない今のドネアに、あの頃と同水準の”後の先”を期待するのは刻だ。必殺のカウンターを狙って尚弥に先に打たせた瞬間に、探り合いからいきなりのフィニッシュとなったパジャーノ戦の衝撃再び・・・という可能性も十二分にある。


◎井上(26歳)/前日計量:118ポンド(53.5キロ
戦績:18戦全勝(16KO)
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
戦績:13戦全勝(11KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ
リーチ:171センチ
首周:34.5センチ
胸囲:89.5センチ
視力:左右とも1.0
ナックル:左26.5/右26センチ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎ドネア(36歳)/前日計量:117ポンド1/2(53.3キロ)
5階級制覇王者/戦績:45戦40勝(26KO)5敗
IBFフライ級(V3),WBA S・フライ級暫定(V1),WBC・WBO統一バンタム級(V1),WBO J・フェザー(第1期:V3/第2期:V1),WBAフェザー級スーパー(V0)
アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:170.2センチ
リーチ:174センチ
首周:36センチ
胸囲:87.0センチ
視力:左1.0/右1.2
ナックル:左26.5/右27.5センチ
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)



□参考映像:公式計量 井上尚弥vs.ノニト・ドネア 両者パス!
2019.11.6 Naoya Inoue vs. Nonito Donaire Weigh-in
https://www.youtube.com/watch?v=SmS-_9Warv0

伊藤雅雪が指摘していた通り、尚弥の仕上がりが本当に素晴らしい。伊藤の見る通り、ドライアウト(水抜き)に頼らずに調整し切れたのかどうかまではわからないが、この大一番に向けた入念な準備が伺われる。

一方のドネアは、苦労して118ポンドに合わせているのがよくわかる。とは言え、減量疲れを実感させる表情は、WBSSの初戦も準決勝も同じ。この後ウェイトを抜かりなく戻して来るだろうが、尚弥の尋常ならざるパワーと圧力を前にして、どこまで耐えられるか。


左右どちらでも倒す破格の1発を持ち、抜群のカウンターの冴えと警戒なフットワークも操る上に、左右を自在にスイッチできる。共通項の少なくない両雄だが、年齢と傷み方の差が大き過ぎる。

※チーム・ドネア
写真左:レイチェル夫人,ドネア,ノニト・シニア(実父/事実上のチーフトレーナー)
写真右:ドネア,ケニー・アダムス(ラスベガスで活躍した伝説的な名トレーナー/WBSS参戦に向けてアドバイザーとしてチーム入り/村田諒太の復活にも尽力した)



●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■オフィシャル

主審:アーニー・シャリフ(米/ペンシルベニア州)

副審:
ルイジ・ボスカレッリ(伊)
オクタヴィオ・ロドリゲス(パナマ)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)

立会人(スーパーバイザー):
IBF:ベン・ケイティ(豪州/IBF Asia担当役員)
WBA:安河内剛(日/JBC事務局長)


●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■参考映像
<1>井上尚弥vsノニトドネア 唯一2人と手合わせしてきた赤穂亮がこの試合を占う。
<A-SIGN.BOXING.COM 公式チャンネル>
(1)Part 1 11月1日
https://www.youtube.com/watch?v=tpzHpWzN-7I
(2)Part 2 11月3日
https://www.youtube.com/watch?v=Bx1gxlrlDEc

<2>ドネアと赤穂の公開スパーリング(2年前/横浜光ジム)
(1)ノニト・ドネアvs赤穂亮 公開スパーリング
2017年6月26日 A-SIGN.BOXING.COM 公式チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=FbPMXUjPE4w
(2)【ボクシング】ドネアvs赤穂亮 ガチスパー 2017/06/27
2017年8月25日 ボクシングモバイル公式チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=LlUQHDpFIUQ

<3>直前! 伊藤雅雪が語る井上尚弥vsノニトドネア
11月5日 A-SIGN.BOXING.COM 公式チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=LSgKuf6yi28

<4>井上尚弥vsドネア戦!WBSS決勝!大橋会長「伝説のチャンピオン同士の対決!」
2019/10/13
https://www.youtube.com/watch?v=kf6Ge9FqjC0

<4>メイウェザー・チャンネルの勝敗予想
Naoya Inoue vs. Nonito Donaire: Fight predictions from the boxing community
https://www.youtube.com/watch?v=7ucJd4Eu8aY

●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■井上尚弥テレビ番組予定

<1>フジ 19:57~21:57(生中継/延長対応有り)
解説:長谷川穂積,山中慎介
ゲスト:村田諒太,香川照之
※尚弥を特集した「月刊カドカワ」で対談を行ったビートたけしも出演する模様

FUJI BOXING 公式ウェブページ
https://www.fujitv.co.jp/sports/fuji_boxing/index.html

<2>NHK BS8K 21:00~22:15
1)大阪と京都の放送局が会場を開放して無料観覧スペースを提供
2)11月10日(日) 16時~16時20分 ハイライト版を放送予定
番組ウェブページ(BS4K・8K番組表内)
https://www4.nhk.or.jp/P6121/

※井上尚弥のWBSS決勝、NHK大阪で中継
11月5日/maga.jp
https://www.lmaga.jp/news/2019/11/80398/

※8Kボクシング中継 WBSSバンタム級決勝「井上尚弥×ノニト・ドネア」 受信公開
(NHKイベント・インフォメーション)
https://pid.nhk.or.jp/event/PPG0335322/index.html

NHKが57年ぶりにプロボクシングの中継に踏み切り、一部で(?)大きな話題になっている。といっても総合やEテレではなくBS8Kでの放送となり、なおかつ、防衛権を持つフジよりも1時間遅れのスタート。映像はフジから丸々提供を受ける模様。


※NHKが最後に放送したプロボクシングの試合
1962(昭和37)年2月7日 ミドル級10回戦
権藤正雄(平安) 判定10R 東洋ミドル級王者 海津文雄(笹崎)


<3>WOWOWエキサイトマッチ・スペシャル
11月9日(土) 午後9時~11時15分
https://www.wowow.co.jp/sports/excite/info/inoue_191011.html

お馴染みの高柳アナ,浜田代表,飯田覚士の安定トリオで録画放送


■11月12日(火)午後10時30分~11時20分
NHK総合 プロフェッショナル 仕事の流儀「モンスターの素顔~プロボクサー・井上尚弥~」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/284/1669565/index.html