皆様こんにちは
山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。
いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
学校祭の準備で使用したポスターカラーが付着した体操服のしみ抜きの依頼を受けた
クリーニング店が自社工場でしみ抜き作業を行った所、ポスターカラーは取れましたが、
更に地色も抜けたのでこのままではクレーム問題に発展する為に何とか直らないかと
相談を受けました。

体操服
お話を伺うと体操服に広範囲に付着したポスターカラーを除去する為にしみ抜き剤を
全体的に付けて一気にしみ抜き処理をした後、しみ抜き処理した部分が白っぽく綺麗に
なったので表地が全体的に汚れていると考えて、Yシャツと一緒にランドリークリーニング
(水洗い)を行ったが変わらなかったとお聞きしました。


体操着 品質表示
素材 ポリエステル100%となっています。
洗濯表示 液温は40 ℃を限度とし、洗濯機で洗濯ができる、酸素系漂白剤の使用はできるが、
塩素系漂白剤は使用禁止、タンブル乾燥禁止、日陰のつり干しがよい、底面温度160 ℃を限度
としてアイロン仕上げができる、ドライクリーニング禁止、となっています。

体操服 しみ抜きによる脱色
この体操服を見て、いくつも疑問がわきました。
自分がポスターカラーの除去する時の使用薬剤や溶剤、しみ抜き機の使用方法をイメージしても
なぜこの様な大量脱色の理由が分かりませんでした。なぜてすか、と体操着に問いかけました。
自分がしみ抜き処理をする場合、まずは一か所作業して、様子を見ながら作業を進めます。
もし脱色する場合はその後の色掛け等も行い先を見通してから作業を進めていきます。
世界一の海底トンネルである青函トンネルを掘削する場合、青函トンネルには3本のトンネルが
あるのはご存知でしょうか?現在、列車が走行している「本坑」、本坑を掘るための「作業坑」、
地質を調査するなど作業坑の先導的な役割を果たした「先進導坑」と3本のトンネルがあります。
順番としては先進導坑⇒作業坑⇒本坑の順に掘り進めます。しかし、ただ掘削すればよいという
ことではありません・・・。
先進導坑(パイロットトンネル)を掘削して地盤を確認してから本坑を掘削して行く事と同じ考え
です。今回の場合も暗闇の中をノーライトで全速力で走行して事故を起こしたと同じです。
プロとしてあるまじく作業を行っている事に行き道理を感じます。
お客様に対して過失と言うよりも明らかに故意の事故と感じます。
事故を起こす前にヒヤリハット時事例が何度かあったと思われます。
この事は明らかな労災事故と感じたので少し深堀して見ました。
ハインリッヒの法則とは
「ハインリッヒの法則」とは、労働災害の分野でよく知られている、事故の発生についての経験則。1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというもの。「1:29:300の法則」とも呼ばれます。
ハインリッヒの法則が生まれた経緯
アメリカの損害保険会社で技術・調査に携わっていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、ある工場で発生した数千件の労働災害を統計学的に調査した結果、この法則を導き出し、その成果を1931年に発行された著書『Industrial Accident Prevention-A Scientific Approach』にまとめたことから、ハインリッヒの法則と呼ばれるようになりました。
ハインリッヒの法則の活用と教訓
日本でも1951年に『災害防止の科学的研究』(三村起一監修/日本安全衛生協会刊)として翻訳されたこの著書は、世界中で災害防止のバイブルとなり、ハインリッヒの法則は、現在に至るまでさまざまな労働現場で事故への注意喚起に活用されています。
ハインリッヒの法則が示す教訓は、大事故を未然に防ぐためには、日頃から不注意・不安全な行動による小さなミス、ヒヤリハットが起きないようにすることがきわめて重要であり、ヒヤリハットなどの情報をできるだけ早く把握し、的確な対策を講じることが必要であるということ。特に、製造業や建設、運輸、医療など、一歩間違えれば大事故が起きる可能性がある業種においては、ハインリッヒの法則の大切さが広く浸透しています。
ハインリッヒの法則の現在での活用
また、現在では、ハインリッヒの法則はオフィスワークの領域でも活用されています。例えば、「経営危機を招くようなコンプライアンス違反の1件の重大事案の背後には、不祥事の芽となる多数のヒヤリハットが隠れている」ということや「顧客から1件のクレームが寄せられたなら、その背後には同様の不満を持っている多数の顧客が存在している」ということが考えられます。ハインリッヒの法則の教訓を知り、活用することは、どのような職場でも有効だといえるでしょう。
ここから話を元に戻します。
白いポリエステル製の体操服に何が起きたのかの原因を調べる事にしました。
一番最初にに蛍光剤の剥離が無いか、ブラックライトを照射して確認しましたが、
異常はありませんでした。次にテスト的に自分が行っているしみ抜き方法を行い
脱色事故が起きるかを再現してみなしたが、脱色する事はありませんでした。
その後にクリーニング店に色々とお聞きして少しずつ原因が分かってきました。
たいへん驚くべき事が分かりましたが、しみ抜き設備が老朽化して不具合が有り
その状態を分かっていながら作業を続けている事をお聞きしました。
ある意味業界の闇の部分です。

体操服 補正後
この脱色を補正するにあたってまずは、クリーニング店のランドリークリーニングが
悪くて全体の汚れが落ちていないと考えて当店でも汚れを落とす為の徹底的なランドリー
クリーニングを行いましたが、結果は変わりませんでした。
クリーニング店には弁償をお勧めしましたが、信用問題があり何とか色掛けをして
補正して欲しいと懇願されました。当店の色掛けのメリットとデメリットを十分説明して
その後の責任は一切取れない事を納得してもらって色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染
・地直し)で補正しました。色掛けはいつも行っている作業の為にむずかしい事は有りません
でしたが、色合わせ(調色)が非常に難しかったです、脱色した部分と脱色していない部分の
差異を感じて読み取り、自分が今までの色掛けで調合して来た経験に照らし合わして三色の染料を
導き出しました。30か所以上の脱色を一か所一か所丁寧に色掛けを行い何とか分からない様に
丁寧に補正しました。

体操服 仕上げ後
綺麗に仕上がりました。
他店の事ですので、このクリーニング店の経営者の責任と判断で行っている事なので、
私が口出しする事は越権行為になるので控えますが、この体操服の悲鳴を感じ取る事が出来ました。
着物のお手入れと洋服のメンテナンスは
厚生労働大臣認定一級染色補正技能士
職業訓練指導員・クリーニング師のいる
〒062-0902
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