皆様こんにちは
山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。
いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
ご自分が着用した昭和40年代の中振袖袷をお孫さんが着用したいとおっしゃり調べてみると、
あちこちに黄変しみや泥はねがあり、地元のクリーニング店ではしみが取れない為にどこかに
お手入れを出さなければいけないと思っていたところ、先日放映したどさんこワイド179をご覧に
なり、当店にお問い合わせがあり、苫小牧市から来店なさいました。

中振袖袷
刺繍柄の中振袖です、修業時代(昭和55年~昭和58年)から平成時代に入る頃まで
よく見かけてお手入れをしていました。お客様は昭和24年生まれなので、昭和44年の
成人式で着用したので、55年前のしみと思われます。




中振袖袷掛衿 55年前の食べこぼし黄変しみ

中振袖袷元衿 55年前の食べこぼし黄変しみ
掛衿と元衿に食べこぼしによる黄変しみが付いています。


中振袖袷八掛袖口 袖口汚れ




中振袖袷左外袖底 55年前の泥はねしみ
着用後にお手入れをしないで保管していたと思われます。
中振袖の袖底に泥はねが付いています。昭和40年代はまだ道路も良くなく泥はねの
しみが沢山あり修業時代に良く泥はねしみ抜きを良く行いました。当時の油性の
しみ抜き剤の性能が良く無くて落ちずらくて次は化粧石鹸をしようして落としていて
手間が掛かって大変でした。現在のしみ抜き剤は高性能ですのですし、しみ抜き機の
性能が良くなってきたので油性処理で泥はねが落ちます。


中振袖袷左内袖底 55年前の泥はねしみ

中振袖袷左内袖 55年前の黄変しみ
袖に小さいですが、黄変しみがあります。


中振袖袷右内袖底 55年前の泥はねしみ




中振袖袷右内袖底 55年前の黄変しみ






中振袖袷右内袖底 55年前の黄変しみ
右袖の内と外袖に食べこぼしによる55年前の黄変しみが付いています。


中振袖袷右内袖底 55年前の食べこぼし油しみ
こちらは55年前の食べこぼしによる油しみです。

中振袖袷右内袖底 55年前の泥はねしみ


中振袖袷上前衽 55年前の黄変しみ
上前の衽に酷い黄変しみが付いています。
こちらは食べこぼしでは無くしみ抜きを業者が行い、しみ抜きで使用した薬剤のゆすぎ出しが
不十分で残留して経時変化で黄変した様に見えます。昭和40年代後半から超音波洗浄器が
普及して広まって行きましたが、それ以前はパッキンブラシが主流だった為にゆすぎで
大量の水をしようすると、輪じみの問題が有った為に狭い範囲で、少量の水でのすすぎ出しを
行っていた為に、黄変の経時変化が多発しています。現在はスプレーガンで多量の水を使用しても
強力な真空バキュームモーターで吸引していますので、薬品残留が起きにくくなりました。




中振袖袷右内後身頃 55年前の泥はねしみ




中振袖袷八掛(裏地裾回し) 55年前の黄変しみ
裾回し(八掛)も汚れています。
泥はねと袖に付いた食べこぼしの油しみを除去後に丸洗い(ドライクリーニング)後に
黄変しみ抜きを行いました。


中振袖袷掛衿 丸洗い・しみ抜き後


中振袖袷元衿 丸洗い・しみ抜き後
食べこぼしによる黄変しみの為に油や蛋白質が入っていますし、変色もかなり酷いです。
油の除去と蛋白質の除去した後に変色を黄変抜き(酸化漂白)を行いましたが、なかなか
黄変が綺麗に落ちなく、生地が脆化しないかビクビクしながらの作業でしたが、何とか
落ちました。


中振袖袷袖口 丸洗い・しみ抜き後

中振袖袷左外袖 丸洗い・しみ抜き後



中振袖袷左外袖 丸洗い・しみ抜き後
泥はねは綺麗に落ちました。


中振袖袷左内袖 丸洗い・しみ抜き後

中振袖袷左内袖 丸洗い・しみ抜き後
黄変しみが綺麗に落ちました。



中振袖袷右内袖 丸洗い・しみ抜き後



中振袖袷右内袖 丸洗い・しみ抜き後








中振袖袷右外袖 丸洗い・しみ抜き後
右内外袖共に付いていた55年前に付いた食べこぼししみが黄変しみですが、
しみ抜き作業としては油性・水処理・たんぱく質をきちんと除去後に
黄変しみ抜きを行いましたが、黄変しみが、かなり抜けにくかったです、
修業時代のしみ抜き技術では黄変しみがかなり残ったと思います。

中振袖袷上前 丸洗い・しみ抜き後

中振袖袷上前衽 黄変しみ(薬品残留による経時変化)


中振袖袷上前衽 黄変しみ抜き後の脱色
黄変しみを酸化漂白で処理すると黄変しみと共に、地色の空色(スカイブルー・新橋色・
ブルー系)も脱色します。しみ抜き除去後に中和して薬剤を経時変化しない様にゆすぎ
出します。読者の皆様は「あれまだ黄変しみが残っていますが、もっと黄変しみを白く
しなくてても良いのだろうか?」と疑問に思われますが、残った黄変しみは、色掛け
(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)をして補正するので、黄変しみの彩度が
低くて黄変のしみの色がくすんだ黄褐色から彩度が高い綺麗なレモン色の様になれば、
色掛けで地色の空色(新橋色・スカイブルー)を入れた後に、青色(ブルー 補色の彩度
が少し低い)を入れると綺麗に黄変しみが隠れてくれます。


中振袖袷上前衽 色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)補正後
55年前の酷い黄変しみと脱色した地色が綺麗に直りました。





中振袖袷後身頃 丸洗い・しみ抜き後
55年前の泥はねも綺麗に落ちました。



中振袖袷八掛 丸洗い・しみ抜き後
八掛の裾汚れも綺麗に落ちました。

中振袖袷 仕上げ後
長期間の保管で全体的に収縮していましたが、綺麗に仕上がりました。
仕上り後にご自宅に発送して到着後にお電話をいただきました、綺麗の仕上がったと
お褒めのお言葉を頂きました。
このブログはたくさんの業者さんもご覧になっていると思います。
黄変しみ抜きと色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)でお困りの方に
参考になればとアドバイスですが、私自身が師匠や他の講習会や染色補正関係の方達から
学んだ事と私自身の経験測からですが、
まずは作業場明るい照明の下での作業を行ってください。
次に作業者自身に視力に問題がある方(近視・遠視・乱視・老眼等)は、目に合った眼鏡や
コンタクトレンズで矯正してクリアーに見える様にして下さい。
黄変しみが落ちずらいのは、油の成分やたんぱく質の成分が弾いて黄変抜き剤を
効果を邪魔する為に油性処理で油分の除去、たんぱく質しみを蛋白分解酵素処理をしてから
黄変しみ抜きを行います、最近は見かけませんが、以前はしみ抜き店で油性処理でベンジンと
ベンジンソープを使用していました。タオルやネルやパッキンブラシで作業していて
ベンジンソープ残留で、経時変化による黄変しみになっていました。この黄変しみは
油性処理で黄変しみが除去出来る為にやはり油性処理が大切になります。
稀に黄変しみに見えても水処理で出来る事もあります。
油成分と蛋白成分の除去をおろそかにすると黄変しみが上手く抜けません。
逆に言うと油と蛋白質をきちんと除去すると黄変しみは抜けやすくなるという事です。
その後に黄変抜き剤(酸化漂白)で黄変しみ抜きをしている時は色掛け(色修正・染色補正
・染直し・部分染・地直し)で仕上りの状態をイメージしてバランスを取りながら行っています、
褐色の黄変しみを如何に彩度の高い薄いレモン色にする事と、地色が脱色・退色した場合に
自分で直せる技量があるか、手間を掛けてコストに見合うかを常に考えています。
45年の実務経験というデータベースに照らし合わせています。
修業時代や若い頃はこの事が分からなくて、何度も迷って遠回りしながら、挫けながら、
挫折して苦しんで苦しんで技術習得の為に自分の可能性を信じて、腕を磨き、更なる向上心を
持ち続けしみ抜きと色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)作業をし続けた結果です。
みけし洗いの小出富勝先生も筆書の「みけし きものお手入れ講座」の中で
地直し(色修正)が上手く行かずに何度も落胆した事や地直しが上手く行った夢を見て、
目が覚めて上手く行っていなくて、さらに落胆した事が書かれていました。
時効なのでもう言っても良いと思いますが、私の師匠も色掛け(色修正・染色補正・染直し
・部分染・地直し)をはじめた頃上手く行かなくて、苦労していた時に奥様が炊事をしていると
色掛けの作業して上手く作業が進まない師匠が、台所で日本酒を一合引っ掛けた後に、作業場に
戻って色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)作業を続けたいたと伺いました。
私自身は師匠が筋道を付けていた技術を基礎として数をこなして技術を習得していきました。
色掛けが夢に出て来た事もありませんし、上手く行かなくて酒を引っ掛けた事もなかったですが
色掛け作業は染料を如何にムラに成らない様に平らに掛ける事が重要となります。
次に色合わせになりますが、これも幾つかのパターンがあります、プリンターのインクも
4色で全ての色を生み出しています。染色技能士の試験で勉強した事や着物の染を学んで
サビ付けや補色の謎解きも行いましました。
私自身も修行から帰ってきてもお客様からの要望を聞き、一つ一つ問題を解決して今が有ります。
一つの問題が解決するとまた新たな問題が発生する為に一生勉強しなくてはなりませんが
この事が自信の技術習得の苦しさと喜びに繋がります。
皆様も諦めないで技術習得と向上を続けていただく事を心より願います。
着物のお手入れと洋服のメンテナンスは
厚生労働大臣認定一級染色補正技能士
職業訓練指導員・クリーニング師のいる
〒062-0902
札幌市豊平区豊平2条2丁目2番20号
電話011-811-6926 FAX011-811-7126
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休日 日曜・祝日
メール mitsuyasenpo@train.ocn.ne.jp
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