東葛人的視点

ITを中心にインダストリーをウォッチ

日立の運命は…みずほ事件さえなければ

2004-07-31 12:46:19 | ITビジネス
 ほんの数年前に、日立製作所がメガバンクの顧客を失い、以前は住友銀行にも相手にされていなかったNECが勝ち残るということを予測できた人がいただろうか。

 UFJ銀行の身売り先を巡って、三井住友銀行が参戦し、金勇業界はにわかに騒がしくなった。 
三井住友、UFJに統合申し入れへ 三菱東京との争いに (朝日新聞) - goo ニュース

 しかし、UFJ銀行は東京三菱銀行と合併するというのが、やはり順当なところだろう。そうなると、日立がメガバンクの勘定系を失うのは、ほぼ確定する。勘定系統合に時間がかかるといっても、店舗の再編を実施するには勘定系統合が避けて通れない。しかも、どちらかのシステムを残す、いわゆる“片寄せ”しか統合の選択肢はない。両システムを共存させる統合方式もあるが、みずほが大失敗したので、検討項目にはならないだろう。

 さて、今回の再編ではUFJ銀行に当事者能力はない。東京三菱銀行の判断次第だが、東京三菱の頭取はシステム担当だったこともあり、ITに精通している。しかも東京三菱はIBMと“仲良し”だ。実際、持ち株会社の三菱東京の社外取締役に、今年6月から日本IBMの大歳社長が座っている。もはや、日立のシステムが存続できる目はないと見てよい。

 日立としては、三井住友銀行や住友信託銀行に頑張ってもらうことが、かすかな望みだろうが、住友系とUFJの統合になったとしても、結果は同じかもしれない。

 しかも今回の三井住友の参戦は、住友信託に恩を売ることで疎遠な関係を少しでも親密にしようという狙いと考えた方がよい。東京三菱とUFJが統合してしまえば、三井住友、住友信託とも独自路線の展望を失う。両者が接近し“大住友”となり、さらに“大三井”も促して、“大三井・住友”で金融をやっていく。そのためのきっかけが、今回の三井住友参戦の本質だろう。

「2007年問題」の本当の意味

2004-07-27 15:59:38 | ITビジネス
 「2007年問題」が言われて久しい。ITサービス業界が言い出したことなので、当初ユーザー企業からすこぶる評判が悪かった。「2007年に突然、ベテラン技術者がいなくなるわけではないだろう」「また危機感を煽って、新システムの構築にもっていこうとしている」といった具合に非難ごうごうだった。

 最近では、いずれ何とかしなければいけないレガシー・システムの問題を象徴的に言った言葉ということで、理解されるようになってきた。冷静に考えると、2007年問題はよくできた“仕掛け”だった。2007年問題が言われはじめたのは、2003年のこと。2004年からの中期計画なら終了年のよく年に当たる。つまりレガシー・マイグレーションは中期計画のマターというわけだ。

 企業にとって取り組まなければいけないことでも、長期計画のマターになれば「やりません」と言っているのに等しい。しかし、中期計画は現経営陣の仕事であり、1年の短期計画に落とし込んで取り組むべきマターになる。ITサービス業界がユーザー企業に送るメッセージとして、2007年にはそんな意味があった。

 これをユーザー企業側から見ると、別の側面が見えてくる。これは、ある食品メーカーのIT部門のマネジャーから言われたことだが、この企業にとっての2007年問題はベテランのリタイアよりも、若手の優秀な技術者、もしくはそのタマゴを採用できなくなりつつあることだそうだ。

 ベテランのリタイアは嘱託などで解決することができる。しかし、今の若者は基幹系システムのお守りという“退屈な仕事”を、しかも技術者としてのキャリアを築けないCOBOLを憶えて、やりたいなどとは思わない。やはりJavaであり、できればネットビジネスなど最先端の仕事をしたがるのだ。

 確かに大企業ならともかく、中堅、中小となると優秀な人材を確保するのは至難の業だろう。Javaなどオープン系への移行は、人材確保の面からも必要なのである。一見くだらない話のようだが、結構本質的なところを突いていると思う。




レガシー・マイグレーションの本当の課題

2004-07-25 19:59:30 | ITビジネス
 レガシー・マイグレーションがちょっとしたブームだ。メインフレームやオフコンなどレガシーなシステムを、UNIX、Linux、Windowsなどのオープン系のシステムにリプレースすることを意味するらしい。確かに大きな商談になるので、ITサービス企業が必死になるのも分かる。

 しかし、単にハードやソフトをレガシーからオープンに移すというだけでは、あまりにも皮相だ。レガシーシステムを抱えたユーザー企業の最大の課題は、個々の業務システムごとにバラバラなデータ構造をどうするのかということだろう。データ構造に一貫性がないから、システム間でうまくデータの連携ができない。それを力技でつなぐから、保守の手間やコストは大きくなる一方だ。

 レガシー・マイグレーションでは、本当はこの問題をなんとかしないといけない。つまり、データ・モデルを再定義する必要がある。システム・インテグレータなどITサービス企業は、ここを提案できなくてはいけない。IT基盤の構築と絡む話であり、長期にわたる投資案件になるため、ITサービス企業が活躍できる余地は大きいはずだ。

 データ構造の見直しやデータ・モデルの再定義というと、抽象的で難しそうなため、ユーザー企業でもまだその重要性を理解していない企業は多い。しかしKDDIなど先進事例も現れており、大きなビジネス・チャンスがあるはずだ。


CSKの評価は難しい

2004-07-23 10:06:50 | ITビジネス
 CSKは本当に評価の難しい企業だ。子会社のコンタクトセンター、ベルシステム24の反乱に直面しているが、コンタクトセンターは、CSKの戦略事業であるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の要のはず。もし、第三者割当増資を差し止めることができなければ大変なことになる。というか、ITサービスとのシナジー効果がよく分からない証券会社(コスモ証券)を得て、要のコンタクトセンターを失えば、物笑いの種にしかならない。

 CSKの業績はすばらしい。2003年度の売上高は対前年度比5.9%増、営業利益に至っては28.1%増だ。ITサービス業界では、かつての勝ち組も含め業績不振に沈む中、気を吐いた数少ない企業の1つだ。彼らの強みは、やはり運用、アウトソーシング、そして昔ながらの人海戦術。メーカーの失敗プロジェクトの尻拭い、いわゆるファイヤーマン・ビジネスもすごいらしい。

 そんなCSKにとって、証券会社がシナジー効果があるのか。いろんな説明がなされているが、どうしても納得感がない。CSKの青園会長の肝いりで出版された『インタンジブル・アセット』、とても面白い本だが、その中で事業目的を絞り込み、組織の目的を共有することの重要性が強調されているが、CSKの場合どうだろう。著者のエリック・プリニョルフソンMITスローンスクール教授は、事業を絞り込めている企業としてCSKを挙げるが、これはスポンサーへの単なるリップサービスか。


塵も積もれば・・・

2004-07-18 09:07:21 | ITビジネス
NECは、SIで毎年3%の原価低減を8年間続けているという。年3%でも8年やれば、30%程度の低減になる。

ところでNECは、大型汎用機のユーザーが少なかったこともあり、他のメーカー以上に中堅・中小企業市場の開拓に熱心だった。いまや中小向けが一番利益率の高いビジネスになった。

コツコツと塵も積もれば、という話である。

案件の短納期・小口化はシステム・インテグレータの経営にプラス!

2004-07-16 11:29:44 | ITビジネス
SI案件の短納期化・小口化に危機感をもつシステム・インテグレータは多い。しかし、本当にそうだろうか。少し前にパッケージ・ベンダーの社長から聞いたことだが、必ずしもそれは経営的にマイナスにはならない。

確かに案件の短納期・小口化により営業効率は悪化する。しかし、入金のサイクルが短縮されるので、キャッシュフロー面ではプラス。効率的な営業ができれば、何も恐れる必要はないというわけだ。

もちろん、同一の規模の案件が短納期化し、料金も低下するのは痛い。時間や利益ののりしろが少なくなるため、プロジェクト面での少しの失敗が、あっという間に赤字を生み、システム・インテグレータの経営を直撃する。

だが、少なくなりつつある大型案件ばかりを狙わないで、小口案件を取り行けるようになるなら話は別。キャッシュフロー面で経営が安定するから、じっくりとコスト削減に取り組み、小さな案件でも利益が出る経営体質を目指すことができる。課題の中堅・中小企業開拓も、こうした視点で取り組めばよい。

SOAへの視線

2004-07-12 20:30:19 | ITビジネス
 IT業界やユーザー企業にとって大きなチャレンジになりそうなのが、SOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)だ。SOAへの取り組みは、IBMBEAシステムズなど外資系が熱心だが、富士通など国産ベンダーもSOAをどう消化するか、検討を進めているという。

 このSOAを、IBMのマーケティング戦略に乗っかって言えば、「オンデマンドを実現するためのアーキテクチャ、もしくは環境」ということになるのだろうが、むしろデータ連携、プロセス統合の観点から素直に見た方が分かりやすい。つまり、古くはEAI(エンタープライズ・アプリケーション・インテグレーション)、最近では富士通のTRIOLEなどミドルウエア、さらにはSAPのNetWeaverなどの延長線上でとらえるのだ。

 そんなことを書くと、SOAを推進している方から「何を卑俗な見方をしているのだ」と叱られそうだが、プロセス統合(とデータ連携)の観点からは、そんな違いがない。スタティックにやるか、ダイナミックにやるかの違いだけである。もちろん、“ダイナミック・バインディング”、つまり環境の変化に合わせて業務プロセスを動的に変更するための仕組みが、SOAの本質であることは理解している。

 ただ、オンデマンド的とらえ方は、現状では理念的するぎる。それよりも、今いまのニーズであるレガシー資産も活用したシステム再構築の方向から漸進的にSOAに取り組んでいった方がよい、と私は思うのだが。

ITサービスの業績回復局面

2004-07-08 13:38:27 | ITビジネス
ITサービス業界の2003年度決算を集計してみると興味深いことが分かる。売上高100億円以上の企業の合計では、売上高の伸び率は対前年度比1.1%増。2002年度は2.4%減とマイナスだったから、回復局面ともいえなくもない。だが、むしろ市場が成熟化し、伸びが止まったと言った方が正解かもしれない。

そんな中で驚くのは、経常利益の伸び率だ。なんと対前年度比11.1%の二桁成長。この業界の企業は、市場の成長が止まっても、コスト削減により利益面で“急成長”ができる。今期の業績予測値の合計でも、売上高の伸び率は4.1%増に過ぎないが、経常利益は2003年度と同じ11.1%に達する。

ある意味、これは、ITサービス業界でこれまで合理化が全く行われていなかったことの反映だろう。濡れ雑巾はいくらでも絞れるわけだ。しかし、コスト削減ばかりでは産業としての“夢”がない。ユビキタス時代を視野に入れた新規ビジネスの創造が必要だろう。

SIビジネスは今、大きな転換点に

2004-07-06 19:27:52 | ITビジネス
日立製作所は、ソフト/サービスの中でのSI(システム・インテグレーション)比率を、2005年度に4割に引き下げるという。現在の比率は6割だから、かなりドラスティックな取り組みだ。

その理由は、SIでは高収益を上げるのが難しくなったことだ。日立は、ソフト/サービスの営業利益率10%を目標として掲げているが、SIの利益率は8%が目標。それでも、かなりハードルが高いという。従って、SIの比率を下げて、コンサルティングや新規事業などの比率を高めることで、ソフト/サービスの利益率10%を達成しようというわけだ。

ところでSIの利益率8%を達成するために、日立は自社のIT基盤を使い、徹底的にプログラムを「つくらない」システム開発を目指す。つまり、ソフト・コンポーネントを組み合わせることで、開発コード量を減らしてコストを下げようというわけだ。同時に、不採算プロジェクトが出ないようにもする。

こうした「つくらない」システム開発は富士通など、他の大手ベンダーも目指しており、SIビジネスは今、大きな転換点にあるといえる。しかし、考えてみれば、これこそがインテグレーションの本来の意味だ。ようやくソフトウエアもエンジニアリングの域に近づいてきたということか。







ブログ素人しての印象----“書き手”としてはいいが、“読み手”としては辛い

2004-07-05 17:59:42 | Weblog
今後のブログ活用のため、ブログ素人の今の印象を書きとめておく。改めてブログについて思うのは、“書き手”のためのメディアだなってこと。

自分でブログを持ち、トラックバックをガンガンやる人はいいのだけれど、初めてブログに触れる人には何が何だからさっぱり分からない。どこに必要な情報があって、どうやって検索すればよいのか分からない。日記のメタファーも違和感を覚える。職場でブログの話をしたら、「日記形式じゃ、読む気になれない」という意見も出てきた。私もまだ、ブログにそんな違和感がある。そんなわけで、RSSリーダーを導入したが、これはいい。メーラー型のやつで、随分便利になった。

ところで書き手としては、ブログをアイデアプロセサとして使ってみようと思っている段階。トラックバックするなど、本当の意味で使いこなすのはまだ先のことだろうが、ブログは書くメディアとしては確かに使いやすい。自分のためのノートだと思えば、ガンガン書き込めそうだ。

そんなこんなで、ブログのメディアとしての可能性を考えてみた。ブログは初めての人には、かなり敷居が高いメディアだと思う。最初から書き手になる人はまれで、多くの人が最初は“読み手専業”からスタートする。そうするとWebのように直感的に受け入れることが難しく、書き手になる前に飽きてしまいそうだ。

まず、読み手としてすくい上げて、やがて書き手になってもらう。そんなパスやインタフェースを提供できたら、新しいメディア・ビジネスも生まれそうだ。gooがやっている「BLOGを書こう!ボタン」なんかも結構いいのだけど、まず読み手にとって、使いやすい仕掛けがほしい。「だからRSSがある」と言われたら、それまでだけど。

SIに未来はあるのか?

2004-07-03 18:28:02 | ITビジネス
SI(システム・インテグレーション)というビジネス・モデルは寿命を迎えつつあるのではないか----こうした問題意識が、ITサービス業界に急速に広まっている。これは1年以上前に、業界最大手のNTTデータが言い出したことだが、最近では業界の経営トップの多くが口にするようになった。

SIは、顧客のニーズに合わせて情報システムをインテグレーションする。インテグレーションとはいえ、実態はソフトをスクラッチで作り上げる。だからコスト高になる。

今までは、ユーザー企業もそのことに納得していた。しかし、オープン・システムの浸透で、それは通じなくなった。パッケージなどを組み合わせれば十分なのではないか。探せば結構使える半用品がある。極力、開発工数を減らしてコストを削減しよう。ユーザー企業はそう考えるようになった。

しかも、どうしても開発しなければいけないところは、中国やベトナムなどのオフショア活用により、コストを切り詰める方向にある。日本国内でも、ユーザー企業に1人月50万円という“中国相場”で提案あるITサービス会社が出始めたと聞く。

こうしたデフレ圧力を受け、SIの料金は下がる一方だ。単価が下がれば、当然原価比率が高くなる。そのためプロジェクトが失敗すれば、たちまち利益を食いつぶす。10のプロジェクトのうち1軒でも失敗すれば赤字転落。SIはそうした脆弱なビジネスになりつつある。

では、どうすればいいのか。その解は簡単ではないが、ユーザーの「つくらない」というトレンドに乗るしかないのではないか。つまり、様々なパッケージやオープンソースなどを組み合わせて
、極力作らない方向でインテグレーションする。つまり、エンジニアリング会社と同じモデルだ。その方がSIの本来の意味に近い。ただ、そこでどうやって利益を得ていくのか。今後、考えていきたい。






 

リアルタイム・エンタープライズ

2004-07-02 19:52:32 | ITビジネス
「リアルタイム・エンタープライズ(RTE)」が面白い。日本ではあまり知られていないが、米国では企業の向かうべき方向として注目が集まっている。

「社員同士、あるいは社員と顧客、ビジネス・パートナー、サプライヤーをつなぐビジネス・プロセスにおいてリアルタイムのコラボレーションを実現する」というのが、RTEの基本発想らしい。ウォルマート・ストアーズなど大手小売りが実践する「CPFR(需要予測と在庫補充のための共同作業)」が、その代表例。店舗の商品の販売状況などをリアルタイムでメーカーや物流会社などと共有して、過剰在庫や機会損失を防ごうというものだ。最近ではソニーや松下電器産業など日本の家電メーカーも、サプライ・サイドからCPFRに乗り出したと聞く。

IT業界を席巻するデルを見れば明らかなように、リードタイムの短縮、つまりリアルタイムに近づけていけばいくほど、競争上有利になる。だからRTEは、目指すべき方向なのだ。RTEを実現するためにはITが不可欠だが、それでだけでは実現できない。ビジネスの仕組みそのものを変える息の長い取り組みが必要だ。

とはいえ、その前提として正確な情報をリアルタイムに提供する情報システムが必要だ。実のところ、これまでのシステムは特殊なシステムを除いてリアルタイム性は担保されていなかった。それどころか、情報の正確さもあやしい。データ上は在庫されているはずの商品が実際にはなかった、というのはよくある話だ。そう考えると、ウォルマートがICタグにご執心なのも、すんなりと理解できる。

ただ、正確な情報をリアルタイムに提供するだけでは、ビジネスは回らない。ビジネス上の何らかの意思決定を行うためには、当事者間のコミュニケーションが不可欠だからだ。そして、これまでリアルタイムのコミュニケーションの手段となっていたのが、電話である。今ブームのIP電話は、この電話がコンピュータのアプリケーションとなることである。そうすると、情報システムとこのIP電話を融合した新しいアプリケーションの姿が見えてくる。

正確な情報を基にリアルタイムの意思決定、あるいはコラボレーションが行える環境。これがRTEを支える、これからのITのあり方だろう。この話は追々深めていきたい。