東葛人的視点

ITを中心にインダストリーをウォッチ

顧客にNOと言えるITサービス会社を目指せ

2004-11-30 20:28:19 | ITビジネス
 システム・インテグレーションにおける不採算プロジェクトの問題について、ITサービス業界やマスコミはプロジェクト・マネジメントの問題に収れんさせるのは、どうしてだろう。赤字案件の発生原因のうち、純粋にプロジェクト・マネジメントに起因するものは、多くみても3割程度だろう。大半は、営業プロセスに起因するものだ。

 仕事ほしさに安値受注に走るから、お金の面でノリシロがほとんどなくなり、ちょっとした手戻りで、あっと言う間に不採算化する。また、安値受注のつじつまを合わせるために、システムの要件をできるだけ小さく定義しようとする。その結果、後にユーザーとのトラブルにつながり、傷口が大きく開く。そんな例があまりに多い。名前はあえて出さないが、ここ数年、業績悪化で苦しんだITサービス会社の多くはこのパターンだ。

 プロジェクト・マネジメントをいくら精緻化してところで、これではむなしい。というか、こうした案件ではプロジェクト・マネジメント自体ができっこないのだ。要は、そんな危ない案件は取らなくければいいのだ。もちろん、猟犬であることを求められる営業に、取らない選択を求めるのは難しい。リスクマネジメントを徹底するために、失注するルールを明確化し、管理組織の設置など組織的にも担保することだ。

 昨年度、ソフト・サービスで683億円の特別損失を計上した富士通は、そうした方向で改革を進めていると聞く。独立系のITサービス会社も、“何でもパクつかない体制”作りに取り組む企業が増えてきた。少し古い言い回しだが、NOといえるITサービス会社を目指す動きだ。これは是非頑張ってほしい。こうした取り組みは、SIに対するユーザーの相場観の低下を押しとどめる効果もあるはずだ。

メインフレームの「2000年問題アフター商談」がやってくる

2004-11-29 11:27:12 | ITビジネス
 ユーザーが2000年問題を期に導入したハードの更新時期に差し掛かり、更新需要の獲得に向けた商談が盛り上がる。これが「2000年問題アフター商談」である。2000年が来ることを考慮しないシステムを売りつけておいた挙句、「2000年問題だ」と大騒ぎして商売し、さらにその更新需要も期待するのだから、ITは本当に結構なビジネスだと思う。

 皮肉な物言いはこれぐらいにしておく。実は、2005年から「2000年問題アフター商談」のもう1つの盛り上がりが来る。それは、メインフレームの更新である。昨年から盛り上がっているアフター商談はPCサーバーなどオープン系での話だ。更新サイクルの短いオープン系は、今年で更新商談のヤマを越える。代わって、更新サイクルの長いメインフレームの「2000年問題アフター商談」が2005~2007年当たりに本格化する。

 このメインフレームのアフター商談は、ある意味オープン系のそれよりも大きなインパクトがある。基幹業務システムをどうするのか、どこまでレガシーマイグレーションを推し進めるべきかが絡む商談だからだ。当然、日本でも関心が急速に高まりつつあるSOAへの対応が大きな焦点になる。こうした情報システム全体のアーキテクチャの見直しを、このタイミングでやるのか、その次のタイミング、つまり2012年以降に先送りするのか、ユーザーの判断はITベンダー各社の浮沈をも左右しそうだ。

SIビジネスは投資対象にあらず

2004-11-23 21:32:15 | ITビジネス
 ベンチャーキャピタルにとって、もはやシステム・インテグレーションというビジネスは投資の対象にはならないらしい。これは、米国で起業した日本人の方に聞いた話だ。といっても米国の話ではない。その方が帰国した際に、出資してくれている日本のIT系のベンチャーキャピタルに挨拶に行ったとき、雑談の中で、相手のキャピタリストが「システム・インテグレータは投資案件の対象外」と言い切ったそうだ。

 ITサービス業の現状を考えると当たり前かもしれないが、改めてそんな話を聞くとちょっとしたショックを受ける。労働集約産業であるにも関わらず、数年前までハイテクビジネスという幻想が世間にはあったが、そうしたメッキはすっかり剥げ落ちた。それだけではなく、どの会社も金太郎飴のようで、個々のビジネスの実態がつかみにくい上に、収益性が悪化しリスクだけが高まっている。ベンチャーキャピタルは今、そんな認識を持っているようだ。

 キャピタリストだけではない。ITサービス業を見ていた最も著名なアナリストも最近、軸足を楽天やヤフーなどネットビジネスに移した。どうやらITサービス業は投資家にとって、どんどん魅力のない産業になってきているらしい。事業面の収益性が悪化する中、資金が流れ込まなければ、業界はますます停滞する。ITサービス業が“退屈な産業”になっていまうかどうか、今はその瀬戸際にある。

ITサービスのフルライン戦略の落とし穴

2004-11-19 00:26:38 | ITビジネス
 CSKの林社長は部下に対して、ITサービスのフルライン戦略の勘違いを戒めているという。システム開発の上流から運用・保守の下流までをサービスとして提供することで、ITサービスの事業機会を増やそうというのがフルライン戦略だが、林社長によると、そこに大きな落とし穴がある。そうしたフルラインはITサービス会社にとってのフルラインであり、ユーザー企業の情報システム部門にとってのフルラインだが、ユーザー部門にとってはフルラインでもなんでもない。

 CSKはシステム開発もアウトソーシング事業と位置づける。システム部門のシステム開発という業務プロセスを受託する事業だからだ。だから、ITサービス業のフルライン戦略とは、システム部門のあらゆる業務プロセスを、ユーザーニーズに応じて受託できる体制を作ることにほかならない。だから、お客は基本的にシステム部門だ。CSKではこれをITO (ITアウトソーシング)という。

 一方、システム部門以外、営業部門や人事部門、経理部門などのユーザー部門にとって、IT関連だけではフルラインのサービスとはいえない。だからユーザー部門を相手にするときは、ITサービス会社もITサービスだけでなく、ユーザー部門の業務自体の一部を引き受けるサービスの提供が必要になる。いわゆるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)である。

 今日、ユーザー企業において、IT投資を企画する権限がシステム部門からユーザー部門へ急速に移りつつある。だから、システム部門ばかりを相手にしていたITサービス会社のビジネスは難しくなりつつある。このためITサービス会社も営業の比重を徐々にシステム部門からユーザー部門へ移しつつある。CSKもまさにそういう過程にあり、だからこそ林社長はフルライン戦略を勘違いするなと言うわけだ。

 実際、ユーザー部門のところに行って、システム部門向けのフルラインのメニューを提案しても意味がない。ユーザー部門を相手にするためには、彼ら自身の様々な業務を受託するメニューを作らなければ、とてもフルラインと呼べないのだ。もちろん、昨今のビジネスはITなくしては成り立たないから、ITサービスのメニューに含まれるが、あくまでもメニューの一部にすぎない。

 さすがサービスの意味を知り尽くしたCSKのトップの発言だと思う。このことから考えると、ITサービス業界には、別の意味の勘違いがあることに気づく。 ITサービス業の冬の時代が続く中、ITサービス会社は猫も杓子も、フルラインでのITサービスの提供を謳うようになった。しかし、それはCSKの言うところのITOの範囲であり、対象のしているのはやはりシステム部門に過ぎない。そのシステム部門が権限を持つ予算を急速に縮小しているわけだから、これはあまり賢明な戦略ではない。フルラインのBPOとまでは言わなくても、従来のお客の外にいる新しい顧客に対するサービスとは何かを、もっと真剣に考えるべきときに来ている。

大塚商会のSFAがうまくいく理由

2004-11-17 21:53:51 | ITビジネス
 大塚商会のSFA(セールス・フォース・オートメーション)は完璧に機能しているらしい。彼らが売っているソリューションのことではない。社内で使っているシステムの方である。

 日本企業がSFAを導入しても、うまくいかないというのは、もはや定説に近い。なぜかと言うと、営業担当者が入力を煩わしがり活用が進まないということに起因するケースが多い。大塚商会の場合、営業担当者はSFAを使いこなしており、システムの改善提案も積極的に出す。それにより商談プロセスの“見える化”はほぼ達成されており、SFAはあの強力な営業力を支える基盤となっている。

 「IT系の販社だから当然だろ」という声も聞こえてきそうが、IT業界を見渡してSFAを使いこなしている企業がどれだけあるか。完全に“紺屋の白袴”状態である。大塚商会でSFA活用がうまくいっているのは、実は成果主義人事評価とSFAが強力に結びついているからだ。

 大塚商会の評価制度は、営業のプロセスでの様々な貢献を細かくポイントで評価するのが特徴だ。売掛金をいついつまでに回収したら何点、提案書を作成したら何点、他の部署に商談をつないだら何点、といった具合だ。私も詳細は知らないが、もっと細かいのかもしれない。IT営業は基本的にチーム営業なので、単純に個人の売り上げや利益だで評価しない。だから、細かな評価項目が必要になる。こうした評価項目やポイント数は、社員、つまり評価される側が提案し、しかも毎月見直しているという。

 こんなわけだから、営業担当者はSFAを何が何でも使いこなす。きっちり入力しないと評価ポイントを増やせないし、サラリーや昇進に響いてくる。結果として、商談プロセスの見える化も、何かと批判の多い成果主義もうまく回るわけだ。

 しかし、彼らは顧客にSFAを売り込むときには、どうしているのだろう。ほとんどの顧客には、こんな細かな評価制度は存在しない。そうした評価制度がないとSFAはうまく回らないとしたら、顧客には何と説明して売り込むのだろう。

IT業界における2007年問題とは?

2004-11-11 22:14:30 | ITビジネス
 高度経済成長期に大量採用されたIT技術者2007年をピークに定年退職を迎えるため、ユーザー企業においてはメインフレーム・ベースの基幹システムの運用に危機が迫っている----これが言い古された「2007年問題」である。「だからレガシーマイグレーションをやりましょう」とITベンダーがセールストークに使ったものだから、2007年問題はベンダーの脅し文句だとユーザー企業にはすこぶる評判が悪かった。それでも、ユーザー企業は2007年問題を中期的なシステム課題としてとらえ、多くの企業が抜本的な対策をとり始めている。

 一方「IT業界の2007年問題」とは、少し自嘲気味な話だ。ITベンダーがこれまで、飲ませたり、芝刈り(ゴルフ)に連れて行ったりするなどして、リレーションを築いてきた情報システム部長などユーザー企業のキーマンが2007年をピークに一斉に定年退職する。若い世代のキーマンはこうした接待だけのリレーション作りを好まない。そうではなく、経営課題に応えるソリューション提案を強く求めている。果たして、古い営業スタイルに慣れてきたITベンダーは彼らの期待に応えることができるのだろうか。

 これが「IT業界における2007年問題」である。そして、「だからソリューション提案をできるようになりましょう」というオチがつく。本来の2007年問題は、3年後となる2007をメドにした中期的な経営課題として、レガシーマイグレーションを考える必要があるということに真骨頂がある。決して長期的経営課題(=何もしない)ではないということだ。IT業界における2007年問題も、先送りにしてきた営業スタイルの変革が待ったなしのところに来ている、そのことを明確に示す意味合いがある。

FJBの中間決算が示す地方のIT市場の惨状

2004-11-09 21:33:46 | ITビジネス
 富士通ビジネスシステム(FJB)の2004年度中間期決算の内容で、えっと思ったことがある。FJBの決算そのものというよりも、業精の伸び悩みの原因として挙げた地方のIT市場のシュリンクだ。

 FJBの説明によると、2004年度上期は2002年上期に比べ東京地区が売上高で22%増、粗利ベースで13%増であるのに対して、その他の地方は売上高で15%減、粗利ベースで6%減だったという。結果として、2002年度上期には東京より他の地方の売上高の方が多かったが、2004年度上期では売上高全体に占める地方の比率が43%まで落ち込んだ。

 こうした状況を受けて、FJBは地方拠点を縮小し、営業力を東京にシフトするという。現在、営業担当者の6割は地方営業だが、これを1年ぐらいかけて東京地区へ人員を移行させるもようだ。

 地方ビジネスの不振はFJBだけではない。他の大手ITサービス会社の中でも地方拠点の整理に手をつける企業が増えている。地方の市場は自治体、文教、医療ぐらいしかビジネスがないというのが、大手ITサービス会社の認識だ。

 地方が辛いというのは、以前から言われていたことだが、FJBの話を聞くと、ここまで来たかという感がする。地方に仕事と雇用をもらすと期待されたITだが、結局そうはならなかったようだ。マクロで見ても、距離の壁を越える技術だったはずのITだが、逆に東京への一極集中を加速させた。その結果、IT業界も東京へ集中しはじめたわけで、皮肉な結果としか言いようがない。

「ソフト開発は基幹ビジネス・プロセス」に賛成

2004-11-05 19:57:26 | ITビジネス
 日本IBMが最近、面白いことを言い出した。いわく「ユーザー企業にとって、ソフト開発は基幹ビジネス・プロセスである」。その意味するところは、ビジネス全体のIT化が急速に進み、環境変化の速度も早まったことで、IT化したビジネス・プロセスを作り出す“ソフト開発というビジネス・プロセス”の重要性が飛躍的に高まったということだ。いかにもIBMらしい、e-ビジネスやオンデマンドに通じるマーケティングちっくな物言いだが、一面の真理を突いている。

 EC(電子商取引)やインターネットを使ったマーケティングがもはや当たり前になっている現在、ビジネスの基盤となるIT、もっと具体的に言えば、ソフト開発の生産性や品質の低さがビジネスの桎梏になりつつある。だから、ソフト開発を基幹ビジネス・プロセスに位置づけて、生産性と品質の向上に取り組まなければいけないというのが、このソフト開発=基幹ビジネス・プロセス論の主旨だ(IBMに言わせれば、だからラショナルの開発ツールを使いましょう、という話になるのだが)。

 昔、と言っても、つい最近までだが、抽象的な経営論と結びつけてITの重要性を説くのが流行った。ERPはその最たるもので、単なるバックオフィス業務の集合体で管理会計的な意味合いしかないにも関わらず、最良のビジネス・プロセスが詰った“魔法の経営ツール”的な幻想がふりまかれた。だから私などは「基幹・・・」などと聞くと、それだけで気持ちが引いてしまう。

 だが、ますますITと現場の業務が密接に結びついていく中で、業務で実現しなければいけないことが、ITが桎梏となってできないといった事態は避けましょう、という意味で、ソフト開発は基幹ビジネス・プロセスだというのは大いに賛同できる。現場のユーザーの要求を正確に定義して、高品質なソフト(=ビジネス・プロセス)を短期間で作る。これができるかどうかが、企業のオペレーション力を決め、競争力を本当に左右する時代になりつつあるからだ。

 システム・インテグレータにとっても、顧客の基幹システム(往々にして本当は“基幹”でないのだが)を作っているのではなく、顧客の基幹ビジネス・プロセスを担っているとの自覚に立てば、違う風景を見えてくるような気がする。

IT基盤の核となるアプリケーション・サーバー、そのコモディティ化のインパクト

2004-11-04 15:16:37 | ITビジネス
 オープン系のIT基盤の核となるWebアプリケーション・サーバーのコモディティ化が急速に進んでいる。既に欧米でのシェアは、オープンソースのJBossがBEAシステムズのWebLogicを抜き、2位に浮上している。首位を行くWebSphereにしても、IBM関係者からは「コモディティ化が進む中、タダの製品に対抗するすべはない」と弱気の声も聞こえてくる。

 アプリケーション・サーバーのコモディティ化が進む中で、ITベンダーにとってその戦略的重要性が高まっているのは、皮肉なことだ。オープン系のシステムにとって最も重要なのが、IT基盤を構成するミドルウエアであり、その核になるのがアプリケーション・サーバーであるのは、もはや常識。ベンダーはここを押さえることで、ユーザーをロックインすることを狙う。だから、コモディティ化はベンダーには一大時だ。一方、ユーザーから見れば、JBossなどオープンソースの普及は、ベンダーのロックインを避け、IT基盤を自由に設計する余地が広がることを意味する。

 こうした状況を受けて、IBMやBEAなど大手は自社のアプリケーション・サーバーの基礎的技術をオープンソースに合わせると共に、JBossを振り切るために新しい競争ステージに移行しようと必死である。そのためのキーワードがSOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)である。将来のSOA導入に向けて、IBM製品あるいはBEA製品を選びましょう-----そんなメッセージを両社は今、ふりまいている。

 日本市場となると事情が異なる。オープンソース活用はまだLinux止まりで、JBoseの採用事例はまだ、ほとんど聞こえてこない。IBMやBEAだけでなく、富士通、NEC、日立製作所が自社ユーザーをロックインするために独自のアプリケーション・サーバーの販売に血道を上げている。国産メーカーによると「最近、販売が大きく伸びている」と口をそろえるから、欧米に比べると日本はまだ平和な市場である。

 しかし、国産ベンダーは安閑としていられないようだ。まずIBMが、彼らのカスタマー・ベースに大攻勢を掛けているからだ。「グローバルで戦わなければいけない御社が、海外で何の実績もないソフトをIT基盤として導入してよいですか」というセールストークが、大手企業の情報システム部門の動揺を誘っている。ユーザーだけなく国産メーカー系の販社にも、IBMの手は伸びているという。さらに、実績はまだこれからだが、JBossに対する関心も高まっており、野村総合研究所のようにJBossを公然と担ぐシステム・インテグレータも登場している。

 日本市場も今後、欧米市場のようになるだろうか。ユーザーがIT基盤やミドルウエアの重要性を認知すればするほど、その可能性は大きくなる。ユーザーはSOAの動向もにらみながら、グローバルに普及している商用製品か、オープンソースかを選択するケースが増えてくるだろう。その選択肢となる商用製品の中に、Interstageなど国産製品が含まれている可能性は、残念ながら極めて低い。

ERP失速でエクセラント・カンパニーも沈む、果たして市場の回復はあるか

2004-11-02 14:25:41 | ITビジネス
 ERPの大型案件の落ち込みは、ITサービス業にとって相当深刻な事態になってきた。かつてのエクセラント・カンパニー、住商情報システム(SCS)の中間決算は目も当てられない成績だった。売上高が対前年比7.7%減の345億円に対して、営業利益は40.6%も減らして22億円まで落ち込んだ。営業利益率は6.4%だから、今やSCSは完全に並のITサービス会社になってしまった。

 SCSは、大手ユーザー向けにはSAPやオラクルのERP製品を担ぎ、中堅・中小には自社製ERP製品を販売することで高収益を謳歌してきた。当然、他のシステム・インテグレータ以上にERPへの依存率が高く、最近のERP市場の停滞の影響をもろに受ける形となった。ERP以外の案件はそこそこの成績というから、ERP事業での売上高の2ケタの落ち込み、それ以上の利益率の落ち込みが、いかに全体のパフォーマンスの足を引っぱったかが分かる。

 他社もSCSほど深刻ではないと言っても、状況は似たり寄ったり。特にSAP絡みの大型案件が少なくなっていると聞く。ある意味、ERPはSIerにとって麻薬のようなものだ。外資系ベンダーのマーケティングに乗っかって商売すればよく、市場開拓に骨を折る必要はない。開発はパラメータ切りばかりで、SIer本来の開発力を劣化させる。そして、そこに大規模案件の一巡という市場の構造変化がやってきた。SCSのようにERP依存度の高いSIerにとっては、苦難の道が始まる。

 米国でもかつて、ERP市場が大きく落ち込んだときがあったが、現在は復調したという。復活の原動力は、CRMやSCM需要の取り込みとERP運用サービスの活発化だ。果たして日本でも同様のシナリオを描けるかどうか。現状では、未知数としか言えない。