東葛人的視点

ITを中心にインダストリーをウォッチ

リアルタイム・エンタープライズ

2004-07-02 19:52:32 | ITビジネス
「リアルタイム・エンタープライズ(RTE)」が面白い。日本ではあまり知られていないが、米国では企業の向かうべき方向として注目が集まっている。

「社員同士、あるいは社員と顧客、ビジネス・パートナー、サプライヤーをつなぐビジネス・プロセスにおいてリアルタイムのコラボレーションを実現する」というのが、RTEの基本発想らしい。ウォルマート・ストアーズなど大手小売りが実践する「CPFR(需要予測と在庫補充のための共同作業)」が、その代表例。店舗の商品の販売状況などをリアルタイムでメーカーや物流会社などと共有して、過剰在庫や機会損失を防ごうというものだ。最近ではソニーや松下電器産業など日本の家電メーカーも、サプライ・サイドからCPFRに乗り出したと聞く。

IT業界を席巻するデルを見れば明らかなように、リードタイムの短縮、つまりリアルタイムに近づけていけばいくほど、競争上有利になる。だからRTEは、目指すべき方向なのだ。RTEを実現するためにはITが不可欠だが、それでだけでは実現できない。ビジネスの仕組みそのものを変える息の長い取り組みが必要だ。

とはいえ、その前提として正確な情報をリアルタイムに提供する情報システムが必要だ。実のところ、これまでのシステムは特殊なシステムを除いてリアルタイム性は担保されていなかった。それどころか、情報の正確さもあやしい。データ上は在庫されているはずの商品が実際にはなかった、というのはよくある話だ。そう考えると、ウォルマートがICタグにご執心なのも、すんなりと理解できる。

ただ、正確な情報をリアルタイムに提供するだけでは、ビジネスは回らない。ビジネス上の何らかの意思決定を行うためには、当事者間のコミュニケーションが不可欠だからだ。そして、これまでリアルタイムのコミュニケーションの手段となっていたのが、電話である。今ブームのIP電話は、この電話がコンピュータのアプリケーションとなることである。そうすると、情報システムとこのIP電話を融合した新しいアプリケーションの姿が見えてくる。

正確な情報を基にリアルタイムの意思決定、あるいはコラボレーションが行える環境。これがRTEを支える、これからのITのあり方だろう。この話は追々深めていきたい。