東葛人的視点

ITを中心にインダストリーをウォッチ

昔、ITが家電を制覇するという幻想があった…そういえば最近似たような話が

2005-05-16 20:20:28 | ITビジネス
 マイクロソフトがデジタル家電分野で、東芝など日本の家電メーカーと特許を相互利用するクロスライセンスの交渉を進めている-----この週末、様々なメディアを賑わしたニュースだが、私はふと昔の騒動を思い出した。

確か1993~94年ころの話だったと思う。マイクロソフトなどITベンダーが、家電分野を新たな市場と狙い定めて動き出したときだ。家電とコンピュータの融合が進み、というか家電技術がIT技術にリプレースされて、日本の家電メーカーは覇権を失い、マイクロソフトやIBMなどITベンダーがデジタル家電の覇者になる。そんな予測が流れ、こりゃ大変だと結構な騒ぎになった。

 しかし、この予測は見事に外れ。個々の家電メーカーの浮沈はあったが、10年以上経った今でも家電の覇者はやはり家電メーカーだ。家電製品はIT技術を取り込み、デジタル家電となったが、今でも家電製品だ。ゲーム機もやはりゲーム機。マイクロソフトが日本ではダメだが米国でゲーム機で成功したのは、ITベンダーだからでもWindowsが素晴らしいからでもなく、ゲーム機のビジネスモデルを確立したからだ。

 最近、これと似たような話がほかの分野でも出ている。何かというとIP電話。当初ITベンダーは、電話がIP化することで音声通話がコンピュータのアプリケーションとなるから、そこに自分たちの新しい市場が生まれると見た。いち早く製品を提供したシスコの動きも、そうした見方を後押しした。しかし、そうした認識は少し甘かったようだ。実は、私もそうした認識を持っていたので、自分の読みの甘さを痛感している。

 現状は「電話が電話として売れている」という。通話がコンピュータのアプリケーションになるのではなく、家電と同様、電話がIT技術を取り込んだのだ。一部のITベンダーを除けば、IP電話ビジネスの主役は今もPBXメーカーや、PBXを取り扱っていた業者だ。これらの企業は、コンピュータ・メーカーであったり、システム・インテグレータでもあったりするのでややこしいが、ビジネスの主体はPBXの販売を担ってきた部隊や人であることがほとんどだ。

 私は、この話をなにもネガティブに書いているわけではない。どんな産業でも、その産業を担ってきた企業や人は“すごい”という当たり前のことを再確認しているだけだ。IT技術だけで他の産業に切り込み、市場を塗り替えられると思うのは夢想にすぎない。なぜなら、どんな産業でも技術を売っているわけでなく、ソリューションを売っているわけだから。

 IP電話に関しては、いまIT業界では「結局参入しても商売にならない」という失望感が広がっているという。しかし、それはどうか。確かにIP電話の提案は、ITソリューションではなく、オフィス・ソリューションの切り口が必要で、多くITベンダーにはそのノウハウがない。しかし“謙虚”になって、通信系のベンダーなどと協業を模索すれば、それこそIT・通信融合ソリューションの可能性が見えてくるような気がする。そういえばマイクロソフトも、家電分野のビジネスに関しては随分謙虚になった。

1 コメント

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message (Mobile Application)
2021-10-05 04:06:20
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