作業場は、ろくろ各数基ずつの島に別れていて、オレが入った一角は、イーダさん、あっこやん、マドンナ・なおこさんも含めてマジメ一辺倒、脇目も振らずにしのぎを削る熱苦しい軍団だった。しかしふと作業場に視線を横切らせると、訓練時間まっただ中にもかかわらず、ティーカップを片手の談笑の輪があちこちにできていた。一日に何度顔を上げても、彼ら、彼女らは同じ場所、同じメンバーでお茶を飲みつづけているため、オレは仰天した。いったい一日に何杯のお茶を消費しているのだろうか?
オレは密かに彼らを「茶飲み貴族」と名付け、その優雅な人生を遠い目でながめた。ただ、そのように生きよう、とは思わなかったが。そんな貴族の口から出た「お金があるひとはいいよねえ」だったので、ギョッとしたのだ。大金を積みさえすれば、ヤジヤジのあの作品が出来るとでもいうのだろうか?このヒトビトに、陶芸に向かう熱意と資質はほんの少しも嗅ぎ取ることはできない。でなければ、あの仕事から作者の想いを汲み取れないはずがない。それ以前に、なぜヤジヤジが金を持っているというのか?彼がどんな暮らしぶりなのか、作品からイメージできないのだろうか?
ヤジヤジのつくったものには、その置かれた環境がにじみ出ていた。一流企業の重要な役職と高給を棒に振って、細君とふたりこの地に流れ着き、学業専念、無収入(あ、失業保険があるか)、退職金を切り崩して材料を買い求め、未だ一銭にもならない器をつくりつづける清貧・四十路男、背水の陣。そんなリアルすぎるものを背負ったヤジヤジの、努力の結実、乾坤一擲の作。それを
「お金が」
とは・・・
オレは考え方のあまりの隔たりに、失望を禁じえなかった。お茶が彼ら、彼女らの血を薄めてしまったにちがいない。そして思った。自分はこの先も貴族になろうなどと高望みせず、身分の低いまま生涯を通そう、と。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
オレは密かに彼らを「茶飲み貴族」と名付け、その優雅な人生を遠い目でながめた。ただ、そのように生きよう、とは思わなかったが。そんな貴族の口から出た「お金があるひとはいいよねえ」だったので、ギョッとしたのだ。大金を積みさえすれば、ヤジヤジのあの作品が出来るとでもいうのだろうか?このヒトビトに、陶芸に向かう熱意と資質はほんの少しも嗅ぎ取ることはできない。でなければ、あの仕事から作者の想いを汲み取れないはずがない。それ以前に、なぜヤジヤジが金を持っているというのか?彼がどんな暮らしぶりなのか、作品からイメージできないのだろうか?
ヤジヤジのつくったものには、その置かれた環境がにじみ出ていた。一流企業の重要な役職と高給を棒に振って、細君とふたりこの地に流れ着き、学業専念、無収入(あ、失業保険があるか)、退職金を切り崩して材料を買い求め、未だ一銭にもならない器をつくりつづける清貧・四十路男、背水の陣。そんなリアルすぎるものを背負ったヤジヤジの、努力の結実、乾坤一擲の作。それを
「お金が」
とは・・・
オレは考え方のあまりの隔たりに、失望を禁じえなかった。お茶が彼ら、彼女らの血を薄めてしまったにちがいない。そして思った。自分はこの先も貴族になろうなどと高望みせず、身分の低いまま生涯を通そう、と。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園