陶芸みち

陶芸のド素人が、その世界に足を踏み入れ、成長していく過程を描いた私小説です。

その118・分裂

2010-04-29 06:44:20 | 日記
 夏も終わりに差しかかると、クラスは明確にふた通りの種族に分裂をはじめた。すなわち「やる気をみなぎらせる熱血なヒトビト」と「涼しげなヒトビト」である。
 作業場の半分ほどは熱気が支配して雰囲気が引き締まっていたが、残りの半分は「もう飽きちゃった感」がありありと見てとれる社交場と化していた。七時間の訓練中は、つくりあげる作品数のノルマがあるわけではない。課題が与えられてはいるものの、それは各自の判断で消化していくべきもので、強制されてはいないのだ。将来の自分になにが必要かを考えるのは、自分以外のだれでもない。学校側はそれを体得する機会を与えるだけで、習熟できるかどうか(というよりは、するかどうか)は各自のやる気にかかっている。だから作業中に休憩しようと思えばいくらでも休憩できるし、極端な話、一切をサボりたければそれも許される。雇用保険(失業保険というやつ)が一年分頂戴できる上に+学費タダ+遊び放題+好きなときに趣味の作陶もやり放題=すばらしいロングバケーション・・・という認識も、ある意味できる。このシステムが、のんびりとしたヒトビトを生み出すのだった。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園