まずは実技訓練に先がけて、道具づくりをしなければならない。今後一年間の訓練に必要なモノ、ことによると一生涯使いつづけることになる道具類を、棒っきれや鉄片といった粗素材から加工してつくるのだ。竹ベラ、トンボ(器の直径と深さをはかる物差し)、シッピキ(ろくろで挽いた作品を切りはなす切り糸)、カンナ(高台を削り出すナイフのような金属製ヘラ)・・・配布されたプリントに製図されたそれらの形状は、どれも専門的でプロ仕様。見たこともないようなシロモノばかりだった。オレも陶芸教室で多少は器づくりを経験してきたが、そこで使っていたおもちゃのようなものとはまったく別物だ。この道具類は、これからのリアルな実戦にもちいる「自前の武器」なのだ。借り物でなく、自分たちの手足としてなじんでいくことになる。ただ困ったことに、図面通りに材料を刻んでいっても、まだそれをどう使うのかがイメージできない。はじめて知る素材、形、そして使い方。あらためて自分がド素人であることを思い知らされた。
はじめのうちクラス内は、だれもが無言で手を動かしつづけるため、しんと静まりかえっていた。オレもその沈黙にしたがった。訓練に対する不安や緊張があるうえに、まわりは全員が初対面。ライバルたちに自分の無知を悟られたくはないし、自分以外はみなウデに覚えのある者にちがいない、という猜疑もある。しかし敵もさてはそんな見方をこちらに対してしているとみえ、警戒感で総すくみ。高校や大学の入学直後のように、多少の振れ幅はあってもほぼ同等の人生を送った者たちが集まるのとはちがい、それぞれがまったく別の道のりを生きてきた多様な32名なのだ。即座にうちとけるというわけにはいかないのだった。かくして、おたがいに探り合いながらの奇妙な時間がつづく。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
はじめのうちクラス内は、だれもが無言で手を動かしつづけるため、しんと静まりかえっていた。オレもその沈黙にしたがった。訓練に対する不安や緊張があるうえに、まわりは全員が初対面。ライバルたちに自分の無知を悟られたくはないし、自分以外はみなウデに覚えのある者にちがいない、という猜疑もある。しかし敵もさてはそんな見方をこちらに対してしているとみえ、警戒感で総すくみ。高校や大学の入学直後のように、多少の振れ幅はあってもほぼ同等の人生を送った者たちが集まるのとはちがい、それぞれがまったく別の道のりを生きてきた多様な32名なのだ。即座にうちとけるというわけにはいかないのだった。かくして、おたがいに探り合いながらの奇妙な時間がつづく。
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