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生きる力

当寺が所属する同宗の近隣グループ(教区)で出版している教化冊子に『生きる力』がある。一年に一冊をお盆時に発刊して今年で31年目を迎える。教区出版委員会の編集によるものだ。執筆も含め、すべて単位教区が出版する法話集としては画期的なことと思う。関係諸師のご労苦に感謝申し上げたい。

題名は創刊号から変わらない。表紙の色は、仏教ゆかりの五色()をベースにしているので、5年がワンサイクル。今年は新たに新しいサイクルを迎え、表紙のデザインもリニューアルされるという。

               

ここで話題としたいことは、実は題名の『生きる力』についてです。この題名は、先輩のご老僧方によるネーミングですが、仏教徒として、仏の「み教え」を生きる糧とし、生きる力とすべきものの故にの名であろうことは想像に難くありません。私は5年経った後の、見直しの時に編集委員として参画していましたが、とりあえず題名は「このままで良いのでは・・・」ということになりました。今回は題名について議論されたかは分かりませんが、時が経つにつれ、益々、ぴったりの題であるように思われます。

この『生きる力』は、某大手生命保険の商品名にもなっていますが、最近、興味を持って調べていた子どもの教育論議の中で、この『生きる力』という言葉がキーワードとなり、指導要領の基本テーマにもなっていたことを再認識しました。
 次期の改訂実施は平成24年(小学校は23年)ですが、移行措置もあることから、本年3月にすでに新指導要領は告示されていました。それによりますと、この『生きる力』の理念はそのまま引き継がれることとなり、周知徹底するための具体的な手だてが重要視されるようになりました。ますます興味がわきます。

ところで、この教育界の『生きる力』の発祥について調べてみました。
この論議は、平成8年の
中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の第1次答申に盛り込まれたものであることがわかりました。

そして、この提案の中心者は、駒澤大学(元熊本大学教授)の勝俣暎史先生であることもわかりました。

※[生きる力]は,全人的な力であり,幅広く様々な観点から敷衍することができる。まず,[生きる力]は,これからの変化の激しい社会において,いかなる場面でも他人と協調しつつ自律的に社会生活を送っていくために必要となる,人間としての実践的な力である。それは,紙の上だけの知識でなく,生きていくための「知恵」とも言うべきものであり,我々の文化や社会についての知識を基礎にしつつ,社会生活において実際に生かされるものでなければならない(中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(第1次答申抜粋)平成8(1996)年7月19日)

という趣旨でスタートしたようで、勝俣先生の著書には、「生きる力」の論拠となる教育哲学が解説されています。
それにしても、このような中教審の議論よりも20年も前から、『生きる力』の布教教化を展開していた当教区の取り組み、すばらしいですね。

「生きる力」の布教教化、教育的展開について、これからも注目していきたいと思います。

         

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
戦後日本人が失ったもののひとつ (kenryu)
2008-05-08 08:16:46
「生きる力」・・・生命の根源、ほとばしるエネルギー、躍動する体等々。
無感動といわれて久しい今こそ、生きる力とともに生きる意味をしっかり認識していきたいものですね。
知恵は智慧として周りを照らす灯として、紙の上だけでなく、勿論机上の空論でなく、実践を実行を期待したいものです。日々、実践の継続が(その人を)本物にする・・・とは故禅師様のお言葉です。
現場の先生、宗侶共々失われた生きる力の再生に尽力しましょう
 
 
 
→kenryu兄 (tera)
2008-05-08 14:04:40
お久しぶりです。群馬の方はだいじょうぶですか。

実践の継続、重いお言葉ですね。生きる力としたいものです。

教区の『生きる力』の今の表紙は、故R寺方丈の眼蔵参究の羅漢像です。雰囲気が似ています。
 
 
 
生きる力 (kameno)
2008-05-08 15:30:54
tera様
今日、印刷会社と打ち合わせがあり、原稿と写真を提出いたしました。後は色校正の後印刷工程に入ります。
ここ5年間の発行部数は
平成16年度 10,220部
平成17年度 10,110部
平成18年度 10,250部
平成19年度 10,360部
平成20年度 10,430部
と、順調に推移しています。

今後も三十年以上に亘る伝統を受け継いでいけたらと思っています。
来月初旬にはtera様のところにもお届けできます
 
 
 
→kamenoさん (tera)
2008-05-09 13:55:52
編集作業、ご苦労様です。いつの間にか1万部を突破していたのですね。
すばらしいことだと思います。
楽しみにしています。
 
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