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Cellという近未来

2005年02月08日 23時45分50秒 | 世情雑感(社会情勢)
 ソニー、ソニー・コンピュータ・エンターティメント(SCE)、東芝、IBMの4社が共同開発した次世代プロセッサ「Cell」の仕様が公表された。その驚異的な性能についてはITmediaの「明らかになったCellの詳細」を御覧に頂きたいが、動作周波数は4Ghzで現行の最高性能を有するPC用MPUの10倍の演算性能を有するというからその性能の凄まじさが分かるというものである(無論、マルチコアアキーテクチャだから既存のMPUと単純比較するのも筋違いかも知れないが)。早い話が、このCellを使えば簡単にスーパーコンピュータを製造する事すら可能になるし、更にマルチOSにも対応しており、その幅は限りなく広いように思われる。つまりCellは現在のPC業界を牛耳っているWintel(Windows-Intel)に対して重大な挑戦状を突きつけていると言えるのかも知れない訳だ。
 無論、Cellがド級戦艦「ドレッドノート」が登場したときのように、明日にでも現行のPCを旧型に追い遣ってしまう訳ではない。それはCellが最初に搭載されようとしているのがSCEの次世代ゲーム機PS3(今年春にも発表されるという)であるからである。ゲーム機というものであるならば、その影響範囲はゲーム産業に限定される。しかし、デジタル家電の覇者を目指しているソニーがPS3を単なるゲーム機に留めるとは思えない。PS2はDVD再生機能を搭載した事によって過程におけるエンターティメントマシーンの地位の獲得に成功した。PS3ではブルーレイ・ディスク(BD)を搭載する事によってその路線を継承すると共に、Cellの高度な情報処理能力によって家庭における情報のハブたらんとしていると考える事も出来るだろう。つまり、Cellの登場は家庭における情報機器の中心がPCか複合エンターティメント端末(或いは複合情報端末と言い換えられる)かという覇権競争に複合エンターティメント端末の勝利と言う事で決着がつく事になるのかもしれない。そのような状況になればPCは我々にとって鉛筆や消しゴムと同様の単なる文房具(電子的な)に収まってしまうだろう。このCellの存在は他の参加企業にとっても大きなメリットが存在している。東芝やIBMはパソコンメーカーとして一世を風靡したが、周知の通りIBMはパソコン部門を中国のLenovoに売却した。東芝もPCの廉売を行うHPやDELLと真っ向勝負が出来るとは考えていないだろう(東芝の方針は高付加価値路線である)。であるならば、Cellは新たな世界標準を作るという上で極めて有益な存在である筈である。Cellの能力はサーバーやスーパーコンピュータにも応用可能であるし、どちらかと言えばそちらの用途の方がメインになるかもしれないほどの物だ。
 Cellは恐らく、数年以内にデジタルによって支配される産業全てにとって重要な構成要素となって行くであろう。このゲーム業界と言うデジタル産業界において最も生き馬の目を抜く競争を行っている業界(この業界において最も影響力を有する日本人は、世界で一番厳しい消費者であると共に、世界一のオタクでもある)の要請によって生まれたモンスターであるCellは、モンスターであるが故の強さを持っている。小生はこのように断じる事が出来る。
 「我々はCellという近未来の目の前に立っている」のであると。

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