「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に登場するザフト(ZAFT)は階級無き軍隊である。それは第22回「蒼天の剣」においてハイネ・ヴェステンフルスの台詞「俺たちザフトのMSパイロットは・・・フェイスだろうが赤服だろうが緑だろうが」に現われている。ザフトが階級が無い理由については、ザフトの兵士達が完全な義勇兵で平時は別の仕事を持っているから等と言われている。しかし、指揮の流れ自体は存在している。それは服装によって大別する事が出来るだろう。緑服は兵士、下士官に相当し、赤服は尉官級の将校で白服は佐官級の将校であるようだ。黒服は参謀職乃至は根拠地部隊将校が着用するようである。更に先任を優先するという概念も存在しているようだ。アスランとハイネは共にフェイスだが、アスランはハイネが先任であるとしてハイネを立てている。一方でミネルバに搭乗しているフェイス三人ではタリアが最も後にフェイスを拝受しているが、赤服よりも白服のタリアの方が上位に立っている。しかし、フェイスは個々人での独自の行動が認められている為、タリアはハイネへ要請の形で指揮を行っている。
軍隊とは階級社会である。これは指揮命令系統をはっきりとさせる為だ。上官が戦死や負傷して命令できなくなった場合は速やかに次の階級の者が指揮を取らなければ部隊は崩壊してしまう(兵士は個々で判断する権限は無い)。部隊を維持する為にも指揮の継承順位は厳密に定められている。そして、各階級で指揮できる部隊の規模もおおよそ決まっている。師団なら中将、連隊なら大佐と言ったようにだ。これは世界中の軍隊で採用されているから、多国籍部隊が編成された時等にも有効に機能する。もっとも、階級無き軍隊というものは歴史上存在しない訳ではない。例えば、一昔前の中国人民解放軍はその典型で階級無き軍隊を標榜していたが、その結果は1979年の中越紛争での敗北であった。この後、人民解放軍は階級を復活させている。
SEED世界のザフト軍が志願による軍隊であるとするならば、ますます階級制は必要な制度だろう。ザフトは隊長制を取っているから(クルーゼ隊と言ったように)その部隊内での指揮は問題ないかも知れないが、複数の部隊が同時に活動する場合にはそうも行かないだろう。各部隊が各個に存在し、要請と言った形でしか実質的に共同作戦を行えないからである。無論、コーディネーターの身体的能力の強さが個々での戦闘を可能にしているという見方も可能であるが、このザフトの指揮命令系統は極めてナンセンスなシステムであだろう。
しかし、こんな常識以前のことをわざわざ語らねばならないような種って作品は・・・。