昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ポエム・ポエム・ポエム ~夜陰編~ =ピュッピュッ=

2020-07-10 08:00:38 | 
クスリを5錠口に含み、水をひと口流し込む。
さらに5錠、また5錠、そして5錠――いく粒になった?
いっきに水と共に飲み込む。

手首に充てられたナイフがすべる。
血管から流れ出る血! ドクドク、と耳に大きく響く。

台所のガス栓が緩められる。
シューッ!と いう噴出し音の中、二人の会話が始まる。

 “ほらっ、血がこんなに流れて、綺麗でしよ!”
 “シューッだってさ。ピュッピュッって、なんないの?”

(背景と解説)

心中のシーンです。
リアルではなく、バーチャルということです。
むかしむかしのことですが、映画を観ました。
タイトルも内容も、まるで覚えていません。
ただ、あるシーンだけが残っています。
拷問のシーンなんですが、バーチャル的にみてくださいよ。
テーブルか机の上に、目隠しをされて縛り付けられています。
手足は勿論、頭すら動けない状態です。
そして、下界の音は一切聞こえません。
その部屋だけです、そこでの音だけが聞こえるのです。
さあ、行きますよ、バーチャルですから、ね。

男の耳元で囁きます。
「これから手首を切る。血が流れ出すだろう。知っているな、どれだけの血が流れ出たら絶命するかは」
縛られた男の手首に冷たいものが触れます。
そしてすーっと、動きます。
途端に、床に置いてあるバケツの中から音が聞こえます。
「ぴっちゃん、ぴっちゃん、ぴっちゃん……」
リズム良く音が響きます、部屋の中で。
男が叫びます、命乞いをします。
しかし誰も応えません、誰も居ないのです。
リズム良く音が響きます。
「ぴっちゃん、ぴっちゃん……」

さあ、リアルです。
目隠しをされた男が台の上で身動きできない状態です。
男の手首には傷はありませんし、血も流れていません。
ただ部屋の中に「ぴっちゃん、ぴっちゃん」と水が滴り落ちる音がしています。
実験中なのです。
その後男がどうなったのか……覚えていません。あまりの恐怖に、目を閉じて耳を塞いでしまっていたような気がします。

戻ります、この詩のキモは[シューッ、ピュッピュッ]です。
死への恐怖感を描いたつもりなのですが。


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