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歌舞伎中心とした演劇・クラシック音楽・美術展・映画など芸術全般のレビューを書きます。優れた芸術は応援します!

「これからの日本、これからの教育」(前川喜平、寺脇研著)がすばらしい名著です!

2017-11-15 04:08:33 | きょうのオピニオン
これからの日本、これからの教育 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房

「あれ?あなたブログは休むんじゃなかったの?」と思われる方も多いと思いますが、この歴史的名著を読ませていただいて、「なにがなんでもたくさんの方にご紹介しなくては!」と思い、とるものもとりあえず、ご紹介させていただきます。

この「これからの日本、これからの教育」(ちくま新書)は、前川喜平さんと寺脇研さんの、文部科学省OBの後輩・先輩が、現代ニッポンの教育の在り方や、政治のしくみ、社会の構造の問題、LGBTやマイノリティに対する熱い思いなどを語りつくす、すぐれた啓蒙書となっています。

本当に感激して、本をおととい買いまして、さきほど一気に読了しました。私自身、ずっと感じていた、「日本の教育ってどうしてこういうひずみが生じるのだろう?」とおもっていたことが、寺脇さんと前川さんの大変わかりやすい語り口で、明解に氷塊していくので、うれしい知的興奮を味わいました。

教育をめぐる、寺脇さんと前川さんの仕事の変遷が語られていきますが、最後は、いま大変問題になっている、加計学園の問題への追及になっていくので、非常に醍醐味があり、読みごたえがあります。

ユニークな意見・過去の政策がおふたりから次から次へと出てくるのも面白いです。たとえば、「高校教育に数Ⅰはいらない!」「農業高校の是非」「家庭科の男女必修」「生涯教育の導入」そして、民主党政権下で実現した「高校無償化」の成果などが語られていきます。

教育とは、実は国家を形成する上で、その精神的根幹をなす、大事なものであることは、みなさんもよくおわかりのことと思います。おふたりは、その使命に燃えて、がんばってこられたことがよくわかりますし、非常に真摯な姿勢で臨まれていたことがわかり、襟をただす思いでした。

特に寺脇さん、前川さんの言葉で印象深いのは、「いま、進学を希望する子供たちに、高等教育をうける機会を、経済的にもちゃんと保障することはおものすごく大事なこと」ということです。所得制限を設けるべきだという意見があった際に、前川さんが貫いた姿勢がここにあります。

また寺脇さんは、「人間の、人間による、人間のための仕事」という章で、「障害者の生涯学習が不可欠」と説きます。「障害者が、学校だけでなく、地域の中で、健常者とともに学んだり活動する場が必要です」といい、非常に私もこの点納得しながら読ませていただきました。たとえば、映画は障害者割引がありますが、演劇にもそういうシステムの導入が必要なのではないか。(美術館でもありますし、国立劇場はそういうシステムを導入していますが、一般はまだまだ行き遅れているのが現状だとおもいます)LGBTの問題も含めて、こうしたことをすすめていくことで、まさに多様性をみとめていく社会が生まれるのではないかと、私も感じています。「マイノリティはマジョリティである」という考え方をおふたりはお持ちですが、こうした人々の「少数者」への配慮をみとめていくことで、よりこころ豊かな社会が形成されるのではないかと、私自身つよく感じています。

また、教育改革の中でも、「ゆとり教育」の是非についても語っておられます。その本意は、つめこみ教育ではなく、生きた知識を、深い理解とともに学んでほしいという思いが込められていることでした。ともすれば「落ち着かない」「ちゃんと勉強しない」と批判をあびがちなこの「ゆとり教育」ですが、「生涯学習」というテーマを掲げていくと、人間、どんなタイミングでもきちんと学べるのだということがわかります。

教育に国境を設けない、という考え方も、おふたりはお持ちで(というか、文科省のトップだった方の考え方がここまでリベラルなのもうれしい発見でしたが)、たとえば朝鮮高校卒業者のために、大学入学資格を与える考え方など、ぜひ、国際情勢を鑑みても、また国内的な世論の安定のためにも推進していただきたいとおもいました。コリア国際学園、という、南北両朝鮮の枠をこえた取り組みのご紹介も好感がもてました。

最後に、加計学園などをめぐる、現在の総理官邸の問題や、内閣府の在り方、「側用人政治」が跋扈する現状を憂う、寺脇さんと前川さんのことばで締めくくられています。前川さんが文科省を辞任したときの、文科省職員あてのメールも掲載されていますが、感動的で、考えさせられる名文です。

ぜひたくさんの方にお読みいただいて、この国の在り方、この国のひとの育て方のありかたについて、思いをはせていただきたいと思います。

この勇気ある書を手にして、私も体調が一気によくなりました!

これからは、本当に、心ある、まっとうな精神で、日本の国をよくしていく心構えを、老若男女問わずもつことが大切だと、感激した次第です!



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