萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

初春佳光

2019-01-01 19:07:26 | 文学閑話万葉集
佳き日々へ、
大伴家持『万葉集』新しき年×巻末歌


初春佳光
新しき 年の始めの 初春の けふ敷る雪の 伊夜しけ餘事 大伴家持
あたらしき としのはじめの はつはるの けふふるゆきの いやしけよごと

新しい年が始まる初春の今日、ふり敷く雪みたいに佳い事が続けばいい。
新しい真白な雪みたいに潔白に美しいことが降りかかり、残ってほしい、
この春雪みたいに汚れないまま初恋の夜ふり積もれ、そう願う新春の雪。


新春の歌ですが『万葉集』の最終巻=巻第二十のいちばん最後に載っています。
ラスト締める絶筆歌でありながら「始」「餘事」に歌集を編纂したのはアタリ、籠められる祈りが謳われています。

原文は「新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰」
結句の「餘」という字は「引き続いて後に残る」「余るほど残る」という意味になります。
この「よごと」は「吉事」と翻刻してしまうことが多いのですが、この文字の意味そのまま現代語訳してあります。

雪が降るたび溶けず残り、積もるほど降り続く。
そんな雪国の厳寒にも初春の希望を祈る歌です、これは作者の心情×状況を映しています。
詠まれた時は作者・大伴家持が因幡国=現在の鳥取県東部に配流されて最初に迎える正月で、西暦759年にあたります。
この左遷はいわゆるトバッチリで、橘氏と藤原氏の抗争に大伴家持が巻きこまれた果の処分でした。
それ以前の家持は権力ある軍部の名門、伴氏の長として文武とも知られていました。

こうした状況下は凹んでいて不思議はない時です。
そんな背景を含んで訳すことも出来ますけど「始」&「餘」の二文字は希望です。
明るい迎春と新年の言祝ぎ歌、かつ『万葉集』だし相聞歌なトーン交えてより明るいカンジに訳してみました、笑

迎えた2019年、慶事あふれて続く佳き年になりますように。

撮影地:富士山雲海@山梨県北杜市・幻日@神奈川県相模川2018.12


にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村 純文学ランキング
著作権法より無断利用転載ほか禁じます

PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 暁霜 | トップ | 霧中の光 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

文学閑話万葉集」カテゴリの最新記事