萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

文学閑話:君に常春×百人一首

2015-01-03 23:15:00 | 文学閑話韻文系
雪、後朝の衣に



文学閑話:君に常春×百人一首

君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ  光孝天皇
きみため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

君に贈りたくて、春あさい野山に出かけて若菜摘みしたんだ。
そうしたら雪が降ってきた、菜を摘む僕の手もと袖に雪が降りかかる。
この雪に清められた若菜だからこそ君に贈りたいんだ、君の常春の幸せを祈って。

百人一首十五番、かつ『古今集』にも載っている歌です。
詠まれている「若菜摘む」は昨日の文学閑話に紹介した「子の日行事」の一つ、若菜摘みになります。
この「若菜」は植物の固有名詞ではなく、春先に採れる山菜や薬草など食用にする植物全般を示す言葉です。
若菜は早春に雪から芽吹く=生命力があると考えられ、これを食べて邪気を払い病気など悪事が退散すると考えたワケです。
実際、早春の山菜には解毒作用や消化促進の栄養素を含むものが多く、冬に溜まった老廃物を排出する薬効があるそうで迷信と言えません、笑

こうした若菜でよく知られているのは春の七草、
芹・薺(なずな)・ハコベラ・ゴギョウ・菘(すずな=蕪)・蘿蔔(すずしろ=大根)・ホトケノザ。
これを1月7日に七草粥として食べるのは子の日行事の若菜摘みが今に伝わる風習であり、薬膳の智慧です。

で、この歌は光孝天皇が即位する前=親王の時に詠んだそうですが贈り相手は女性です。
ようするに恋歌=相聞歌として詠まれた恋文なワケです、なので「若菜」に恋人の健康と美貌を願っています。
そんなワケで「若菜」=健康+春=健康で若い&美貌+青春、って意味から「常春」永遠に続く春の幸福に訳してみました。

また、歌が詠まれた平安時代は恋人と夜XXXした翌朝にお互い着物を交換する風習がありました。
着物=小袖などは男女差が無いので交換できる、で、恋人の衣をまとい残り香に名残惜しむってカンジです。
この歌も恋人の着物をまとっているのかもなって思います、ソレを知らせるために「衣手」と詠んで恋人に贈ったのかなと、笑

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この記事ホントは1月7日に載せるとイイのかもしれませんけど、昨日の続きでUPしてみました、笑

第X章「冬三夜 act.9」読み直したら校了です、
このあと第81話「凍歌1」加筆校正4倍Ver+読切短篇を掲載の予定しています。

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