快読日記

日々の読書記録

「家霊」岡本かの子

2011年04月27日 | 日本の小説
《4/25読了 ハルキ文庫(角川春樹事務所) 2011年刊 【日本の小説 短編集】 おかもと・かのこ(1889~1939)》

「老妓抄」「鮨」「家霊」「娘」の4編。
岡本かの子 といわれると、あの肖像写真のモガな姿と、幼い太郎を柱に縛り付けて執筆した激しい人、というイメージしかなかったんですが、
ハルキ文庫が始めた280円文庫シリーズのおかげで、ふらふらと手に取ることができたわけです。
ありがとう! 角川春樹!
この本、紙の質を落としているんですね、だから持つと軽いの。
でも、本ってこれで充分じゃね?
これで、なかなか手に入りにくい近代の名作あたりをバンバン復刊させてほしいなあ。

それはともかく、
岡本かの子はすごい小説家なんですね。
なにをいまさら、ってかんじですか、すみません。
言葉のきめが細かくて、みっちり詰まっていて、そこに体温や湿気があって、奥には人間を見つめる鋭い目があって。
理知と情がいいかんじにカフェオレ状態になっている。


(老妓は)「何も急いだり、焦ったりすることはいらないから、仕事なり恋なり、無駄をせず、一揆で心残りないものを射止めて欲しい」といった。
柚木は「そんな純粋なことは今どき出来もしなけりゃ、在るものでもない」と磊落に笑った。
老妓も笑って
「いつの時代だって、心懸けなきゃ滅多にないさ。だから、ゆっくり構えて、まあ、好きなら麦とろでも食べて、運の籤の性質をよく見定めなさいというのさ」(34p)

/「家霊」岡本かの子
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