快読日記

日々の読書記録

「スメル男」原田宗典

2012年05月05日 | 日本の小説
《5/3読了 講談社文庫 1992年刊(1989年に講談社から刊行された単行本に加筆) 【日本の小説】 はらだ・むねのり(1959~)》

図書館でふと出会いまして。
そういえば原田宗典は初期の短編集とかエッセイしか読んだことがなかったなあ、と手に取って開いてみたら、おぉ!さっそくナイーブな青年がごちゃごちゃ悩んでおる、懐かしいハラダ節!

「東京全都を嘔吐させる異臭がぼくの体から漂い始め(裏表紙)」るという壮大かつちょっと笑ってしまう設定なんだけど、
むしろそうなる前がよかったです。
彼がいろいろなものや人を失う場面が続く中で新たな出会いもあって、甘酸っぱかったりほろ苦かったりがとても。
自分が臭い始めたあたりの戸惑いや猛烈な羞恥心、傷心、絶望に近い感情も、すごく生々しい。

いきなり活劇風になる後半がいまいち好みではないけど、前半の人物描写やエピソードの素晴らしさが勢いとなって、充分ゴールまで引っ張られました。
読む前は、「自分から発する猛烈な異臭」というのは何の暗喩だろうなどと思ってたんですが、どうやらそういう意味ではなさそうで少し空振り感もあり。

振り返ってみると、景山民夫の「遠い海から来たCOO」みたいな読後感です。
後半、活劇になっちゃうとこと、期待してたより軽めのさわやか風味だったとこが似ています。
ラストはどちらもじーんときた。

/「スメル男」原田宗典
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