
「大化け寸前!たぶん。」
三浦しをんの、とくに小説の文章は、けっこうこってりしている。
コクのある生クリームみたいなかんじ。
そこに描かれる世界も、近代文学と漫画がねっとりと混ざった雰囲気があって、
ちょっと胃が弱っているときにはもたれそうだが、
もちろん嫌いではない。
「むかしのはなし」は、「かぐや姫」「浦島太郎」などをほのかにモチーフにした(?)七つの短編が収められていて、
これらはゆるい連作になっている。
「あー、なんか甘いものが食べたいな~」というときにはお奨めしたい一冊だ。
個性が煮詰まったマロングラッセのような「濃い」登場人物たちが魅力的で、
それぞれの落ちも文句なくおもしろい。
しかし、それと同時に、ほんのわずか、だけど決定的な「もやもや」を感じてしまうのだ。
もう一歩、なんかドンとくるものが欲しい!
これはたとえば姫野カオルコにずっと感じていたものと同じで、
「ツ、イ、ラ、ク」を読んだときには、
「そうそう!!自分はこれを待っていたんだ!!ありがとう姫野カオルコッ!!」と心の中で吠えたものだ。
そして、三浦しをんにももうすぐそれが来る気がする。くわーっ、楽しみ。
まあ、一方的に決め付けて、一方的に期待しているわけですが。
三浦しをんの作る洋菓子は、確かにおいしいんだけど、
なんだか「おいしいケーキのチェーン店」で売られているものみたいだ。
それは見た目も味も文句ないのに、陶器のカップをよく見るとプラスティック製だったりして、
なまじ陶器に見えるだけに余計な失望をしてしまう。
下手なたとえで申し訳ない。
でもこのもどかしさをお伝えしたかったのでした。
直木賞候補にもなってるんだよ~。