快読日記

日々の読書記録

「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」トゥーラ・カルヤライネン

2014年11月10日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《11/10読了 セルボ貴子・五十嵐淳/訳 河出書房新社 2014年刊 【評伝】 Tuula Karjalainen(1942~)》

それまで断片的にしかなかったトーベ・ヤンソンに関する知識の大きな隙間をみっちり埋めることができるうれしい本。
若い頃は何人かの男性とも付き合っていたんですね、しらなかった。
中でも、スナフキンのモデルといわれるアートス・ヴィルタネンと結婚していたら、どんな人生になったんだろう。
晩年、インタビューに答えて人生を振り返ったとき、変化に富み、充実した仕事をし、愛にあふれた一生を幸せだと感じつつも、「もし人生をやり直せるとしたらまったく別の人生を送るだろう、とも言っている。どんな別の人生を送りたいのかまでは語りたがらなかった」(350p)。
誰にでも“選ばなかった”方の人生があって、それと実際の人生とを比べることは誰にもできません。

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若い頃に書いた雑誌の表紙イラストの風刺が予想以上に過激でおもしろかった。
読みながら何度も長谷川町子のことを思い出しました。
違うところもたくさんあるけど、どちらもかわいくてちょっといじわる。
平和を愛し、信頼できる家族や友人を得て、質量ともに超人的といえる仕事をこなし、大人気キャラクターを生んだあとの苦悩もひととおりではなかった。
そして、ふたりともお母さんにはならなかった。

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実はわたしはヤンソンのいい読者ではなく、ちゃんと読んでるのはムーミン以降の小説作品ばかりで、ムーミンにはいまひとつ入り込めなかったんですが、本書でいくつかのムーミンの分析や指摘に触れ、もう一度読んでみようという気になりました。
今年、生誕100年を迎えるんだそうです。

/「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」トゥーラ・カルヤライネン