快読日記

日々の読書記録

「伊藤若冲 よみがえる天才1」辻惟雄

2020年05月20日 | アート・映画など
5月20日(水)

伊藤若冲を“発見”した人、辻惟雄の「伊藤若冲 よみがえる天才1」(ちくまプリマー新書)を読了。

1970年刊の「奇想の系譜」には挫折したままのわたしですが、こっちはわかりやすかったです。
めっちゃおもしろい講義をたっぷり聞いた、という読後感。

ふんだんに掲載された図版(しかもカラー!しかも1,000円というお買い得!)のおかげで、絵をじっくり見ながらお話を読めます。

「若冲絵画のおもしろさは、(中略)対象をどんなに精密に写実的に写生したとしても、決してその客観的な再現にはなっていないところ」(56p)というところで、ああ!わたしも若冲の絵のそういうところが好きなんだと気づかされました。

後半では医師・赤須孝之氏の若冲作品におけるフラクタルの分析や、自閉スペクトラムと若冲の関係を指摘した華園力氏の論文を取り上げて解説しています。

その内容がおもしろいのはもちろん、“若冲研究の元祖であり第一人者”である筆者が、新しい視点で若冲をとらえようとする人たちの論説を無視したり拒否したりせず、しっかり取り入れて解釈するその姿勢がかっこいいわ~と惚れ惚れしたのでした。