快読日記

日々の読書記録

「ニセモノ師たち」中島誠之助

2008年05月04日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《ニセモノが人を騙すのではない。人が人を騙すのだ》





ニセモノを取り巻く人々の世界を淡々とした筆致でかつドラマティックに描いています。
ついうっとりしてしまうのが、筆者の審美眼のキレのよさ。
モノの目利きは人の目利きでもあるんですね。

後書きに「無断のドラマ化等は切につつしまれたい」と念が押してあるのも納得、
ニセモノ作りのさまざまなテクニックや、心理を巧みに操る手口にはわくわくします。
ある骨董屋に騙されたコレクターが仕掛けた復讐劇にはゾクリとさせられました。

気になったのは筆者と養父一家の関係です。
以前読んだ「ニセモノはなぜ、人を騙すのか」や本書にも登場する、師であり伯父である養父という人が印象的で、
その死後、筆者が彼の店を継げなかったいきさつも、なんだか花登筐の世界みたいです。
完全に覗き趣味ですが。

自叙伝があったらぜひ読みたいです。
・・・って、どんだけ中島誠之助好きなんだ、自分。

■5/3読了
講談社文庫 2005年刊 (講談社 2001年刊) 【日本のエッセイ】