――「てあらにあつかってはいけません」
・・・さて、なんで、和歌のやり取りしてんだろうね。
木簡に幾つめかは投げておきたい和歌を書く。
『こぞ見てし秋の月夜は照らせども 相見し背はいや年さかる』
意訳すれば、『去年と同じ月夜だが、寝所で共に見た愛しい君とはどんどん年が離れてゆく』。
つまりは、そう言う人が忘れたくない人がいるから、私は貴方の気持ちの答えられないの。という返答。
兄の宗聖であり、婚約者でもあった山元総隊長であり、好きだった斬左である『背』。
原義で言えば、山元総隊長か斬左の事であるけれど。
それに対する政宗からの返歌が、次の歌。
『ふたつなき物と思ひしを 水底に山の端ならで出づる月かげ』
現代訳すれば、『月は一つしかないと思っていたが、山の端でなく池の底にも月が出た』
つまりは、『愛しい奴を一つに決めなくても良いんじゃねぇか、俺もお前の月になってやるぜ、yousee?』と言うところだろう。
ちなみに、無言でやり取りしている為、時折、筆の走る音以外はしない。
流石は、『鄙の華人』と呼ばれた伊達政宗だ。
世界が変わってもそれは変わらないらしい。
「・・・政宗様・・・・・・何故・・・・・・・・・そこまで熱心なの。」
「勿論、Wonderfully lovely Lady(素晴らしく素敵なレディ)だからだ。
・・・後、呼び捨てで良いぜ、My dearKitty(俺の可愛い子猫ちゃん)?」
「・・・・・・・・・・意図が解らない。」
「俺が、アンタを好きで欲しいわけだ。
I love you、I need you、I want you・・・・・・」
耳元で、低音ボイス・・・もっと言えば、中井和哉だったか、あれの声が口説いてきたのを想像して欲しい。
かつ、肩を抱いて手を握られている。
これが腰だったら、確実にぶん殴っているけれど。
とにかく、その腰にくるフェロモンボイスに押されかけた。
基本的に、私は人恋しい。
正確に言えば、人肌恋しいのだ。
触れてくるような奴は、十一番隊のを除けば、弟・聖弥と蓮華ぐらいだ。
蓮華は、元が元だから体温なんて無いし、聖弥の状況が状況だ。
聖弥の場合は、どうにも自慰っぽいのが拭えないし。
頭を撫でるぐらいなら、普段から浮竹くんとか京楽くんとかもしてくるけど。
それだけじゃ物足りない。
・・・物足りないんだが、怖い。
怖いんだ、何が?だなんてわかってはいるけど解りたくない。
口説かれたいわけじゃない。
ただ、ただ・・・。
「・・・・・死なないで欲しいのに。」
思わず、声になってしまった。
そう、思われたいわけではない。
ただ、死なないで・・・いなくならないで欲しい。
職場が職場だ、望むべくもないけれど。
昨日、笑っていた連中が、今日にはいなくなってしまう。
それでも、知っている誰かがいなくなるのは哀しい。
(私にとっての)数日前、藍染くんは散った。
神になり代わろうなどとそんな野望の為に。
これで兄さまを知っている人がまた一人死んだ。
そうでなくても、東仙くんやギンも・・・いなくなってしまった。
どうして、死ねないんだろう。
元ちゃんを置いて行きたくない、とは言っても、もう二千を大きく超えた。
結婚もできないのなら、とっとと逝きたい。
一応、宗泰と沙耶がいるのだから、暫定当主には困らないのだし。
宗泰の方は、兄様ほどじゃないけど結構、当主向きだと思うんだけどな。
「Kitty?」
「・・・・・・ううん、なんでもない。」
つらつら、思考を流していたら、政宗に覗きこまれた。
正確に言うなら、抱きあげられて、膝の上に載せられた。
「ah・・・ナルから、聞いたか?」
「ちょっと。
立場が解らないでもないから、尚更、お前の言葉が解らない。」
会話に専念する為、私はトーンを落として、そう呟くように話す。
これなら、道具なしかつ沈黙なしで会話はできる。
ちなみに、言ったことは本当だ。
一応、とは付くけれど、暫定とは付くけれど。
鷹旡の家の当主だし、十一番隊でも四席だ。
上から四番目だが、上の三人が事務方が壊滅している為最低限の指揮は私がするわけだし。
それなりに責任が伴う立場だ。
「situation?」
「それとポジションの方。
斎宮と知識を護る方を担っている家の暫定当主、なの。
実務面じゃないけれどね、重みは解らないわけじゃないわ。」
「・・・俺の気持ちは、誓ってTruth(真実)だぜ?」
「・・・・・・・・・怖いんだ!!」
私は叩き付けるように、そう言って逃げてしまった。
政宗には、消えたように視えただろう。
所謂、瞬動だ。
さて、何処に行くか。
見つかるにしても、何処に行くか。
「はじめまして、ボクは、まぁ、見ての通り、ミュウだね。」
『貴様は何だ。』
「種族も世界も何もかも違うけれど、友だよ。
背中を預けれる数少ない戦友(とも)だ。」
表情豊かに、その色違いで瞳が橙のミュウはそう宣う。
成人してはいるが稚気と影が同居した女性のような印象。
それが、多少の違いはあれど、この場にいた魔獣達が受けた印象だ。
口調や態度からは、少年のようなそんな印象であるのに。
『おねえちゃんと、ママいっしょなの?』
「・・・良く解るね、ボクのこの口調で。
演劇離れて三年とはいえ、仕事が仕事だからバレないと思ってたのに。
流石、レンの手持ちだ。」
指摘をしたに、ふわりと微笑むミュウ。
まぁ、『彼女』としても、ラプラスが手持ちにいると聞いて、多分、バレるとは思っていたのだろうけれど。
ラプラスの特性は、『人の気持ちを察すること』と図鑑に書いてある程度には人の気持ちには敏感だ。
「今のボクに語れることなど、数少ない。
せいぜい、今の君達の状況の理由、そして、何故、レンに近づいてはいけない理由ぐらいだ。
・・・本当に、カミサマと言うのはクソクダラナイ。
私に会わなかった彼らと何故合流させるのだろうね、私のワガママもあると言えど。」
人間で言うなら、ニコニコと友好的に笑いながら、そう言い放つミュウ。
最後の二言は、人を憎んでいたミュウツーですら怖気が走るほどに、酷薄な響きを持っていた。
そして、恐らくは、素である一人称が出て居た辺り、とても、怒っているのだろうか。
「質問は?」
『じゃ、ここはどこになるの?
カントーでも、シンオウでもないよね?
カントーにしては涼しいけど、シンオウにしては暖かいし。』
ミュウの問いかけに間髪いれずに、ブラッキーが質問してきた。
「その間の地域ね、貴方達が元々居た世界で言うとだけど。
カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウと似た地域はあるよ。
・・・貴方達が此処に飛ばされる三年四年、もう少し後かな、シンオウでとある陰謀があった。
端的に言えば、、ギンガ団のアカギと言う男が神になろうとして、とある少年達に阻止された。
・・・だけどね、不完全と言えども儀式は始まっていたんだ。」
淡々と面白くもなさそうに、ミュウは語って行く。
このミュウツー、ルースはロケット団が一度壊滅する少し前にロケット団を見限りギンガ団に身を寄せた研究者が造った、それだ。
そして、彼らがいた時間・・・と言うか居たのはジョウトの方でゴタゴタが起きている、と聞いた頃合いだ。
ジョウト―カントー間のリニモ完成に合わせ、両地方のジムリーダーのエキシビジョンバトルがあると、人々が騒いでいる頃にこちらに飛ばされた。
そう、ミュウ以外の此処にいる魔獣達が、彼らがレンカと呼ぶ少女と別れてから、三年が過ぎようとしていたのだった。
確かに、北のシンオウのギンガ団の名前は聞こえ始めていたのだが。
「例えて言うならね、そうだ、ね。
ゴム風船を二重にした中に君達の世界があるとする。
儀式が不完全だとはいえ始まっていたせいで、中の風船に穴が空き、外の風船も人間が通れる種類ではないけれど穴が開いた。
そこに数年前の君達がレンカと呼ぶ少女の行った渡航の軌跡が合わさってポケモンが吸い出されたんだ、それがボクの体感で3日前。
それを回収するのと穴を塞ぐ役目で向こうのトレーナーが7人、完全に穴を塞ぐのだけに一人呼びだしてこの世界にほおり込んだわけなんだ。」
『お前の事情もあるだろう?』
フシギバナの言葉に、ミュウは言葉をいったん切る。
そして、恐らく、素だろう。
ある意味で、自身のエゴも含んだ今回の事なのだから。
「ただ、ちゃんと『トモダチ』のままで、お別れさせてあげたいの、私としてはね。
あんな、『テキ』同士で別れてちゃうのは、とても悲しい事よ。」
『貴方は・・・』
切り替えるように、ミュウは『術式』を編む。
そう『術式』。
本来のポケモンには編む事が出来ない、それどころか知らない筈のそれ。
余程、真意を測って欲しくないのだろう。
「後は、向こうにいる男に聞いてくれ。
十日もしないうちに、レンカ・・・聖さんには会わせてあげるから。」
そう言うと、長距離移動の術式でこの場にいた自身以外のポケモンを送ってしまう。
実際の距離を言うと仙台から滋賀県琵琶湖付近まで飛んだ。
其処にいるのは、魔獣と呼ばれしポケモンをして更に強大な龍と竜。
そして、浅井氏ではなく、織田信長公より小城を預かる優男が彼らを迎えた。
「さてね、これでこの世界の物語も変じた。
どうなるのでしょうね、我が姫。」
青年は、転移の術が紡がれ発動した時そう呟いた。
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予定より時間がかかりましたが、アップです。
聖ちゃん、混乱するの回。
好きだけど、立場とトラウマってるから受け入れられないって聖ちゃん。
そして、逃げる聖ちゃん。
実を言うと、一本分展開早いです、何故じゃ~と某官ちゃん風に叫んどく。
そのおかげで、次回一本は当初のプロットから変えて全編、この連載の後よろしく、ポケモン×BASARA×脱色などなどに準拠します。
かつ、後半のPOKEBASAパ-トは多分、+モンハン。
このル-トでは、彼は織田信長の庇護にあるというお話。
また、薄桜鬼ル-トよりも数カ月前・・・原作の空白の一年少々のだいぶ最初の方で飛んでますので、若干やさぐれてます。
と言うか、正確には臆病になってる、と言うのでしょうか?
再び、『背』の君を作ることを。
後半のPOKEBASAパ-ト。
色々と、ミュウの中の人の事情見え隠れしてますが混合本編までは明かしません。
また、ありきたり、だろうとルビサファより、ダイパの方が混合トリップ向きなんだ。
後、これ以上の・・・例えば、ギンガ団の生き残りで反アカギ派は、少なくとも、集団ではださん。
一応、ダイパ数年後のBWから四人、カントーから一人、BWから25年以上後から二人なんでこれ以上増やすにしても数人かもです。
まぁ、人間ってのは同族にも、隠したの動物にも残酷になれるのよな?
とあれ、次の物語にて。
副題は、『r e w r i t e』様より、「小動物の10の飼い方」より