goo blog サービス終了のお知らせ 

セピア色の想い出。

日々の生活と、其処から生まれる物語の布飾り。

二世を願う 3

2013-05-26 18:50:09 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次



――「てあらにあつかってはいけません」


・・・さて、なんで、和歌のやり取りしてんだろうね。
木簡に幾つめかは投げておきたい和歌を書く。
『こぞ見てし秋の月夜は照らせども 相見し背はいや年さかる』
意訳すれば、『去年と同じ月夜だが、寝所で共に見た愛しい君とはどんどん年が離れてゆく』。
つまりは、そう言う人が忘れたくない人がいるから、私は貴方の気持ちの答えられないの。という返答。
兄の宗聖であり、婚約者でもあった山元総隊長であり、好きだった斬左である『背』。
原義で言えば、山元総隊長か斬左の事であるけれど。
それに対する政宗からの返歌が、次の歌。
『ふたつなき物と思ひしを 水底に山の端ならで出づる月かげ』
現代訳すれば、『月は一つしかないと思っていたが、山の端でなく池の底にも月が出た』
つまりは、『愛しい奴を一つに決めなくても良いんじゃねぇか、俺もお前の月になってやるぜ、yousee?』と言うところだろう。
ちなみに、無言でやり取りしている為、時折、筆の走る音以外はしない。
流石は、『鄙の華人』と呼ばれた伊達政宗だ。
世界が変わってもそれは変わらないらしい。
「・・・政宗様・・・・・・何故・・・・・・・・・そこまで熱心なの。」
「勿論、Wonderfully lovely Lady(素晴らしく素敵なレディ)だからだ。
・・・後、呼び捨てで良いぜ、My dearKitty(俺の可愛い子猫ちゃん)?」
「・・・・・・・・・・意図が解らない。」
「俺が、アンタを好きで欲しいわけだ。
 I love you、I need you、I want you・・・・・・」
耳元で、低音ボイス・・・もっと言えば、中井和哉だったか、あれの声が口説いてきたのを想像して欲しい。
かつ、肩を抱いて手を握られている。
これが腰だったら、確実にぶん殴っているけれど。
とにかく、その腰にくるフェロモンボイスに押されかけた。
基本的に、私は人恋しい。
正確に言えば、人肌恋しいのだ。
触れてくるような奴は、十一番隊のを除けば、弟・聖弥と蓮華ぐらいだ。
蓮華は、元が元だから体温なんて無いし、聖弥の状況が状況だ。
聖弥の場合は、どうにも自慰っぽいのが拭えないし。
頭を撫でるぐらいなら、普段から浮竹くんとか京楽くんとかもしてくるけど。
それだけじゃ物足りない。
・・・物足りないんだが、怖い。
怖いんだ、何が?だなんてわかってはいるけど解りたくない。
口説かれたいわけじゃない。
ただ、ただ・・・。
「・・・・・死なないで欲しいのに。」
思わず、声になってしまった。
そう、思われたいわけではない。
ただ、死なないで・・・いなくならないで欲しい。
職場が職場だ、望むべくもないけれど。
昨日、笑っていた連中が、今日にはいなくなってしまう。
それでも、知っている誰かがいなくなるのは哀しい。
(私にとっての)数日前、藍染くんは散った。
神になり代わろうなどとそんな野望の為に。
これで兄さまを知っている人がまた一人死んだ。
そうでなくても、東仙くんやギンも・・・いなくなってしまった。
どうして、死ねないんだろう。
元ちゃんを置いて行きたくない、とは言っても、もう二千を大きく超えた。
結婚もできないのなら、とっとと逝きたい。
一応、宗泰と沙耶がいるのだから、暫定当主には困らないのだし。
宗泰の方は、兄様ほどじゃないけど結構、当主向きだと思うんだけどな。
「Kitty?」
「・・・・・・ううん、なんでもない。」
つらつら、思考を流していたら、政宗に覗きこまれた。
正確に言うなら、抱きあげられて、膝の上に載せられた。
「ah・・・ナルから、聞いたか?」
「ちょっと。
 立場が解らないでもないから、尚更、お前の言葉が解らない。」
会話に専念する為、私はトーンを落として、そう呟くように話す。
これなら、道具なしかつ沈黙なしで会話はできる。
ちなみに、言ったことは本当だ。
一応、とは付くけれど、暫定とは付くけれど。
鷹旡の家の当主だし、十一番隊でも四席だ。
上から四番目だが、上の三人が事務方が壊滅している為最低限の指揮は私がするわけだし。
それなりに責任が伴う立場だ。
「situation?」
「それとポジションの方。
 斎宮と知識を護る方を担っている家の暫定当主、なの。
 実務面じゃないけれどね、重みは解らないわけじゃないわ。」
「・・・俺の気持ちは、誓ってTruth(真実)だぜ?」
「・・・・・・・・・怖いんだ!!」
私は叩き付けるように、そう言って逃げてしまった。
政宗には、消えたように視えただろう。
所謂、瞬動だ。
さて、何処に行くか。
見つかるにしても、何処に行くか。








「はじめまして、ボクは、まぁ、見ての通り、ミュウだね。」
『貴様は何だ。』
「種族も世界も何もかも違うけれど、友だよ。
 背中を預けれる数少ない戦友(とも)だ。」
表情豊かに、その色違いで瞳が橙のミュウはそう宣う。
成人してはいるが稚気と影が同居した女性のような印象。
それが、多少の違いはあれど、この場にいた魔獣達が受けた印象だ。
口調や態度からは、少年のようなそんな印象であるのに。
『おねえちゃんと、ママいっしょなの?』
「・・・良く解るね、ボクのこの口調で。
 演劇離れて三年とはいえ、仕事が仕事だからバレないと思ってたのに。
 流石、レンの手持ちだ。」
指摘をしたに、ふわりと微笑むミュウ。
まぁ、『彼女』としても、ラプラスが手持ちにいると聞いて、多分、バレるとは思っていたのだろうけれど。
ラプラスの特性は、『人の気持ちを察すること』と図鑑に書いてある程度には人の気持ちには敏感だ。
「今のボクに語れることなど、数少ない。
 せいぜい、今の君達の状況の理由、そして、何故、レンに近づいてはいけない理由ぐらいだ。
 ・・・本当に、カミサマと言うのはクソクダラナイ。
 私に会わなかった彼らと何故合流させるのだろうね、私のワガママもあると言えど。」
人間で言うなら、ニコニコと友好的に笑いながら、そう言い放つミュウ。
最後の二言は、人を憎んでいたミュウツーですら怖気が走るほどに、酷薄な響きを持っていた。
そして、恐らくは、素である一人称が出て居た辺り、とても、怒っているのだろうか。
「質問は?」
『じゃ、ここはどこになるの?
 カントーでも、シンオウでもないよね?
 カントーにしては涼しいけど、シンオウにしては暖かいし。』
ミュウの問いかけに間髪いれずに、ブラッキーが質問してきた。
「その間の地域ね、貴方達が元々居た世界で言うとだけど。
 カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウと似た地域はあるよ。
 ・・・貴方達が此処に飛ばされる三年四年、もう少し後かな、シンオウでとある陰謀があった。
 端的に言えば、、ギンガ団のアカギと言う男が神になろうとして、とある少年達に阻止された。
 ・・・だけどね、不完全と言えども儀式は始まっていたんだ。」
淡々と面白くもなさそうに、ミュウは語って行く。
このミュウツー、ルースはロケット団が一度壊滅する少し前にロケット団を見限りギンガ団に身を寄せた研究者が造った、それだ。
そして、彼らがいた時間・・・と言うか居たのはジョウトの方でゴタゴタが起きている、と聞いた頃合いだ。
ジョウト―カントー間のリニモ完成に合わせ、両地方のジムリーダーのエキシビジョンバトルがあると、人々が騒いでいる頃にこちらに飛ばされた。
そう、ミュウ以外の此処にいる魔獣達が、彼らがレンカと呼ぶ少女と別れてから、三年が過ぎようとしていたのだった。
確かに、北のシンオウのギンガ団の名前は聞こえ始めていたのだが。
「例えて言うならね、そうだ、ね。
 ゴム風船を二重にした中に君達の世界があるとする。
 儀式が不完全だとはいえ始まっていたせいで、中の風船に穴が空き、外の風船も人間が通れる種類ではないけれど穴が開いた。
 そこに数年前の君達がレンカと呼ぶ少女の行った渡航の軌跡が合わさってポケモンが吸い出されたんだ、それがボクの体感で3日前。
 それを回収するのと穴を塞ぐ役目で向こうのトレーナーが7人、完全に穴を塞ぐのだけに一人呼びだしてこの世界にほおり込んだわけなんだ。」
『お前の事情もあるだろう?』
フシギバナの言葉に、ミュウは言葉をいったん切る。
そして、恐らく、素だろう。
ある意味で、自身のエゴも含んだ今回の事なのだから。
「ただ、ちゃんと『トモダチ』のままで、お別れさせてあげたいの、私としてはね。
あんな、『テキ』同士で別れてちゃうのは、とても悲しい事よ。」
『貴方は・・・』
切り替えるように、ミュウは『術式』を編む。
そう『術式』。
本来のポケモンには編む事が出来ない、それどころか知らない筈のそれ。
余程、真意を測って欲しくないのだろう。
「後は、向こうにいる男に聞いてくれ。
 十日もしないうちに、レンカ・・・聖さんには会わせてあげるから。」
そう言うと、長距離移動の術式でこの場にいた自身以外のポケモンを送ってしまう。
実際の距離を言うと仙台から滋賀県琵琶湖付近まで飛んだ。
其処にいるのは、魔獣と呼ばれしポケモンをして更に強大な龍と竜。
そして、浅井氏ではなく、織田信長公より小城を預かる優男が彼らを迎えた。


「さてね、これでこの世界の物語も変じた。
 どうなるのでしょうね、我が姫。」
青年は、転移の術が紡がれ発動した時そう呟いた。




++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



予定より時間がかかりましたが、アップです。
聖ちゃん、混乱するの回。
好きだけど、立場とトラウマってるから受け入れられないって聖ちゃん。
そして、逃げる聖ちゃん。
実を言うと、一本分展開早いです、何故じゃ~と某官ちゃん風に叫んどく。
そのおかげで、次回一本は当初のプロットから変えて全編、この連載の後よろしく、ポケモン×BASARA×脱色などなどに準拠します。
かつ、後半のPOKEBASAパ-トは多分、+モンハン。
このル-トでは、彼は織田信長の庇護にあるというお話。


また、薄桜鬼ル-トよりも数カ月前・・・原作の空白の一年少々のだいぶ最初の方で飛んでますので、若干やさぐれてます。
と言うか、正確には臆病になってる、と言うのでしょうか?
再び、『背』の君を作ることを。





後半のPOKEBASAパ-ト。
色々と、ミュウの中の人の事情見え隠れしてますが混合本編までは明かしません。
また、ありきたり、だろうとルビサファより、ダイパの方が混合トリップ向きなんだ。
後、これ以上の・・・例えば、ギンガ団の生き残りで反アカギ派は、少なくとも、集団ではださん。
一応、ダイパ数年後のBWから四人、カントーから一人、BWから25年以上後から二人なんでこれ以上増やすにしても数人かもです。
まぁ、人間ってのは同族にも、隠したの動物にも残酷になれるのよな?


とあれ、次の物語にて。



副題は、『r e w r i t e』様より、「小動物の10の飼い方」より

二世を祈る 2

2013-04-14 16:57:53 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次






繰り返すけど、薄桜鬼ル-トとは別ル-ト。
斎藤一とは出会ってもいないのです。
後、この連載の後の連載の伏線を捲いていこうか。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++








―『しげきぶつをあたえてはいけません』





私が、目覚めた翌朝。
喜多さんと言う、女性・・・多分、怒らせてはいけない類の女性だと思う、肝っ玉母ちゃん的な意味合いで・・・が私の世話をすることになったらしい。
まぁ、多分、監視も含めているのだろう。
少なくとも、ゴツイ兄ちゃんが見張っているよりは、よほど楽だ。
「・・・治り、早いですね。」
「・・・・・・」
包帯を変えながら、彼女はそう言う。
喋るわけにもいかないので、紙にさらさらと書く。
以下、発言は紙に書いたものだと思って欲しい。
『昔から、早い。
 ・・・親から怖がられるぐらいにね。』
「あらあら、そうなんですか。」
『喜多さんは怖くないの?』
「これくらいで怖がっていては、此処でやっていけませんからね。
 あと、喜多と呼び捨てにしてください。」
『クセ、多分無理。
 見た目がこれで、二十後半以上の人を呼び捨てにはできないよ。』
「・・・よくわかりますね。」
『これでも、外見以上には年寄だから。』
「え?」
『・・・実年齢は秘密ってことで。』
結論から言えば、喜多さんは、お袋さんだと思う。
本人に言ったら真面目に殺・・・シバキに来るだろうけど。
・・・あの女、私の母親だったの沙聖よりも、何か母親な感じだ。
暖かいというか、そんな感じのぬくもりある女性だ。
十一番隊とは違った意味で、ね。
其処にかけられた声。
「梵が拾った子って、キミ?」
『誰?
 ・・・伊達成実?』
政宗に似た・・・と言うか、アイツの頭を更に天パっぽくした感じで表情も緩い。
年齢と身長は、多分政宗同じぐらいだし、眼帯もしてない。
視線を合わさずに、示した上の紙。
素直に、驚いてくれてる分、若いなぁ。
正確には、青いとでも言うべきなのかな。
「へぇ、」
「なんの・・・・・・用?
 ・・・死にたくて来たの・・・・・・・・・かしら。」
「喋れないわけじゃなかったの?」
「・・・・・・・・・喋るの・・・リスク・・・・・・あるだけ・・・。
 殺気・・・ぶつけてくる・・・・・・なら・・・遠慮しない。」
「ごめんごめん。
 で、なんなの?」
「何が・・・・・・その質問聞いてる・・・・・・・・・その時点で答え。
 ・・・・・・答える義理は無い・・・・・・・・・・・・私も混乱している。」
殺気をぶつけられたから、ぶつけ返してみる。
子猫にパンチをされたようなものだけど、殺気は読んで字の如く、『殺す気』だ。
逆に、殺されても文句は言えまい。
今が戦国の世に分類されるならば、尚更。
と言うか、謝りながら、殺気強くしてるし。
それなら、遠慮はいらないか。
「・・・へえ。「何していやがんだ、ナル。」
「って、梵。
 俺は、成実(なりざね)だって。」
「お前こそ、梵じゃねぇ。」
「って、ちょっと、聖ちゃん?」
殺気を強くし損ね、つんのめった。
政宗が口を挟んだ時点で、急いで、成実の背中に張り付く。
ついでに、猫のように威嚇する。
うん、「ふしゃー」とかそういうの。
コイツ苦手だ、つか、昨日お月さまにしたのに良く来れるとか思ってしまう。
「・・・梵、何したの?」
「hugして、deepkissかましただけだ。」
「いきなりするの・・・・・・酷いなの。
 ・・・初めてじゃない・・・・・・けど・・・・・・・・・こわかったもん。」
「政宗様、女性に・・・いえ、怪我人に何を為さっておいでで?」
「喜多、ah・・・そのな。」
「聖様は、安静になさっていてください。
 ・・・政宗様を叱ってきますので」
ひょいと軽々と成実から、私を抱き上げると布団に下ろして肩まで布団を掛けてくれた喜多さん。
・・・一応、軽いって言っても、40キロほどあるんだけど。
そして、子猫のように襟を掴んで、政宗は退室した。
しばらくして、(恐らく)政宗の悲鳴が聞こえてきたのは自業自得というものだろう。
ちなみに、成実はそれを笑顔で見送って布団の横に鎮座している。
それで質問してきた。
「・・・で、聖ちゃんは、梵のことどう思ってるの?」
「・・・解らない。
 ・・・・・・と言うより・・・怖い・・・」
「怖い?
 いきなり、抱きつかれたり口吸いされたりしたから?」
「・・・怖かったもん。」
実際怖かったのは、行為よりも好意。
それが人間からならば、尚更の事。
必ず、置いて逝かてしまうから。
例え、同じ死神でも、奪われるから。
だから、怖い。
そういう好意が嬉しくないわけじゃない。
二世を・・・子どもを作りたいとまで思った相手は、もういなくなってしまった。
直接の、私の腹を借りていない息子娘は居る。
私が知っていた伊達政宗の息子・宗泰と娘・沙耶の二人。
母親は、祥光院と言う女性だが、諸事情あって取り付いていたのだ。
遠い未来に、母と慕ってくれる子達もいる。
生んだわけじゃないけど、血の繋がった息子も。
だけど、一番側にいて欲しい・・・背中を預けても良い背の君は居なくなってしまう。
一番初めに二世を願った相手は、今も同じ職場ではあるけれど、誰よりも遠い場所にいる。
強引だとは思うが、政宗の行動は戸惑いこそ覚えても、嫌ではない。
ただ、失うのがイヤなのだ。
「・・・・・・強引にされたって割に、嫌じゃなかった?」
「・・・・・・」
まぁ、その言葉で顔が赤くなったのは自分でも判ったから顔は成実から見えない方に背ける。
面白がるような気配がしたが、向くに向けない。
「これ、俺の独り言ね。
 梵はさ、一応、国主だし、病弱っても奥さんいるけどさ。
 あくまでも、『伊達』として出羽と陸奥に必要だから、なわけ。
 天下取りもまぁ、その一つだよね。
 いつきちゃん達を知っちゃったから、それを変える為にさ。
 でもね、まだ、身元が解らないのに会うし、気持ち伝えちゃってるし。
 なんて言うのかな、独眼竜でも伊達政宗でもない梵初めて見た気がする。」
「・・・嫌いじゃない。
 まだ、何も知らないのに、そう言うこと言われても困る。」
「いまは、それでいいと思うよ。
 さて、そろそろ、梵に助け舟出してくるとしますか。」
顔を背けたまま、成実の言葉に答えた。
その後、彼がこの部屋を出た音がした。
「・・・どうしろって。」
私は音が欲しくて、そう一言だけ呟いた。
直後、私は二度と会う筈のない気配がいることにやっと気付いたのだった。
・・・何が起こっている?
もしかして、ギンガ団のあれが影響を与えての結果?






青葉城近郊の山。
大きなトカゲに南国の草花を乗せた大きな魔獣―フシギバナ。
かつて、シュタムと呼ばれた雄の魔獣。
九尾の大きな、そして銀色の輝く狐に似た魔獣―キュウコン。
かつて、リュミエと呼ばれた雌の魔獣。
青い身体と綿雲のような羽根を持った鳥の魔獣―チルタリス。
かつて、アージュと呼ばれた雄の魔獣。
白と紫色の人型をした人工的な魔獣―ミュウツー。
かつて、ルースと呼ばれた性別が解らぬ魔獣。
黒い猫のようで黄色の模様が入った魔獣―ブラッキー。
かつて、ルツと呼ばれた雌・・・のような雄の魔獣。
青い首長竜のような魔獣―ラプラス。
かつて、ランセと呼ばれた雌の魔獣。
そう、かつては全員、主人がいた。
住処も同族が数多く住んでいる地方すらも違う六匹。
ただ、彼らは一人の少女を探していた。
一か月も一緒にいなかった。
だけど、彼女以外を主人に持つ気はない。
チルタリスとラプラスはまだ、幼いと言っても良い精神年齢だ。
逆に、ミュウツーとフシギバナは年嵩の面子。
ブラッキー、キュウコンは中間の年齢層だ。
人間で言うならば、チルタリスとラプラスは小学生低学年。
ミュウツーとフシギバナは二十代後半。
ブラッキーとキュウコンは十代後半から二十代前半ぐらいだ。
『レンカの気配してる。』
『あの人間の城からですね。
 ・・・何故、人が電気タイプを扱えるのでしょう。』
『ママに会いたいけど、ママが困るなら我慢するよ。』
『・・・レンカは、怪我をしているようだからな。
 しばらくは様子見だ。』
『なんだよね、此処じゃボクらみたいのは魔獣だもん。
 見つかったら、ヤバイヤバイ。
 ・・・こっから、北の村のいつきちゃんって子はまだしも、一般人は魔獣=殺す対象って感じだし。』
『むぅ、ママにあいたいもん。』
『ランセ、アージュ。
 私とてレンカに会いたいが、事情が解らぬのに会えぬだろう。』
「そうしてくれると、助かるかな。」
ミュウツーの能力を介して会話していたのだが、同族に・・・しかし、人間の言葉で声をかけられた。
本当の意味で、いつの間にか、この六匹の側にいた。
それは、色違いの青いミュウだった。
違いは通常、青の瞳が、夕焼けの橙色になっていたところ。
「はじめまして、ボクは・・・」
そうして、そのミュウは名乗る。




「ただ、ちゃんと『トモダチ』のままで、御別れさせてあげたいのだよ、ボクとしてはね。」
そして、語られたこの騒動の裏側の『ひとつ』。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


半年ぶりの2話。
色々裏で足し引きしてたんです。
と言うかね、BW原作組はともかく、四人分のガチパ-ティは死んだ。
・・・あれが親なら子どもはグレると思うんだ




と言うわけで後半は、『二世を祈る』の後のポケモン×BASARA×脱色×オリジナル+アルファのネタ振りその1。
出演は、聖ちゃんこと、レンカ(@聖ちゃんの偽名)の手持ちズ+謎のミュウでした。
1の時点で聖ちゃんもポケモン持ちなのは決定してましたが、トリップ帰還後云々は決めて無かった(笑)
一応、原作じゃなく、ポケスペ第一章関わってそこから、シンオウに渡ってのミュウツーゲット。
なんで、シキとの面識は間接的にあるけど、ミュウツーは驚かれる。
時間軸的に、マグマ団とアクア団は普通の環境保護団体ッぽく思われていそうだし。
カツラさんのとこにいた研究者系のロケット団の中にはきっと、途中で見限った奴もいるだろうし。
と言うわけで、ポケスペにいるミュウツーとこのミュウツーは別個体です。
かつ、ポケスペミュウツーより更に、おやである聖ちゃんに依存している感じ?
また、年齢的には、六匹の中で一番若いかもしれません。



さて、なるべく早いうちに。


(13.5月某日 修正)







副題は、『r e w r i t e』様より、「小動物の10の飼い方」より

闇に舞う天翼 6 二度と重ならないと知っている 1

2013-01-09 18:29:22 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次



万物は流転し、巡り巡り合わせる。

一度手を離してしまったら、もう二度と重ならない。

だから、手をつかんだなら、二度と放してはいけないよ。








闇に舞う天翼 6 二度と重ならないと知っている 1







「どうした?」
ある程度、どんな話されたか解っていて聞くのは、意地の悪い質問だと思う。
今は、もう、十歳近く年下になってしまった2人。
あの世界で、蒼紅と呼ばれる若手でライバル同士。
だけど、私には良い兄で大好きな兄達だった。
定番の『大きくなったら、お兄ちゃんのお嫁さんになるの!!』を言ってしまうぐらいに。
泣きたくなるぐらいに懐かしい・・・特に、政宗の声は、もう聞けないと思っていたあの人と同じだったもの。
「・・・お市殿に何があったでござるか?」
「・・・・・・私が、面識あるのは、豊臣に利用される筈の道筋の彼女。
 私がそっちに行った影響を加味しても、最悪に近い道筋を歩んだわね。
 まぁ、もう片方に拾われていても、最悪から一つだけマシな状況なだけ。
 一緒に死ねていればまだ、幸せだったかもしれないわね。
 ・・・その道筋の彼女・・・旦那を殺されて、その仇に利用され精神壊し、それでも仇を討てるところを明智光秀に掻っ攫われて。
 推測だけど、仇の残党に念入りに精神を壊されて・・・方法は言わないわよ、尊厳を奪うならとれる方法は少ないし、元々半分以上壊れていたんだもの、彼女。
 旗印として利用され、能力を兵器として利用されているところを豊臣に目をつけられて、利用される寸前に、萩行幹久が別の世界に送ったの。
 そこで、私は再会して、精神病理学・・・心の医学ね、それと私の能力を合わせて、ある程度の再構築をした。
 ・・・・・・自分で聞いておいて、泣きそうにならないの。」
タイプライターの音の方がよほど、感情的だろうと言うぐらいに、淡々と棒読みにもほどがあるほどに無抑揚に言葉を紡ぐ。
そうでもしないと、怒鳴りつけてしまいたくなるから。
見ていたわけじゃないけど、こちらの原作、それの2や外伝。
或いは、彼女の物語の後で、天下繚乱のあの世界で再会した時の様子から容易に何があったか推測できてしまう。
話を聞いていた幸村が、泣いた。
それに返す言葉でやっと、感情が乗ったぐらいだ。
まぁ、姉が弟に対するような呆れ混じりのそれ。
前は、逆に兄が妹に対するようにわたわたと彼が慌てていた。
変装用のハンカチ・・・と言うとあれだが、服装だけ変えて小物を変えないとバレやすいからだ・・・を取りだして、幸村に差し出す。
ちなみに、ベーシックな無地から花柄総レースがあるが、それはまぁ、別の話だ。
見られたくないのはわかるから、服を選らんでいく。
先に幸村に、赤の染抜きデザインで白基調の長袖カットソー、ダメージ少な目のブルージーンズ、赤い袖に黒地の上に赤い炎の上で猛け狂う銀虎を刺繍した所謂、スカジャン。
政宗に、インナーにヒ-トテックのタンク着せて、藍染絞りの長袖ティーシャツに、明るめの蒼のデニム、蒼い袖に黒地の上に青と紫の雷をまとって吠える青い龍を刺繍した、スカジャン。
それぞれ、渡す。
ちなみに、2人に渡したスカジャン。
もう一枚、緑色の袖で、黒地に白い炎と淡い緑の雷をまとった麒麟を刺繍したもので、三枚セットである。
それはサイズが、兄弟のうちで誰も合わなかったので、先代で二代目の薬袋大命(みない・ひろや)にあげた。
この二枚にしても、あげ損ねて幾星霜と言うレベル。
多分、今日会うだろうな。
先代は、名前で多少予測できるだろうが、寺の息子だ。
次男だか三男だかで後継ぎじゃないが、一応、得度はしているが、今は昔の仲間と輸入雑貨系の会社をしている。
嫁さんは、花屋をしていたっけ。
剃頭が死ぬほど似合わない寺の息子、と言っても、清廉潔白じゃない。
本人もだけど、寺ってのは地域の顔役だ。
時乃市、旅宮市として再編成する前からある寺なら尚更。
一昔前の日本だと、同じ顔役の任侠との繋がりもそれなりだ。
まぁ、真っ黒でもないけど、先代が特別異端児ではない、ということ。
裏稼業との繋がりは、初代のせいもあってあるかないかでいえば、あるし、それなりだ。
というか、そもそも、四代目まで私を含めて裏稼業だし、はっきり関係無いのは二代目だけだし、凶悪だけど。
警察は、私と・・・外国の貴族の後継ぎ候補と繋がりあるのをよほどの証拠がない限り、手入れしないだろう、目ざわりでもね。
かつ、あの人の私は妹に似ているらしい。
もちろん、此処まで大柄じゃなかったけど、可愛いより綺麗系の美人で、あのチームとの抗争で無くしたらしい。
写真を見たけど、嫁の茜さんとは違う・・・凛々しい黒髪の和風美人だった。
それもあって、あことは不倶戴天、代が変わってもそれは拍車がかかってる。
と言うか、四代目が更に悪化させちゃったからね。
能力を非能力者に使うし、女の子の顔に傷はマズイでしょ、四代目。
「着替え方は、今、いっちゃん呼ぶから。」
「・・・annoyanceじゃねえのか?」
「どういう意味で?」
「いきなり、十人も抱え込んで・・・」
「私も向こうでは世話になったわ。
 それに、政宗達の意思で来たわけじゃないしね。
 後、金銭面は問題ないの、これでも、売れっ子作家だし?」
この間、完結した新人賞で受賞したシリーズ・・・デビュー作だったそれは、二十巻ほど続いて、最後の十二巻(番外編と過去シリーズ込みで二十数冊を数えた)の初版が三万部強だったかな。
ちなみに、ブリッツ文庫というメジャーなレーベルだ。
即日じゃないけど、発売して今日で二週間目だけど、10回ほど増刷したらしいってのは聞いた。
だから合わせて、6万強刷れたことになるのかな、うん。
ハルヒなんかの初版比べると10分の1とかだけど、売れっ子レベルだと思う。
同じ会社で別に一作。他レーベルで完結したのも含めて6シリーズ。
コプセントアンソロにも割と顔出してるし、コラムやエッセイも単行本を出している。
その最初のシリーズの累計だけで、500万近いし、アニメ化もしてるんだよね。
部数的にはともかく、シリーズ数なんか的には結構、超のつく売れっ子かもしれない。
あ、もちろん、ちゃんと交渉はしたから、版権料?みたいのは少しは多い、筈一般的な割合より。
ついでに言うなら、父さんの娘ってのはバラしてない。
基本的に、担当さん以外は会わないし。
ただ、三月か四月かな、それぐらいに、対談記事用のインタビューあるから、それでばれるかも。
と言うかね、新書ノベル入った時点で計算狂った。
ラノベでなら売れっ子でよかったのよ、挿絵がない、所謂文学本で、甘酸っぱい青春ストーリー書いた時点で詰んだ。
趣味で書いてサイトで公開してたの、そういう真面目なのだしてる文芸系の若い編集さんに見つかって・・・、ああ、後悔先立たず。
基本的に、静山社みたいに小さいけどなじみのパラダイス出版のレスに任せてたのに。
それなければ、父さんと対談なんて無かったよ。
何?『ベテラン作家&若手マルチ作家の文学の対話』ってどこの三文記事だよ。
とにかく、他の諸々な印税合わせると来月は500万近いかな。 
後、裏稼業の収入もあるし、そういう意味では、金銭的には全く問題ない。
爺様・・・祖父の仕事も一部手伝ってるから、そっちの収入だけで同年代でOLどころか、下手なベンチャーの社長よりも稼いでることになるのかな、うん。
というか、合わせれば、生半可な社長より稼いでるかも、一応、マネーロータリングしたり、信頼できるスイス銀行を介してるから大丈夫だし。
馬並みにバカスカ食われても、問題ないぐらいには稼いでる。
そもそも、本人に食費がかからないし、そんなに物欲ないしね。
リラと鴉、イアを入れても、月々40万は確実に使わないぐらいだ。
マンション、この部屋と隣と最上階とその下、合わせて四部屋は、賃貸じゃなく分譲だし。
服とかは、一気に買う口だし、うなる云々かどうかは投げといて。
「うれっこさっか?」
「ああ、洒落本、戯作・・・はまだ後か、物語・・・ニュアンスはちょっと違うけど源氏物語とか御伽草子とかその類ね。
 それを版元に売って、日本中で販売してるの。
 一概には言えないけど、一貫を10万として考えたら今月は50貫収入があることになるのかな。
 まぁ、勿論、増減はあるけど蓄えはあるし、問題ないわ。」
「・・・・・・」
「納得してないみたいね。
 ・・・なら、お礼、あの時の私は今から二年前の私が小さくなった私。
 だけど、6歳の私も確かに、あの場所に居た、救われた。
 なら、礼はせねば失するというでしょう?」
「・・・ガキじゃねぇ。」
思わず、撫でた政宗の頭。
そっぽを向いて、赤くなってそう言っても、説得力無いわ。
「人の好意は受け取っておくものよ?」
そう言って、私は部屋を幾つかの服を手にして部屋を出る。
半兵衛さんと小十郎さんは、私の手持ちでも渋めを合わせよう。
あ、断わっておくけど、メンズの手持ちだからね。
まぁ、ソラと神影のも借りるけど。
特に、小十郎さんは、渋めにし過ぎるとヤクザと変わらないものね。
半兵衛さんは渋めと言っても、色合いは明るめかな、そこは、ソラの持ってきたのと兼ね合い次第かな。
後、腕の太さ関係もあって、家康さんは、アルトのゆるめかな。
私が扉を閉じると同時に、呼んでいないのに、クルトが顕現したようだが、顔には出さない。
最低限の役割は果たすだろうし、余計なことも喋らないだろうし?
まぁ、出ていきたい理由もわからないでもない。
「で、これは、どうしたのかしら。」
そして、私はリビングの惨状に、頭を抱えた。








さて、どうしましょうか、ええ、どうしましょうか。
・・・まだ、来そうにないですし、来てもアリエスさん倒れるかもでしょうし。
そしたら、アルトくんは確実に、無双殺害でしょうし?
「ひとつ、質問いいかな?」
「どうぞ、ヤッター、いえ、竹中半兵衛さん。」
「・・・・・・呼ばれた理由を聞いても?」
「触れないようにしていたんですけれどね。」
「うん、それは解っているけどね。」
ホント、やりにくいです。
ホント、絞めたいです、やりにくいですよ、智将。
顔に出ない性格で良かったです、本当に。
盛大に迷った上で、私は言葉にします。
「・・・・・・三週間ほど前に一人の少女が病死したんです。
 結果、一人の道具が暴走して、世界が滅びかけた、それを封印したのですが、結果他の道具も半壊してしまって。
 ・・・道具、と言うか、めーちゃんの係累みたいなものですけど。
 萩行幹久が・・・」
「きゅうぅぅぅ~」
「ヒノ~。」
決意を無駄にするようにズドン、などという音がします。
まぁ、四十キロが、二階から一階の床に落ちたのですから、しょうがないのですが。
と言うか、忘れてましたね。
二階部分の手すりの隙間から、肌色と藍色のハリネズミじみた何かが飛びぬければ、手すりを飛び越えて空中キャッチするのは、クリーム色とピンクのボディとツインテに見える頭が愛らしい子どもぐらいのそれ。
そのまま、落ちて、先ほどのズドンに通じるのですが。
・・・・・・忘れてましたねぇ。
めーちゃん睨むのは解りますが、私とて人間ですよ、ミスの一つもします。
え?生きてる事が、最大のミス・・・そうですか、では、生きていてもしょうがないので・・・。
「キュウ!!」
「ヒノ~。」
「・・・はいはい、ネル。
 解ってますから、はがして貰えます。」
「ヒノノ~~。」
「きゅう、きゅ。」
「はいはい。」
眼で会話して、いつも通り、に自殺を決行する前に、ネルにヒノアラシ・・・ハリネズミの方で、名前は知りませんーを顔面に投げられました。
まぁ、喋ったので、くすぐたかったようで、微妙に暴れられましたが。
自分で剥がせと言われましたので、剥がした後に、ちょっと私のスキルの一つを使い、ヒノアラシにこう話しかけます。
と言っても、テレパシーのようなものですが。
『今、此処に居る方達は貴方・・・って、貴女なんですね。
 ・・・ともかく、貴女の知る彼らではないんです。
 説明はアルがちゃんとしますから、今は戻って貰えます?』
「ヒノ?(どうして?)」
『解りました、めーちゃんのクルミパウンド、今度お土産に持って私もいきますから。』
「・・・ヒノノ!!(・・・わかった!!)」
「解ってもらえて何よりです。」
とりあえず、納得してもらえましたので、床に下ろすと、とたたとネルの元へと向かいするすると彼女の腕に収まる。
それと、同時に上から、声がかかった。
「悪い悪い。」
「・・・アルティアさん、フォローが大変な真似させないでください。」
「暴走娘をネルに追わせるだけでも精一杯だったんだぜ?
 ネル、クリム連れて来てくれ。」
二階の手すりに寄りかかっているのは、一人の長身な青年。
黒いワイシャツに淡い緑のベスト、それに黒トレンチとスラックスとプレッピ-と言うか、ややカジュアルですが、どこか裏稼業臭いそれ。
黒に近い銀髪に、空色の瞳・・・眉根を寄せていなければ、氷のような美形とでも言うのでしょう。
視力がもう最悪なぐらいに悪いせいか、眼鏡だけだと、眉間にしわが寄るのでしょうね。
今日は、眼鏡とコンタクトを併用しているせいか、いつもよりは、とはつきますが眉根の皺は浅いです。
黙って普通にしていれば、とても、綺麗な男なのですが。
ディスティアさんの従兄弟の一人で、母親の兄の息子だった筈です。
フルネームは、アーティス・ウォルター=エンデファングですが、普段は、アルティア=ヴァリードを名乗っているそうです。
とあれ、ネルが来るのを待って、二階のとある小部屋にアルは引き返しました。
此処と軍艦島のような四国からでも数時間かかる無人の離れ小島を結ぶ道にネルとクリムを送って行ったのでしょうね。
「・・・ホント、変わり者だわ、アルは。」
「此処に・・・闇に沈んでいて、変わり者じゃないのがいたら、それこそ、変わり者です。」
「それで、ディスは?」
「早かったですね。」
「門を起動したままにしてたからな。」
「・・・相変わらず、無茶・・・」
「おう、あっちの事知ってるみたいだが、別人だろ、蓮姫(れんき)?」
「・・・・・・本当に、涼司なわけだ。」
「それ以外に何に見えるって?
 にしても、相変わらず、細っこいな、飯食ってるのか?」
アルティアさんと聖さんのそんな会話。
親しそうですね。
あ、アルティアさんが、聖さんを抱き上げて、べしべし殴られてますね。
髪色も、同じ黒に銀色っぽい感じですし普通に、兄妹で通るかもしれません。
「食べてる・・・・・・増えない体質なんだ。
 ・・・これでも、増えた・・・・・・と言うか、私は気にしないけど。
 ・・・・・・女性にそんな話題・・・振るなッ。」
あ、顎に蹴りが、綺麗に決まりましたね。
あれで、アルティアさん結構、身内には兄バカですしね、まぁ。
その勢いのまま、聖さんは、回って床に降りる。
ネコみたいです。
「さてと、梱仙縄、持ち主に戻れ。」
おや、それを使うんですか、大盤振る舞いですね。
アルの声とともに、するすると忍んでいない忍びから解けました。
「それで、さっきの生き物は?
 そもそも、君は?」
「相変わらず、状況を把握しようとするんだな、半兵衛は。」
「アルティアさん、ル-トが違うんですよ?」
「違っても、俺が知ってるあいつらと同じだと思うがな、記憶以外は。」
「記憶が無ければ、別人、そう言ったのはアルティアさんです。」
「・・・まぁな。
 さっきのは、ボールに入れればポケットに入るからポケモンと呼ばれる分類の生き物。
 んで、俺は、アルティア=ヴァリード。
 もしくは、炎の野原、涼しく司るで、炎野涼司(ほむらのりょうじ)。
 ディスティア・・・アンタらには、あざみか、それの一個上の従兄になるかな、うん。」
ヤッターマンもどきの質問を懐かしそうに、或いは親しげに、アルティアさんは当たり前に受け取る。
知り合いであるように、もう会う筈の無い友人・・・いえ、仲間であったように。
しかし、私が指摘したように・・・過去の自分が言った言葉を返されて、若干寂しげに顔を歪めたのは見なかったことにしましょう。
カイヤさんを失ってからそういう意味で大切だと、悟ったのですから。
「そっちの区分で言う、炎の婆娑羅持ちだが、どっちかってぇと諜報区分の裏稼業だな。」
「で、なんで親しそうなわけ?」
「相変わらず、忍んでないクセに忍びなわけだ。
 俺は、何も話さないよ、それが俺の矜持。
 アイツもオレとして受け入れた以上、騙ることはあっても必要以上は語らない。
 それに、断片の答えと意味は提示してるよ、佐助。」
乾いた金属音が響きます。
忍んでない忍びが、アルティアの首に苦無を当てようとして、彼はコ-ト取り出したペティナイフで受け止める。
「佐助!!」
かすがさんが叫ぶが、状況が変わりません。
まぁ、とりあえず、最大限に投げやりに・・・投げた槍が見えないほどに投げ槍にこう言います。
「アルティアさん、殺さないでくださいね、ディスティアさんの為にもね。」
「・・・さあ?」
「・・・アルティアさん、ナツメさんも来るんですし、ここで惨劇を再現するのでしたら、私が先に自殺しますよ?」
「それは、ごめんだな。」
視線を外さず、苦笑したアルティアは、ペティナイフを基点にするように振り返り、そのまま、佐助の手首を打つ。
そして、それで止まった隙を持って苦無を奪う。
「・・・で、これは、どうしたのかしら。」
呆れたように、或いは、頭痛を堪えるようにそこにディスティアさんがいた。
そして、アルティアさんは、あっけらかんと一言。
「見ての通り。」






+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



あんまり長期間あげないのもあれだから、ぶっちぎって、構成いじって、一話あげてみる。
本当は、もうひとつエピソード→急いで着替えで、買い物出かける予定だったんですけど、解説長くなりますし、一旦切ってみた。
と言うか、書いても書いても終わらないのです。
前回、一万超えたからアップするとか言ったけど、今回もまだ終わって無くて、アップしなかったの五千以上残ってるんだ orz



色々な都合。
主に私の書きたい意欲の為に、ややこしいんですが、ディス嬢BASARAトリップとこのお話の間に従兄のアルティアの特殊BASARA(×pkmn、脱色、オリジナルの混合)トリップが入ってまして。
時間軸的には、同じカテゴリの『二世を祈る』の後に・・・聖ちゃんがあの世界にある程度馴染んだ後に、彼らがトリップした感じです。
つまりは、『二世を祈る』の後日談的長編になるわけで。
『二世を祈る』と薄桜鬼へ進んだこの作品に出演中の聖ちゃんは同一個体ではないのですが、ある程度の記憶の共有はありますので、あの世界での話が通じないわけではないのです。
というわけで、この世界には、BASARA世界は、(最低)二つありまして。
ディスティアが、ちみっこくなってトリップした世界と、アルティアが特殊トリップした世界があるわけです。


んで、ディス嬢パ-トは、後々説明しますが、イライアスパ-トで出演したアルティア。
彼の背景が解らないと意味不明ですが、イライアスは大まかにしか知らないので、ここで彼の背景をさらします。
とりあえず、現在(このお話中)は、声優兼ライターで、二十代後半。
まず、彼が十七歳の年に、裏稼業で後輩でもあったカイヤ=シルヴァタイト(16歳?)を自分のミスで失う。
カイヤは、そういう意味でアルに告ってくるような相手だけど、別段、ゲイってわけではない。(←『花君』は中央千里みたいな。)
それから五年後、二十二歳の年に黄泉還らされた彼と敵対、そして、再び、そして永遠に失う。(蘇らせた敵をアルが殺害した為)
この前後に、カイヤとアルの因縁を知り、カイヤに対して、恋愛感情を持っている。(=作中の『そういう意味で大切な~』はそういう意味。)
それ以降の数年は、特定の恋人を作らず、一夜の恋人(女)を作ることも碌にしなかった。
約一年前、BASARAに特殊トリップした際、裏技的にカイヤと再会したが、その時は笑って別れたらしい。
しかし、とあることを決意し、それが上記のポケモンがこちらの世界にいる理由の一つ。
カイヤと自分の事情を知ったことにより、過去のスキルを『思い出』し、元々のスキル《炎ノ皇帝》も合わせ、単騎としては最強クラス。
こんな感じ。

ちなみに、ディスティアの能力は、個人としては《氷雪の悪夢》、《歌乙女》としては《風雷乱舞》だったりします。
設定だけはしてるんですけど、一人称系(語り手がその場にいない一人称も含め)が多い関係で出なかったりします。

前回タイトルとくっついていないですが、一応続きです。
ディス嬢過去話の回が、『2』になりますで、悪しからずご了承ください。




次回こそは、買い物行かせたい、です、はい。
とあれ、次の物語にて。






二世を祈る 1

2012-10-17 09:56:26 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次




その時のことはよく覚えていない。
藍染くんの事件が終った後で、ただ、人数が足りなくて、それで私ひとりで虚(ホロウ)退治に行った、とぐらいとしか。
意識を失うほどの怪我じゃなかったんだけどな。
まあ、多少足の怪我が深いとは思ったんだけどね。
気付いた時には、見慣れない座敷にいた。
そこに寝かされていた。
視界の端の髪は、白に近い桃から、暗い桃色。
時間経ってないし・・・あれ、聖弥がいない。
初めてだ、少なくとも、聖弥が起きてからずっと側にいたのに。
蓮華と鷹眼は離れているけど、同じ世界にあるのが解るのに、聖弥だけがいない。
正確には、身体の中に居ない。
「目が覚めたか、Kitty?」
声をかけられ、そっちを向くと、右目を眼帯で覆った暗い茶色の目つきの悪い二十歳ぐらいの青年がいた。
深い青い着流しがよく似合っているが、どうにも、十一番隊(うち)の連中みたいな印象はぬぐえないけど。
妙な気配はしているけれど、人間みたいであったし、頷いて返す。
喋らない方がいい。
「・・・喋れねェのか。」
縦に首を動かして、肯定する。
「元々、Notolkなわけじゃねえだろ?
 Nonsense(寝言)はあったぜ。」
寝言を聞かれていたか、それには肯定する。
どかっと彼は座る。
うん、私より頭一個は確実に高い。
「幾つか、questionするぜ?」
それに頷く。
まぁ、話せる・・・明かせる事ばかりじゃないけれど。
「俺は、奥州筆頭・伊達政宗。
 なんて、呼ぶかな・・・。」
それに対して、私は彼の手の平をとりなぞる。
名前の『聖』と書いた後に、『ひじり』と。
しかし、伊達政宗。
・・・アイツはこんなにイケメンではなかったと思うのだが。
醜男ではなかったが、此処までではなかったぞ、十人並み以上ではあったが。
ワイルド、と言うか、ゴツかった。
同じ強面でもこんな芸能人とやらみたいなキラキラ系ではなかった。
やはり、異世界のかもしれない。
少なくとも、私が知っている伊達政宗はこんなにイケメンではなかった。
今でいう、ヤクザ屋に間違われそう、という点では一緒だったけど。
「ひじりか、解った。
 お前は行き倒れてたのか?」
コレには正直に首を傾げる。
実際問題、私の最後の記憶は、虚を倒して帰還しようとしたところで途切れていたから。
まぁ、手足のかすり傷からして、そんなに時間は経ってないみたいではあるけれど。
・・・正確に言うなら、太ももの傷がそれなりに深かったし、それがあまりふさがっていないからせいぜい経っていて丸一日だろう。
「どうして居たのか解らねぇのか。」
頷く。
「行くところはあんのか?」
横に首を振る。
「・・・お前は婆娑羅者か?」
「・・・?」
それには、首を傾げる他無い。
ただ、それが異能である事は解る。
理解を諦めて、私は腕を一振り。
某世界で言うところの、時空鞘のようなもので、そこから、紙の束と筆ペンを出す。
そして、さらさらと自己紹介とこちらからの疑問を書き付ける。
内容的にはこんな感じ。
ああ、実際は、行書体に近いフォントではあるけれどね。


『名乗った通り、小鳥遊聖。
 身分は、護廷十三隊十一番隊四席で、死神。
 尸魂界内にある護廷十三隊という組織に所属しており、迷いし霊・整(プラス)を、尸魂界に送る。
現世を荒らす悪霊・虚から現世を護り、尸魂界と現世にある魂魄の量を均等に保つことが役目の調整者
 怪我はその隊務途中で負ったもの。
 隊務の終わりに、意識を失って気がついたらココに寝ていた。
 たぶん、私から見て、400年は過去だと思う。
 天下は統一されてなくて、貴方が伊達政宗なら、私は知っていた。
 私がいた世界の伊達政宗と少なからず、交流があってよく知っている。
 だけど、私は貴方を知らない。
 私が知る貴方は、そこまでイケメンじゃなかったから。
 その二つのことから、此処は私から見て異世界の戦国乱世だと思う。
 
 蓮の首飾りと腕輪はどこ?
 喋ってもいいんだけど、何も付けないで話して違う世界とはいえ、貴方を殺したんじゃ、泣くに泣けない。』


それを読んだ。
政宗は、しばらく、黙る。
うう、沈黙が怖い。
五分か十分か・・・そこまで経ったぐらいに、彼は顔をあげた。
ちょっと、たじろぐ。
「huum、なら、返す代わりに俺の室になれ。」
「!!??」
室、室って、嫁?
・・・どうでもよくないが、まさか、政宗にまた求婚か。
いや、こいつとアイツは違うが、しかし。
「イヤか、Kitty?」
「・・・」
どっちにしろ、喋れない。
どうしろと・・・え?
近い、近いって、いにゃああぁぁあ。
端的に言えば、押し倒された。
傷に触らないように、丁寧だけど、だけど押し倒された。
彼の唇と私のが重なりかける。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い、こわいこわこわいこわいこわいこわいこわいこわい、コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ。
ああ、ダメだ。
政宗はあいつらじゃないのは解っていても、それでも、イヤだ。
押さえつけられるのは、イヤだ。
涙が、止まらない。
「Kitty?」
「・・・・・・政宗様、何を為さっておいでで?」
一瞬、力が緩む。
それを利用して、政宗の下から抜ける。
警戒されまくってても、押さえつけられたままよりマシだ。
私は、政宗に声をかけた人物。
髪をオールバックにして、左頬に裂き傷のある三十路の男だった。
それの背中に張り付くようにしがみつく。
最初は、硬直していたが、背中でしばらく、ぐしぐし泣いていたら、頭を撫でられた。
・・・それが、兄に似ていて、更に泣きたくなったのは秘密だ。



昨夕、政宗様がまた、政務を抜け出され、妙なものを拾ってきた。
曰く、『倒れてるのを介抱しようとした。んで、首のと腕の輪っか外したらこうなった。』
妙な髪色・・・桃色の蓮の花のような頭の上は淡い色合いなのに、毛先は暗い桃色をしている。
政宗さまが言うところのぐらでえしょんの掛った髪のまだ、年若いというよりは、幼い娘。
足の傷が深い事と、黒一色の小袖袴であることが不審であることは十二分に追い払う理由になるが。
政宗様に押し切られた。
残っていた政務が終わるまで俺が看ていたのだが、こいつにも色々あるらしい。
・・・兄を殺したらしい。
少なくとも、それは後悔しているらしい。
と言うのも、寝言で、謝っていた。
―『後、少し・・・ごめんなさい、あにさま』
そして、今朝。
今しがた、尋ねると、政宗さまが、その拾ってきた娘を組み敷いていた。
あり大抵に言えば、押し倒しておられ・・・。
「・・・・・・政宗様、何を為さっておいでで?」
俺がそう声をかけた刹那、背中に重さがぶら下がる。
ついでに、泣く声が聞こえた。
おそらくではなく、政宗様が拾った娘だ。
思わず、娘にするように撫でたら、更に泣かれた。
しばらくして、落ち着いた彼女は、思い切り政宗様を警戒していた。
むしろ、俺に張り付いて離れなかったぐらいで、政宗様は思い切り、睨んでらしたのは、まぁ。
離れても、政宗様が部屋に戻られるまで、ずっと着物の裾をつまんでいたぐらいには、警戒していた。
俺が、他国の間者だのなんだの怪しんでいたのが阿呆らしいぐらいには、拾われたばかりの子猫のようだったのは、言わないでおく。
ちなみにだが、その晩、政宗様が月の方向に飛んで行かれたのは追記しておこう。




―『とてもナイーブないきものです』








スタンダ-トにトリップ。
この時の政宗は、初めて自分からドキドキして暴走気味なだけです(笑)
また、タイトルは『二世の契りを聖ちゃんが祈るまで』の略です。
ついでに、このル-トの聖ちゃんは、TRPGのALGにトリップしてるので、時空鞘が標準装備になってます。

副題は、『r e w r i t e』様より、「小動物の10の飼い方」より

闇に舞う天翼 5.嗚呼、世界の関節は外れてしまっていた。 1

2012-10-04 17:56:04 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次


ええと、長くなったので一旦、斬ります。
着替えと説明話で、まだ終わってないのに二万突破したので、とりあえず、一万少々で。
イライアスにしても、ディスティアにしても、語りが・・・脳内思考が長い人物でしたけど、そのせいでもないだろうに、長すぎだ。

とりあえず、五話め。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




ディスティアさん。

貴女は、『何故、私に恨み言を言わない?』と言いますが。

言えるはずありません、決してね。

あの決戦を、その後の小さな決戦を生き残った仲間なら。

私じゃなくても、言えませんよ

貴女は、将でした。

戦闘に立って、仲間が傷つくぐらいなら、自分が傷つく方を選ぶ、類の。

貴女は、母でした。

戻らぬ仲間の為に、慟哭した様は、遠き日に失った母を連想しました。

或いは、帰る場所がない人達には、『看取ってほしい』と願いたくなるような温もりを持っていました。



・・・側に居る私達は、貴女の泣ける場所にはなれません。

だから、この異境の過客が、一時であれその場所になってくれることだけを望みます。

・・・・・・貴女を渡すつもりはありませんからね。





5.嗚呼、世界の関節は外れてしまっていた。 1





さっきのチャイムで来たのは2人。
後ろで一つに結んだ濡れ羽色の前髪の間からは、磨き上げられた黒水晶色の瞳、表情は梅雨の曇天、葬式に参列しているというよりは送られる死者のような陰鬱さをまき散らすおおよそ二十代半ばの青年。
寒がりな性分なようで、分厚いコ-トを来ている。
それ以外は特筆するとしても、その二十代の一般的な青年と比べても、品質のいいシャツやスラックスであることぐらいだ。
まぁ、色々と重いのだろうけど。
身丈は、幸村とさして変わらないか少し高い程度。
名前をイライアス=ヴィドルと言う。
・・・やっぱり、堪えてるね、ルカが消えたの。
いつもの二割増しに暗い。
再構築してると言っても、記憶までそのままかわからないし、記憶があってもそれは別人だろうから。
もう一人は、チョコレ-トブラウンのボブに栗色の瞳のイライアスより若干若く見える女性。
渋めのマゼンダのブルゾンとクリムゾンの上下・・・上はへそ出しのノースリーブジャケットに、膝上10センチは堅いミニスカという相変わらず、服装。
下は、黒いサイハイではあるけど、上はグローブをつけて無いから、むき出しなんだろうな。
上に着てるジャケット下にヒ-トテックの黒いハーフトップ着ているんだろうけど。
メイコさん・・・と言うと怒るから、もっぱら、めーちゃんと呼んでいる。
目立つし、後から着替えさせよう、うん。
「おはようございます、ディスティアさん。
 ・・・萩行さんに倣っt」
「倣わなくていい。
 私は、メイコ、こっちの馬鹿がイライアス。
 呼びにくいなら、イルでいいよ。」
「名乗らなくても大丈夫です。
 ・・・・・・ディスティアさん、多分、茜花さんはともかく、かすがさんにはめーちゃんのでも小さいと思いますが?」
「とりあえず、でよ。
 ・・・凝視するな、結構、失礼だ。」
イライアスが、その印象通り、陰鬱なバリトンでそう指摘する。
視線をかすがちゃんの胸で固定したまま。
まぁ、確かに、茜花も小さくはないが、かすがちゃんは輪にかけてデカイ。
言うのも分からないでもない。
「えっと、誰?」
「服を貸す人その1その2。
 めーちゃんは、鴉やIAと同じ、と言えば解りやすいかな?」
佐助に促されたわけではないが、とりあえず、端的に言う。
・・・多分、佐助と半兵衛さん気付いたかな、気づいただろうな、同じ属性だし。
特に、佐助は、あの時の一番初めの小さな私を知ってるんだし。
イライアスが、闇の属性・・・能力を一切抑えようとしていないこと、それを私が、微風で人に影響を与えないようにしていること。
婆娑羅と能力は違うけど、属性が同じ名称だとどうしても気付かれる。
制御されない能力なんてのは、特に闇属性は周りを蝕むのだから。
「じゃなくて、そっちのいらいあすだっけ?
 その旦那の婆娑羅のこと。」
「病気と言うか、しょうがない。
 ・・・佐助、幸村を失って、婆娑羅を制御できるなら、止めさせるわ。
 まだ、あれで制御してる方なの、しなきゃ、私が強風でそらしても食い尽くされる。
 生半可に同じ属性持ってるから、なおさらね。」
「・・・・・・」
それに、沈黙する佐助。
実際問題、あれを完全に止めるなら、イライアスを殺すしかない。
ある意味で、私の選択の結果、ルカは消えた。
だけど、私を怨むことを吉としない彼の(ある種の狂言)自殺は酷くなった。
解りにくいコミュニケーション方法ではあったけど、それ以上に死ぬ事を望んでいる。
断言してもいいけど、ルカと同じ場所に行けない事を覚悟して、だ。
それ以上、何も言えないし、言う気もない。
・・・私にも向ける感情は違っていても、宵颯が死んだ時に同じ感情を味わったから。
その人がいないなら、世界に意味はない。
私は、着替えさせる為に2人に呼びかけた。
「・・・とりあえず、かすがと茜花、先に着替え渡す。
 ついてきて。」
先ほど、弥三郎と一緒に入った部屋。
通称・衣裳部屋。
と言うか、変装用の道具をおいている。
兄さんのやら、アルトのやらも置いてあるから結構雑然としている。
或いは、一緒に買い物に行ったナツメのそれも混ざっているし。
そこに三人でいる。
10畳ほどの部屋ではあるが、前述の理由で狭い。
その中から、茜花にぴたっとした紺色に和柄で縁取りした長袖シャツに、短めな丈の若草色の無地チュニックを合わせる。
んで、右足全体に赤と周防色メインの和柄刺繍入りのデニムと足袋ックスを渡す。
後から、ショートブーツとポンチョを合わせればいい
サイズは多分に、大丈夫だろう、目測だけど。
向こうでも、洋裁で造ったそれを着せたこともあるし・・・その褌っていささか安定し過ぎて気持ち悪いんだ。
だから、自分でブラとパンツは作った。
ともあれ、下着も含めて、茜花が着るのには苦労しないだろう。
「着れる?」
「大丈夫。」
「さて、次はと。」
黒色のハイネックのちょっと厚めの長袖ティーシャツと藍染の皮パンを探す。
一応、裏地にヒ-トテックな生地糸を編み込んだものだ。
後は、ベージュか薄い水色の皮ベストにライダーズかな、佐助とお揃いにしても楽しいかもしれない。
ああ、でも、ゆるく前開けての姫トレンチでも良いかな。
「そうだ。」
忘れてた。
ドアから顔出して、イライアスに言う。
ある程度の会話は聞こえてるけど、無視して言う。
見本を見せればいい、自分達が人間であるという確証の為に。
ボーカロイドや、それに準じる子達を。
「後から、レンリンも呼んでよ。
 オリジナル聞かせたいし?
 琉都も連れてくればいいわ・」
「・・・悪の召使、両面Ver.ですか?」
「悪ノ軍師と、ロアの替え唄聞かせるんだし、オリジナルもついでにね。
 どうせ、両面同時動画作成中でしょ?
 イラスト、JUJUに頼んだの聞いたわ。」
「良いですが・・・聖さんではないですが、正気ですか?
 傷をほじくり返すのは。」
「約束は守るものだろう?」
「・・・・・・解りました。
 ホント、お人よしですね、ディスティアさんは。」
「あはは、私は、優しいんじゃないの。
 甘いだけよ、甘いだけ。」
「甘さも極めれば、強さですよ。」
「さてね。
 ルカを消されても、私を責めなかった貴方の方が優しいわ。」
まぁ、案の定、クギを刺された。
六年前の決戦の後も。
その後のあの一件でも。
最近の千冬の死とKAITOの封印。
恐らく、それに派生する私が人格プログラムを編んだVOCALOIDの原因不明の稼働停止。
精霊組のニガイトとカゲイト達やエイレンさんが組んだ子達は無事だから、KAITO封印の際に何かミスったのかもしれない。
それを抜いても、色々あったから心配なんだろうけど、私は柔じゃない。
ただ、自分よりも、優先したいもんがあるんだよ。
自分が嫌いなわけでも、自分を犠牲にしたいわけじゃない。
それでも、ねぇ。
さて、と私はかすがちゃんに、向き直る
ちょっと、アレだけど。
「ブラのつけ方、教えるのと、やってもらうのどっちがいい?」
にっこりと。
いやさ、かすがちゃんって、サラシすらしないじゃない?
服にワイヤー入ってるみたいだけど、鎖帷子みたいなものだし。
だから、最初ぐらいは教えた方がいいと思ったんだけど、明らかに顔色を失う。
白いシンプルなブラ。
胸元に小さなリボン。
ワイヤーをあまり使わずに、ほぼ縫製と堅め生地のみで大きなカップを支えるモノ。
初心者でも十二分に付けれるはず、だ。
同じカップのブランドブラより高いんだよ、これ。
分類としちゃ、スポーツブラに近いそれなのに。
私もだけど、めーちゃんもワイヤー嫌いだからあるようなもんだけど。
ついでに言うなら、ヌ-ブラと言うやつは嫌いだ、かぶれる。
「・・・その乳当てつけなくてはいけないのか?」
「まぁ、目立つんだよね。
 それだけのそれでノーブラ、これつけてないと。」
「しかし、」
「とりあえず、つけてね?」
うむ、言わさず、服を剥いで、つけようとする私。
抵抗する、かすが。
音声だけ流すことにする。
いや、下手に描写入れると生々しいんだ。
「えっと、ここは、こうして。」
「ちょ、待て。」
「お願いだから、暴れないで。」
「や、んぅ~~~。」
「茜花、手おさえて、というか、口も―(泣)」
「はいはい。」
「やぁ、ちょ、んぅ。」
とそこで、佐助に踏みこまれた。
鍵、かけて無かったしね。
端的に言えば、前からかすがちゃんの両手をつかんで、口をふさいでいる茜花。
後ろに回って、私がブラの位置を直す・・・客観的に見て、胸をもんでいるようにしか見えないだろう。
そういう状況だ。
「ちょ、何を・・・」
もちろん、最後まで言わせない。
近くに合ったスニーカーの片方をその口にハマるように投げる。
ついでに、回転しつつ・・・素早く縦移動するなら歩くより早いのだ・・・鳩尾にキック。
「覗くな、阿呆。
 ・・・いっちゃん、帰ってきてるなら簀巻きにしといて!!」
ドアの外で、幸村君の「破廉恥でござらぁ。」とか聞こえたが気にしない。
さて、続けよう。





さて、久々に私・イライアスは、大変胸糞悪い状況に居ました。
ディスティアさんに呼び出され、彼女のマンションに行くと、『戦国BASARA』の面々がいました。
より正確に言えば、ディスティアさんが行ったル-トの面々です。
アルティアさんも一応、別ル-トで行っているようですので。
どちらにせよ、私は大嫌いです。
恋愛感情ではない一番大切な彼女を傷つける存在になりますので。
正直、ディスティアさんが傷つかないのであれば、殺してあげましょう、と言うぐらいには。
「おはようございます、ディスティアさん。
 ・・・萩行さんに倣っt」
最後まで言わせてくれませんでした、めーちゃん。
もう、こちらに未練もないのですが。
「倣わなくていい。
 私は、メイコ、こっちの馬鹿がイライアス。
 呼びにくいなら、イルでいいよ。」
「名乗らなくても大丈夫です。
 ・・・・・・ディスティアさん、多分、茜花さんはともかく、かすがさんにはめーちゃんのでも小さいと思いますが?」
「とりあえず、でよ。
 ・・・凝視するな、結構、失礼だ。」
私が、視線をかすがさんの胸で固定したままそう指摘する。
ディスティアさんが、Dなら、茜花さんはF、かすがさんはHぐらいでしょうか。
目測ですが、多分、外れてはいないはずですが。
ああ、いけませんね、スキル抑えきれません。
抑える気もさして、ありませんが。
「えっと、誰?」
「服を貸す人その1その2。
 めーちゃんは、鴉やIAと同じ、と言えば解りやすいかな?」
佐助に促されたわけではないのでしょうが、とりあえず、端的にディスティアさんは言います。
気付かれてるでしょう、忍んでない忍びとヤッターマンもどき。
同じ属性と言うか、近いですからね、彼らは。
まぁ、ディスティアさんが、微風で抑えれる程度に抑えていることも知られてもかまいません。
半身だったルカが、いないこの世界など、意味無いのですから。
いえ、消えてしまってもいいのです。
「じゃなくて、そっちのいらいあすだっけ?
 その旦那の婆娑羅のこと。」
「病気と言うか、しょうがない。
 ・・・佐助、幸村を失って、婆娑羅を制御できるなら、止めさせるわ。
 まだ、あれで制御してる方なの、しなきゃ、私が強風でそらしても食い尽くされる。
 生半可に同じ属性持ってるから、尚更ね。」
「・・・・・・」
それに、沈黙する忍んでない忍び。
私も沈黙でそれを肯定します。
実際問題、私を完全に止めるなら、私を殺すしかないのですから。
ある意味で、ディスティアさんの選択の結果、ルカは消えました。
ですが、彼女を怨むことなどできませんし、未練もないのです。
だから、本当にこの世界と決別してもいいんです。
「・・・とりあえず、かすがと茜花、先に着替え渡す。
 ついてきて。」
さて、ディスティアさんが言ったのなら、私は私の戦争をするまでです。
手を出す出される状況にならないように、釘を刺さねば。
ディスティアさんも、私も、本来は戦争を知らなくてもいい世代なのですから。
本来は、殺し殺される間柄でもないのですから。
私達はそれを選んでしまったのですが、それでも、ディスティアさんはこれ以上傷ついて欲しくないのです。
彼女の両親の実家がそれを許さなくとも、それでも、それでも、日の当たる日常(ふつう)に在れた筈なのですから。
「さて、めーちゃん、フォションのアップルティの取ってきてもらえます?
 冷蔵庫にこの間、入れて置いたのあるみたいですから。」
「ベイリ-ズは?」
「流石に、交渉事の前で飲む気はありません。
 ≪教皇≫が来る前にある程度、終わらせておかないと、大変でしょう。
 ナツメさんのこともですが、彼らのことも。」
「ああ、確かにね。
 全く、あのサテンマスターもどきも同じ世界から、違う並行世界に行かせるなんてするなんて、酔狂よね。」
「あの人は、同類には甘いんですよ。
 ついでに、狂気にも、ね。」
やる気を壊滅させて、しかし、必要な措置をとります。
視界の端で、雪華―と教えてもらったちびっこ雪ミク―が、ヤッターマンもどきの膝の上に乗ったり、ということはまぁ、微笑ましいとは思いますが。
一見、簡単な事務連絡ですが、他に誰かが来ること・・・ディスティアさんがいるので無いとは思いますが、私達への手出しをさせない為に、示します。
そして、端的に、サテンマスターもどき・・・萩行幹久の目的と行動の意味を示唆。
まぁ、ディスティアさんが言っている可能性が高いですが、それはそれです。
繰り返し言うことで、事実を隠す、と言う意味合いも含め。
ディスティアさんは、まだ、気付いていないでしょうが、あれが、お市の方。
BASARA世界から、天下繚乱へ移り住んだ魔王の手を繰る彼女と私を引き合わせる意図もあって彼女をここに来させようとしているのでしょう。
もちろん、ディスティアさんの為、BASARA世界の面々を返さない(時間軸に加えて違う世界という枷、の為でしょう)為の行動。
その上ででしょうね、私に引き合わせるのは。
・・・傷の舐めあいでも、誰かにヒトに側にいて欲しいものですから。
萩行幹久、貴方も十二分にヒトですよ。
「はいはい、マスター、人の悪い笑みを浮かべない。
 愛想良くしろ、とか、明るくしろとは言わないけど。」
メイコを見送って、つらつら考えていると、ペットボトルで殴られました。
もちろん、メイコにです、はい。
500mlと言えど、痛いです。
手加減はしてくれているのでしょうが、してくれてはいるのでしょうが。
しなかったら・・・確実に、頭消えているでしょうしねぇ?
「あのですね、人の良さそうな笑顔を浮かべる情報屋こそ、信頼できないでしょう?」
「交渉事は、笑顔で信用させてから、でしょ。」
「ですけどね、同じ世界・・・此処から、違う並行世界に行くなんて考えれます?
 ねぇ、小鳥遊さん。」
一応、当事者でもあった死神のお嬢さんに、話を向けます。
彼女もアルティアさんと同じく、今ここに居る彼女も、そちらへ行ったようですし。
厳密に言えば、違う彼女ですが、観測はしている、とのことですので、全く知らない、と言うわけでもないでしょう。
「アルセウスと森羅と萩行とメレディの後ろの黒い子が結託したせい・・・
 ちょっと、待って、≪教皇≫って、アルティア=ヴァリード、炎野涼司なの?」
「ええ、そうです。」
「マジ?」
「マジです。」
「本当?」
「本当です。
 もう、一年ほど前のお話ですよ。
 この世界の並行からではなく、この世界から、アルティアさんは、貴方の知る彼の世界に行ったのです。」
「・・・本当、あの男、ただの狂人かしら。」
「いえ、ただの馬鹿親でしょう。
 あの世界での運命律に真っ向から真っ当に立ち向かおうとしているんですから。
 ・・・それに、道具が道具として生まれて、その役目を果たせないのは、くだらないでしょう、あの≪ヴェーダ≫のしたことは、ミスタの遺志への愚弄でしょうし?」
「・・・辛辣、ね・・・・・・確かに、あの端末・・・・・・壊したいけれどね。
 あえかや、ジル達の事がなくても・・・。」
私は、そうさして、西暦の末のあの戦争を無くそうと戦争をした彼らの世界に詳しいわけではありません。
ありませんが、それでも、≪ヴェーダ≫は嫌いです。
イオリア=シュヘンベルグの意図を捻じ曲げているのですから。
道具が主の意図を曲げているのですから。
「ストップ、話ズレてるぞ。
 話す事と説明すること・・・呼び方こそ、兄や姉、もしくは、そう慕ったモノへ対するものだが、態度が堅いというか、ぎこちないのは話しておいた方がいいと思うがな?」
「・・・面倒と言うか、私達の掟・・・いえ、律に触れると言えば、触れるんですけどね。
 端的に言えば、まだしていない、とはいえ、ディスティアさんが最も忌むことを貴方方がしたからです。
 ・・・まぁ、足軽や雑兵は道具、駒でしょう、そこまではいいです。
 二等兵なんか、使いつぶされてナンボですが・・・それはあくまでも、人間として使いつぶされるなら、です。」
ジュリさんの方向修正を受けて、淡々とやる気と言うか、覇気など無くそう呟きます。
言葉は酷いでしょう、酷いでしょうが、それが戦場と言うものです。
ええ、戦争と言うものです。
某謀神は、或る意味で偽悪主義でしょう、わざわざ口にだし、常に毛利家の為・・・公の為の謀略を編むだけで、とても優しい、と思います。
少なくとも、戦場で命を奪わないなどと戯言を言う、前田慶次なんかよりもね。
命を奪う代わり、ではないですが、命を奪われる覚悟をする、それが戦場なんですよ。
それは、小規模であれ私達も関わる場所です。
なので、そういう扱いはともかく、道具として使い潰されるのはディスティアさんは好みません。
「確かに、能力は有用でしょう。
 ・・・心が無ければ、ですが、どうであれ、彼女は人間でした。
 ディスティアさんも、とある物語の中ではそうでしたし・・・リラが今のリラになってしまったのもその範疇の出来事です。
 心があった・・・少なくとも、自らの夢を持てた、誰かを好きになれたのなら、それは許されざる所業でしょう。」
「・・・魔王の妹、のことかい?」
「・・・・・・ええ。」
「その呼称からして、ぶっ殺したいぐらいにムカつくけどね。」
「まぁ、それは否定しませんよ。」
「全くだ。
 彼女はそれの付属物ではなく、一人の人として道を選んだのだよ。
 それはこちらでも、そちらの世界でも変わりない。」
口々に、めーちゃんとジュリさんの黒いのと白いのは、ヤッターマンもどきの言葉を否定します。
直接に私も言わないだけで同感です。
三人が三人とも、誰かに作られた・・・女の腹を通さないで生まれてきたんです。
まぁ、白いのと黒いのは少々特殊ですが、ジュリさんの使い魔になった時点で色々と越権越境していますが、私でも使役できる使い魔に堕ちていますから、それには変わりないですしね。
クラスとしては、古の神話のゼウスなんかとタメ張れますが・・・それが、紲糸(一種の契約書)の更新でどうにかなるあたり、結構アレなのですが。
「だでぃ、だでぃも、叶えたい夢をたにんにたくしていてもそれは言っちゃメッなの。
 ・・・だでぃはまだ、たにんにたくしたものであっても、夢をくちにできたなの。
 だでぃの世界のそのお姉さんは、くちにすらできなかったの、かたきすら討てなかった。
 ・・・・・・お姉さんはお姉さんで、まおうのいもうとってお人形じゃな・・・ふえぇぇぇ」
「はいはい、泣かないで、雪華。」
「マミィ~・・・」
・・・本当に、『人間のように』造ったんですね、雪華を。
ジュリさんに抱っこされ、しがみついて泣く雪華は、どこにでもいるような子どもです、微笑ましいぐらいに。
言葉は、外見年齢に比してふさわしくありませんが、子供らしく理想論です。
ですがね、他人に託したものであっても、夢を希望を語れるだけでも十二分に幸せなんです。
そんなもの語ろうとも思えない、思うことすらできない人達もいるんです。
魔王の妹、織田市や私はその類です。
彼女も私も、ベクトルこそ違えど、希望や夢を語れず、語れると思った相手を奪われて・・・。
ただ、彼女はその奪った相手を横取りされて、死ねずにいるだけ。
ただ、私は、その奪ってしまった相手を殺せずに、死なずにいるだけ。
どちらもどちらでしょう。
まぁ、私も、彼女にも、大事に思ってくれる相手がいるのですから。
私の思考を打ち切るように、ディスティアさんが声をかけてきます。
ある程度、聞こえていた上での無視でしょう。
・・・何と言うか、十年来の付き合いのせいか、彼女の内心の意図も聞こえてきます。
私の推測ですが、副音声付でお送りいたします。
「後から、レンリンも呼んでよ。
 オリジナル聞かせたいし?
 琉都も連れてくればいいわ。」
『人造物の見本を見せれば、納得するでしょう?
 ついでに、オリジナル聞かせたいし?
 ちびっこも連れてくれば問題ないでしょう?』
「・・・悪の召使、両面Ver.ですか?」
『荒療治にも、ほどがないですか、ディスティアさん?』
「悪ノ軍師と、ロアの替え唄聞かせるんだし、オリジナルもついでにね。
 どうせ、両面同時動画作成中でしょ?
 イラスト、JUJUに頼んだの聞いたわ。」
『複数見せて、同じ傾向が見れれば、自分達が違えば人間であると認識できるでしょう?
 すり合わせの編曲し終わってるのは知っているわよ?
 正式に動画にするなら、いつ撮っても彼らには変わらないでしょう。』
「良いですが・・・聖さんではないですが、正気ですか?
 傷をほじくり返すのは。」
『言いだしたら、聞かないでしょうけど・・・いいんですか?
 せめて、泣いてくれるのなら、安心できるんですけどね。』
「約束は守るものだろう?」
『守れなかった約束もあるもの。』
「・・・・・・解りました。
 ホント、お人よしですね、ディスティアさんは。」
『・・・・・・言っても止まらないでしょう?
 ホント、優し過ぎますよ、ディスティアさんは。』
「あはは、私は、優しいんじゃないの。
 甘いだけよ、甘いだけ。」
『力無き正義も無力だけどね、力無き優しさは甘さよ。
 貫かなければ無意味なの。』
「甘さも極めれば、強さですよ。」
『貫かなかなくても、強いです。』
「さてね。
 ルカを消されても、私を責めなかった貴方の方が優しいわ。」
『でも、貴方の方が優しい。
 私の友であってくれるのだからね。』
大して外れてないんでしょうけど、ディスティアさん、見くびらないでください。
ルカも大切ですし、女性として、いえ、文字通りの『我が良き片翼』でした。
その彼女が戻ってくる保証がない以上は、ディスティアさんを生半可な相手にやるわけにいきませんし・・・。
・・・そういう点では、ユヴェルさんも対象外です。
と言うか、全くもって父親の思考ではありませんか。
「悪化・・・してない?」
「しない方がどうかしているような状況でしたしね。
 まだ、心を手放していないだけ、マシでしょう、まだね。」
「・・・・・・」
聖さんは、少しだけ眉根を顰め(表情の乏しい彼女の事です、盛大にというレベルでしょう)、言葉をもらします。
それに対して、多少なりとも付き合いの長い関係上、相としか返せませんでした。
エリスさんやレイティスさんを失った時も、あの少年を失った時はもっとひどかったのですから。
「さて、中々、緊迫している状況ですね。」
「・・・樹さんですか、他の方は?」
空間移動して帰ってきたようです。
彼にしてみれば、面白い見世物でもあるでしょうから。
呆れ半分に彼に質問します。
能力者は多いに越したことはないですし、私のように人眼がある場所では抑止以上にならない面々もいます。
アリエスさんやナツメさんはそうでしょう。
あの二人の能力も、使い方次第ですが、アリエスさんは直接的な武力行使には向いていないですし、ナツメさんは精神的に難しいでしょう。
「出してないみたいですよ。
 まぁ、クルトかリュシエンヌか氷雨は出すでしょうが。」
「・・・・・・・・・一応、確認ですが、アリエスさん呼んでます?」
「それが・・・ああ、確かにマズイですね。」
「豆腐メンタルですよ、あの人に関しては。
 ・・・私でも、覚悟していなければ、揺らぎました。
 エリスさんでも、マズイですけれどね。
 あの人の声は、いえ、あの人の存在は私達には大きすぎますからね。」
無理矢理に話を変えます、あれ以上深めても楽しい事は無いですからね、ええ。
それに二度手間は嫌いですから・・・何か忘れているような気はしますが。
打ち消すようにこんな声がドア越しですが、はっきりと聞こえました。
「や、んぅ~~~。」
かすがさん、でしょうね。
すぐに、バネ仕掛けの人形のように忍んでいない忍び、もとい、佐助は立ちあがり、衣裳部屋に行きますが・・・まぁ、迂闊でしょうね。
人形とか言われていても、ウソ偽り・・・フリでも好きだと言える相手の悲鳴に駆けつけるのはすごいと思いますが。
「ちょ、何を・・・」
もちろん、最後まで言えません。。
スニーカーの片方をその口にハマるように投げられ鳩尾にキック。
ディスティアさんもスカートでアクティヴですね。
「覗くな、阿呆。
 ・・・いっちゃん、帰ってきてるなら簀巻きにしといて!!」
「破廉恥でござらぁ。」
幸村くんが状況を把握した途端、叫びますが、それに構わず、樹さんは着物の袖から梱仙縄を飛ばします。
まぁ、所謂、自動で相手を縛りあげる縄です。
力量差があるとできませんが、あんなのでも、樹さんは強いですからね。
某TRPG的に言うなら、佐助さんは、『朱雀/忍者/青龍/影忍』といったところで、総合レベル10~14と言うレベルでしょう。
十二分に強いでしょうが、樹さんは、『青龍/忍者/剣客/影忍/秘剣使い』と言ったところで、総合レベル40以上でしょう。
範囲攻撃に力を入れた魔法戦士と魔法はおまけの物理攻撃メインの軽戦士とでは、壁役としてのそれも違ってきますしね。
もちろん、NPCでもそこまで強いのは、シナリオボスになれる妖異ぐらいなもの。
ちなみに言うなら、総合レベル10と言うのは、かなり強いのですよ?
一応、そのゲームでは、各クラス30レベルまでデータがありますし、同系統の別ゲームでは100レベルリプレイもあります。
ありますが、そこまで行くと、アインヘリヤル・・・元のゲームで言うならば、麒麟児や神仏相当です。
まぁ、条件を満たしても、普通の英傑でいること自体は可能ですが。
・・・そこまで強いと、逆に死ねませんしね、樹さんには重荷でしょう。
つらつら考えていましたが、目の前の光景に一つだけ質問します。
「・・・樹さん、息できなくないですか?」
「大丈夫ですよ、鼻だけ開けてありますから。」
そういう問題でもないでしょう。
端的に言えば、佐助さんは、橙色の頭の先っぽだけを出した縄色の芋虫と言う状況です。
良い気味だとは思いますが・・・。
「はぁい、じゃあ、次は幸村君と政宗、こっち来て。」
茜花さんは体のラインに沿った紺色に和柄で縁取りした長袖シャツに、短めな丈の若草色の無地チュニックを合わせ、右足全体を赤と周防色・・・赤メインの和柄刺繍入りのデニムと同じ系統の柄の足袋ックスを姿で、中々似合ってますし、着なれているようです。
黒色のハイネックの厚手の長袖ティーシャツと皮パンで、十字架を下げたかすがさん。
妙に疲れたというか、精根尽き果てた様子です。
ちょっと離れたところに座ると、茜花さんにすがりつくように彼女を抱きしめたまま、うなだれてます。
・・・大変だったようですね、ええ。













+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

サブタイトルは、『ハムレット』より。
確か、ではあるけど。
とりあえず、間接ってよりは箍に近いかもだけど、話的には。



二万まで入力可能でも、話の流れで一回切りました。
たぶん、今の速度だともう一話ぐらいどっかで切って、買い物行くの七話めになりそうです。
一応、話の本筋には関係のない会話なんかは結構省いてます。
一人称ですので、一応、全部入れると冗長だったり、或いはテンポが崩れるというのもありますです。
半分ぐらい空気になってますが、慶次や家康は、次回見せ場あるはず。
色々と、ややこしい単語や意味深な会話ありますが、現状、完全に公開してないお話も含めて、前提書いてますので色々と。
また、ボカロ連載の先の展開を最低限、前提としてます。
マスルカとか、後々、この連載でも出演のデルマスとか、カイマスの結末とか。
伴って、混合の中編も修正入れ決定ですが。



ともあれ、次回はもう少し早く上げれると思います。
区切り付くというか、買い物に出れれば、ですが。


では、次の物語ににて。










闇に舞う天翼 4 いくら、叶わぬ夢であろうと。

2012-08-27 10:43:02 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次

どうにもこうにも、《妹》は甘い。

その甘さも、貫いてるから強さなのかもしれないね。

その強さも、座り込むだけの弱さがないのの裏返しなのかもしれないね。 

だけどね、泣いても、弱音を吐いても・・・


僕はね、君にただ、幸せになって欲しいだけなんだ。

もう、弟妹は君しか、現世に居ないのだから。





4 いくら、叶わぬ夢であろうと。





現れた少女は、鈍く銀色を宿す黒髪・・・多分、幻術系だと思う、それでコーティングしてる・・・に、乾きかけた血の色の瞳。
ディスの従兄・アルティアと同じような色合いで、黒髪の中に金属的な輝きを持ったって感じだな。
現代の中学生にしては、若干小柄なその体躯は、≪占い師≫の言う死神の黒い袴姿ではなく、可愛らしい服。
あり大抵に言えば、カジュアルな服装。
こげ茶の袖の青いチェック柄の長袖ティーシャツに、ふんわりとした三段レイヤードの淡い色合いのミニスカート。
黒とはいえ、ニーハイな辺り、誰かにコーディネートされたんだろうと、彼女と面識のない俺・鴉でも容易に想像できる。
彼女が、データベースにある通りならば、所謂、クラッシックロリータと言うか、クラッシックフォーマルを好んでいるらしいのは記されているし、幾つかの画像からもそれは解った。
そして、彼女の出現に、BASARAの面々は再び、硬直。
白黒は、笑みを浮かべたまま、電話の前にあった椅子を彼らと彼女の間に引き寄せ、座る。
すらりと足を組む様は、どうにも悪役みてぇだ。
一見善人風の詐欺師と言うか策士系の。
必要はないんだろうが万が一の場合は止めるか。
「本当・・・アイツは正気なの・・・・・・一人や二人ならまだしも。
 ・・・世界は・・・・・・世界は誤植を許さない。
 貴方が止めるべき・・・・・・・・≪破滅を呼ぶ占い師≫。」
「正気ねぇ、君が言うべきではないと思うよ。
≪あの子達の原初の母(オリンピアズ・グラン・マム)≫、君達側の物語に妹を巻き込んだのだよ、君らの過ちがこの状態を招き込んだ。
・・・長期間の硬直に腐敗が原因でもね、梔子あえかが生まれなければ、こうはならなかったのだよ、それを指して『世界は誤植を許さない』?
ちゃらちゃらおかしい。
それに君の言う、今回の件がなくとも、妹や私達は元より『世界の誤植』だよ。」
間延びした口調じゃねぇ・・・ってことは、シリアスになっているか・・・間違いなく怒ってる証拠だと、ディスは言っていた。
で、多分、今回は怒ってる。
妹と言うか、兄と弟妹命な病的シスコンブラコン。
その流れで、その製作物=息子娘でアイツから見れば甥っ子的な俺達も可愛がってるみたいだし。
んでだ、今、小鳥遊聖(仮)さんは、今回の出来事はアンタのせいだ、と言ったわけで。
しかし、俺も当事者じゃないから詳しくはないが、通り一遍の知識で、ディスが冬姫と呼ぶあの子達はそもそも、梔子あえかが生まれなければ、生まれなかった。
んだろうが、少なくとも、この時に言うべきじゃないだろうけど、どう止めろと一分前の俺。
「・・・・・・・・・それを言うならば・・・貴方と兄の決断のせいでしょう。
 ・・・あの子が・・・・・・『世界の誤植』なのは、それが大元・・・・・・悪ノ娘・・・みたいに。」
「へえ、君がそれを言うんだ。」
「已めんか、戯け共。
 知らぬ連中に情報を渡すな、弩阿呆!!」
その空気を壊すにはいい音で杖が白黒の頭めがけて振り抜かれた。
いきなり現れたルキウス・・・じゃねぇな、多分、≪世界樹ノ翁≫だ。
まぁ、格好がピカチュウの着ぐるみパジャマなのは、愛嬌だ。
ルキウスが寝てるところに来たんだろう、うん。
「アタタタ、夜には知ることだし、良いんじゃないのぉ?」
「―悲劇を語るのは張本人のみ。
 その妹の言葉ぐらい律儀に守れ、≪占い師≫。」
「・・・と言うか、今日学校ですよね。
 しかも、もう、起こしに来る時間ですし。
 お久しぶり、レン。」
「・・・お久しぶり、メレディ。」
にこにこと、自身を殴った≪翁≫を抱っこする辺り、ブラコンだろう。
見た目はともかく、兄にすることではないと思うけど。
そこに着替えさせた弥三郎を抱えて、頭痛をこらえているのを隠さないディスが声をかける。
ちなみに、ピンクっぽい紫のトレーナーにデニムのオーバーオールだったりした。
多分、小さくなった長宗我部元親ではなく、本当に弥三郎だった頃の彼だったのだろう、うん。
傷がなかったんだろう。
海に出なくとも、武将。
傷の一つや二つはあるだろうに。
そして、萩行が使ったと見当つけていたそれは、若返りはするが、傷は消せないのだ。
つまり・・・傷がないのなら、その外見相応の時より連れてきたと言うことらしい。
「・・・で、その女の子誰だ?」
慶次の気の抜けたような台詞。
それで、やっと切り替えれた感じだ。









あの後、慌てまくった声で、父さんから電話があったりしてトリップしてきた面々を騒がせたりした。
まぁ、とうさま・・・元就さんとそっくりだしねぇ、声。
声だけとはいえ自分も含めて、捨て駒だとか何だとか言っている人が、家族心配しまくりなのは、違和感あるかもしれない。
とうさまは、樹菖(わたし)が松寿丸として出会ったころは、普通に普通なむしろ、甘ったれだったんだけどな。
兄さん、もとい、≪翁≫、ルキウスを迎えに来た父に引き渡し、朝ごはんの片づけをして。
お茶を全員分入れて、そしての仕切り直し。
一応、鴉にはイアとリラ、弥三郎を任せて、別室に居てもらっている。
・・・あの子達には聞かせたくない、事柄ではあるから。
鴉はともかく、イア達は知らないし。
弥三郎は、向こうの住人と言えど、ね。
ついでに言うなら、≪占い師≫は、隣のエリスルームに行ってしまった。
まぁ、居ても引っ掻き回すだけだろうし、むしろ助かる。
「知り合いで、敵か味方か言うなら味方。
 ・・・少なくとも、協力することの方が多かったわね。」
「護艇十三隊十一番隊四席・小鳥遊聖。
 ・・・・・・昨晩の、時空流離、それの事後調査の為に来た。
 一応、漂着物の・・・始末も・・・・・・視野にいれて。」
「こう言ってるけど?」
ちょっと、聖さん。
多分、そうだと思ってたけど、そうだったの、そうだったのか。
萩行、後一日でも違ってれば、ニコニコ仕事だったのにね。
或る意味、ここ三年の間で彼女は十分わかりやすくなった。
斎藤一と再会したせいもあるんだろうけど、だから・・・。
「・・・と言うか、投げやりに好戦的なのは、デート邪魔されたから?」
「・・・・・・・・・・・・・・・そう。
 はじめさんが、テスト期間とかで・・・・・・一カ月ぶりのデートだったのに。
 レポート残ってるけど、今日なら会えるって、なのに。
 ・・・龍生にもやっと逢わせてあげられたのに・・・・・・萩行の馬鹿野郎!!」
しかし、見た目は、14歳程度。
向こうの基準でも、あどけなさが残るとはいえ、ぼちぼち、どこかへ嫁ぐ年齢。
そうは言っても、あり大抵に言えば説得力がない。
事情知る人を任務に付けたというならば、山崎さんでもいいし、龍生とかいう、彼女の息子でも良いところを彼女自身をつけるあたり。
・・・つけるあたり、霊王は、相も変わらず性格が悪いらしい。
いっそ、潰そうかな、うん
「・・・でえと、とはなんでござるか?」
「date、多分、逢引きのこったぁな。」
「久々のそれなら、怒っても仕方ねぇよな。」
「アレが、娘を生き残らせる為に策略謀略を編むのは、今に始まったことじゃない。」
「・・・私が、今日、此処に来るのが最適解・・・・・・ネーヴェ達の為でも十二分に許せないけどね。」
「今更だろう。
 私が懐いていたとはいえ、味方同士ではない面々を一緒くたに呼んだり・・・。
 或いは、道具のように扱われたあの子を物語世界を超えさせて、定着させてるんだしね。
 ・・・その意図が解ったのは、つい最近だけれど。
 『死なない』のと『生きる』のはちがうのよ、レン。」
「・・・・・・よく失敗しないものだな。
 お前のところの≪裏の語り部≫よりも、ピーキーな選択をしてよく生き残れるな。」
「死を覆すというのは、そういうことだよ、レン。
 一人二人なら、寿命で解決できなくもない。
 だけど・・・八人、だからね、雪姫は。」
「八人?」
「二代目ジルとリアクトも勘定に入れてるみたいだよ。
 ・・・惚れられたねぇ、レン。」
「・・・・・・もしかしなくとも、森羅も関わってるか。
 絞めるか、あいつ。」
「首を?指を?頭を?
 いいじゃないの、命令じゃなく動けるようになれば、その子はもう人間なのよ?」
「それでもだよ・・・余計な思考は、霊王に始末の理由を与える。」
「・・・潰すかな、思考硬直は組織を国を腐らせる。
 それに、飼殺しにするなら、餌ぐらい与えたままにするか・・・餌がないのを当然にしなきゃね?」
「・・・思考が黒くなっているぞ。
 可愛い妹分から逸脱しててか、硬直している。
 ・・・ディス、軟膏は何処だ?」
つらつらと、意味のない会話をする。
まぁ、情報交換を兼ねてだ。
そして、誰に言われなくても、私は身内には甘い。
厳密に言えば、敵に回る可能性もある聖さんも仲間に勘定してしまう。
物語も違う、根幹的な主義主張が違う、所属している組織の主張すら違う。
よくも、引き返せないほどの敵ではないものだと思ってしまう。
レンと言うのは、彼女の家紋の蓮の読み替え、或いはよく関わった世界での彼女の偽名。
そこへ、一つの言葉が割り込む。
何もない空間から現れて、声をかけたよう。
こげ茶のダッフル生地のポンチョから水色のセーターがのぞき、同系のミニスカに黒いサイハイ姿の知り合いだ。
背中に流した雪に金属の色味を混ぜたような銀髪に紅玉よりもさらに紅い眼の中学生ぐらいで、いつも通り、読めない笑顔だ。
いつも通り、2人を従えていると思ったのだが、もう一人いた。
氷の色のツインテにうさ耳つきの耳あて、髪と同系色の衣装。
所謂、雪ミクだった・・・5歳ぐらいだったけど。
「軟膏はコレクションルームの救急箱です。
・・・作ったんですか、2人の妹。」
「まぁな、六年経ったからな、いい加減。」
「何故、幼女?」
「アイツとガキつくるなら、女の子が欲しかったからな。
 だから、あの後に生まれていたのならこれぐらいだろう?
 ちなみに、名前は雪華だ。」
後ろの二人は、いつも通り。
黒い方―神影の服装は、黒のハイネックセ―タ―、暗い灰色のスラックス、ライダーズというもので、色は基本的に全部黒系統。
そして、あまり飾り気の無い小さなクロスがついたイヤ―カフスと白い細革紐が二重になったタイプの燻し銀の太陽がぶら下がったチョ―カ-というシンプルなもの。
うねる髪は闇色の黒で、剣呑そうな瞳は青紫、肌は死人のような真白。
白い方―ソラの服装は、白いハイネックセーターに、暗い茶色のスラックスに、丈の短いトレンチで、色は基本的に淡色系統。
鎖で結ばれた勿忘草細工のサファイアをさげている。
まっすぐな白に近い銀髪を幅広の紫リボンで結び、温厚そうな瞳は淡く空を映した青色、肌は雪のような真白。
黒い方が、神影(じんえい)。
白い方が、ソラと言う。
闇が笑うようにか、光が差すようにか、そういう違いはあるけれど、2人とも笑っている。
2人が下げているのは、頼んだ服入りのトランクと靴入りのドラムバック。
私の手持ちだと、半兵衛さんとか、小太郎は確実に丈が余る。
それに、ちょうどでもないけど、ソラの方の服の趣味・・・男物にしては瀟洒なソレは半兵衛さんの趣味に合いそうだし?
「・・・軟膏は、エリスコレクションの部屋の救急箱。
 ついでに、いっちゃん起こしてきて、起こさないとそのままだろうから。」
そのまま、ジュリさんは隣に行くと思ったが、こう忠告してくる。
或る意味で、定番過ぎる会話であるが。
「荒療治も、言わなきゃただの悪役だ、ディス?」
「うん、言えば、荒療治の意味がなくなるわ。
 それに、悪役?情報屋が善人だったらただの無能だ。」
「最低限の説明はしろ、と言うことだよ。
 ≪境の乙女≫も来るのだろう、共通認識のない状況では彼女が一番制しやすい。」
「・・・・・・萩行もだけど・・・・・・・・・貴女も正気?」
「頂点に居ようと、配下に置いてるわけではない。
 信用信頼できる能力保持者(スキルホルダー)であることと、説明に必要。
 ≪御伽噺の三乙女≫であれを展開した方が、≪御伽噺≫の説明はしやすい。」
「妹を巻き込む方じゃなくて・・・・・・並行異世界の住人に、それを・・・説明しようとすること。」
「約束ですから。
 ある筈もないと思っていたけど、もう一度会えたなら、話すって約束したから。
 知らないでいてくれるのも救いだけれど、知ってもらうことも救いでもあるの。」
「・・・ふふ、やはり、アイツは居なくなったが、お前をリーダーと呼んで良かったよ。」
くすくすと、笑いながら、再び掻き消える。
幼女を残して・・・はい?
神影(黒いの)とソラ(白いの)を連れて行ったのに?!
とてとてと雪華は、私の膝に乗る。
「あのね、マミィから伝言。
 説明代わりに私が歌えば一発だよ、って。」
「はい?」
あえて言おう、私は混乱していた。
それをよそに、たどたどしい雪華は歌う。
ソフト的に言えば、初音ミクappendのsoftに近い声色だ。






君は覇王  僕はその軍師  運命共に 歩める二人
夢を叶えるそのためならば  僕は悪にだってなってやる

失意の中 僕は 目覚めた 迎えるは眩い日の光
一度はあきらめてた 夢を 追うことができる日が来るなんて
誰が泣くことになろうとも  後ろ振り向かないままで
道を塞ぐものあれば  僕が払ってあげるから

君は覇王  僕はその軍師  運命共に 歩める二人
夢を叶えるそのためならば  僕は悪にだってなってやる





「すとぉっぷ。
 そこまで、とりあえず、ストップ、そこから色々、先はマズイから、ストップ。」
「えー、なんで?」
「色んな意味で危ないからね。」
踏みつけて、打ち付けて、啼きなさい、なんて歌詞、精神年齢は投げておいても、外見幼稚園児に歌わせられるか。
歌わせるほど、私は常識外れではない。
流石に無理矢理、意識を戻す。
「ゆっきーとか、叫ぶから?
 『はれんちー』とかって。」
「解ってるなら。」
「う~?
 『じょーほーは、うんめーに対抗できるゆいつの手段』って言ったの、お姉ちゃんだって、ママ言ってたよ?」
「・・・あのね、番凩替え歌とか、蒼紅の主張とか、まだ穏便なのあるでしょうに。」
「ダディ、好きだもん。
 シナリオ、はんべ様のだけ30回クリアしたよ?」
「・・・手遅れ・・・・・・荒療治にしろ、少し説明が。
 ・・・・・・ベターな方法かもね。」
投げやりだね、レン。
だって、投げた槍が見えないぐらいだもの。
こうなりゃ、私も男だ(←いえ、徹頭徹尾女です。(特に胸と体型。)by。作者)
能力で、二つ、青年コミックサイズのPS2ソフトを引き寄せる。
ついでに、関連書物も。
PSは上の部屋だから、中身は動かせないけどね。
水墨劇画風の慶次のジャケットのと背中合わせの双龍のジャケットのもの。
つまりは、2と2外伝のそれのソフトだ。
「端的に言えば、貴方達のこれからを含めて、私は貴方達の事を知っていた。
 ただ、これ・・・遊戯のように多彩でもなく、私と言う誤植で分岐し過ぎているから、意味のないものではあるけれど。
 いくつかは、これや続き通り・・・そう分岐したみたい。」
「お市も関係してるのか?」
「うん、そうだよ、茜花。
 記憶は幾つか閉じさせたけど、読めないわけじゃない。」
そう、例えば、半兵衛さんが戦死して、秀吉が家康に討たれること。
そう、例えば、みっちゃんがその為に、情人の彼と敵対すること。
そう、例えば、お市ちゃんが、どうあっても浅井長政を失うことが多いこと。
そう、例えば、みっちゃんと家康が、どっちが死んでも残された方が心を相手に連れて行かれたこと。
そう、例えば、秀吉はねねを弔って、小さな寺を建てていたこと。
そう、例えば、みっちゃんと家康が、両方とも生き残るのは、36596ルートのうち、その一つ二つだけ。
正確に言えば、些細な違いも数に入れた数で、大体でも、60ル-ト・・・100回やって一回あるかないかぐらい。
語れぬことなど、山ほどある。
それに、嘘をつくのは、情報屋(わたし)の仕事だ。
カミサマでさえ、騙して見せましょう、虚無繚乱の夢を。
コツは真実の中に細かいウソを盛り込む。
ある程度は、茜花には話してあったし。
中身まで話してはいないけどね。
「・・・それで、さっきの歌はなんでござるか?」
「これのお話を元に解釈して、とある歌を替え歌して歌ったのがさっきの。
 あの後に、ちょっとアレな歌詞だから。
 踏んで、打って、啼きなさいな、的な。」
「・・・・・・にしても、ディスが言ってた、あの人が殺し大好き変態紳士だったり、あの人が猿ってより大狒狒なの本当だったんだ。」
関連書物‐2のイラスト集を見ながら、話を変える為にか茜花はつぶやく。
茜花は、実家については言うことはないが、鬼神衆の御前を通じて、殺されるはずだった彼女と小十郎景龍の妹・紗華を助けた寛永寺の和尚・天海についてはさして、悪い感情を持っていない。
確かに、あの天海和尚。
結構、良い人で・・・優しすぎる人だった。
「と言うか、私も、びっくりしたわよ。
 こっちの後に言ったあの世界での明智光秀が家族大好き&人格者なのは、魂が跳ぶぐらいにね。」
「・・・織田の死神がか?」
「うん、こっちの・・・私の世界の彼は家族いるよ?
 すんごい愛妻家で、娘と嫁さんラブだったけど、織田信長討った人。
 ・・・天下繚乱、茜花の世界の彼はもっと、哀しいけれどね。
 娘と日本を天秤にかけたのだし。」
「・・・話し、ズレてる。」
「それを言ったら、飛ぶけど。
 レンの息子と娘達の住む世界だって、分岐だしね。」
「確かに・・・。
 ・・・種(シード)のC.E.ともう一つは西暦地続きの世界・・・・・・近いけれど、違うものね。
 ヤマトくんも、ティエ達もちゃんと、居たものね。」
「記されてはないけど、ディエスや雪姫達もちゃんと、いたんですから。
 ・・・それを言ってしまえば、私はどうなるんでしょうね?」
自身用だろう、マグカップに、匂いからしてドクダミ茶を入れてきたようだ。
どうでもいいが、BASARA世界から来た彼らにとって、今口を挟んできた彼―いっちゃんは、悪夢だろう。
少なくとも、昨晩会った家康さん以外には。
蒼い銀髪に、黒の着流しと抹茶色の羽織に、作った笑顔。
過去の私と言えど、ダントツにやりにくい。
何せ、老獪という言葉が服を着て歩いているようなものだから。
「「「「樹(いつき)(くん)(。)(殿)!?」」」」
複数の声が重なる。
まぁ、当然だろう。
「お兄さん、だぁれ?」
「白愁樹菖、と言います、雪のお嬢さん。」
相変わらず、小さい子には甘い。
私もそうだけど、アイツのは、それに輪をかけて。
解らないでもないけどね、或る意味でいっちゃんも、萩行だもの。
菊乃との初めの子と菊乃は殺された。
子どもは何人か残ったけど、人間で思い出させてくれたあの子・日向は、殺されたもの。
自分の、いっちゃんのようなもう人でないそれならまだしも、同じ人間にね。
それまでもさして、人間好きではなかったけど、嫌いに拍車をかけたのは、それだもんね。
「相変わらず、性格が、残念、だな、白愁樹菖。」
句読点が過多に入っているが、沈黙抜きで言う。
嫌い、と言うか、いっちゃんにしても、同じく嫌いな風舞姫と肩組んでラインダンスした方がマシな程度には、お互いがお互いを嫌っているのである。
まぁ、菊乃さんが死んで、里を護って行こうとしたところに大概の歴史で織田信長に滅ぼされてるし。
茜花の世界で言うところのデミウルゴス云々抜いても、織田を看過した時点で信用できないのは解らないでもない。
それに、解りにくいけど、いっちゃん人間嫌いだもんね。
各歴史の著名な連中にはほとんど、まだというレベルであるけど気を許しているし、大概の『前田慶次』には気を完全に許しているけど、それでも。
人間の醜さも、綺麗さも大概見てしまっているからなんだろうけど。
「くすくす、死神殿ですか。
 ・・・住む人間がいなくては、世界を護ってもしょうがないでしょうに。」
「源ちゃんほど・・・・・・固執してないわ。
 ・・・・・・それに、住む世界がなくて・・・・・・人間を護ってもしょうがないでしょう?」
「それ、犠牲になる子達の前でも言います?
 意地の悪い質問ですが、ディエス君達と世界が天秤にかけられたら、貴女はそれでも世界を選ぶと今言ったんですよ?」
「・・・ぐっ。」
「私なんかより、世界を乱していた織田の馬鹿殿を止めない貴女方に私を糾弾するなど片腹痛い!!」
「はい、そこまで。
 どっちも正論だけどね、鶏卵なこという場合?」
流石に、止めた。
一応、止めた。
解らないでもないし、私も心情的にはいっちゃん側だけどね、今する会話ではない。
「それでもですよ。
 ・・・菊乃さんのことは特別ですから。」
「・・・じゃ、あの子のフォローよろしく。
 のめり込むいっちゃんなら、同じ系統大丈夫でしょ。」
「中々、お猿さんはともかく、剣は純鉄ですともろいですからね。」
「ほんと、清々しいぐらいに女の子好きよねぇ。」
「おや、どちらも好きですよ、菊乃の忘れ形見ですし・・・個人としても、私が失ったモノを持っていますから。」
「誰かを思える内は、それはまだ手の中だよ。」
「さあ、どうでしょう?
 私は《傍観天鼠》ですよ。」
にこやかに、言い切らないでほしい。
ええ、空気が倍速で悪くなったの肌で感じたわ。
とりあえず、音速近くな速度で、メモを書く。
買ってきて欲しい&ローザさんから貰ってきて欲しいもの。
端的に言えば、医療用眼帯と空気飴。
半兵衛さんには、現代の空気はあまりよくないだろう。
少なくとも、慣れないうちは、だから、舐めるだけで、陸では空気清浄、水中では空気発生させる飴を薔薇姫に作ってもらおうというわけだ。
後、暴走するだろうから、剣・・・かすがちゃんのことになると。
200年ほど経ってるし、血縁ではあってももう、血はあきれるぐらいに薄い。
それが、伊賀ではなく、甲賀なら尚更。
だけど、奇跡みたいに、かすがちゃんは、髪の色以外は私の樹菖としての記憶にある菊乃さんに似ている。
決して、樹菖が口にしたわけじゃないしけど、だけど、六歳で人見知りの激しく、かつ、家族の声に誰一人似てない彼女にすぐ懐いたのが良い証拠だ。
そして、三度、話を仕切りなおす、と言うか、そうこうしている内に、かすがちゃんがちょっとヤバい。
蒼紅主従の四人や、何も知らない元親や私さえいればいい小太郎、反目敵対していようと気心の知れた仲である慶次と半兵衛はまだいい。
佐助がいるが、それでも、かすがちゃんは独りなのだ、だからこその思いつめやすい気質のフォローはするべきだろう。
しかし、私では無理だ。
あの小さなあざみ同じと言っても、能力も制御できるし、戦える人間だ。
そういう意味では、戦う方法はあっても戦いを好まない《境乙女》は大丈夫だろう。
最低限、婆娑羅の暴走があっても抑えれるだけの戦闘力はあるのだし。
予測していた『謙信様も、虚構なのか。』という問いも、まず結論から言う。
そりゃ、もう、切り捨てるかのように、バッサリと。
「詳しい理論は、夜にでも話す。
 話すが、これはあくまでも、貴方達の一部ではあるけれど、貴方達が作られたモノではあるということではない。
 ・・・言っちゃ悪いが、《御伽噺の幽霊》でも、名前と性格、外見CG・・・画像のある100名足らずでも、人間と同じような人形を作るのはかなり、手間だ。
 とある組織のお話になるが、安芸の財力と土佐の技術力のあるその組織でも、連隊規模・・・多くても5000ほどしか作れなかった。」
「それも、九割以上、捨て駒前提の量産品で、命令を聞く程度の知性しかなかった。
 ・・・そうだね、作り物だと言っても、人間と同じように受け答えができて、人間以上の戦闘力を持つ人工物は100も居なかった。
 人外は別だけれどね。
 ・・・人間そっくりと言うか、そういう存在だと知らない連中なら、こっちも含めて60居るかどうかだ。」
途中で、ジュリさんが補足する。
見た目、下手すれば、レンよりも幼いけど、年齢は結構行ってるし、彼女もアレに関わったのだから。
私の膝の上に居た雪華を抱き上げ、膝に乗せる。
「せいぜい、そうね。
 《七罪》の《嫉妬》《怠惰》《色欲》《大食》、その副官の《サリエル》とその兄弟、戦闘部隊や諜報部隊の隊長格で何人か。
 肉体抜きなら、紫麒と紫麟に、こっちの白羅とルーフェリンティランシア辺りまでが純粋な人工知性かな。
 ・・・ある程度の精神の縛りまであるのを含めると更に別の二十人と私の眷属も含まれるが、そっちは投げる。
 ほとんど、こっちの技術だけで作ろうとすると、精神の独自性を自分ではなく、他者に・・・主人に持たせることになるから、そういう意味では、人間のようにいかない連中もいるからね、うん。」
「それにな、コイツの言葉になるが、お前らは、夢や理想をもっていないのか?
 人工物だと気づいていない人工物でもそれは、持たせられないんだよ、持たせても眠る夢をいつまでも留めて置けないようにそれは意味を成さない。
 ・・・・・・ディス、少しかじ・・・わかった、無言でそうも睨まないでくれ。」
半ば以上、つらつらと言う。
彼らはこの上なく人間だった。
虚実入り混じっていようと、彼らは彼らの人生を生きた。
生き残ってる《怠惰》と《色欲》のマリオル姉弟、《サリエル》の兄と妹、白羅とルーフェリンティランシアとて、何も思っていないわけではあるし。
そして、ジュリさんは、こっ恥ずかしいことをさらりと言ってのける。
まぁ、後半は無言で制したけど。
ジュリさん、一応、血液だけでなく、人間の理想や夢、それにかける情熱と言うか感情も食糧にできる。
だから、今この場を人間風に表すなら、御馳走の山、なのだろう。
「マミィ、お腹空いててもダディはメッなの。」
「はいはい、アイツに似てるのは、流石に胃もたれしそうだしね。」
「むぅ、ちがうの~。
 マミィは絶対にこーかいするなの!!」
「・・・幾ら、アイツの姿勢と半兵衛の姿勢が似てても、それは無いね。
 むしろ、盲目的過ぎて、逝った後のゴリラの方が心配だ。」
「むぅ、マミィはダディが好きだったんなら、似てるダディを手にかけたら壊れるなの!!」
「壊れるねぇ。
 心を失ってはいないけど、もうヒビだらけのような気がするけど?」
微妙に怖いお話してるなぁ。
と言うかね、お父様、パパ、パピィ、父上なんでもいいけど。
智将2人は軽くアレだと思う。
父親呼びに慣れてない。
まぁ、明言する気はない。
「Daddy?
 ・・・まさか、豊臣の軍師か?」
「へ?半兵衛の?」
「・・・昔の旦那と半兵衛が似ていてね、面白がって、半兵衛様じゃなくて、ダディで呼ぶようになったわけだ。」
「政宗殿、だでぃ、とは。」
「父親のこった。」
「・・・なんと、竹中殿はその幼子の父御か!!」
「なわけあるか、へぇ、君は私が心を残す背の君がいるのに、子どもを欲しいだけで他人に身体を許すふしだらな女に見えるわけか、へぇ、ほー。
 ・・・なぁ、ディス、このまま、ジュースにしていいか、この戯け者。」
明言する気が無かったのに、政宗と慶次が地雷を踏んで。
考え過ぎて話を聞いてなかった幸村が爆弾を落とした。
立ち上がったジュリさんが、アイアンクローで発言を封じた上で、頭を握りつぶしていいか聞いてくる。
もちろん、止める。
時間も時間だし。
「とりあえず、まとめ。
 しばらくは、帰れないのは確定。
 服装だけでも、現代風にするから。
 こっちの装束、知り合いからかき集めてるから、もうすぐ来・・・」
私が、台詞を言う前に、ドアチャイムが鳴る。
下のロビーの杉本さん達には話を通してあったし、服を持ってきた誰かだろう。
さて、誰だろう。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

長くなりました&ネタが飛びまくり、な一話です。
BASARA以外だと、家族の写真、ガンダム種とOO、天下繚乱、脱色などなど。
ブログ内の二次設定も含めて、バタバタなのです。
そして、家族の写真だけで別ブログ建てるか真面目に悩んだ今日この頃。



次回こそ、次回こそ、買い物話に入れたらいいなぁ。
いや、出す予定のあの人やら子の人やら、やる予定の事考えたら、多少短くなっても、次回は丸々着替え話にした方がいいかな、とか。

また、別途に龍生と斎藤さんの親子話書きたいなとか。
ちなみに、顔はそっくりですが、中身は永倉さん系と微妙に噛みあうのか噛み合うのかないのか。
(上記の性格が永倉さん系なのは、史実斎藤さん、永倉さんが晩年も交友あったという史実ネタから。)


しっかし、微妙に年齢の高い一話です。
ジュリ(及び、その部下白黒コンビ)と聖ちゃん、戦白黒がいるせいでもありますが。
それぞれ、1000歳少々(部下もどっこい)、2000歳少々、そして、数万歳。
設定見なおして、スで吹きました。

サブタイトルは、後々の伏線でもありますし、白黒の願いでもあったり。
基本的に彼は傍観者なので結局やりやすいのです。

とあれ、次の物語にて。




貴女の最期の言葉は途切れたまま(オリジナル歴史系?)

2012-08-23 16:21:01 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次

多分、正史(私達の時間枠に近い歴史)かbleachの時間枠の歴史の『天正伊賀の乱』の後、織田信雄が殺害されていたら、のIf。
史実だと、江戸時代まで生き延びるが、ソイツは影武者設定で。



伊賀の中興の祖・女頭領菊乃は、樹菖の嫁で(伊賀ほぼ壊滅の)二百年ほど前の人。。
多分、上忍三家のうちの一つの娘。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


許せなかったんです。

私は 死ぬことができません。

いえ 流石に首を飛ばせば死ねるかもしれませんが。

菊乃が 遺したモノを見届けるぐらいは生きてみよう。

そう思えたのに・・・。

奪ったのなら 奪われても文句は言ってはいけませんよ?






貴女の最期の言葉は途切れたまま・・・










その夜、織田信雄は死んだ。
その夜、彼の城は燃え上がった。
殺された。
銀髪に墨染の羽織姿の青年に。
彼は、抹茶色の着流しと愛刀・霧氷を血に染めて。
信雄の遺骸と燃える城を背景に立っている青年に殺されたのだった。
そこへ、黒いはかま姿の少女が表れて、咎めるように一言。
「貴方・・・っ」
「おや、死神殿ですか。」
「織田信雄を殺したの?」
「ええ、それの父親の命運は尽きてますから、代わりに。」
淡々とそれこそ、昨日の夕飯をそらんじる程度に、言う。
燃え盛る炎に照らされているその頬の血痕も、炎で赤く見えているだけで泣いているように見える
死神殿と呼ばれた少女も、或る程度の理由を知っているからだろうか。
「・・・・・・(無表情な顔を微かに歪める)」
「これとその父親の蛮行を見逃した死神殿がそんな顔しないでください。
 ・・・殺したくなってしまうでは無いですか。」
「《歌乙女》の意志?」
「私の意思であり、彼女の意志でもあります。
 まぁ、私は彼女のイレギュラーではありますが。」
「・・・菊乃の遺産が壊れたから?」
「言わずもがな。
 見ていただけの死神が何を言います?」
「・・・・・・・・・・・・」
青年は、笑みを深くして、ただ、返答を待つ。
しばらくの沈黙。
促すように、彼は沈黙を守る。
「憎いからって殺したら・・・そいつらと一緒よ?」
「貴女は、霊王・・・いや、護挺を憎んだことは無いのですか?」
つまりは、「貴女も、私と同じでしょう?」と言外に言う。
「・・・・・・それでも、よ。」
「なら・・・」
言葉を断ち切るかのように樹菖は、聖に斬りかかる。
咄嗟に彼女は、腰の刀を抜き、それで受け止める。
数合斬り結ぶ。
マトモに、否、力の限り打ち合えば、刀とて鉄の棒。
ひん曲がるはずだが其処は達人同士。
さらに言うなら、彼女のと彼の刀は、ただの鉄の塊ではない。
長く在った物が、神と成るならば、その二振りは神だろう。
片や、霧氷。氷と水を付加属性とした文字通り主人の刀となるべく作られた式神。
片や、蓮華姫。死神の持つ斬魄刀の一系統・風雷系最強と呼ばれる刀。
そして、生まれて幾星霜。
霧氷の方が、歳浅いが、主人のうち、青年の方は少女よりも年嵩の存在を内包している。
無論、少女の方も外見ほど幼いわけではない。
そして、一際大きな音がする。
あり得ないことに、膠着状態・・・刀を交錯させた状態で固まる。
「・・・っ、なら、殺してくださいよ。
 首を落としても死ねない、んです。
 そんな私を受け入れた、菊乃の最期の言葉を聞けませんでした。
 菊、乃の遺したモノを守りたいと願うのは、奪われたのなら、潰したいと願うのを奪うのは、死んでないだけです。」
血を吐くような。
或いは、慟哭のような。
泣き方を知らない子供のような言葉。
「・・・・・・」
少女は息を一つつく。
そして、一言、呟くように青年に告げる。
「本当は、挺則違反だけどね。
 『・・・・、・・・・・・・・。・・・・・・・、・・・・。・・・、・・・・・・。・・・・、・・・・・』」
肝心なところは、ちょうど、炎が噴きあげ、柱が折れる音にまぎれ、二人以外聞こえない。
ただ、それを聞いた青年の顔が、緩んだことからして、十二分に、菊乃らしい言葉だったのだろう。





そして、数分後。
田丸城が見える崖の上。
そこに青年はいた。
「・・・ならば、傍観者として、天鼠として生きましょう。
 いつか、貴女に再会できた時にするお話の為に外に立ちまわりましょう?」





++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


小話です。
一応、逆トリの方で、死神少女・聖嬢と青年・樹菖が仲悪い裏事情。
いろいろあって、この時点より仲悪くなって、逆トリに至りますが。
樹菖をして、同じ嫌いな風舞姫と肩組んでラインダンスをした方がマシレベルに悪化しましたorz。
お母さん、哀しい!!


因みに、菊乃さんの最期の言葉。
「貴方は、自由になっても良い。此処は貴方には、狭すぎる。大好き、愛してたよ。向こうで、会いましょ。」
演出上、作中で聞こえないほうがいいと思ったので、ああいう表記。
ばっさり、あっさりしてた。
BASARAキャラだと、まつさんや濃姫ってよりは、多分、ねねさんに近いかな。
もちろん、原作では彼女は出演してないし、公式資料でも触れられてないけど。
友垣三人、秀吉、慶次、半兵衛と仲良くやれて、秀吉と慶次、真逆に近い二人が惚れた相手。
まぁ、多少おしとやかと言うか、おっとりな面はあっただろうけど、女性的な意味でしたたかだったのかな、とか。


話巻き戻して。
白愁樹菖蒲。
男の『歌乙女』も含めて、イレギュラーな≪歌乙女≫の中でも、ハイエンドにイレギュラ-な奴。
源平がドンパチやってた頃(遅くても、源三代の間ぐらい)に生まれて、黒船来航数十年前に死んだ奴。
それをなぜか、一回ではなく、複数回行っていて、最期のストレートにディスティアが生まれる時間軸上なのが上の話。
同じ会話を一回目ではないけど、やっと、考えを変えたのが上の話になるのかなぁ、と推測。
嫌いだけど、認めてないわけじゃないんですよ?


逆トリ四話は、もう少し、最期の部分、流れ的にはもうアップしても良いんですが、次回もやるのは億劫だし、でなくとも、買い物編終わったらまたするので、もう少し詰め込む。
実際問題、あと数百文字なんで、今週中には何とか。



では、次の物語に手。

鳳仙花ノ夜ニ

2012-08-06 08:51:15 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次




色々、読みまして、ちょいと、。

本編でも扱うけど、多分内容は変わる。

一応、習作。

ねねさんのこと含めて、捏造過多。
ただにゃ、戦国時代ってことを抜いても、大名(貴族)生まれじゃなかった秀吉達が負けた場合、酷いことにはなりそう、それが元々の着想。
元々、大名じゃない小生意気な庶民の倅が負けたら、いろいろ踏みにじりますでしょう?
いえ、家畜が手を出せば、殴りますでしょう?


++++++++++++++++++++++++++++++++++

自分自身が出来ていないのに。
ちょっと、滑稽なお説教のお話。




鳳仙花ノ夜ニ





ある真夜中のこと。
リビングのテーブルに、半兵衛がいた。
仕事の締め切りもあるけれど、それ以上に眠れないディスティアが見つけるのは或る種の必然。
「眠れないの?」
「そっちこそ。」
「相変わらず、ね。
 何か飲む?」
「お任せするよ。」
なんでもないように、そんな言葉を返す。
半兵衛を含む面々が来て一週間ほど、すでに家主のディスティアにとって、これはもう日常になりつつある。
さほど、眠れない者同士であるから。
半兵衛は、秀吉の理想を夢として突き進んできた。
それこそ、息をつく間も惜しむぐらいに。
他に目をやることもなく。
ディスティアとて、十代を復讐の為に多く消費し、二十代の今も、表とは別に、裏の混沌とした秩序を護ろうと暗躍している。
それに、彼女は最低限の更に最低限しか眠れない。
あの少年を見殺しにしてしまった時より、傾向はあったが、直近の千冬の死とKAITOの封印が悪影響を及ぼしている。
それがわかっていても、眠れるはずもない。
「或る意味で、慶次と半兵衛さんって、同類だと思うよ。
 選んだ道が違うだけでね。」
カップを出す為に、ディスティアは半兵衛に背を向けたまま、そう言った。
或る意味で進んで地雷を踏む、とも言う。
「へえ?」
「あらあら、怖いわね。
 私にも、似たようなこと、数えきれないぐらいにあったの。
 慶次のように自分が許せなくて復讐に走った事も、貴方のように自分の夢を他人の理想に預けたこともね。
 ・・・秀吉さんの選択はベスト、最良ではないけれど、悪くない手よ。
 だけれど、それを選んでしまったのは、あの人の弱さ。」
半兵衛は何かを言い返そうとしたが、背中を向けている彼女の声音がなんでも無いように言っているようで、その実、はっきりとした経験から・・・言ってしまえば、哀しみからそう言っているのを感じてしまい何も言えない。
そのうちに、お茶が出てきた。
セントジョ-ンズワ-トとリンデンと後、幾つかのハーブティだ。
解りやすい安眠ハーブ。
それと、小さな豆腐スコーンを幾つか。
「・・・肉体的な時間はできるかもしれない。
 だけど、運命まで変わるかわからないから、焦っているのかもしれないけれど、盲目さは命を縮めるわ。」
「・・・・・・何が言いたいのかな?」
「はたから見ていて、豊臣と慶次の今のそれは馬鹿らしい、ということ。
 信じたい現在(いま)しか見ていない豊臣と、忘れたくない過去(むかし)しか見ていない慶次。
 ・・・或る意味で、滑稽だね、と思ってね。
 どちらも、破滅しかないという意味合いでは。
 意味合いは違えど、秀吉さんは私がよく知っていた男と同じ願いを理想にしているからね。」
つらつらつらとディスティアは言う。
内心を悟らせるモノ含ませずに、ただ読みあげるように。
馬鹿にしているわけではない。
むしろ、かすかに含まれるのは自嘲だろう。
自身も同じ道を歩んでしまったのだから。
「その男は、どうしたんだい?」
「死んだ・・・私が殺した。
 復讐心と義務からね。
 ・・・死者は生き返るべきだと思う、半兵衛さん?
 私は生き返るべきではないと思うよ、少なくとも、死者が望んだのでなければね。」
「それは・・・」
一瞬、半兵衛は戸惑う。
多分、慶次も、秀吉であっても、否、自分であっても『蘇らせたいか?』と問われ、そうしたい相手はいる。
それは、多分同じ相手。
自分の選択には後悔はない、だが、未練にはなっている相手だ。
少なくとも、自分が死んで、秀吉も死んだ後に歩むであろうその道筋の遠因は、それだ。
理想に近づいたからこそ、見えてしまったそれ。
「君はそうしたい相手がいるのかな。」
「いるし、いたよ。
 私の異世界渡航はその為の迂遠な道筋だよ、大概と付くけれどね。」
「・・・どうしてだい?」
「普通の人生をあげたい。
 高校に通って、授業受けて友達とふざけて、大学行って、酒の飲み方覚えて、好きな相手と結婚して、子供作って育てて、家庭を作って布団の上で子どもや孫に看取られるそんなクソくだんない人生。
 ありきたりこそ、得難いものだもの。」
クダラナイ、そう言っている割には、憧憬が・・・ディスティアが血を吐くほど望んでも、それを得られなかった人生であることが解るそんな声音だ。
そして、好きな相手と結婚して~辺りは半ばあきらめているような。
「どうして、他人の理想を君が否定できるのかな?」
「否定はしない。
 止めは、まぁ、したいけどね。」
「何故?」
「・・・基本的に、人間は過去には戻れないわ。
 だけど、今を生きる人間は、その過去を消化して未来へ行かないといけないの。
 ・・・でもね、過去だけを見続ければ未来は視えない、だから、過去は見ないで背負って行くしかないんです。
 過去は、昔は捨てたら、その人で無くなってしまう。
 だけど、過去にとどまるのはもっとダメなこと。
 それを全てを受け入れて先に進むしかないの。
 歴史は積み重ね、その土台の上に、今があるから。
 どんな過去でも、踏みしめて、未来に行くしかない。
 ・・・慶次にしろ、秀吉さんにしろ、コインの表と裏のように、今しかないんだもの。
 それは哀しい生き方だし・・・特に、秀吉さんは自分が死んだ後の事を考えていないから、ああなった。
 どの秀吉もそれは変わらない。
 ・・・あの優しい石田三成の終わりは、秀吉さんが死んだからああなったのに。」
つらつらと、ディスティアは流す。
それは、自身に言い聞かせるようであった。
また、言葉の最後が半兵衛を捕らえる。
彼に聞かせるというよりは、思わずもれたひとり言のようなそれ。
「三成君が、どうかしたのかい?」
「言えないわ。
 自身のじゃない未来を知って人は冷静でいられない。
 人間が神様を失って冷静でいられないようにね。
 ・・・こっちの石田三成よりも、更にみっちゃんは優しかった、純一無雑だった。
 初めて人殺しをした六歳の私よりも、ずっとね。」
泣きそうで泣けなくて、泣けなくて、でも泣いていて。
それを表に出せないディスティア。
半兵衛には、それには何も言えない。
同じ赤い花であるあざみよりも、鳳仙花のような彼女に触れることはできなかった。







++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

キャラへの愛の差なのかしら。
同じテーマでも、慶次のはある日の会話に収まったのに、半兵衛のは、ちょっとした短編になりました。


―『何故、秀吉は、ねねを殺したのか?』
BASARAで、秀吉・半兵衛・慶次、ねねの友垣組を書こうとするならば。
それが、BL絡みであろうが無かろうが、避けては通れぬ道筋です。
私は多分、『愛していたから、殺した』のだと思うのです。
・・・秀吉自身には、夢が理想があった。
出自には、(シナリオ台詞や史実から察するに、秀吉とねねのみ庶民?)不釣り合いな夢が。
(どうでもいいけど、慶次は史実利家さんの代理だよにゃぁ。)
上り調子ならばいい、だけど、自分が負けたら?
古今東西、負けた軍の女ほどミジメなものはないですしね。
・・・慶次は、嫌いではないんですが、甘いんだよにゃあ。
一番、ボンボンっぽい立場のせいもあるんだろうけど、夢見過ぎだ、色々と。
甘さも強さですが、ね。
資料ひっ繰り返しても、何もない。
もしも、ねね自身が望まぬ形で殺されたのなら、某ガンダムの試作品パイロット夫婦のように匂わせ程度でも残るはずなのに。
(↑夫婦は殺される事を察知しつつも、同僚助けて最後に微笑んだ、的な描写でしたし?)
・・・むしろ、半兵衛が受け入れて、慶次が受け入れなかった理由ってなんなんだろう、ってなるわけで。
それが、『愛しているからこそ、殺した』し、『愛していたからこそ、殺され』たんだとおもうのです。


つかにゃぁ、原作がハチャメチャ吃驚万国博覧会なノリで隠されてるけど。
割と、歴史ネタに忠実なせいもあるんだろうが、シリアスだぞ、思った以上に。
シリアスつか、鬱ネタの2外伝の市ルートも、浅井長政が死んだ時点で、市も(心が)死んでいた、なら鬱でも何でもない。
史実お市の方が柴山殿に嫁いだ時点で、運命は決していたとしても、それでも、もう死んでいたのなら。
・・・愛しい人が死んだ世界に色なんぞ無いんだから。

とあれ、次の物語にて。



闇に舞う天翼 3   籠の鳥は独りで冷たい夢を見る

2012-07-27 14:14:59 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次


懐かしい声。

私達≪御伽噺の幽霊≫の因縁で、エリスは死んだ。

レイティスさんは、≪龍殺ノ英雄≫だったけど、それとは関係なく死んだ。

後悔はしてないわけじゃないけど。


だけど、だけどね。

エリスやレイティスさんの声、聴きたくないわけじゃなかったんだよ。

聞いて、泣きたくないわけじゃなかったんだよ。

泣いたら、座り込んでしまいそうで、泣けなかったんだけどね。





3. 籠の鳥は独りで冷たい夢を見る




「ヘ、Helpme、小十郎!!」
「・・・悪い、寝ぼけた。
 起こしに来たのか、ありがとう。」
数時間後。
もっと言えば、日が昇り切ったばかりの六時過ぎ。
私は、政宗を抱きつぶす勢いで彼を抱きしめて目を覚ました。
彼の情けない声を耳で聞いたからだ。
・・・その前の『起きろ』どうこうの台詞は懐かしかった。
エリスの声に似ていた。
何度か、連合の集会の後、寝てしまった私を起こしたエリスの声に。
ああ、政宗がいなきゃ、泣いてたな。
その政宗の声だったんだけどね。
「どうしたの?」
「泣きたいなら、泣けってSayったは、あざみだぜ?」
「ふふ、泣いたらね、立ち上がれるほど私は強くない。
 それに、性分だよ。」
覗き込んでくる(ちなみに身長差のせいだ)政宗をあしらいながら、私はリビングに出る。
鴉とイアに朝ごはん頼んであったけど・・・。
「るいねぇ!!」
「・・・ああ、固まってる。」
「その子が、琴蘿(りら)?」
「うん、そう。」
「話に聞いてたより、デカいな。」
「まぁ、二年経つしね。」
「るいねぇ、おにいちゃんたち、いしになっちゃったー。」
ダークブループラチナ、そんな暗い青銀髪と蜂蜜のようなオレンジ色の瞳の三歳ぐらい女の子。
宵街琴蘿(よいまち・りら)と言う、密度の濃い名前の子だ。
私を見つけると、とてとて~と走ってくる、その勢いのまま抱き上げる。
血縁ではないし、縁戚でもない、だけど、私の係累に「なってしまった」子だ。
係累というか、眷族か、切っても切れないという意味合いでは。
「・・・あらま。」
朝ごはんの準備をしていたであろう、小十郎さんと佐助は、それぞれネギを切っているとこと味噌を構えたまま、固まっているし。
その味見をしていただろう、かすがは右手に小皿を構えたまま、硬直して、鴉にそれを取られてる。
幸村と慶次は、食卓に着いたまま、固まっている。
タオルで顔をぬぐったまま、家康は笑顔で硬直していた、。
弥三郎と半兵衛さんは、私の言葉を待つように、こちらを見ている。
振り返れば、政宗は片目を見開いていた。
「・・・言っておくけど、娘でも、妹でもないわ。
 面倒みている知り合いの妹よ、血縁じゃないからね。」
「その髪色でもかい?」
「ややこしい事情、で済ませてくれないかしら?
 全員が揃ってから、また説明するわ。
 あの時の私の闇色の婆娑羅と同じ意味合いよ、人間はどこまでも愚かだもの。
 自分の欲望の為に、他人を使用するのに躊躇しない意味合いではね。」
「るいねぇ、こわいかお、メッなの。」
「はいはい。」
「・・・おにいちゃんたち、どうしたの?
 ばいくのおにいちゃんとちがうよね。」
「まぁ、知り合いだ。
 しばらく、一緒に暮らすの。」
「なの?」
「なの。」
「しろいかみのおにいちゃんも?」
「・・・どっち?」
「こっち」
「ああ、弥三郎もだよ。」
「えへへ、うれしい。」
リラにたしなめられる私。
2人の会話は傍から見ているだけなら親子だろう。
少なくとも、常識的に私の年齢で結婚してないのは巫女さんか忍びぐらいだからだろう。
だろうがな、
「ひーさま、お母さん代わりなの?」
そう言われて、無言で肯定はできない程度には私は女だ。
少なくとも、『母』であれた生の方が少ないのだし、憧れはあってもそう呼ばれたいわけではない。
「うん、そう。
 そっちにいた時の私の安定剤が佐助だったようなもんかしらね。」
「で、チビスケ、朝飯リクエストは?」
「パンケーキがいい。
 生クリームとバナナついてるのがいい。」
「おしおし、後、蜜柑のシロップ漬けだろ?
ディス、シャワー浴びてこい、薬落とさねェとまずいだろ?」
「朝飯食べてて。」
はいはい。
鴉、ほんと、顔に似合わず、リラには甘いわね。
出自とでも言えばいいのかしら。






「ったく、んなに意外か?」
オレは、パンケーキ用の粉を振るいながら、未だ硬直している面々に言った。
なんつか、逆に失礼だよな。
まぁ、ディスの年齢で結婚してないのは、巫女や斎宮何かぐらいだってんだから、まぁ仕方ねぇだろうけどな。
「いや、状況を受け入れきれてないところに衝撃的なことがいっぱいあたしな。」
「まぁ、ちゃんとした説明はたぶん、第二陣が来た後、今晩にでもすると思うぜ?
 元いた世界に戻せるかは知らないけど、どうしてこうなったかは、一応、把握してんだろうし?」
「私が生まれる前の事と関係あるの?」
「まぁな。
 イアを作ったの、あの後だしな。
・・・間違っても、お前から話すなよ、イア?」
「むぅ、一応、私だって、マスターのだよ、にぃにぃ?」
「生まれて十日も経ってなきゃ、心配になんだろが。
 ヨーグルトとってくれ、プレーンな。
 後、はちみつと、バターも。」
「はいはい。」
イア―IA -ARIA ON THE PLANETES-は、十日ほど前に発売されて、八日前に作成されたVOCALOID3にAIプログラムパッチを当てた存在だ。
まぁ、パッケージの衣装と色合いが違う、ピンクの部分が濃い水色になっている。
それ以外は、若干ウルフカットっぽい淡い金髪も、ワンショルダー気味なのも、そのまんまだ。
・・・オレをにぃにぃと呼んでくる可愛い妹分だ。
ディスが作った奴らの中で唯一、兄妹と認識できる奴。
系統が若干違うとはいえ、同じ奴のAIプログラムを元にしたんだし間違いじゃねぇ。
つまりは、俗に言う、ボトムアップ型の正真正銘の人工知能。
まぁ、多少のピンキリを覚悟すれば、裏では珍しくない。
オレも、そうだしな。
正確に言えば、俺は、PCウィルスが偶然AIプログラムに触れて生まれた産物だが。
・・・表に出れば、100年かけても片付かない問題があるからあと数十年は表に出ないだろうが。
振るった粉のボウルに牛乳とヨーグルトを3対1ぐらいでいれる。
後は、卵2個とはちみつ大さじ2、バニラエッセンスを数滴。
どうせ、あの赤い旦那も食べたがるだろうし、弥三郎とかいうチビ用にも、生地はちょっと多めに作った。
ついでに、ほうれんそうと桃の缶詰とバナナ、リンゴとはちみつ、牛乳をミキサーにかける。
チビスケは、ほっとくと野菜食わねぇからな、ちったぁ食べさせないと。
「・・・んだ?」
「えーと、俺様聞き間違いじゃないよね?」
「何が?」
「その子・・・イアって子、生まれて十日も経ってないって。」
「・・・人間じゃねぇの。
 オレも、そいつも、刹とかに会ってるから説明省いたからな。」
「ま、とにかく、朝餉食っちまおう。
 冷めちまったら、元も子もねぇだろが。」
「そうでござるな。」
茜花と幸村が、空気を変えてくれた。
助かった助かった。
まぁ、オレが血塗れなのは、気づいてんだろうけどな。
イアは本気にまだ、無垢だから。
オレも、イアも食べなくても、大丈夫だが、(イアのは食い意地が張ってるだけだ。)無理矢理、茜花に座らされた。
あ、さっきの会話の間にも、ちゃんと作った。
ちなみに、ディスのこっち・・・普段、編集さんの寝泊まりに使っている方は、六人座れる食卓があるが、もちろん足りないので、キッチンカウンターに座ったり、居間のソファでご飯を食べることになる。
ちなみに、メニューは、出し巻き卵、青菜入りのと二種類と、貰いもんの氷下魚の干物を焼いて山のように積んで。
後、ほうれん草のおひたしにおかかをのっけたのと、里芋の煮っ転がしの山。
大根の味噌汁と山盛りの白米に、漬物何種類か。
なんつか、食べる前からおなかいっぱいになる。
満腹中枢なんて、目安にしかならないオレでもそうだ。
まぁ、座るところが少ないからオレにしたって、チビスケを膝に乗せていた。
弥三郎とかいうのは、なんと、かすがちゃんになついて世話を焼いてもらっている。
それから、どう会話をたどってそうなったか、解らない。
解らないのだが、茜花が昨夜、少々洩らした言葉についてになった。
―『お市ちゃんがこっち来るって言うのと、ご先祖さんに会えるらしいから、二つ返事でね。』
その言葉。
「どういうことって、そのまんま。」
「誰かってことを聞いてんの。」
「ややこしいんだよなぁ、オレも知ってんよ?」
チビスケと弥三郎の世話をしつつ、オレも場を制する為に会話に参加。
ボリボリとたくあんをかじりながら、茜花は、オレ達の困惑もなんのそのあっさりと、こう言った。
それこそ、お茶漬け並みにさらりと。
「片倉小十郎。
 正確には、その息子の方の側室・真田阿梅の実娘も、氷の婆娑羅者だったんだけど、その人が私の世界の片倉氏・・・100年ほど前のかな、うん。
 それに拾われて、輿入れして、私の曾々祖母にあたる。」
「はい?」
「へぇ、右眼の旦那の子孫になるわけか。」
「・・・so、wait、なんで、そこで真田の名前が出てくる?」
「知らん。
 私のとこに伝わってる話だと、こっちで言う関ヶ原の戦いの前に、真田信繁がまだ幼い娘を小十郎に預けたらしい程度だ。
 こっちも、似たようなもんだしね、うん。」
「あ、そこまで、もう話したか。」
・・・ディスか。
意外と速かった。
白いブラウスに暗い青のひざ丈フレアスカート、寒さ対策薄手のセーターを着ているあたり、一応、傷の事は気遣ってんのか?
水出しにしているハーブティ・・・ハイビスカスとラヴェンダーベースのせいで、見た目はかなり、アレなそれをカップに注いで、電子レンジに入れたようだ。
いや、だってよ、真っ赤な水色の奴に、真紫の水色入れてみろ、見た目は滅茶苦茶怪しいぜ?
マッドなドクターの飲み薬な感じだもん。
「・・・ま、そういう未来の世界もある、と言うところだよ。
 そっちの未来がそうなるか、解らないしね。
 或いは、先(みらい)を知ってそれでも、自身を貫き通せるなら話すわ。」
そのカップにはちみつを大量に入れて、ディスティアは言う。
なんでも無いように言うが、或る意味、ハリネズミのジレンマだよなぁ。
大好きな兄達ではあるが、同時に人を道具として扱った連中もいるわけだし。
それが、この時点で無いからと言って、なんの免罪符にもならない。
わかんだが、その態度は怪しまれるんじゃねぇのかね。
「それが、難しいのが、人間だものねぇ?
 残念ながら、そういうとこはずっと、変わらないよぉ、おぞましいぐらいにねぇ?」
くすくすくすと、魔王のとこの死神にように不気味に笑うのは、ディスの≪兄≫だ。
いきなり、現れた。
多分、気配を無くしてから玄関から入ってきたんだろうけど。
こっちに住むようになってからは、戦白黒(そよぎ・はっこく)って名乗ってるらしいが。
濃い紫色の髪は、しなやかに真っ直ぐで長さは、結っている状況ですら床に着くほど長い。彼の過ごした時間そのままに。
それを腰で折り返し、項で更に折り返して流している。
瞳は、全てを見透かしているようなアイオライトの淡いブルー。
服装は、まぁ、薄着ではあるが、普通のカジュアルなものだ。
髪が台無しにしているけどな。
妙に間延びした口調が、殴りたいけどな。
「はぁい、我が妹。
 中々に面倒なこと、されてるみたいだね、あのクソ野郎にぃ?」
「はい?」
「ねぇねぇ、あのクソ野郎が、素直に同じ術式を使った子を連れてくると思うぉ?」
「・・・はい?
 違う時代時期から、三人、自殺行為よ。」
「自殺行為だろうとなんだろぉとアイツは、馬鹿だよぅ?
 それに、簡単に判別できるだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・日を選べば、返せると思ったのに、それじゃ無理じゃないの。」
「んっふふふ、私の入れ知恵だしねぇ?」
「兄さま、相変わらずですね。」
「私達は、変われない、それは解りきってるでしょぅ?」
「・・・・・・弥三郎、ごはん終わった?」
「う、うん、終わったよ。」
「じゃ、ちょっと来て。」
そうして、つらつらと流された会話を断ち切ったディス。
大きなため息をついたディスは、弥三郎を抱き上げてクローゼットと札の下がった部屋。
隣で言うところの昨日、彼女が手当てを受けた部屋にあたる。
変装用も含め、服や小道具が置いてあるらしい、よく使うのは、隣の部屋の自室に置いてあるようだが。
詳しくは知らん。
下着まで置いてあるらしいし、ほとんど、着たきりすずめの俺には関係ない。
「・・・で、テメェは誰だ?」
「この人たちが、妹が行ったことのある物語世界の子達でいいのぉ、鴉君?」
「そうだけどさ、殺気ぶつけられて、よく態度変えねぇよな。
 小十郎に佐助、ソイツ、織田のトコの死神みたいなもんだから、喜ぶだけだと思うぜ?」
「失礼ですねぇ?
 ああまでSでも、変態でもないですよぅ?」
「声と語調が似てりゃ、警戒されてもしょうがないだろうが。」
「似てない双子の弟や白色の医者とも似ているでしょう?」
「・・・白色の方は、織田の死神と似たようなもんでしょが。
 多少、ダウナーではあるけど、織田の死神はかなりアッパーだけど。
 ・・・・・・一応、昨日の≪翁≫と同じく、血縁じゃないけど、兄にあたるよ、ディスの。」
まぁ、確かに、リアームや邑輝の中の人と声似てんだがよ。
語り口が怖いんだよ、つか、夜中に廊下で会いたくない人だよ。
「ん、まぁ、そう。
 そして、君達が此処に来ちゃった間接的な原因になるねぇ。」
「・・・ディスに怒られんぞ?」
「ふふふ、いいねぇ、あの子はめったに怒らないから。」
変態は変態でも、マゾってよりは、病気レベルのシスコン、ブラコンな為だろう、うん。
・・・どっちでも嫌だけどな。
こんなの兄弟に居たら殴るどころか、天国へ案内したいぞ。
とりあえず、碌に腹芸は得意じゃないから、むすっとした顔で誤魔化す、俺。
「呼ばれた、理由。
 それがあるってことなのかな、推測だけど、難しい手段使ってるみたいだしね。」
「そうそう、流石は豊臣の軍師だねぇ。」
半兵衛の言葉でやっと、本題に戻る。
ああ、ホント、助かる。
智将系ってのは、或いは策士系はそういう疑問を疑問のままにしないトコ、大好きだぜ?
「まぁ、詳しくは話せないよぅ。
 妹の『悲劇は、当事者が語るべきだ』に抵触するしねぇ?
 端的に言えば、二十日足らず前に、妹のように思ってた子が天明より少し長く生きて死んで、それを追うように鴉君の同類が暴走、そして封印。
 その封印された子の同型・・・正確に言えば、妹が設計した子達が軒並み、機能停止。
 ・・・その後から、仕事人間なんて甘いもんじゃくて、仕事機械・・・とでも言うのかなぁ、それぐらい仕事詰めまくってねぇ?
 七日前からは多少は抑止力になっていたヨナくんも、学生だったしねぇ、来れなくて仕事に拍車がかかってね、過労で≪想送薬毒(アンダーテイカー)≫の二の舞かとでも思ったんでしょぉ。
 逆に君らをこの時代に・・・まぁ、世界も違うけれど・・・招いたってわけだねぇ?」
「うん、マスターね、私を作ってからでもあんまり寝ないもん。
 一日に2時間眠れればいい方なのかな。」
イアは、心配そうに言う。
千雪が、ディスが妹のように思っていた子が生きていた時でも、結構そういう夜はあったが、確かに身体を酷使するのはあいつらしくない。
「全く、その原因とやらにも益がない話じゃないよね?」
「そりゃあね。
 この時代からでも遥か未来のとある一つの結末が、その男には許せないんだよねぇ。
 遥かすぎるその未来で、とある死神の係累が、人の手によって生み出されたと言うだけで、死屍累々な人生に死屍累々な結末。
 その為に、アレに父性愛と言うのも、ちゃらちゃらおかしいけれど、ねぇ、死神のお嬢さん?」
誰もいない・・・ベランダ側に置いてあるロッキングチェアに声をかける≪占い師≫。
ボケたか思ったが、その呼びかけに答えるように、彼女は現れた。
「・・・噂に違わず、悪趣味のようで。
 ≪破滅を呼ぶ占い師≫戦白黒殿。」
そんな、盛大に不機嫌そうな声で。
まだ、幼さの残る中学生ほどの少女の声で、そう言いながら。







+++++++++++++++++++++++++++++


本気に予定は未定でした。
予定ではもう、買い物に繰り出していたのに。
着替えすらできてない、どうしよう。
パパ達出演、後四話かな、うん。
ついでに言うなら、聖ちゃんの出番、着替えの後だったのに、≪占い師≫★大暴走☆
今回ラストに登場。


中の人が大量にかぶっているせいもあるんだが、ディス嬢が若干、微妙にセンチメンタルにひきこもりナーバスモード。
お兄ちゃん≪占い師≫はそんなの構わない感じにマイペースだよ。
色々、吹っ切れているだろうとは思ったけど、自動書記で書くもんじゃないな。
(↑最低限の誘導しかしないで、書くこと。)
鴉くんは色々諦めてるし、割と突っ込み属性だし。


ちなみに、≪占い師≫の名前、『戦白黒(そよぎ・はっこく)』。
最初は、『梵白黒(そよぎ・はっこく)』だったんですが、戦も、そよぎだったので、そっちになったという裏話。
一応、彼の戸籍もあります。
設定したの何年前よ、ってぐらいお蔵出しな設定ですけどね。

ボカロネタやら、六年前ネタやら、書いてないけど前提になっている話しノ関係上で2012年が舞台だしイア嬢登場。
後は、ボカロはリリィとミクぐらいかな。
イライアスのとこのは、メイコぐらい。
後は、登場するか不明。
いや、メイコは、ブラのサイズの関係。
ディスもデカイが、かすがちゃん、更にデカそうだし?
イメージとしては、ディスがE、メイコがHぐらいでかすがちゃんもどっこいか若干デカイぐらいな感じ。
肩凝りひどそうだけど、買い物行く前とはいえ、ノーブラ外出はさせられない。
・・・しかし、イア嬢、生まれたばっか差し引いても、天然かもしれない。
鴉は、気配はともかく美青年系だが、さわやか系だが、にぃにぃって・・・謎なり。



とりあえず、次回は多分お盆ぐらい。
書いても書いても終わらないです。
と言うか、聖ちゃんのカジュアル洋装初だわ。
・・・コーディネイトは苦手なんだい。

副題は、自分の殻に閉じこもったままのディスティア指して、≪占い師≫辺りが言いそうだね

それでは、次の物語にて。




闇を舞う天翼 2 Wars never decide who's right, only who's left.

2012-07-22 08:44:49 | 戦国BASARA(+他歴史系) 二次

微妙に、BLくさいですが、ご了承ください。(絡みはないです。)












戦争ができる自由と

戦争をする自由とは違う。

私は選んでしまったから、何も言えないけれど。

憎しみだけで人間は戦えないの。

好きだったから、憎いの。

好きの反対は、嫌いではないの。


それにね、『貴方』はどうだったの?

嫌いだった?

好きだった?

どっちであれ、どうして戦ったの?

不二の人だったの?

なら、どうして、戦ったの?


きっと、それが答え。
人間の手って小さいの。
想うものすべてを収めきるには。




  2 Wars never decide who's right, only who's left. (争いで決まるのは誰が正しいかじゃない、誰が生き残るかだけだ。)




「・・み殿、・ざみ殿、あざみ殿!?」
「萩行のバァーカ!」
あれから数時間。
彼らがトリップしてきた部屋の隣・・・そこの窓際のビーズクッションのソファに埋もれながら私はいた。
ノートPCを膝に乗せて、台本にENDマークをつけれたのが、日付が変わる少し前のことだ。
そうなっても、家康さんは来なかった。
だから、少し特殊な方法で、萩行と連絡を取った。
夢というか、無意識下を利用して。
そしたら、爆弾発言、最後の最後にだ。
ある程度予測していたとはいえ、直接聞くと辛い、つか、痛い。
言っちゃ悪いが、彼らは、市ちゃんを兵器として扱うことになるのだ。
そこまで行く前とはいえ、余り逢わせたくない。
特に、西軍は・・・。
そんな事を考えながら、意識を浮上させると、ちょうど、目の前に浴衣姿の家康さんがいた。
下ろされた髪。
どうにも、年齢よりも幼い印象を見てしまう。
この家康さんは、こっちのその人よりも若いから、更に尚。
そんなに年齢変わらないのに・・・・・・ああ、人生ってままならない。
「わ、悪い。
 萩行・・・今の状況の原因に連絡取ってた。」
「それで、話とは?」
「一人だけ、時間が違うことについて。
 正確には、第二便も含めれば、貴方ともう一人、二人だけ時間が違う理由。」
「・・・やはり、違うのか。
 ワシと、彼らの時間は。」
「うん。
 その前に、手ぇ出して、炎症と打撲のまま、あの時のまま放置してるでしょ?」
「・・・っ!?」
「ある程度の状況は、いっちゃん・・・白愁樹菖から知っているし、他に知る術があったから知ってる。
 みっちゃんが、石田三成が死んですぐに、こっちに来たんでしょ。」
「そうだ。」
座るように促し、近くに置きっぱなしだった救急箱・・・薬草メインの塗り薬系の入ってる方を引き寄せて、「染みるわよ」と前置きしてから、消毒して塗り薬を塗って行く。
ベースのハンドクリームの中に、カモミイルに、ラヴェンダ-、レモンバーム、ちょっとだけローズヒップなんかを混ぜたモノ。
沈静と安眠効果を重点に置いた配合だ。
後、少しだけ素直になれるように、という願いこめて。
多分、バンテージしないで殴ったんだろうな。
手甲をしていたからと言っても、しないとやっぱり手を傷める。
結構ひどい。
簡単に整体して、その上から、包帯を巻いていく。
そして、余った薬をぬぐいながら一言。
「はい、終わり。」
「・・・・・・・・・」
「なんで、自分がここにいるのか、わからない。
 ・・・そんな顔してるわね。」
謀略編むのは、情報屋の嗜みではあるが、かと言ってこんな面の奴に下手な駆け引きはしたくない。
だから、単刀直入にズバリという。
全く覚えがないわけではない。
先輩(昔、大切な人を失った者)であるなら、後輩(直近、大切な人を失った者)を導こう、それが礼節。
「・・・・・・ワシは、死ぬつもりだった。
 ・・・『絆』の為だのなんだの言っていても、三成のことが忘れられなかった。
 三成を殺した後も、何時間も、三成の死体の傍から離れられなかった。
 傍らに座りこんで、三成のことを思い出して泣いた。
 三成の記憶を反芻するのに、もうどこかで自分が三成を思い出にしていることに気づいて、哀しくて寂しくて三成の死体の前でいつまでも泣いていたんだ。」
訥々と家康は語る、私の言葉が引き金になったかの用に。
私は黙って聞く。
悲劇を語っていいのは、当事者だけ。
そして、その語られている悲劇は、邪魔してならない。
まぁ、最低限の礼儀だ。
誰にでもない、悲劇に踊った役者への。
まぁ、或いは、別のではあっても悲劇を導いてしまった者
「・・・泣いてもいいの。」
「殺した人間が、そいつの死を悲しめるものか。」
「私は、泣いた。
 何人もの≪歌乙女≫は、≪片眼王≫や≪語り部≫を殺した。
 終わらせることはできなかったけど、≪御伽噺≫を終わらせる為に、想い人や弟だった人達に手を下した。
 大事だったのに、少なくともそう認識していたのに、殺したよ。
 ≪歌乙女≫としても、私(かのじょ)達自身としても、今代で終わらせる為にね。
 親しかったわ、今代でも・・・少なくとも、友と呼べる程度には、交流はあった。
 貴方よりマシとは言わないわ、だけど、殺した人間ぐらい多少なりとも覚えていて悼まないならだれが悼むの?」
慰める為に聞こえるかもしれないが、なんのことはない。
良心の呵責に負けない為の誤魔化しだ。
それに、人一人死んだところで覚えている人は少ない。
なら、せめて殺したのなら覚えていてもいいとは思うのだ。
「・・・それに戦場である以上、少なくとも、必ず犠牲が出るんです。
 それを許容しなさいとは、言いませんが、覚えていなさい。
 名を知らずとも、誰かの為に戦った人がいるのですからね。」
「・・・いっちゃん、後から絞め殺していい?」
ふわりと、でも言うように。
或いは、街灯の少ない夜道で出会ったのなら確実に殴り飛ばしてる、そんな登場の仕方だ。
現れたのは 二十代後半ほどだが落ち着いて見える為、やや年嵩に見える青年だ。
しかし、若干厭世的なのが、顔にありありとみて取れてしまう。
通常のそれよりも薄く青み帯びた水銀髪と翡翠のような瞳、女性的な外見で黒の着流しに、抹茶色の羽織。
ぱっと見、女に見えないこともないそんな青年だ。
特殊ではあるが、≪歌乙女≫でもある。
つまるところ、過去の私、でもあるのだ。
「イヤですねぇ、
 終の姫へのお礼、ではないですか。」
「・・・ヨルコさんは?」
「ああ、終の姫の実家にいますよ。」
「ヨシ、じゃあ死ね。
 特に何も手掛かり残さなかったでしょう、あの時代の貴方抜きにあれが力をふるえるはずもないのだから。」
「くすくすくすくす、単なる照れ隠しですよ。
 氷雨も虎太郎も、クルトや、セシルにしてみても、最後の幕引き立役者だとしても、幸せになって欲しいと願っているんですから。」
「・・・それでもだよ、何故、茜花やヨルコさんを巻き込んだ。」
「うーん、お市ともう一度、終の姫と逢わせる為でしょうね。」
「だけど、その為に、お市ちゃんを傷つけて良い道理などあるはずがない。」
「あの男もね、冬姫達以外を娘とは呼ばないけれど、他を大切にしないわけじゃないのさ。
 或る意味で同類のフォローをする程度にはね。
 まぁ、エリスコレクションに朝まで居させて貰いますね。」
言いたいことだけを言って、彼は消える。
まぁ、明日には手伝ってもらう予定ではあったんだけど。
「・・・どこまで、謀った?」
「謀ったのは、とある馬鹿。
 今から数百年後に、どうやっても、悲劇にしか終わらないフィールドシリーズ・・・人間の手で造られた子達を幸せに終わらせたいと、そして、その子達を子と呼ぶとある馬鹿。
 風が吹けば桶屋が儲かる法則でね、その周りくど過ぎる道筋に私が必要ならしい。
 私がいない道筋だと、難易度が跳ね上がるから、らしいけど、馬鹿みたい、命かけてまでやるなんてさ。」
つらつらと、言う。
実際問題、時を超えること自体はさして難しくもない。
運命を変えられるかどうかはともかく、《御伽噺の幽霊》ならば難しくもない、基本の魔法だ。
私も、単独・・・せいぜい、自身を含めて2人までなら、千年先だろうと千年前だろうと跳べる。
だけど、一人ならまだしも、往復を複数人と言うのは、自殺行為もいいところだ。
しかも、何人かの時間を一年以上ずらして連れてくるというのは。
ヨルコさんと茜花は、樹菖・・・いっちゃんが、歪んだ形で《歌乙女》の力を引き出して連れてきたからいいものの。
この系統の術式の欠点として、同時に違う出身世界から連れてこれないし、同じ術者がそれを同時に行えない。
本当、聖さんところの、森羅さんもそうだけど、世の中は意外にお人よしが多いらしい。
「・・・結局、あいつも、同類に甘いんだ。
 詳しくは知らないが、あいつも同じだ、泣けない癖に同類には泣かせてあげたいんだろうね。
 ・・・あの世界ではみっちゃんの為に、泣けないでしょう、東照権現・徳川家康。」
その後の事は割愛しよう。
せめてもの情けだ。
ただ、少しだけ、彼が泣けたということと。
夜明けまでの数時間、私が寝る気になったということだけは記そう。






















ちょっと短いけど、タイトルの関係上、ここで一旦切る。
リベンジしたい、テーマでもあるが、とりあえず。
ディス嬢にしても、BASARAキャラ(公式・腐設定問わず)は泣けないのですよね。
秀吉にしても、三成にしても、泣くってのは一種、ストレス解消なんですが。


とあれ、次回は、朝食編&兄≪占い師≫の登場です。