セピア色の想い出。

日々の生活と、其処から生まれる物語の布飾り。

ある日の会話(薄桜鬼/風間千景と聖)

2012-04-28 19:23:11 | 携帯からの投稿
薄桜鬼本編時間軸。
初邂逅以降京都下洛以前。

酔いどれ聖ちゃん。
薩摩藩の屋敷。
宛てがわれた千景の部屋にて。

新選組屯所で飲んでて、飛び出して、千景のとこに来た。


「にゅ、にゃ、にゅー。(スリスリと抱きつく)」
「酒臭いが奴らと居た子どもか?(子猫のように首をつかみ引き剥がす)」
「みゅー、覚えてないのー、子鬼?」
「・・・は?」
「子鬼、むかぁーし、むかしに会ったよー?
 短い間だったけど、とことこ着いて来てかわいかったー。」
「・・・・・・・・・・・・永聖姉様か?」
「うん、そうだよー?
 覚えてたね、偉い偉い。」


千景の頭を撫でる聖。(←恐れ知らずだよ、ひーちゃん)

「・・・・・・何の用だ?」
「んにゅとね、雪村の女鬼が欲しいの?村千鶴が欲しいの?
 血筋から言えば、八瀬の千姫が上だよね?」
「女鬼は、貴重だからだ。」
「むぅ、もっかい聞くよ?
 なんで、八瀬の姫様じゃないの?」
「何を知っている、貴様!?」
「や~ん、こわい~。」
「・・・」
「んにゅー、先は知ってるよー?
 今の私にしてみれば過去だもん」
「過去?」
「教えないもん!」
「・・・(頭痛をこらえるように)何故、貴様がそれを気にする。」
「うーとね、私たちは純血・・・主に女鬼がいない足りない時の代用品になってたの。
 だから、遠いけど鬼は親戚だからだよ、うにゅ」
「・・・・・・」
「アテルイが人間どもとやり合ってた頃の話だよ。
 私の従姉妹の藍聖とあの馬鹿が最後だったもの・・・遠いけど、子鬼も私の子どもだもん。」


ふんわりと、聖は笑う。

ある意味で一番悲しい言葉だ。
子どもは、作れないわけではないが、作れば奪われる。
だから、作らない。
だから、遠くとも、血縁をあてがうのだ。

「・・・・・・っ、寝たのか?」
「すー、すーすー・・・こおに、・・だよ・・」


しっかり、抱きついている聖。
引き剥がせば、起きるだろう。

「・・・・・・」
「すーすーすー」
「・・・・・・・・・どうしろと。」


翌朝。
天霧が見たのは、着替えもせずに、布団に入り、聖に抱きつかれるままにしている風間であった。

因みに、起きた聖が悲鳴をあげたのは追記する(笑)









ちー様は、いい男だと思うんだ。
俺様で、強引だけど、いい男なんだ。
確かに、公式で「金キラ様」なんてネタキャラ扱いやが。

んで、追加した設定の『鷹尤永聖の従兄弟/文中のあの馬鹿』こと、鷹尤鼬聖(ゆうしょう)と元々あった聖ちゃんの風間を子鬼呼びを合わせて、上記会話。
因みに、一応、聖ちゃん兄死亡後に長老会に決められた婚約者だったけど破棄して、放逐→その子孫が、雪村なり風間なりに嫁いだ感じ?
風間を初邂逅時(本編時間軸)から、「・・・子鬼、?」なんて呼んでるプロットやし?


ちなまくとも、聖ちゃん、当時の標準よか小さいかどっこい(千鶴ちゃんより更にちっこい)ですので、身長差は親子?
だけど、心情は逆?
アリアンロッドサガのベルフトに対するあのばあちゃんみたいな感じ?


さて、次の物語にて

私はガキに甘いだけさ?(ヨルムンガンド+α/ココチームとディスティア+α)

2012-04-08 22:49:20 | その他 二次創作


attention!!

前半は、ヨルムンガンド原作四巻か五巻ぐらいまで。
バルメがいったん離脱する前のお話。(髪の長さ的な意味で。)
たぶん、オ-ケストラ編以降は確定。
後半は、ヨルムンガンド原作十巻から直で挿入。
十一巻の内容は一切知りませんので悪しからず。
次巻で最後と言うことなので、こっちのは、一足早いエンディングみたいな?
・・・だって、親に反抗するような理由で世界を敵に回して生き残れるはずも無いでしょ?的に思ったのです。
また、後半登場のシェンフォア嬢は、作者の純然たる趣味。(タイトルのαは彼女。)

かつ、作中の会話は基本、英語で行われているものとする。
()で注釈してある場合、メジャーじゃなかったり、英語ではない言語であるとする。



ついでに書きますが、「この物語は、フィクションであり、実在の人物・団体・事件・地名とは一切関係有りません。」です。
・・・+αの原作の関係です、はい。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++







ヨナが入って間もない頃のことだ。
アフリカ某国のビル屋上。
白い髪で少女と呼んで差し支えないココ=ヘクマティアル。
銀髪と浅黒い肌の西アジア系少年で、左眼の下の切り傷がチャーミングなヨナ。
白髪交じりの実におっさんくさいレーム。
バルメ相手に、ナイフ演習中の一人の女性。
ゴム製などではなく真剣で、ナイフ演習中である。
文字通りの真剣勝負だ。
バルメは、黒い髪を長く伸ばし、タンクトップにカーゴパンツの締まってはいるが筋肉質で更に言うなら巨乳である。
また、元々の所属を示すようにタンクトップの背中から、鳥のタトゥーと右目の眼帯が特徴的だ。
女性は、青く輝く髪をざっくばらんにまとめた三つ編みと、キャミソールと黒く長いスカ-ト姿だ。
元々、着ていたらしいデニムブラウスは、ヨナがタオルと一緒に抱えている。
女性は、ココの私兵の中でも、白兵戦に長けるバルメと互角にやり合う。
右左右とナイフの持ち手を変えながら、ヘビが噛み付くように執拗な手数優先の攻撃。
しかし、まだ余裕はあるようで、バルメに話しかける。
「基本は、蛇の噛みつき(スネークバイト)のようににでしたっけ?」
「でしたっけ?って、そんな姿で、これだけやっといてですか?」
「師匠が13の時に殺されて以来、戦闘は独学ですから。
 ナイフ術は基本をやった直後にでしたから尚更です。」
「つか、そんなカッコでいつもやってんのか?」
「ええ、こういう格好は、《風舞姫》ですから。
 ・・・足をさらせないのもありますけれどね。」
「でも、昔の喪服の方がひらひらのうわーたったよー」
「ああ、そう言えば、最初の頃は黒き寡婦(ブラックウィドー)でしたね。」
「・・・おりゃ、記憶力悪いが、くるぶし丈の膨らんだスカートの古式ゆかしいヤツだよな?」
「そうですね、百年前の寡婦の格好なので。
 まぁ、私のナイフ術は本職ではないんです。
 ・・・というわけで、終わらせましょうか。」
ココとレームとも会話をしつつ、女性はそう呟くと同時に、上半身を引き、同時にスカートをまくり、バルメの手を真上に向かせた上で、ナイフの柄頭・・・持ち手の先のほうを蹴り飛ばす。
綺麗に、そう仕向けたのだろうが、真上に空に飛んでいくナイフ。
そして、抱きかかえるようにして、ついでにいうなら、唇を奪いつつバルメをその場から退かせた数秒後、ナイフがコンクリートの地面に落ちた。
「はい、ミス・ココ。
 約束どおり、少年貸してくださいね。」
「相変わらず、無茶苦茶です。」
「何を今更、この稼業の・・・しかも、傭兵なんかをしているような人間が常識的なら、世界は終わっていますよ。」
「はいはい、えっと、何日?」
「十日、ほどですね。
 超過は無いと思いますが、まったく、無茶苦茶な依頼ですよ。
 完全に崩壊しているような、北朝鮮やソマリアの方がよほど、やりやすいのですがね。」
どうやら、女性は女性の仕事の為に、少年ーヨナを雇いに来たらしい。
いつも組んでいた青年が行方不明な為・・・と言うのは、ヘクマティアル本社からの情報だ。
現在の彼の雇い主は、ココの兄なのだが、その兄・キャスパーから許可はもぎ取ってきた、とのこと。
どこの民族か定かではない彼女と明らかに西アジア系の少年とでは兄弟と言うのも難しいだろうが、単独の戦争屋の面々では更に難しい依頼であるからと、ココの元を訪れた。
レンタル料として、欧州のテロリストどもの報告書を提示されたが、却下され、暇つぶしにか、バルメから一本取れたら、とのことで了承を得たわけだ。
結果、先ほどの試合になる。
正確に言うなら、一本ではなく、勝ち負け関係なく『試合中にキスできたら』とココは完全完璧面白がって提案したのだが、それをあっさりと、勝った上で叶えるあたり、女性の実力がうかがい知れた。
それから、特筆することは少ない。
彼女とココチームがそれなりに親しいこと。
例えば、この直後、他のメンバーも来て、ルツとアールが女性に対して、セクハラまがいの発言をした時も本気で怒るよりも、仲間内に対するように、顔を真っ赤にして、靴を投げるだけにとどめたり。
それをみて、ココ達が笑ったり、少なくとも、ビジネスライクな関係だけではない雰囲気だった。
もう一つはヨナと彼女が依頼中、車に乗っていた時の会話。
助手席の少年に、女性は話しておこうとでも言うように、話しかける。
「・・・ああ、そうだ、少年。」
「ヨナでいい。
 知り合いの弟っていう設定にしても、怪しまれる。」
「なら、ヨナ。
 今は言葉にできないが、もしも、君がミス・ココに銃を向けたなら、私のところに来ない?」
「ありえない。」
「・・・残念ながら、一年以内にあるから言っているの。」
「言葉にできないって?」
「そうね、言葉にしたら、確定してしまいそうだから。
 ミス・ココは、そこまで想像が行っていないけれど、ヨナと他のメンバーが違うってこと。
 それが原因でね、まぁ、今私がここまで口にしたことで変わってくれるなら、思考停止ではあるけれどそっちの方がいいかもしれないけれどね。」
「わけが解からない。」
「何が?」
「ココを裏切ることがあるかどうかはどうでもいい。
 何故、お前はそれを言う?」
「・・・ガキ・・・、十七、十八ぐらいまではさ。
 学校に行って、将来役に立つかわからない勉強して、衣食住を心配せずに甘やかされてりゃいい。
 甘やかされっぱなしってのも、問題だけどね、ガキには武器を持って欲しくないし、戦って死んで欲しくも無い。」
「・・・甘いね。(・・・・あの司令みたいだ)」
「うん、私は優しくない。
 ただのエゴよ、ある意味で子どもに、見殺しにしてしまったあの子を重ねているだけだもの。」














「そんなの絶対にダメだ、ココ。」
「・・・・・・ヨナ?」
呆然と、ココは呟き。
ヨナは、彼女に銃を向け。
レームが、彼に照準を合わせた。
一瞬、ほんの一瞬だけ世界が凍った。
「ょぉぉぉおくやった、少年。
 私が味方してやる。」
降ってくる声。
否、文字通り、一人の女性が降ってきた。
肌も含めて一切、露出していない真っ黒い衣装。
防寒に重きを置いたパイロットスーツをすっきりさせたようなシルエット。
顔を全てを覆っていたマスクを取り去り、長く青に輝く髪を靡かせ、ニヤリと笑うは、情報屋・メレディ。
いつぞや、バルメとナイフの真剣勝負をしたあの彼女。
真昼のケープタウンの寂れた港に在ってすら、悪夢のような登場の仕方だ。
「久しぶりだね、ミズ・ココ。
 お仕事と自分のプライドの為に、参上。
 ・・・言ったよね、身内と友人に手を出したら、殺すって。」
あくまでも、穏やかに友人に話しかけるような口調だ。
しかし、周りの雰囲気に折り合わないことこの上ない。
「SR班の鏑木とやり合った時、私の妹と黎夜に流れ弾が当たってね、絶惨治療中だ。
 新羅曰く、妹はかすり傷だけど、黎夜の方は人間じゃなかったら、半年レベルだ、ホント、死ねやのレベルよね。
 ・・・それが無かったら、殺さない方向に仕事相手に交渉したんだけど・・・」
「何故、お前がここにいる、お嬢ちゃん」
「知っていたから。
 理由まで見なかったから、絶惨後悔中だけれど・・・、ねぇ。
 で、少年、どうする?
 チビ共も確保可能よ。」
レームの言葉に、静かにメレディは、答える。
静かに、だけれど、怒りをにじませてだ。
奇しくもであるが、約一年前に、少年に言った場面がここなのである。
「・・・・・・」
「ミズ・ココ、その仲間のレーム以外の面々。
 なんで、少年がこうしたかわかる?
 解かってないでしょ?
 解かってないなら、ケツまくって失せな。」
悠々と、拳銃を取り出し、ココ達に向けるメレディ。
あくまで晴れやか、あくまでも涼やか。
そして、あくまでも、辛辣だ。
彼女がここにいるのは、助けて貰えなかったあの時の自分を救おうとしている、と言っても間違っていないのだ。
或いは、あの時、自分を庇って死んでしまったあの少年を救おうとしている、と言っても間違っていないのだ。
いつもより、多弁なのは突っ走りそうなその激情を押さえ込もうとしているせいでもある。
「・・・ここか?」
「うん、前に君に言った出来事は恐らくここだ。」
「なら、ここで止める為にも・・・」
「少年、今のミス・ココの優位は量子コンピュータあってこそのものだよ。
 それを何もしないで、ここにいると思う?」
『こちら、雷神。
 風舞姫、終わったで。
 セキュリティ、ザルやで、ザル。
 連鎖して、人工衛星も潰しとくで、オーヴァ。』
『こちら、風舞姫。
 了解した、ドク・マイアミにミス・ココに連絡しろってメッセ送っておいて。
 ついでに必要データ、各国の情報部へ、オ-ヴァ。』
その時、無線が入った。
漏れ聞こえてきたのは、日本語。
流暢過ぎて、聞き取れなかったが、この状況で来る無線だ。
穏便な内容であるはずが無い。
トージョだけが、内容全てを理解していた。
何か言うはもとより、どうすればいいのか、反応できないココ達。
疑うは元より、有りうるなどととは思わなかったのだ。
「・・・計画を止めるなら、人間潰すより、道具を潰せ。
 簡単な理論だよ?
 まぁ、マンハッタン計画みたいに、多数の人員が関わってるなら、人間もだけどね。」
「何故、その少年に言う無い。
 人質の子ども、姐々(チェチェ)助けた。
 少年、その女に従てる理由、違うか?
 後は、姐々(チェチェ)が少年攫う、それで終了ね。」
「そーだけどね、シェンホア。
 言うまで出てこないでって言わなかった?」
深い藍色の髪を長く伸ばしたアジア系・・・恐らくは、訛りの入る英語からして華僑系の妙齢の美女。
真紅に壮麗な刺繍の入ったチャイナドレスに、白の短いジャケット。
カタギではない証拠に、深いスリットから覗く太ももにはは無数の鏢が、両手には二つの青龍刀が握られている。
また、それ以上に隠そうともしない殺気が彼女から溢れていた。
それなりに有名で、三合会(トライアド)に雇われることが多い女性であった。
「とても楽しくなりそうな状況ね。
 ペイをふいしても、ヤりたいよ?」
「・・・少年の判断、待ってね。
 その後は、マオ以外は殺してもいいから。」
「お前の目的は、ヨナだけか?」
「うん、そう。
 亀裂が決裂したのなら・・・。
 そういう風に生きれるようにおせっかいさ。」
「猫猫(マオマオ)て誰か?」
「ネコちゃん、違う。
 あのおっちゃん。」
私兵の中の一人。
アジア系で三十代の砲撃手を指す。
もちろん、可愛くないおっさんである。
「可愛くないね、甘いネ、姐々(チェチェ)。
 ・・・ヴェルマーも同じ違う?」
「何を今更。
 バルメの方は、今何をしているか知っている。
 知らないで待っている人がいるなら、死なないで欲しい、それだけ。
 今は、私が依頼人よ。」
「手加減するはない。
 超の着かない一流でもこれだけいるなら現役の『金義潘(カンイファン)の白紙扇(バックジーシン)』と火傷顔(フライフェイス)とボリス、『二挺拳銃(トゥーハンド)』をいっぺんに相手にするようなモノね。
 職業軍人と言っても、まとまれば強いよ、毛利の矢よ。」
「刹と援護いても?」
「無理ね。
 この稼業、油断しない、鉄則よ。」
「・・・わかった。
 極力、できれば、可能なら、でいいわ。」
つらつらと、会話を流す二人。
周りの面々は、敵か味方か、女性ー自分達が風舞姫と呼び、女性が姐々と呼ぶその人の真意が読めず動かない。
「お仕事・・・とか言っていたが、何処のだ?」
「ロアナプラ、正確には、メインとしては、《ホテル・モスクワ》と《三合会(トライアド)》のタイ支部トップから。
 バラライカの言葉に、思わず涙でちゃった。
 アフガンツィ(アフガニスタン帰還兵)だから、全く知らないわけじゃないでしょ、レーム。」
「・・・あの火傷顔(フライフェイス)か?」
レームの質問にさらりと、メレディは答える。
≪ホテル・モスクワ≫に幹部は数在れど、タカ派、有数の攻撃力を有するは、ミス・バラライカ。
旧ソ連の第318後方撹乱旅団・第11支隊出身で、アフガン侵攻の際、上官志望の為、彼女が率いた部隊だ。
そして、現在の≪ホテル・モスクワ≫のタイ支部随一の戦力「遊撃隊(ヴィソトニキ)」として、彼女直属の配下となっている。
いや、その部隊だけが、彼女の配下なのかもしれない。
その彼女からの依頼で、メレディは動く。
或いは、自身の為に。
「彼女からの伝言。
 『ミス・ココとやらに伝えろ。
  お前は、触れてはいけないモノに触れた。
  我々、敗残兵ですらなくなった軍人崩れ(エクスミリタリー)の無頼者(マフィア)になった。
  ソヴィエトに捨てられ、新生ロシアからも見捨てられ、そうして全てを失った我々に唯一残されたものだ。
  軍旗の名の下で生と死と戦争の全てを味わってきた‐‐‐その矜持だ。
  黴が生え、古びた碑に成り果てた矜持の残滓だ。
  お前の意思は、明日無き生に等しい、張のようなそんな生き方はごめんだ。
  無為に生を全うするのは、犬と変わらない。
  お前の隊は、我々の敵ではない。
  我々が望む死を、然るべき敵と然るべき戦いで、『自分が何者だったのか思い出して』死ぬことを叶えることはできない。』
  ・・・とのこと、貴女の思想だと、武器を所持している軍隊って言うけれど。
  要は、武力の制限も当てはまるわよね、なら、私達みたいな異質(エイリアン)も皆殺しよね、だから、敵に回ります。」
要は、「テメェなんかに従えるか、クソボケ」程度の台詞である。
また、ココのヨルムンガンド計画は、言ってしまえば「強制平和」計画だ。
そこに、メレディは元より、バラライカ達の居場所は無い。
であれば、とる道は、多くない。
そんな台詞まで、言い終わった時だった。
ココのイリジウム衛星携帯電話に着信が入る。
ノロノロと、ココはどうにか、電話を取ると相手は、ドクター・マイアミであった。
『ちょっと、どういうこと、ココ。
 量子コンピュータ、壊されちゃったわよ。
 普通のPCと違うから、ウィルスってことは無いはずなのに。』
それで、すぐにココは頭を切り替える。
量子コンピュータ無しに計画はありえない。
既に巨額の資金を使っていることもあるが、諜報部が気付き始めた状況で、それが無くなる事は、王手を掛けられたも同然の状況だ。
「何をしたの。
 非ノイマン型のあれにウィルスは・・・まさか、理論だけの量子コンピュータのウィルスを作った?」
「半分正解。
 量子コンピュータ・・・正確には、今造られたのは、ウィンドウズで言う、Ver.1,0程度のだけど。
 それの軍事用に特化した量子PC、ウィンドウズXPレベルのものね、それ用のマリオネットウィルスをレベルを落とし込んで、作成したの。
 こういうのは、イタチゴッコよ、そして、私は≪図書館≫の中枢、それは明かしてあったのにね。」
『まぁ、厳密に言うたら、オリジナルみたい量子専用やなくて、ココちゃんのコンピュータ専用に組んだもんやからなぁ。』
「・・・≪L≫、勝手に回線侵入するな。」
『手持ち豚さんなんやもん。
 後は、≪教皇≫と≪死神≫ら待機組だけやろ、動くんは。』
「・・・一応、失敗はしましたが17歳で、反≪チャイルドクラン≫同盟の盟主になったのは伊達じゃない。」
「・・・・・・」
「・・・ねぇ、あの時の言葉に嘘は無いの、メレディ?」
「ん?・・・無いよ。
 少なくとも、自分の腕に収めれる程度のガキ達にはそうなって欲しい。」
「なら、行く。
 メレディの方がマシだ。」
「了解(ラージャ)、シェンホア、当初通りに。
 ラビもね。
 ≪L≫、奪取組にも同じく。」
そして、ヨナの回答の直後、いくつかの銃声が鳴る。
メレディはとっさに動く。
早口言葉の要領で二つの能力開放の言葉をつむぐと同時に、幻影呪を紡ぎ、髪の色は青く輝くそれのままだ。
矢次早に、指示を出しながら、ヨナを庇うように抱きしめる。
「シェンホア、ラビ、後任せた。
 二十分後に、打ち合わせ地点に。
 最低限全員、行動不能。
 第一目標、回復役(リカバリー)。」
肩甲骨から、半透明でそれ自体が発光している翼で、ヨナと自身に当たるはずだった銃弾をはじくも、彼女自身に数発はかすり、腕に一発めり込んでいる。
それでも、メレディは、ヨナを抱き上げ、その翼で姿勢制御しつつ、飛び去った。
まぁ、その後のこの場のことで記すのは多くない。
レームとココが、屠られた時点で、さして彼らができることは少ないのだから。



「あたた、悪い、少年。
 後ろバックから、包帯とガーゼくれ、止血する。」
「弾は?」
「抜くにしても、此処じゃ無理。」
「・・・ココ達を殺すのか?」
「わからない。
 殺す・・・殺させるつもりだけどね。
 レームと、ココまではどうにかなる。
 あと、ウゴとルツぐらいなら、狙撃でどうにかなる。
 だけど、トージョ、マオ、バルメ、ワイリを殺せれば奇跡だ。
 ・・・まぁ、バルメが一番、殺さないと、まずいね。
 可能なら、ワイリもヤッときたい。」
あの港より、数キロ離れたワゴンの中。
脂汗だらけのメレディは、手当てをしながら、ヨナの質問に答える。
「少年、こんなでも世界は好きか?」
「・・・好きだよ。」
「なら、まだ、少年は幸せになれるさ。」
「メレディは?」
「どっちでもあるよ、嫌いだし好きだし、ね。」







+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

後書き。


元々は、ある日の会話×二つでしたので、三千字行かないかな
思っていましたら、結構、八千字と短編ぐらいになりました、SSの予定でしたのに。




ええと、冒頭に書きましたが、十一巻の内容を知らずに、強制終了☆なノリで書きました。
途中で、ブラクラにはまってシェンホア嬢が登場しましたが、でなければ、メレディ無双になるだけでしたし。
作中の量子コンピュータ用ウィルスは、ガンダム種外伝のMS・ゲルフィニードのバチルスウェポンシステムより。


また、作中の青銀髪の女性=メレディ=ディスティアです。
色々と裏話と言うか、メレディが去った後の攻防など書きたいですが、十一巻発売まであんまし時間無いので、それは余力あれば、ですね。
説明不足・・・特に専門用語系は説明なげましたが、各自ググってくださいませ。


では、次の物語に。

まおゆう

2012-04-04 21:37:01 | 携帯からの投稿
…一部が賞賛するほど傑作ではないが、一部が非難するほど駄作ではない作品だと思う。


元々、リプレイや台本の類を読み漁っていて台本形式に慣れがあった(こっぱずかしい台詞は古典演劇に限る為)のと、商業科系統出身のせいか予備知識あったんで、あんまり、気にならなかったんだわ、一部が賞賛し、一部が非難する部分は。
ただ、冗長過ぎる。
ジョジョ五部で言う暗殺チームのパートが長い。
メイン/核のキャラの台詞で済ませれば簡潔になる部分を独白で長々やってるのが、冗長。
まぁ、台本だとすれば、高校演劇/アマレベルはおろか、プロレベルでも、場面転換多すぎる。(ちなみに、一時間に二回あると多いレベル。プロレベルで休み一回、四時間の舞台で八回が限度だ。)
例外は、ニベルゲンの指輪ぐらいだが、あれは別だ。
ちなみに、この場合の場面転換は完全暗転のみ指す。
脇の花道(無い劇場も多い)なんかで繋ぐにしても、或いは客席通路を使うにしても辛い。
客席通路使うとライト一個か二個潰すから、また辛い。
台詞が長いと上下二段数ページあるのは演劇ならザラだしにゃあ。
その辺りは役者の力量じゃのな。
後、「……」の部分まで思考台詞があるのは画面黒いし更に言うなら読みにくい間がとりにくい。
台詞劇だとどうしても、演劇的に考えてしまう。




色々、言ったが、魔王ちゃんは「あ、友人の○○ちゃんみたい」的に友人あるあるで可愛いし、勇者ちゃんはぎゅーっと抱き殺したいぐらいに可愛いつかマジ健気、女魔法使い健気かつ意味深ラブ。
女騎士も、健気だよ(当て馬的な意味で)
執事のラストに泣いた。エロで変態だったけど「師匠」なラスト。
イカレた女騎士と灰青王のラストは、不覚にもホロリ来たぞ。
徒弟三人は可愛いんだ、弟子後輩な意味で。
火竜公女は、個人的には従僕とくっついて欲しかったが、青年商人とでもヨシ。
銀虎さん…(泣)



とにかく、すぐに読み返したい作品ではないが好きだ。
一個ぐらいはオリキャラ
絡めて書きたいにゃあ、二次しにくいが。
記号で言うなら、「傍観者」かの?



…しかし、同じ作者の《ログホライズン》の方がよほど、好み。
され竜のガユス(され竜は新版の作者の自虐に呆れて投げたが)みたいやのう、なシロエ好きだ。

永遠を願った黒白世界 いちおー、あとがき

2012-04-02 04:41:40 | オリジナル / 混合


五年だか、六年だか、越しの後書き兼解説。

まず、タイトルの『永遠を願った黒白世界』。
電脳世界が、メインのお話でしたのと、楽しい時は絶対に終わるからこそ、楽しいみたいな理由。
黒白は、PCの突き詰めれば、『1』か『0』に由来します。
他人から見れば、そうなのかもしれないけれど。
アルトにして見れば、恋になる前に死んだ恋の鎮魂歌的な意味合いでのタイトル。



このブログのオリキャラの面々は、彼に限らず、ディスティアにしろ、聖ちゃんにしろ。
少なからず、死に切れてないんだろうと思います。
某トリガーハッピー漫画の悪徳の都にいる連中が、幽霊や死人ならば、ですが。
かといって、謳歌すると言う意味合いで、生ききれてない。
だけど、何かの為に足掻いているんだと思うのです。


しかし、アルト。
このブログの苦労人部門は君がグランプリだ。
(姉が暴走気味だけど、男に掘られない聖弥はまだ幸せ者だ。)



とあれ、次の物語にて。






家族の写真外伝 永遠を願った黒白世界

2012-04-01 04:38:44 | オリジナル / 混合




もう、ラビとはお喋りできないけど。
だけど、ラビと過ごしたあのゲームでの日々は、とてもとても楽しかった。
父様や母様達が、亡くなって、あの仕事を始めてからは、辛いことしかなくて。
何回も・・・数えきれないほど、枕を濡らして寝た事もある。
あの生活から抜け出せるならって、モニターになったけど。
やっぱり、変わらなかった。
決められたこと以外は、何もしなくても、温かいご飯が貰えて、清潔な服が着れて。
でも、外出の自由はなくて。
だけど、寒いのも暑いのも、心配しなくて良かった。
幸せと言えば、そうだったのかもしれないけどね。
でも、自分からもう一回生きたいって思えたんだよ。
ラビや、シャルさんたちに出会えて。
自分から、生きたいってそう思えた時には、もう時間は無くて。
現実の自分の身体に居る時でも、水を飲むのも、ご飯を食べるのも辛くて。
瞼が重くて、閉じてしまいたいくらい疲れたままで。
ゲームやネットの中に居る時だけが、安心できて平穏だった。
ラビの笑顔が、とても優しくて。
だけど、もう自分が長くないって解った時。
もし、現実で会えたとしても、哀しませるだけかもしれない。
そう解っていても、あの手紙を残した。
だけど、会えた。
会えたけど、そこまで頑張ったけど、それ以上は無理だった。
瞼を閉じる時間になってしまった。
ごめんなさい。
泣かせてしまってごめんなさい。
最後に一言だけ、ラビに言いたかったけど、言えなかった言葉。
ありがとう、大好きでした。



  永遠を望んだ黒白世界
      最後に言わせて。と貴女に私は言った。



「ってのが、彼女の最後の気持ちだよ、ラビ。」
「・・・・・・・珍しいね。
 《運命演算三姉妹》としての能力をそう使いたがらないのに。」
「ラビは、過去を話して、僕の糧にした。
 ならば、代価を支払うのが相応と言うモノだろう。」
過去を話を終えたラビ=アルトに、ヴィル=ミカルはそう代価としてリーチェの話と言うか感情を語る。
彼女は、アルトに出会えて、幸せだったと。
自分より年上だったと言えど、それでも、二十を幾つも超えてないだけしか生きていなかったのに。
「ま、それから、姉さんの部屋で、あの女の子写真を見て、本格的に裏に入る決心をして。
 ウィザードよりも更に上の《魔導師(マジスタ)ラビ》って魔で呼ばれるようになって。
 カルロスの正体が、ラディハルトだって知って。
 そんで、リーチェの外見をカラーリングだけ変えて、性格プログラミングだけ違うロボットプログラムを作って。
 今に至るって感じかな。」
「ラビ、一つ。
 過去・・・・・・《運命演算三姉妹》の長女としての忠告だ。
 まだ、思い出している領域が少ない。
 これから、また思い出していくだろうけど、飲み込まれるな。」
「うん。ありがとう。
 それと、いつか、もしかしたら、近いうちに、《戦乙女》を連れてくる事になるかもしれない。」
「何故?」
「なんか、覚醒してないみたい。
 条件は揃ってるのに。
 そうじゃなくても、《C.C.》の時に記憶がないのは辛いだろうし。」
「出会う予感があるわけだ。」
「うん、《妖鳳王》としての感だよ。」




こうして、過去を語り終えたアルト。

そして、運命の糸車は、狂々(くるくる)と廻り始めた。

出来上がる糸玉は、何色か?

幸せな 白色の糸玉か。

絶望の 黒色の糸玉か。

まだ解らないけれど。

糸車は廻り始めたのだった

家族の写真外伝 永遠を願った黒白世界

2012-04-01 04:29:02 | オリジナル / 混合


『シャールの言った事当たりましたね。』
『褒めるなって、サラ。』
『褒めてないですよ。
 子どもを裏に染める手伝いは、ディスやアークだけで十分です。』
『ありゃ能力(スキル)上仕方ないだろうし。
 そう言う意味じゃ、アルト君も変わらない。』
『はいはい、むしろ、この子アレの欠片を持っている以上危ないんでしょ?
 《凍れる予見者(フリージング・シーヤー)》の悪名躍如と言うところでしょうか?』
俺が、リーチェの復讐をしたいと言った時、台詞ほど呆れた調子ではなく、『ああ、そうなったか、』的な締念混じりにそう言われた。
正確には、能力に目覚めた時にそんな会話がされた。
十中八九、間に合わないか、あの結末になると、そうしたら俺がそう言うだろうと、予測していたのだろう。
シャー兄は、特に、複数系統の能力に目覚めてたしね。
俺のは、無理矢理やるなら、念力系だし、瞬間移動も、念力系だ。
モノを凍らせるのも、念力系なのに、シャー兄は、予知系の能力も持ってたんだ。
ともかく、リーチェの実質的な死・・・・・・精神の死が、俺を《マジスタ》と呼ばれるほどの、クラッカーにのし上げた。
そう言ってもウソじゃないくらいの大きなキッカケだった。



 永遠を望んだ黒白世界
      望んでは居ない事だろうけど。と貴女に私は言った。




正直ね、それまで俺は、かわいげのないと言うか。
良く言えば、大人びた子どもだったように思う。
すぐ上の兄も、三つ違いだし。
その上の姉は、五つ違いで、一番上の姉貴に至っては、十歳ほど年齢が違う。
おまけに、兄も、下の姉も、上の姉の婚約者も、暴走族チームになんかに居たから、頻繁ではなかったが、チームの人を連れてくる事も、珍しくはなかった。
その強面お兄さんとかに、遊んでもらった事もあるし。
幼等部も、年中組の途中からしか通わなかったし。
周りに、年上の人間が居ることが多かったせいもある。
それに、今は行方不明だけど、アンドレッセンや、今は殺されてしまったけど、エリスやレイティスに、色々と教えてもらった事も関係しているのかもしれない。
アンドレッセンには、基本的な体術・・・本当に、ガキ向けのを教えてもらった。
その彼は、8年前から、行方不明なのだけれど。
エリスやレイティスには、パソコンの楽しさを教えてもらった。
その彼らは、6年前と3年前に、時国宗留に殺された。
だけど、三年ほど前に、あの決断を下せたのは、関わって来た年上が、そうすべきだと教えてくれた。
・・・・・・リーチェは、決して望まないのかもしれない。
ステファノティスー『清らかな祈り』の言葉を持つ花の名前を持った彼女の願いでないのかもしれなくても、だからこそ、成し遂げたいことだった。
大好きな彼女をあんな目に導いた連中を地獄に叩き込むってことをね。
彼女の死が、キッカケで覚醒した能力はあいにく、情報収集に特化したモノではなかった。
あと、ディス姉ぇは、何も言わなかったけど、黎夜をくれたっていうか譲ってくれた。
・・・・・・・止めるでもないけど、手を汚して欲しくはないと言うように。
このデキゴトの少し後に、師匠役としてついた《エータ・ミレアム》には、『人間リニモ?』と言われた。
あ、うん、あの《エータミレアム》。
ディス姉に、歪みまくったと言うかひねくれまくった愛情を持っていた人。
まぁ、情報屋としては、超一流でも足りないぐらいに一流だった。
ディス姉はさ、どっちかというと運び屋系の仕事だったしね。
・・・・・・・で、リーチェの仇っていうか、あの研究所の出資者を捜して、小さいところから、潰していった。
サラ兄たちも、手伝ってくれはしたね。
あと、潰すと言っても、金銭的に立ち行かなくしたり、社長さんとかの重役の家族を人質にして、自殺を迫ったり、あとは、会社のデータを全部クラッシュさせたり。
社屋ごと、壊したり。
そんな感じ。
えげつないって言わないでね。
ああいう研究の出資をしていたんだし、覚悟はしてるでしょ?
人に酷い事をするときは、される覚悟無しに、するもんじゃないと思うよ。
あの研究所、リーチェ以外にも、年間十人ぐらいの死亡者を出すスパンで、研究をやってたみたい。
そんなに大きくない研究所でだよ?
せいぜいが、九部屋しかない三階建ての2LDKアパートと同じ床面積の地下が二階分のそんな面積の研究所で、年間十人・・・常時二十数人を犠牲にしてたんだ。
ともかく、順々に出資した会社を潰していった。
少なくとも、俺は、手を汚してないなかった。
手をかけなくてはいけない時でも、黎夜が、やってくれた。
・・・・・・・ディス姉ぇには、悪いけど、最後の【Amazing Earth】社の社長だけは、自分の手でやるつもりだった。
だって、ショックだよ。
好きなゲームだったけど、結局リーチェが登録したのも、あるいみ箱庭で実験させる為でしょ?
最初から、ああ言う幕切れだってのは、決まってたみたい。
ゲーム内の噂と言うか、都市伝説的なのに、消える予定も気もない人が突然登録削除するっていうの。
あれって、あの研究のモルモット・・・リーチェも含めてね。
それが原因なんだもん。
んで、現実で、【Amazing Earth】社の室に忍び込んで、ヴィルと対峙したんだっけね。
そん時だよね、ヴィルの本名が、ミカル=エイセルだってこと知ったの。
会長名も、マイケル=エインセルって、英語系の感じだったしね。
「初めまして、【Amazing Earth】社・社長、マイケル=エインセル様。
 縁もゆかりもないですが、死んでいただきますので、悪しからず。」
「悪しからずってったってね。
 そう言われて、殺される人はいないだろうし。
 抵抗ぐらいさせてもらうからね。」
ってのが、初めての言葉で、そのあと、金髪碧眼の30歳ぐらいの人が、いきなり、十代の外見に縮んだのは、びっくりしたね。
『戦うのに、余計な能力使ってられませんから。』っていわれてもな。
普通、小さくなれば、驚くし、その上あの攻撃方法だぞ?
俺が、景気付けもかねて、スキルをその部屋の床に叩き付けて、波のようにしてから、そいつに向かわせた。
水が噴き出すのが一番絵的に近いか。
それのかわりに、床のコンクリが、波打ってるの。
・・・・・・・でもさ、避けるか、力ぶつけて相殺するかなら、解るよ。
でもさ、社長がしたのは、自分の腕を思い切り切り裂いて、吹き出す血を壁になるように腕を横薙ぎにしたわけ。
それで、止まんだよ。
本気じゃないし、目覚めたばっかの能力だったっても、それなりに力込めたのを血の壁で砕いて止めるんだよ。
「さて、短期決戦しないと、貧血になってしまいそうですからね。」
そう言いながら、笑顔でにじり寄って来て、尚かつそいつが十代で血塗れだったら驚くだろう。
っていうか、正直怖かったぞ。
下手な三流ホラーより怖かった。
んで、それからしばらくは、防戦のみだった。
というか、思い切り動揺して、攻撃に移れないと言うのもある、
こら、ヴィル爆笑するな。
お前が原因だろうが。
スプラッタ映画の新鮮ゾンビみたいな様相で襲ってくれば、誰だって驚く。
っていうか、驚かないヤツの神経は、極太のナイロンザイルで出来てると言い切っても良い。
それくらいだった。
当然、何叫んでるかまでは自分も意識していなかった。
「・・・・・・・ベリューシオン研究所って、××××のベリューシオン研究所のことですよね。」
「ちょっと、待って。それは、会社としては関わってないよ。
 というか、まず、お話聞いてくれない?」
「・・・・・・・・ちょっとした実験だったんですって。
 《御伽噺》関連の。」
とか言われて、最後の一言で、やっと止まれた。
あ、実験云々ってトコじゃなくて、《御伽噺》ってとこね。
でなきゃ、のど元を持って来たナイフで切り裂いてるところだった。
詳しく話を聞けば、【Amazing Earth】の社長が、《運命演算三姉妹長女》で、現《賢き愚者》の息子で、ダンピールで。
その自分が生まれた経緯も、800年前の《歌乙女》に似ているからと買われた母親が身ごもったせいで。
身代わり・・・・・本人じゃなくても、そう言うこと出来るモノなのか解らなかったから、そう言う系統の研究所に、手当り次第に出資していた事。
で、たまたま、その研究所が、多かっただけで。
尚かつ、数多い出資者の中で、偶然多かったのも、そうであってそれ以上でなくて。







「・・・・・・・・・・で、今はこうして、友人やってるわけだ。」
「運命ってのは、解らないね。
 『過去』の積み重ねであっても。」
誤摩化されてやるモノかとも思ったけれど。
でも、実際に、あれからすぐではないけど、知人になって、友人になっていったんだ。
あ、ちゃんと、【Amazing Earth】のゲーム内で、色々とアイテムを融通してもらったけどね。
それで、《夢幻師》なんていう合成が好きな人用の販売系もやったりした。
結構あれは新鮮だった。
ともかく、『過去』が『積み重な』って今ここに居るってことだけが、現実なんだし。


家族の写真外伝 永遠を望んだ黒白の世界

2012-04-01 03:30:35 | オリジナル / 混合



『堕ちる覚悟は出来てますか、アルト君。』
『サラ、ちびっこ脅かさないで欲しーな。』
『・・・・・・・シャール、裏社会を頼ると言う事は、堕ちるも同然です。
 麻薬に身を任せるが如く、一度頼れば、抜け出せなくなるかもしれない。』
『でもさ、サラ。
 オトコノコが、オンナノコ助けたいって言うのは、いいんじゃないかな。
 なんか、フツウでさ。』
『シャール!!』
リーチェを助けたいって、二人の義兄に頼った。
そしたら、こう言われた。
サラ兄は、最後まで、反対してた。
だけどね。
その時には、リーチェは、もう『他人』じゃなかったんだ。
だからね、『助けたい』って思ったんだ。


「で、想い出に出来た?」
「話せるぐらいにはね。」
「・・・・場所は、確か中東でもなく欧州でもないような、その中間の国。」
「そう、その国のとある研究所。
 そこが、彼女のある意味での最後の場所だった。」
こうして、ヴィルに促され、また話し始めた。






 永遠を望んだ黒白の世界
        その眠りが平穏であるように 貴女に私はそう願った。







「・・・・・・××××のベリューシオン研究所だね。」
「あと、結構時間もないみたい。」
「アルト君、今日の日付変わる頃に、迎えに来ますから。」
リーチェが、短い手紙を残して、ネットゲームから消えて数日後。
サラ兄とシャー兄の報告が、そう言う内容だった。
中東の某国。
まぁ、そういう系統の研究所を潜ませやすいとは思うよ。
珍しく二人とも、慌てたように思う。
二人は、様子が違うとは言え、微笑と笑顔の余裕は崩さないのに。
その理由は、リーチェのところに、行ったら解ったよ。
でも、その時は、また一緒にネットゲームを楽しめるって本気に信じてた。
ホントにね、また、あんな日々が戻ってくるって信じてた。
・・・・で、その日の夜半。
俺は、義兄二人に、連れられてそのベリューシオン研究所とやらに来ていた。
白い白い箱みたいな建物。
窓もろくに無くて、息が詰まりそうだった。
んで、サラ兄が、爆弾で壁と門とそこの守衛を吹き飛ばした。
ほら、上海だか香港だかにいる、ライラって居るでしょ?
先々代の《氣殺》使い・ベルの奥さんの。
あれに作ってもらったんだって。
『薬』には違いないからね、『爆薬』も。
そんで、探した。
二人の話によると、リーチェはゲームのアバターとそう変わらない外見だったらしい。
金髪のふわふわの綿菓子みたいな猫っ毛とミントキャンディみたいな鮮やかな瞳らしい。
ちょっとドキドキしてた。
ゲームのオフ会とかに憧れる年代だったし。
んで、地下か、一階だったかな。
二人が、牽制に投げた小型爆弾・・・手榴弾って言うの?あれのせいで、一階の天井から上は、夕焼けがの空がのぞいていた。
ちなみに、一応、裏に属するとはいえ、非戦闘員メインのせいか、スキルは使ってないあたり冷静だ。
ポッド・・・・ヴァーチャルダイバーのアーケード版っていうかそれのもう少し大仰にして、横になって入るタイプね。
その一つに、リーチェは居た。
でも、金髪のふわふわだったかもしれない髪は、ばさばさで、肌もかさかさだった。
それに、ゲームでは、十代半ばほどだったのに。
そのリーチェは、二十歳少し過ぎで、当時のファラン姉と同じぐらいだった。
「・・・・・・リィ・・・チェ?」
彼女を抱き上げて、そう呼びかける。
義兄二人は、その研究についての資料集める為に、隣の部屋に居た。
告発・・・つか、社会に公表するためのだろうけど、俺にはどうでも良かった。
俺の呼びかけに、彼女はゆるゆると瞼を開ける。
瞳は、ゲームと同じミントキャンディみたいな緑色だった。
どうやら、身体を起こせないようで、手だけを俺に伸ばして来た。
頬を撫でたガサガサの手は、少しくすぐたかった。
「・・・・・誰?
 ・・・・・・・・ラビ?
 あれ、なんか小ちゃくない?」
「チャイルドファンム(幼児幻想薬)は飲んでないよ。
 それに、ここは、現実だよ。」
「現実でも、兎みたいなふわふわの髪なんだね。」
「・・・うん。」
ゲームの中の彼女と何も変わらなくて。
でも、何かが違っていて。
淡く笑う彼女は、人魚姫のように泡になって消えてしまいそうで。
「逆だね。
 ゲームだと、私の方が年下だったのに。」
リーチェの言葉を聞いても、俺は返せなかった。
「一番、私が幸せだった頃の、外見だったの。」
今とは、全然違う様相。
知っている外見から、今までの数年間何があったのだろうか?
「コールガールとかやってしまっていたわ。
 ・・・・・ラビ、泣いてるの?」
「わかんない。」
でも、俺は泣いていた。
何でだかなんてのは、解んない。
だけど、涙が出て来た。
その涙が、リーチェを濡らしていた。
「ごめんね。
 あんな手紙残して。」
「ううん、そんな事ない。
 ・・・でも、助けになれた?」
「うん。
 最後に、ラビに会えて良かった。」
「え?」
―すぐには、理解出来なかった。
「よくわかんないけどね、私もうすぐ死ぬらしいんだ。」
「え?」
―正確には、したくなかった、
「夢見たいな研究の被験体だったんだ。
 失敗したらしくて、私の精神、もうダメなんだって。」
「え?
 う、う・・・・ウソだよな。」
―それだけしか、言葉にできなかった。
「ううん。
 今こうやってても、自分が消えてしまいそうな感じだから。」
「せっかくあえたのに。」
「ごめんね・・・・、本当にごめんね。」
「ベアトリーチェ?」
「あ、嬉しいな。
 名前で呼ばれるの、久しぶりだ・・・・・よ・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・そして、彼女は、目を閉じた。
たぶん、ずっと目覚める事のない眠りに落ちたんだ。
そう、サラ兄から、聞いた時は、俺は泣いて、泣きまくった。
その後、直後だったね。
《重力への反抗(レジスト・グラビティ)》に目覚めたの。
え?それからどうしたかって?
知ってるくせに、ヴィルは、意地悪だよね。
そもそも、《記憶のロザリオ》は、或る意味、《御伽噺》関係者のためのアイテムでもあったもん。
過去の記憶の覚醒。
そのスイッチが、リーチェの永遠の眠りなのは、皮肉過ぎるけど。





「あの時は、本当に会社が傾いたからね。」
「あんな研究させる方が悪い。」
「だけど、代替え品でも、人は愛せるのかねって思ってさ。」
ヴィルは、困ったように笑うが、ラビの台詞に、頷くしかなかった。
その後の顛末は、ヴィルもすこしだけど、知っている。
・・・それで、二人は出会ったモノのような形だけど。



家族の写真外伝 永遠を願った黒白の世界

2012-04-01 01:05:09 | オリジナル / 混合

それから、冬休みが終わって、学年末テストとか卒業式の練習が始まった頃だったかな。
好きな人がどうこう云々聞こえてたから、多分、バレンタイン前。
義理の兄・・・一番上のファラン姉ぇの婚約者のそのアニキにこう言われた。
(ちなみに、家族ぐるみの付き合いの関係上、実の兄に近い)
『裏の方にもう少し深く嵌らない?
 クラッカーとして、その分析力と目標に向かう激情は、一流の条件だと思うけど?』
中坊を誘うなって、正直思った。
サラ兄とシャー兄は、二人揃えば、人間どころか戦艦を相手に出来るほどだった。
裏じゃ、結構すごかったらしい。
表向きは暴走族達のあの連合の初代であるってだけだけど。
だから、かな。
俺が、裏稼業に染まるってことをさ、予想していたのかもしれない。。
それでも、その頃は全然考えていなかったけれど。
・・・・・・・・・もう少し考えれば、何変わっていたのかな。




「よう、ラビ。」
「遅かったな、ヴィル。」
「言うなって。
 で、あれからどうなったんだ。」
「あれからは・・・・」
ヴィルが少し遅れて、やって来て。
料理を頼み、また話し始めた。
あの頃は、まだ楽しかった。
すごくすごくね。



永遠を願った黒白の世界
   場面.2   貴女の笑顔が好きと、俺は貴方に言った。  




「久しぶり、ラビ。」
「あ、確かにね。一月、振りだっけね。
 元気にしてた?」
「うん、元気よ。
 ちょっと、検査ばっかでうんざりしかけてたけど。」
「・・・・検査?」
「あ、うん、検査。」
一ヶ月近く、リーチェと顔を合わせなかった時だ。
シャー兄に勧誘されてしばらくして、ようやく、再開したって寸法。
もう、卒業式まで後いくつ寝ると~な自分だった。
その前も、一週間とか、顔を見せない時があったけど、そこまで空くのは珍しいと思ったんだ。
・・・・・・あ、ネットゲームだから、時間合わない時もあるとか思わないでね。
ちょうどその頃だったかな?
双子の妹が誘拐されたの。
ちょっと脱線するけど、俺たち五人姉弟は、全員地元のエスカレータ式の学園に通ってんの。
一番上の姉さんは、外の大学を受けたらしいけどね。
初等部から中等部、中等部から高等部は、制服が変わるんだ。
二学期の終わりに、採寸して、一月の終わりに指定された店に、取りにいくシステムだったんだ。
でも、ここ数年で、それも変わったね。
今じゃ、校舎内で、受け渡しするってシステムになってる。
それは、初等部の生徒が攫われたから。
それが、俺の妹だったの。
母さんが、妊娠促進剤?のアレルギーだったせいで、学年は一個違うけど、双子の妹ね。
ちょっとおどおどしてるけど、笑うとすごく可愛いんだ。
人形が動いたみたいな可愛さのね。
当時、市内の公立小学校の子が誘拐されて、悪戯されて、殺される事件があったんだ。
身代金目的じゃないから、難しい難しい。
ある程度、ちやほやされりゃ、ストックホルムになっちゃうし、あんまり表立ってこないわけ。
それの最期の犠牲者で、唯一の生還者がナツメなんだ。
誘拐されて一ヵ月後だったから、二月の頭ぐらいだよ、帰ってきたのは。
生きて帰って来れたから良いってもんじゃないね。
男だったら、親兄弟でも、怖がるんだ。
同じ部屋にが入っただけでね。
それで、当時は神経が細かったのか、引きこもりになっちゃったの、俺は。
だからさ、ほぼ一日、このゲームに居たわけ。
強制排出時間の数時間は睡眠時間だったけど。
だからさ、リーチェが、入ったって言ったけど、ウソだってことが解る。
知ろうと思えば、この【Amazing Earth】で解らない事はない。
当時、数少なかった 『賢者』のマスタークラスで、『忍者』のマスタークラスを持ちながら、軽戦士をやっていたのだ。
ゲーム内で、情報屋もどきもやっていたし、賞金をかけたのだ。
それでも、目撃情報はなかったのだ。
あ、うん、そう言う意味じゃ、《魔導師(マジスタ)ラビ》の原点かもしれない。
狭いゲームの中でだけだったけれどね。
今でも、ログインすると挑んでくるペーペーがいたり、挨拶して来たりする人が居る程度には、有名な伝説的プレイヤーなんだ。
『十二聖騎士』の中の三強の一人に数えられたと思う。
ともかくね、それでも、俺はリーチェには何も聞かなかった。
「ともかく、何処行く?
 この間、面白い道化師みつけたんだけど・・・」
「ありがと、ラビ。」
基本、俺自身の事聞かれても、話せないしね。
だから、リアルの方で、サラ兄に、ファラン姉の写真をエサに調べてもらった。
結果はさ、すんごく腹立った。
リーチェ・・・・ベアトリーチェ=ステファノティスはさ、とある企業のモルモットになっていた。
詳しい経緯も、吐き気がした。
だけど、俺は手出しはしなかった。
助けてとも、言われないのに、助けるのは、その時は、おせっかいだと思っていたから。
・・・それに、リアルじゃ只の中学生だったから、その時は。
でもね、同じ後悔するなら、助けて後悔すればよかった。
それからね、シャルとか、カルロスとかにも、リーチェに引き合わせた。
そのころに、リーチェは、《歌唄い》から、《吟遊詩人》になっていた。
ちなみに、歌唄いと楽士を合わせた芸人系のクラスだね、ヴィルには釈迦に説法だろうけど。
シャルは、シャルロット=ルルーシュ。
濃いオレンジ色の波打つ髪をポニーテールにしていて、濃い緑の瞳で、白いドレス姿の二十歳半ばのクリスマスカラーの似合う女性だ。
その当時は、紋章師と魔術師の最上級職で、《魔章師》ってのに付いていたね。
更に言うなら、魔章師は、学士と紋章師、召喚士(低レベルのみの召喚専門)を収めないといけないから大変なんだよね。
一日四時間程度のプレイ時間なら、紋章師になるだけで、半年とかだし、戦闘まで視野に入れるなら、魔術師か操霊術師のどっちかを学んだ方がいいから、結局一年近くかかるわけ、まともにやるならね。
紋章っていうのは、攻撃力とかステータスを上げたりすると、普通のジョブスキルー『魔法』とか、『盗む』とかを付与したり、特別なスキルー『再生』とか、『隠者』とかを付与するために、必要なもんでさ。
組み合わせ次第じゃ、その魔章師ってのが、一番強いんじゃない?
全種類の紋章扱えるし、上級魔術も使えるから、成長は遅いけど、組み合わせ次第じゃ《龍殺し》よりも強いんじゃない?
カルロスは、カルロス=アリエスト。
若草色のつんつん頭に、焦げ茶色のの瞳に、褐色の肌で、樹みたいにひょろっとした感じで、軽装の二十歳後半の男性だ。
その当時は、盗賊と軽戦士とギャンブラーの上級職の《トレジャーハンター》ってのについていた。
洞窟だとか、塔だとかの、探索には連れてきたい職業だね。
探索も楽になるし、そこそこ戦力にもなるし。
二人とも、《十二聖騎士》で、カルロスの方が、俺とシャルよりも、古くからいるし。
言葉の端々から、結構オジサンがやってるのかなって人。
二人は、ゲームじゃ良くつるんでる悪友同士って感じで、俺も含めて、最強トリオとかって言われてたね。
まぁ、カルロスの正体はなんとなく、検討付いてたけどさ。
「はじめまして、シャルロット=ルルーシュよ。」
「カルロス=アリエストだ。
 よろしく頼むよ、別嬪の吟遊詩人さん」
「よろしくおねがいします。」
「で、ルーティ、この子。
 お前さんのこれか?」
「ち、違うって。」
カルロスが、小指を立てて聞いて来た。
下世話だけどね、『お前の女か?』と聞いて来たんだ。
持っていた剣で、殴りつけた。
鞘付きだけど、マスタークラス二つ持っている軽戦士を舐めるなって感じだ。
リーチェも、シャルと結構樹があっていたみたいだった。
それからさ、よくその四人で、洞窟とかに挑戦したりしたよ。
んで、そのパーティは結構有名になった。
戦士系の上級職が居ないのと【十二聖騎士】三人に、普通のが一人って言う構成のせいもあってね。
夏休みが来る頃には、リーチェも、歌唄い系最高の《トゥルバトール》になっていたし、俺も、《魔法戦士》の職に就いていた。
トゥルバトールってのは、別のゲームで言うなら、スーパースター+ライダーみたいな職業。
・・・あの頃が、一番楽しかった。
シャルも、カルロスも、リーチェも、一緒に笑って居られたから。
だけど、すぐかな、夏休みが終わる頃に、リーチェは突然消えた。

『助けて。
 私を助けて。』

その手紙だけを残して、ある日突然、登録を削除した。
本当、突然だったよ。
数時間前に、『少し寝てから、【オルレンの塔】に挑戦しような』って言って別れたばっかだったから。
その頃にはさ、リーチェは、大切な存在になっていた。
当時は、『恋心』だって勘違いするぐらいに。
今思えば、近所のお姉さんに幼稚園児が恋するようなもんだったんだろうけど。
アコガレだね。
シャルも、カルロスも、すごく慌てた。
もちろん、俺もね。
んで、リアルのサラ兄とシャー兄のケツを蹴り上げる勢いで、リーチェ・・・ベアトリーチェ=ステファノティスの行方を探ってもらった。
とある企業の実験動物になってるのは知っていたけど、何処のかは知らなかったしね。
そこまで詳しく調べてもらった。





「アルト?」
「あ~、とさ、ヴィル。
 もう少し時間くれない?
 まだ、納得しきってないから。」
「・・・・・・わかった。
 んじゃ、一週間後にな。」
ヴィルは、それだけ言い残すと、お金をいくらか置いていった。
そのレストランの個室に一人残されたラビは、こう一人呟いた。
「まだ、想い出になってないか。
 姉さんのこと言えないや。」