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私的コラム&雑記(&メモ)

AliExpressでオーディオ用に電源ケーブルを買おうとし(て結局Amazonで買っ)た話

2023-07-12 | 買い物

動機

 筆者は自宅オーディオシステムを構築にあたり機材を調達中なのだが、オーディオ用に電源ケーブルを買おうとしたところトラブルに見舞われてしまった。当初はAliExpressで発注したものの、結果としてAmazon.deで買うことになったので事の顛末を記録しておこうと思う(時間を浪費したが、貴重な経験をしたと思う…)。

 そもそもの前提として、筆者は転居(日本→英国・アイルランド→スイス)を繰り返したり、機材をドイツのショップから購入したりしているのだが、これら4カ国/地域のコンセントは物理的にそれぞれ別規格でいつも悩まされている。というのも、電源ケーブルを交換するわけだがごく普通の電源ケーブルでも正規ルートで有名メーカー品を買ったりすると概ね300~1000円/m程度と案外良い値段するためである。
 そこで、「どうせ電源ケーブル交換が必要なら、普通の電源ケーブルより心持ち高価な値段でオーディオ用の極太OFCケーブルを入手できるか?」という企画を考えた。ここでいう「心持ち高価」とは1000~2000円/m程度と考えて頂ければよく、内部の太い電線・シールド・外装といった部材や組立等に必要な追加コスト分だけ高価という意味である。

 ところで、「オーディオケーブルで音は変わるのか」という議題は、巷(ちまた)ではしばしばオカルトの一種として捉えられがちで、実際に恐らく大半はオカルトだと思うが、中には科学的に説明できる事象は存在する。
 この議題についての筆者のスタンスを語弊を恐れずに一言で言うなら「電気的・科学的に妥当な最低限のケーブルは必要」ということになる。正確には「音を良くするために良いケーブルが必要」なのではなく「音を劣化させないために一定以上の品質のケーブルが必要」「不要なトラブルを避けるためにも最低限のケーブルは必要」という意味であるが、ここで「電気的・科学的に妥当」とは、例えば純度の高い銅線にすると伝導率は高くなるし、太いケーブルは細いケーブルよりインピーダンス(抵抗値)が低くなるし、電線を撚り線構造にすることで磁界→ノイズの発生を防ぐことができる(LANケーブルなどでも採用されている)し…といった具合にケーブルの品質を向上させる物理学的・科学的に説明可能な条件は存在する(人間に知覚できるか否かはともかく)。
 ただし問題として、残念なことにHDMIケーブルやUSBケーブルとは異なりアナログケーブルには品質を保証する規格や数値が無いため具体的な基準を挙げることができない。ちなみに、(電源ケーブル以外で)筆者は「一定以上の品質のケーブル」の基準として「放送局で使用されているケーブル」と規定しており、Belden・Mogami・Canareを愛用している。

 今回、上述の前提で電源ケーブルについての筆者の要件は以下の通りである:

  • EU/ドイツ規格プラグ(筆者はオーディオ周りをドイツ規格で統一している)
  • OFCケーブル(無酸素・高純度の銅製で電気的特性に優れる)
  • 太い(インピーダンスが低くなる)
  • シールドされている(電気的・磁気的なノイズを遮断する)

AliExpressの電源ケーブル

 筆者はノーブランドで安価なコモディティ商品の購入にはAliExpressを利用することが多いのだが、興味深いことにAliExpressで購入可能な高品質電源ケーブルの過半は有名ブランドの偽物である(苦笑)。

 そもそもの話、我々が気にしないだけで日常生活はノーブランドのケーブルに溢れている。たとえSony製品やPanasonic製品(例えばテレビ)を買ってもSonyやPanasonicがわざわざ電源ケーブルやスピーカーケーブルを作るとは考え難く、恐らくは中国あたりのOEM/ODM線材メーカーから購入・テストして添付しているはずである。そういう意味ではノーブランドであっても十分に高品質なケーブルを供給するメーカーは存在するし、我々は日常的にそれらの製品に接しており、オーディオ用だろうが有名ブランドに拘る必要はない。

 ちなみにAliExpressでも、例えばヘッドフォン用ケーブル(例:4.4mm Balancedケーブル)はノーブランドながらも多様な選択肢の製品から優秀な製品を購入することは可能で、筆者もHiFiManヘッドフォン用に4.4mm Balanced→3.5mmのヘッドフォンケーブルを購入して愛用している(ヘッドフォンに添付されていたUnbalancedケーブルよりも音は良いと思う)。

 そういった経緯で、筆者はノーブランド品を探すつもりでいたのだが…AliExpressで電源ケーブルを検索してみるとAccuphase・Furutec・McIntosh・Nordost・Krellなどを騙る偽物が並ぶ。恐らくMonosaudioAliExpressページ)は本物(というか、中国のブランド)だが、それ以外のブランドはほぼすべて偽物と思われ、公式カタログに掲載がないほか一部は公式/代理店などが否定している。注意されたい。

筆者がAliExpressで購入に失敗した理由

 筆者は検討の結果、AliExpressにてブランド表示の無い4N OFC電源ケーブルを4本発注したのであるが、出品者との間で係争に発展してしまい、最終的に運営元=AliExpressの介入で返金が実現した。

 ここで、係争で問題となったのは送料である。
 太いケーブルは金属の塊のため意外に重量が大きい≒送料が高くつく。筆者は電源ケーブル4本+送料で約US$56を支払ったのだが(計7mなのでUS$8.00/m)、欧州への送料を含めると大幅に超過してしまったらしい。とはいえ、コストが予定を超過してしまうことはありえる話なので、出品者が事情説明してキャンセルしてくれれば何も問題にはならなかったのだが………なぜか出品者が勝手に購買契約の内容を変更したことにより係争に発展してしまった(苦笑)。
 上述の通り、購入者=筆者は条件が見合ったノーブランドケーブルを1000~2000円/m程度で買いたかっただけで特定の商品に拘りがあったわけでもなく、大幅なコスト増(例えば7mでUS$18.00/m)を許容してまで購入する意欲は皆無でキャンセルしたかったのだが、出品者側は購買契約を強引に変更してでも送料を購入者に転嫁して無理矢理売りたかったようだった。運営元=AliExpressは問題を購入者・出品者の対話による解決を推奨しているのだが、議論は平行線を辿り妥結せず、最終的にAliExpressの介入で返金が実現した。発注したのは6月18日・係争に決着がついたのは7月12日のことだった。

 もっとも、筆者と同様の事例が日本に住む日本人購入者がAliExpressで購入する場合にも発生するかは判らない。筆者の住む欧州は地理的にも遠いし物価も高いので、地理的に近い日本では送料は相対的に安価かもしれず問題とならないかもしれないし、そもそも出品者が変な人でなければ係争に発展することもないだろう。

Amazon.deにて発注

 上述の理由によりAliExpressでの発注は断念した。
 理屈上では別のAliExpressの出品者に発注することも可能だったかもしれないが、同じ太さ×長さ×本数のケーブルならば同じ重量になり、同じ国=中国から購入すると同じ送料になることは明白で、類似のトラブルを招く恐れがあった。

 AliExpressで係争に発展したことは筆者にとって災難だったが、係争が決着したのがAmazon Prime Day期間中だったことは筆者にとって幸運で、大幅に割引された代替品をAmazon.deで購入することで解決した(ただし合計で7m・US$79≒US$11.30/mとなった)。ちなみに欧州製ではなく、おそらく中国製のノーブランド品のためAliExpressで購入しても品質に顕著な違いは無いと思われる。
 このケーブルの使い勝手については後日レビューしようと思う。

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