碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

インド紀行6

2007-02-27 22:23:29 | インド紀行
バラナシ駅から汽車に乗ってカルカッタまでは24時間かかる
このインドの旅の最後の行程になった。
コンパートメントの2ベットの客室にようやく落ち着いて
家内が買ってきた果物をたべながら
ほっと一息ついたのは次の駅までであった。
車窓から眺める風景に見入っていたのもつかの間、
次の駅を過ぎた頃、ドアをノックする音がした。
ドアをあけると車掌が話し掛けてきた、券察だった。
「どちらまで」
「カルカッタへ」
「乗車券を見せて下さい」
「分かりました」
「有難う」
と短い会話をはなしつつ、部屋の中を見まわして出て行った。
それからしばらくして、またドアをノックする音
開けると、また車掌がいた。
「なんですか」
と質問すると、彼の後ろから2人のインド婦人がこちらを窺っていた。
「どうぞ、こちらへ、」
車掌にそううながされて、2人の婦人は、部屋に入ってきた。
一瞬なにかの間違いかなと思う間もなく、婦人たちは、堂々と
悪びれることなく、荷物を入れると、座席に腰をかけた。
何事もないように、何かおしゃべりをはじめている、
こちらが、部屋でも間違えたのかと考えたほどだった。
「何でや、車掌さん、おかしいやろ」
かくして、第1ラウンドの戦いははじまった。
先制パンチは日本語で、怒鳴ると効果があることは、
経験ずみですので、それをかまして、相手の出方を見るわけです。
相手は、何を言われてているのか分からないのだが、
表情から、殺気を感じて戸惑うのと同時に、
相手が、何者か、見極めようと、こちらに注目してくる。

「この部屋は、私の部屋ですね、間違いはないですね」
「そうです、」
「この人たちはどうして、ここに入るのですかね、私は
 許可してません。勝手に入りこまないでくれませんか」
「いやいや、それはできません。」
「なぜですか」
「座席が空いているし、チケットもある」
「それは、おかしいではないですかね」
「一つの部屋に2枚のチケットがあるということですか、
 つまりそれは、ダブルブッキングということですね。」
「いやそうではない、あなたは、カルカッタまで行くのしょうが、
 彼女たちは、2つ先の駅まで行きます。それまでは、相席です。」
「相席になるとは聞いていません。この部屋は二人部屋ですよね。
 何で、二人部屋に4人も相席になるのですかね。」
「彼女たちは、座席にしばらくいるだけです。あなたがたは、ベッドを
 使って下さい。」
「やかましっわ」「わしら、新婚旅行や、ベッドを使えだと」
 つい大声をだしてしまった。
こういうことは、おそらくインドではあたりまえのふつーのことななのだろう
だれの裁量でやっているのか分からないのですが、おそらく
車掌に手間賃を払って、座席を確保するのはあたりまえのことなのかもしれません。
不安そうに家内が寄ってきて、事情を聞くと、あっさり
「しかたないわ、がまんすれば」というので、納得はいかないのだけれど、
こちらの戦意も落ち着き、あきらめることになった。
車掌はこのときとばかり、ささっと行ってしまった。
こうゆう場合、どう落とし前をつけるか、
座席では、知らん顔で、婦人たちは座っているのです。
大阪のおばちゃんでも、そんなずうずうしく座ってられんと思うのですが、
よく見れば、お金持ちの奥様ふうおばちゃんと、若いお手伝いさんみたい
で、こちらのことは、なるべく意識してない様子をみせていた。
べつに個人的にうらみつらみがあるわけではないし、ご婦人あいてに
文句をいってもはじまらないので、しらじらしい雰囲気のなかで、
口も利かずこちらもシカトでいるのが、意志表示だった。
「くそったれが、」第一ラウンドはテクニカルノックアウトされて
ベッドに腰を下ろしたのだった。




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