碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

ルバイヤート(四行詩集)

2009-02-21 19:16:32 | 詩、漢詩、その他読書感想



                         Tyuta Kimura [ 朝の光]

                  

ルバイヤート   オマル・ハイヤーム作(陳瞬臣 訳)

 まろき屋根の上に日は朝の梯子を投げたり 
 日の王者は酒もて杯を満たせり 
 あかつきに起き出でし人 酒をと呼ぶ 
 飲めやと 声は世にむかいて叫べり

冒頭の最初の句がこれです。朝っぱらからこれです。イスラムの寺院
から流れるコーランの詠唱に対抗するように「飲めや と叫ぶ」のですから
気合が入っております。半端じゃないけんねと最初に強烈な一発を
かましておりますイスラム教の禁酒の戒律なんか糞食らえ、
と宣言しております。言葉が暗喩として別の意味で使われているのかどうか
わかりません。900年前のペルシャの詩人のことですから。しかし、
酒飲みにはまさに福音として聞こえてくるのではないでしょうか。

 あかつきに酒肆(しゅし)よりさけびあり
 いそげ さすらいの痴人(しれびと)
 起ちて升に酒を満たせ
 その升に運命の水いまだ満たざるまに

つづく第2句ではアジります。痴人の自覚のある者はここで、
そわそわしだしますね。酒肆とは酒屋飲み屋のことだそうです
その後の句は時間のなかの存在を意識させます。

 朝なり 幸運なる足の偶像よ
 琴鳴らせ 酒を持て
 十万の帝王土に帰し
 ここに春の月は来たり冬の月は去る

 いのち尽くる時 甘苦を誰かあげつらう
 玉杯酒に満たばバグダード又バルフ何するものぞ
 更に尽くせ一杯の酒 われ亡き後も
 月盈ち虧けてとどまらじ

音楽で言えば、最初に高らかなファンファーレをならし、
つづいて序章が始まります。
そして、快楽主義はやがて刹那主義と手を結ぶ定めであれば、

 友よ明日を思い煩うなかれ
 このひとときの楽しみをとれ
 明日われらはこの古き住居を去り
 七千年の故人と共に旅をせん

しかし、ここからがこの詩人が単なる酒飲みではないと気づく句が
連なっていきます。この曲のそれぞれのテーマが語られ変奏と
フーガが奏でられます。二句だけ載せます。

 昨日われ市場に陶工を見たり
 かれ新土の塊を荒々しげに蹴りたれば
 その土おのれの言葉もてつぶやきぬ
 われかつては汝と同じかりき 請う心せよと

 神が存在の土塊を捏ねしとき
 われらの仕草を予知せりや
 彼の支配なければわれらに罪なし
 何故審判の日に彼われを焼かんとす

この句を読むと悪人正機説を思い浮かべたりするのですが・・
この曲のリズムとテーマにしだいに酔ってしまいます。
あとは本にてお読みください

 







 

 

 

 

 

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