tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『野菊の如き君なりき』

2013-12-14 22:16:53 | 映画-な行
 木下惠介監督、1955年。
 京橋のフィルム・センターで観る。「映画の教室」という特集。
 
 途中から、あちこちで、ずるずると鼻をすする音がしてくる。このような悲恋物には比較的耐性があるはずなんだけど、私ももうだめだ。溜まっていた涙がぷるっと膨らんで、鼻の脇をつーっと通る。

 映画の中の人たちが、本当においおいおいおい泣くので、こちらもたまらない。
 どんどんどんどん、もらい泣きをする。

 腹立たしいことに、みないい人に見える。おばあちゃんだけが、真実を語る。「あたしはね、あたしの人生の中で、死んだおじいさんと一緒になれたということだけが、本当に嬉しくて、本当にこの世に出てきて良かったと思えることなんだよ。後のことは全部同じ、あったってなくったって、どっちでもいいことばかりだよ」「お前たちもうちょっと、あの子の気持ちを考えてあげてもいいんじゃないかね、と言ってるんだ」「反対はしないけどね」

 後のことは、あったってなくったって、いいことばかり。おばあちゃんの真実だ。


 先日「西島秀俊さんが、笠智衆さんとかぶる」と言っていた人がいた。今日、そう思って見ていたら、確かに似ていた。表情とか台詞の喋り方の話だったと思うけれど、なんだか顔も似てる。伏せた目の辺りなど、そっくりに見えた。
 笠智衆さんの穏やかなお顔が、また泣ける。西島さんで泣いたことは、まだない。

 
 この後つづけて、「アメリカ無声映画選集」でエジソンとチャップリンとキートンを観た。


  木下惠介生誕100年 「野菊の如き君なりき」 [DVD]