消費生活アドバイザーが食品表示をわかりにくく解説するブログ

消費生活アドバイザーが、食品表示を、妄想や推測、人から聞いた噂などを交えて、わかりにくく解説していきます。

原料原産地と安定供給

2017-08-26 11:01:21 | 表示に関する話題
さて、原料原産地の表示義務を課そうという動きがある訳ですが。
そもそも論で言うと、原料原産地情報を欲しいと言ってる人の割合が一体どれほどいるのか。
声が大きい人だけではないのか。
その声が大きい人たちも、個別にメーカーに問い合わせるのではだめなのか。
といった疑問があります。

消費者側からすると、なぜ表示できないのか、何かやましいことがあるのではないか。
などと勘ぐられるのかもしれませんが、そういう事ではありません。

表示をする、ということは、実は単に情報を提供するよりはるかにハードルが高い事です。
なぜなら「包装資材は簡単に変えられない」からです。
QRコードからウェブで情報提供、であれば、データベースを書き換えることである程度負荷が少なく情報を変更できます。
ウェブにアクセスできない人には電話で問い合わせてもらうことになるかもしれませんが、いまどきはフリーダイアルのお客様相談窓口を設置している会社も多く、その人たちが適切に情報をとりだせればOKです。
しかし、包装資材は「モノ」として存在しますし、書き換えることなどできません。
また、一度の生産ごとに印刷している訳でもないと思われます。(シール貼りみたいな商品だと都度印刷してるかもですが)
プラの袋などは、一度に発注する量が少なくなればなるほど価格が上がります。
というか、量が少なすぎると印刷屋さんが引き受けてくれない場合もあります。最低製造量みたいなものは印刷でもあったりします。(印刷屋さんの経営的な問題が大きいと思います)
なので、多くの食品メーカーさんは、同一の商品の包装資材をある程度まとめて購入し(もちろん全商品について)、倉庫等に保存したものを使用していることが多いと思います。
つまり、食品メーカーが包装資材の在庫を抱えている以上、その在庫分は書き換えられないのです。
当然変更があれば在庫を破棄しなければなりませんので、エコロジーでもないしエコノミー的にもどうか。

一方でコロコロと原料原産地は変わったりします。
なぜ変えるのか。
それは安定供給のためです。
北海道が台風に見舞われ、道産じゃがいもの確保が出来ずにポテトチップスの在庫が店から消えたことがありました。
天候以外にも様々な要因で産地を限定していると原材料の確保が出来ない、という問題が発生することがあります。
原料を確保できないまで行かずとも、複数の産地があって、原材料の価格が変動するときには、安い産地から仕入れるという事もあります。
「安い」というと消費者は「表示するんだから価格よりももっと消費者の事を考えて」と思うかもしれませんが、価格も安定供給にとって大きな寄与をします。
原材料を高い価格でも仕入れざるを得ないのであれば、高くなった時のことを考えて商品設計をします。
それなりに高い価格に設定する、もしくは商品の品質を落とす、という事です。
あまりに原材料の価格が高騰したら商品の生産量を減らすという事もあるかもしれません。
原材料の価格を抑えることで、消費者の手にもそれなりの値段でそれなりの量届くという社会の構造が保てるんだと思います。

私は割と食品表示に興味があるので、買った商品の表示をまじまじと見る機会も多いですけど。
お腹が空いてるときとかは殆ど見もせずバリバリに破いて捨ててしまうことも多いです。
包装資材にある表示を殆ど見ずに捨ててしまう人も多いのではないかなあと個人的には思います。
消費者の要望を全部盛っていくんじゃなくて、こだわりがある人はこだわりのある会社の産地限定食品を買う、こだわりが無い人は安くその辺の商品を買う、とすみ分けた方が社会的なコストが低くて済むと思うんですけど。
正直表示にコスト使って価格があがる位なら、賞味期限とアレルギー等位の簡易表示で良いから安く売ってほしいと思うのは私だけでしょうか。

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