運命の人
山崎豊子原作「運命の人」の視聴率がUPしているそうだ。
個人的に昔から山崎豊子の作品は好きで過去の作品は殆ど読んでいる。
最近では「大地の子」以降発刊されるとすぐに買って読む。
殆どの作品が一気に読めるほど読者の心を知り尽くして書いていると言うのが判る。
最近、80代になって書いた自伝的な本を読んでみると彼女の作家としての考え方が「なるほどな」と納得できるようになった。
彼女の出発は新聞記者で上司は「氷壁」を書いた井上靖さんだ。
井上靖さんはやはり私の好きな作家で中学か高校で読んだ「氷壁」が一番好きで端正な文章を書かれる方だ。
上司として山崎豊子さんの指導をされ「作家になってみないか」とアドバイスして新聞社を辞めて作家に転身した。
後を追うようにして山崎さんも退社して作家デビューしている。
井上靖さんが山崎豊子さんに徹底して指導したのは「調査」だった。
一冊の本を書くのに構想から調査にかかる時間は膨大で随分年数をかける。
大地の子も中国の指導者から直々に入国を許可されて調査や取材したが最後は指導者が変わり入国も出来なくなったと書いてあった。
が、一方で「盗作」がささやかれもする。
裁判沙汰になったこともあるらしいのだがこれは真相をよく知らない。
だが、80ウン歳の彼女が言うには「調査は徹底してやる」だが「私は作家だ。事実だけで描いてもそれが読む人にとって面白く読みごたえが無いと小説とは言えない。どういう風に読み手の心をつかみ展開するかは私の書き方で決まる。」と書いている。
「運命の人」は勿論実話に基づいている。
私の世代の人は少なからず事件については耳にしたことだろう。
私は本が出版するのを待ちかねて本屋に走った。
読みながら実在の総理「佐藤栄作」のあのブルドックのような顔を昨日のことの様に思いだし不愉快極まりない思いをして読んだ。
そして、その裏で暗躍した「佐藤道夫」や「ナベツネ」こと「渡辺恒夫」国会議員の社会党横路氏やバクダン男と言われた楢崎弥之助氏も容易に判った。
あの当時「沖縄返還」一色だった私達世代や先輩は警察権力によって逮捕された人もいたのだ。
私も宮崎まで行き日本中の若者たちと集会をしたりデモをしたりした経験がある。
それでも最終的に国家権力の前に手も足も出ずアメリカの思うような結果になってしまった。
山崎さんも本来はこの密約問題が書きたくて最後の作品にと取っておいたのだと書いている。
それは自分の出発点が「新聞記者」だったからだと。
しかし、事実だけ書いたのでは小説にならない。そこに読者を引き付けるものを書いてこそ「作家」だと言われる。
だから、ナベツネさんが怒ったり、当の西山記者も「TVや本には事実に無いことが書かれているので見ない」そうだ。
私が知らなかったのは西山記者の上司が政治評論家の三宅久之氏だと言うことで意外だなあと思った。
最も気になる外務省の蓮見喜久子氏(?)でしたか、彼女は今生きているのか、どうして国家権力の思うがままに行動したのかが聞いてみたいなあと思う。
余りにも自分を守り過ぎてあのような行動をしたのか、何ら考えも無しに検察の言うがままになったのか哀れと言えば哀れだ。
誰も こころから彼女を守ってくれる人はいなかったのだろうか。
今の日本があの当時と何ら変わりなくアメリカの言うがままになっているのはこの事件の真相を下半身問題にすり替え国民を騙し続けたからに他ならないと思うのは私だけだろうか。