大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アメリカ経済は今年2月がピークだったのか?

2017年07月18日 | 日記

 アメリカのいくつかの重要な経済指標が今年2月前後をピークに低下を続けている。

 インフレ率平均時給新規失業保険申請件数小売売上高などである。

 

 単位:%                                          出所:U.S Census Bureau

 上は、アメリカのGDPの7割を占める小売売上高(季節調整値)の前年比の推移をグラフにしたものである。

 トランプ大統領の就任式があった今年1月をピークに急速に対前年増加率が落ち込んでいることがわかる。

 2月以降、トランプ氏への期待が徐々にはく落し、それとともに実体経済も勢いをなくしているようにみえる。

 このまま減速が続いていくのであろうか? 

 あるいは米経済のファンダメンタルズに変化はなく、ほどなく上昇基調に戻っていくのであろうか?

 先にあげた4つの指標をふくめ米経済の動きを注視していきたい。

 なお、7月にはアマゾンのプライム祭りがあり、他の米大手小売も対抗して大がかりな安売りをおこなったという特殊事情があるので7月の小売売上高(8月発表)をみるときは若干の注意が必要である。


オバマケア改廃案の投票延期

2017年07月17日 | 日記

 2017年7月15日(土)、マコーネル上院院内総務は、共和党のマケイン上院議員が血栓除去の手術をおこなうため(マケイン氏がいないと過半数の投票を得るめどがたたないため)、今週に予定されていたオバマケア改廃案の投票を延期すると発表した。


アメリカにおける携帯電話の値下げ競争とインフレ率の低下

2017年07月16日 | 日記

 2017年2月をピークにアメリカのインフレ率(CPIおよびPCE)が低下を続けている。

 他にいくつかの雇用指数(たとえば新規失業保険申請件数)もおなじように今年2月にピークをつけている。

 インフレ率低下に大きく寄与しているのが携帯電話料金と中古車価格の低下である。

 昨日発表された6月のCPI-U(消費者物価指数)によると、6月のインフレ率(年)は1.63%で5月の1.87%から0.24%低下した。

 携帯電話料金の低下によるインフレ率の下押し分は0.23%で、これがなければインフレ率は横ばいとなったはずである。

 

                            出所:米労働統計局

 上はアメリカの携帯料金の変化を図にしたもの(2009年12月の価格を100とした変化)。

 いまアメリカではAT&T、ベライゾン、Tモバイル、スプリント4社が定額の使い放題(データ無制限)などで激しい価格競争を繰り広げており、その影響がでたようだ。

 ここから、イエレンFRB議長は「最近のインフレ率低下は一時的なもの」であり、経済の拡大基調は変化していないとの認識を示している。

 ただ携帯料金は今年2月から急低下しているため、来年の2-3月ごろまではインフレ率の大きな下押し役となりそう(1年前の価格との関係で)。

 ガソリン価格は1年前の価格との関係で、これから数か月間はインフレ率の押し上げ役となりそうだが、その効果を携帯料金と中古車が弱めるという状況がしばらくは続きそう。


日産ミシシッピ工場で組合承認選挙

2017年07月15日 | 日記

 ニューヨーク・タイムズによれば2017年7月13日(木)、UAW(全米自動車労組)はNLRB(全国労働関係局)に、日産ミシシッピ工場での組合承認選挙の申請をおこなった。

 UAWは、1989年と2001年にも日産テネシー工場で組合承認選挙を申請したが、どちらも過半数の支持を得ることができなかった。

 現在、南部には多くの海外移転工場(トランスプラント)が進出しているが、これまで組織化が成功したのはVWテネシー工場の熟練工のみ。

 投票は7月31日(月)と8月1日(火)の二日間おこなわれる予定になっている。

2017年8月6日追記

 オートモーティブ・ニュースによると、8月3日と4日に投票がおこなわれ2244対1307の大差でUAWが否認された。


米上院、オバマケア改廃案の修正案を公表: 来週、採決へ

2017年07月14日 | 日記

 2017年7月13日(木)、米上院はオバマケア改廃案の修正案を公表した。

 おもな修正内容は次のとおり。

1)オバマケアにおける富裕層に対する増税を維持する(前回は廃止するとしていた)。単身者で20万ドル(2.2千万円:1ドル=110円)、カップルで25万ドル(2.8千万円)の所得がある場合、株式などの譲渡益にかかる3.8%の加算増税、給与税(payroll tax:日本での社会保険料に相当するもの)にかかる0.9%の加算増税は維持される。

2)医療保険料などの高騰を抑えるための政府補助を前回の1千億ドル(11兆円)から1.7千億ドル(19兆円)に増額する。

3)麻薬依存対策に450億ドル(5兆円)をあてる(共和党の二人の上院議員がこの項目を強く要求して、前回の法案に反対していた)。

4)保守強硬派のクルズ氏の要求を入れて、カバー領域の少ない医療保険の販売を認める。若くて健康な人は、カバー領域が最少で保険料の安い保険を選べるようになるが、高齢者や既往症がある人が必要なカバー領域が広い保険に入る健康な人が減少し、そうした人々の保険料が高騰するおそれがある。

 現在、メディケイド(貧困層向け公的医療保険)の費用は基本的に連邦政府と州で折半しているが、共和党は連邦の支出を大幅に削減するとしている。アメリカではこの点が大きな焦点になっているが、この点は今回も変わっていない。

 ニューヨークタイムズは、すでに2人の共和党議員が法案審議の開始に反対を表明していると伝えている。

 上院100人のうち共和党は52人。党内から3人以上の反対があると、法案審議に入れないし、法案を可決できない。

 共和党は来週に上院本会議での採決を目指しているとしているが、今後の修正協議を注視していきたい。

 なお来週初めには議会予算局(CBO)による影響分析が公表される予定になっている。

2017/7/17追記

 2017年7月15日(土)、マコーネル上院院内総務は、共和党のマケイン上院議員が血栓除去の手術をおこなうため(過半数の投票を得るめどがたたないため)、今週に予定されていた投票を延期すると発表した。