場所:チフーリガーデン and グラス (シアトル)
時期:2014年 6月2日
仕事でシアトルに行った時、半日強時間ができたのでスペースニードルに行った。そこではニードルとチフーリガーデンの切符がセット割引になっていたので、そちらを買うことにした。
ニードルを降りて歩きながら見回すと、下図に示すようなキラキラとしたガラスの塔があった。これだ。
ディル・チフーリはガラス工芸家として非常に有名で、モントリオールに行った時にそこで特別展示会が開かれていた。ずらっと人がならび入場制限をしていた。ここはチフーリさんの作品のみを展示している美術館である。
なぜここにこれがあるのかとググってみて、チフーリさんがシアトルの隣のタコマ出身であることを確認。ガラスの工芸家として個人で名を成したが、事故を2度ほど起こして、身体の機能が一部失われ、最近はガラス工房を率いたディレクターとして活動しているとのことだった。
展示はガラス造形品を多数組合せた、スケールの大きなものが主体。建物そのものも、作品が映えるように作ったとのこと。だから自然光、照明を自由に使っている。
入口にある黄色の太陽のようなガラス集積体。これはモントリオールでも美術館の前に置かれていた。岡本太郎の「芸術は爆発だ」と言って作った太陽の顔を思わせる。この人の燃え滾る思いを表しているのだろう。
建物にはいると真っ暗。そしてこの球根の水耕栽培のような展示がある。宇宙から入り込んできた球根のよう。
照明を効果的に使いスケールの大きなシャンデリアや インスタレーションを展示している。インスタレーションは大きくとても迫力がある。
その要素となっている中小のガラス部材は不揃いで細長いものであれ丸いものであれ、有機的な曲線を生かしている。ギーガーの造形(エイリアンのデザイン)を思わせる。
こういったものを作ったチフーリさんのふつうのガラス作品も展示されているが、エミールガレの現代版を思わせる。照明の例、それから海の中の大きな牙とされこうべ。
ワインカップの大型か花瓶かな? 少しエロチックな曲線。海の中の大きな牙とされこうべ。
普通のガラス作品を作る人が、不定形のガラス機器を多量に組み合わせて大きな作品を作るのは、素晴らしい具象画を書くピカソがデフォルメされた作品に行きついたのと同様な流れなのか。
ところで生け花という作品がある。 これだけはきれいな丸が主テーマになっている。彼が日本に対してどういったイメージを持っているのか 聞いてみたい気がする。
屋内の展示は、このスケールの大きな、空へ飛び出していこうとする生物のようなガラス群で区切られる。
そして外の庭園。それへ飛び出した生物たちが根付いているようだ。
ガラス作品が植物とともに並べられている。自己主張しているもの、草花と違和感なく溶け込むもの、ガラス独特の光沢やその有機的曲線と合わせ、不思議な異世界を作っている。宇宙のどっかにはこんな生物もあるかもしれない。チフーリさんはガラスと自然のこういった共存を望んでいるのでしょう。
ただ今は草花が生い茂っているけれども、自然の色が変化する秋や冬の風景も見てみたい。
そしてガラス生物たちは、じっと私たちを見ています。実体化したいま、チフーリの意志を離れ、彼らは彼らで、共存の形を考えているのでしょう。襲うのも、やさしく声をかけるのも、彼らに選択権があるのです。
またモノレールでダウンタウンまで帰りました。この風景を思い出しながら歩いていると、母親と娘2人という欧米人のツーリストが声をかけてきました。
「チフーリガーデンへは どうやって行くのでしょうか。」
(特にパンフレットなんか持っていませんよ。)
私のような一見してわかる異邦人に、なぜ聞いてきたのでしょうか。もしかしてどっかにガラス生物の種子がついていて、彼女たちにはそれが見えたのでしょうか?