てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

金色のカエル (前半)

2017-09-01 09:13:35 | ひとり語り


 
 そのオタマジャクシは、足が出て尻尾が短くなるにつれ、鮮やかな虹色になりました。しかし、なんともおどろおどろしい渦巻き模様。 

 そう、皮膚の粘液に猛毒を持つ、新しいヤドクガエルの誕生です。
  (ヤドクガエル:アマゾンに住む、カラフルなカエル。
   皮膚の毒の粘液がヤジリに塗られて、狩猟に使われることで有名。
   写真は 普通のヤドクガエル )


 カエルの天敵の鳥やヘビは、その鮮やかな模様を見るだけで、避けていきます。
 だけど他の動物も近寄ってきません。
 彼は、実はとっても寂しがり屋なのに、友達ができません。

 ヤドクガエルは、その身に毒があることを悲しみました。しかし、それでこれまで生きることができたのですから、しょうがありません。

 あるとき隣のジャングルから、事情を知らない旅のツノガエルがやってきました。
 ヤドクガエルを見かけて、道を聞こうと近づいてきました。ヤドクガエルは喜んで説明しました。


「ありがとう」

 ツノガエルは、握手をしようと手に触れました。
 すると一瞬にして、白目をむき、そして泡を吹いて倒れてしまいました。

 近くにいたコモリガエルのおじいさんの薬がなかったら、そのまま死んでしまったことでしょう。


「わかったよ、触ってはいけないのだね。」

 ツノガエルは、そこに咲いていた花びらを利用した、きれいな服と手袋を作りました。とてもお洒落でしたが、保護色が失われました。
 ヤドクガエルは嬉しくって、2人で一緒に歩き回りました。

 目立つヤドクガエルの横を、おいしそうなものが動いている。
 鳥が見つけました。そしてスーと降りてきて、服を鍵爪で引っ掛けました。

 ツメガエルがばたばたしたのと、何かが一瞬ピカッと光ったため、鳥の目がくらみカエルを5mの高さから、落っことしてしまいました。
 彼は片足骨折程度で、なんとか地上に生きて戻ってくることが出来ました。


 ツノガエルは、治るまで大きな葉の陰にじっとしていることにしました。
 ヤドクガエルは、いろいろと食べ物や日用品を準備し、ツノガエルのところへ持ってゆきました。


「ありがとう。だけど悪いけど、もうこないでね。君は目立つから、ヘビが僕に気付くかもしれない。」

「いいよ。」


 帰る途中、ヤドクガエルは大きな声で泣きました。
 だけど、こんなに目立った色でも、こんなに大声でないても、誰も近寄ったり、襲ってきたりしないのです。

 僕はずっと一人なのだろうか……   ヤドクガエルは、いっそう悲しくなりました。




 空の上では、若い神様が頭を抱えていました。

 お父さんの神様から教えてもらった方法(遺伝子操作)で、新しいマスコットのカエルを作り、女神にプレゼントしようとしていたのに、うまくいかなかったのです。
 だけど先ほどの光をみて、もう少し様子を見ることにしました。



 ツノガエルが、びっこを引き引き歩き出すようになってからも、ヤドクガエルは近づかず、遠くから見守っていました。
 いきなり彼が立ち止まり、横を見ました。

 「あ、ヘビ」 スルスルと近寄ってきます。
 金縛りにあったように、ツノガエルは動くことが出来ません。
 動くことが出来たとしても あの足では……。


 ヤドクガエルは、ホップステップジャンプと、これまでで最も早く、遠くまでとび、ヘビとツノガエルの間に立ちました。そして、ヘビと向かい合いました。
 食べられないけど、うろこで覆われた尻尾でピンッとはねられたら、大けがどころか・・・・・・。 


 うしろのカエルの恐怖を感じ、自分が犠牲になっても守らなければとおもうと、身体が熱くなりました。
 すると、ヤドクガエルの毒と皮膚が反応を始め、金色になりピカーッと光を放ちました。

 ヘビの目がくらんで動けない間に、彼らは逃げることが出来ました。



 そのヤドクガエルは、そのときから金色のカエルになりました。

 その身体の表面には、もう毒がありませんが、天敵が来ると、自分自身、そして周辺のカエルの恐怖を感じて、身体が熱くなりピカーッと光を放つのです。





<これは もう既に崩壊したSNSで 2006年11月に書いた童話です。 この時それなりに読者がいましたが、投稿のすぐ後トラブルに巻き込まれ、撤退に至りました。なんと もう11年前になるのですね。
 その頃お付き合いしていた人たちに、私はここにいるよということで、再掲載(再々っ掲載かな)します。>
 

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2 コメント

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せつない (biyori)
2017-09-01 11:24:52
「いいよ」とヤドクガエルが言った時の気持ちを思うとせつない。
大声で泣いたシーンが絵になって頭に浮かんで切なさMAX。
さらにツノガエルを助けるシーンで涙腺崩壊ですよ〜。

心優しいヤドクガエルの金色の光が、誰かの護りの光となって
周りがたくさんの仲間であふれますように(祈)

続きをお待ちしてます。
素敵なお話、ありがとうございます!
biyori さん (てんちゃん)
2017-09-02 16:22:30

biyoriさん コメントありがとうございます。
これは その頃のSNS内の友人にある記事の「カエル」をもとに、何か書いてくださいと言われて、すごく忙しかった時期に、自分の子供をイメージして書いたものです。
後半を見たらわかるのですが、科学好きになってほしいと思って書きました。
忙しかったから、こちらも書けたのでは都思います。かなり暇な今は書けませんから。

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