空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

元徴用工判決の件 記事メモ

2018-11-01 18:20:22 | Weblog
日経新聞 日韓関係の根幹を揺るがす元徴用工判決 2018/10/31付
朝日新聞 (社説)徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を 2018年10月31日05時00分

植民地支配の過去を抱えながらも、日本と韓国は経済協力を含め多くの友好を育んできた。だが、そんな関係の根幹を揺るがしかねない判決を、韓国大法院(最高裁)が出した

元徴用工らへの補償問題は長年の懸案であり、これまでも韓国政府が一定の見解と対応をとってきた。
 盧武鉉(ノムヒョン)政権は05年、請求権協定当時の経済協力金に、補償が含まれるとの見解をまとめた。文在寅(ムンジェイン)・現大統領はこの時、大統領府高官として深くかかわった当事者だ。
 その見解を受けて韓国政府は国内法を整え、元徴用工らに補償をした。国内の事情によって国際協定をめぐる見解を変転させれば、国の整合性が問われ、信頼性も傷つきかねない


 ということで、まずは韓国の国内事情である、という理解。

負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている

 そっちで起こったことの始末の責任をコッチに飛ばしてくるんじゃないよ、と言いたくなるのではないか。いや属国相手ならそれでいいんだけど、そうではないわけであって。

産経新聞 日本政府、対韓国「戦略的放置」強める 徴用工判決、国際司法裁判所への提訴も視野 2018.10.30 19:27

 …まあその、疲れ果てるのも道理ではある。

中央日報 <韓国、徴用工判決>日本メディア、「韓国疲れ」主張しながら非難一色 2018年11月01日07時32分

「韓国では大統領が司法機関を含む人事や予算などの権限を一手に握り、『皇帝と国王の力を足したほどの権力」』(大統領府の勤務経験者)を持つ。半面、その政治が世論に迎合しやすい例えとして、『法の上に“国民情緒法”がある』ともいわれる。今回も、世論の支持を得るための政治ゲームに徴用工問題が巻き込まれたとも言える」(朝日新聞)

「両国関係の法的基盤を揺るがしかねない司法的判断が『積弊清算』という政治の流れの中で出てきた」(東京新聞)

31日、日本屈指の進歩指向メディア、朝日と東京新聞の1面トップに掲載された徴用裁判関連解説記事の一部だ。これまで韓国に対して相対的に友好的な論調だったメディアだが、批判隊列に合流した


 とまあ、朝日と東京新聞とが「韓国に対して相対的に友好的な論調だったメディア」と評価されている。そうした両メディアであってさえ、今回の「徴用工判決」は容認し得ないものであったわけである。

 当然のことで、国益云々は無視しても、これから自社のスポンサーになってくれるかもしれない大会社さんが排撃されかねないわけで:

日経新聞 徴用工訴訟、70社超が対象に 訴状未着の企業多く 2018/10/30 19:52

韓国の裁判所や市民団体の資料によると、徴用工関連では現在、15件の訴訟が提起されており、対象企業は70社を超える

 それでもなお従来どおりの報道をするなら―それこそイデオロギー優先である。

 普通のひとは、まず自分が食えるかどうか、安定的に食えるかどうかを問題にする―というのは私が常々基盤とする判定基準だが、まあこれもその一例ということになる。

 とある老害氏は「イデオロギーが大事だ」と断言することしきりであったが、その立場からすると、普段どおりに報道する読売・産経を賞賛するほかなくなるわけなのである。

 何にせよ、私としては

日本政府は、韓国大法院(最高裁に相当)の判決とは関係なく、韓国政府が「個人請求権はすでに解決済み」という従来の立場を維持しながら問題解決に直接取り組んでいくことを望んでいる。自民党は外交部会などの合同会議を31日午前に開き、65年請求権協定で紛争解決手続きに規定されている「仲裁委員会」などを立ち上げるよう政府に求める決議を近くまとめる方針だ。この会議では「韓国は国家としての体をなしていない」(中曽根弘文元外相)、「怒りを通り越してあきれる」(新藤義孝元総務相)などの厳しい批判も出てきたという

 こちらによった立場を取るだろう。なにしろスポンサーの問題もあるし―血税から出ているということもあるし、論理的な首尾一貫性を重んじる学者的立場からもそうなることだろう。古い協定の難点を見つけて改善を、というのは真っ当な方向ではあるんだが、全力で遡及させたりはなあ…という立場。

中央日報 「うちの祖父も徴用、訴訟を起こせばよいのか」…韓国政府に問い合わせ殺到 2018年11月01日07時57分

この日、強制徴用被害者を支援する行政安全部過去関連業務支援団には問い合わせの電話が続いた。「うちの祖父も被害者だが、いま訴訟を起こせば勝てるのか」というような問い合わせが多かった。裁判所の判決とは別に政府も強制徴用者を把握し、慰労金として遺族に2000万ウォン(約200万円)、負傷者には300万-2000万ウォンを支払った。現在まで政府慰労金の支払いが決定した事例は7万2000件

 軍事政権時代あたりに(スズメの涙程度で)支払ってしまえば、最も安く済んだものと思う。いや非人道的な言い方だとは思うけど。どっちみち、それは強いられた決断だった―ということで覆しOKになっちゃうのは、まあ今見るとおりだし。

 というか支払いの第一の主体は韓国政府だ、というのが普通の理解だろうし。『うちは発展途上国だからそんなにお金ないよぅ』となきつけばよかった時代はもはや遠くに去ったので、『賠償金、おかわり!』はむっちゃしづらくなったし。

 …まあ私は、友邦が豊かになったことを喜ぶ立場を採るのだが、私の下劣な根性は、”発展途上国”にそれなりのカネを投下して”過去の悪事をきちんと反省するとっても良い子の私たち”という気楽な政策が不可能になったことを知って、たしょうもにょっとする。

 …そこらへんの時代の変化が、金目の勘定に疎かったり、古すぎる世代の”(戦後日本的な)リベラル”には疎かったりするのではないかなあ。

朝日新聞 元徴用工の国内支援団体「残された時間ない 補償を」 2018年10月30日18時47分

原告である韓国人の元徴用工4人のうち、3人は亡くなっている。支援団体は、残された原告の李春植(イチュンシク)さんも90歳を超えている点を強調。「残された時間はない。企業側は直ちに補償してほしい」と訴え、それが日韓の長期的な信頼関係につながると訴えた

 この理屈を持ち出すにはタイミングが悪い。
 おなじ理屈で(、日本側としては超法規的に)対応した慰安婦合意が頓挫したのを見たばかりだ。「また、おなじことだろ?」といううんざり感を沸き立たせる。マズイ。

支援する会事務局次長の矢野秀喜さんは「『なぜ問題を蒸し返すのか』という日本国内の反応もあろうが、被害者不在のまま政府間で決められた協定を受け入れることは難しい。問題が先送りされてきた中で、ようやく被害者に光が当てられた」と

 慰安婦合意の際にも出た問題だ。一定の数の元慰安婦が(妥協して)「賠償」を手にしたら、その後に反合意の世論がもりあがり、実は当事者たちは合意したこともないししもしない、という前提が後付でつけられ、「賠償」は韓国政府が支払ったことにして…と合意自体をキャンセルされかけている。

 時間的限界が近づく中、「まあないよりはいいだろう」とせめてもの納得と妥協をし、次の一歩につなげるべきところ、あとづけで「アタマの下げ方が気に食わなかったんだ」とまるっと廃棄。これでは次の一歩を踏み出せない。

 その「アタマの下げ方」も、「満額回答」でなければならない―とか:

Hankyoreh ハンギョレ [社説]あまりに遅かった13年目の強制徴用判決 登録:2018-10-31 12:21 修正:2018-10-31 16:43

 1965年の大勢については「交渉の過程で12億2千万ドルを要求したのに3億ドル(無償分)しか受けられず、強制動員の慰謝料まで含まれたと見るのは難しいという判断も付け加えた」。

 とはいえ、「日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ」とはいえだ、一国の建国の物語を、はたして他国が採用することをどこまで当然のこととみなすべきか。

今回の判決は司法壟断による長い間の訴訟遅滞を解消し、日帝強制占領期(日本の植民地時代)の被害者を遅まきながら救済したという点で意味が大きい。韓日請求権協定の解釈を巡る韓日間の外交的紛争の可能性も高いだけに、政府は適切な対処をしなければならない

 …交渉の資源は「自分以外のだれか」の負担であるという見事な無責任野党根性である。

朝鮮日報 強制徴用:韓国の専門家「国際政治を考慮しない判決、同意しない」 国民大日本学科の李元徳教授が見た「強制徴用賠償判決」の意味と影響 2018/10/31 23:19

本紙は31日、国民大日本学科の李元徳(イ・ウォンドク)教授に今回の大法院判決の意味と影響について質問した。李教授は、韓日協定を研究する専門家で

 サンフランシスコ講和条約後の状況について「ここで、韓国が直面した現実を総体的に見なければならない。経済的に国民所得100ドルにもならない最貧国であった上、南北関係でも劣勢だった。韓国の立場としては、対日外交を突破口として経済と安全保障問題を解決するために、外交的選択をしたわけだ。協定が対日過去清算という問題を完璧に解決することが出来なかったということは、誰もが知っている。そうするしかない状況だった。判決を下した大法官(最高裁判事)らが当時の交渉に当たったとしても、それ以上の結果を導くことはできなかったはずだ

 とまあ、大変常識的な理解と思う。そのとき、そのときで最善と思われたところを実現してゆくわけであり、決定がなされてその決定に基づく状況が展開したあとで、「やっぱあのときのあれは気に食わないからパス」をするのは難がある。

 2ページ目

「大法官たちは天界にいる仙人の立場で見ているようだ。司法部のせいにはしたくない。彼らは法理の観点だけから判決を出したのだろう」、これは酷評というべきかと思う。

司法部の形式面だけからみれば、植民支配されていた35年の間に起きた全ての不法行為について損害賠償を請求できることになった。そうなった瞬間、歴史戦争が始まり、1965年体制の根幹が崩れることになる。行政部の責任が重くなった」

「これまで韓国政府は『道徳的優位に立って過去の清算を要求』するという基調を維持してきた。そのため物質的な賠償の代わりに心からの謝罪と反省を引き出すことに注力してきた。司法部の判決は、これまでの基調を真っ向から否定するものだ。日本の立場からすれば、戦後処理の体系に穴が開いたことになる

 …とまあ、嫌な言い方をすれば、韓国の日本に対する重要な「輸出品目」に「道徳的満足」があったわけなのだ。ただ、特に最近、道徳一元論に近づき、冷静な「貿易」関係を結べなくなってきたね―というわけなのだろう。ひどい纏め方だが。




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