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言語聴覚士の独り言

認知症を支える環境作り

私は訪問してリハビリを提供する仕事をしています。

アルツハイマー型認知症の高齢男性への介入が今日で終了となりました。

その方は自営業をされており、発症してからは息子さんに任せておられます。

発症前はそれはそれは厳しく、奥さんやスタッフに檄を飛ばしながら仕事をされていたそうです。

私が介入した時は、記憶は5分ともたず、幻覚もあり、歩く事もままならない状態でした。

今では1人で外を歩き、幻覚も無くなりました。

このように書くと私の影響で認知症がよくなったようですが、私が関わる事で認知症が良くなることはありません。(軽度認知症の場合はあり得ます)

私が毎週訪問して、状態を医師に報告して薬の調整が上手くいきました。

その効用で幻覚が落ち着き、睡眠の質が向上しました。

睡眠が取れると精神的に落ち着きが出てきました。

筋力低下に対してはリハビリを行いました。

毎週一緒に近所を歩き、沢山の思い出話を聞きました。

私が通い始めて2年が経ちました。認知症の重症度は年齢と共に進行していきます。

しかし、この方の生活は悪くなっているどころか一見良くなっているようでした。

実際に身体的には向上しています。

今日、リハビリの終了を迎えた要因は奥さんの一言から始まりました。

「私は酷い人間です。主人がこれ以上元気になってもらうと困ります」

詳しく伺うと、病前の厳しい人格に戻ってきたとのこと。

家の事や仕事の事に目を向けるようになり、昔のように奥さんや息子さんに注文を付けたり、注意をしたりするようになってきたと言うのです。

認知症ですから記憶力は低下しており、何度も何度も同じことにこだわるようになり、奥さんが精神的に参ってしまいました。

まず医師に相談すると新しい薬が開始となりました。

しかし、効用は乏しかったです。

私は奥さん、ケアマネジャーと相談して、認知症対応型のデイサービスへ通ってもらうことを提案しました。

更に奥さんに何かあったり、休息もできるようにショートステイも利用可能となるように動いていただきました。

歩行も可能となり、精神的にも落ち着いておられます。
また、仕事柄、他人に対してはニコニコされているのでデイサービスに通う事ができました。

奥さんに「なんで私が行かなくてはならないか!」とは言われますが

迎えにスタッフが来ると笑顔で車に乗ります。

不幸中の幸い、デイサービスに行った記憶も残りません。

利用中は問題なく過ごせているようです。

本人様の意思に沿うサポートが大切で、それができていないかもしれませんが、

奥さんと離れる時間がある事で、奥さんに余裕が生まれデイサービス以外の日を頑張る事ができます。

本人様も家や仕事から離れる事で不安や気になる事が減り精神的に安定します。

私個人的には会えなくなり寂しい気持ちもありますが、

デイサービスへ通う事ができるようになり、ひとまず私の役割は終えたように思います。

認知症の方のサポートは短期的に考えるのではなく長期的にステージで考えることが大切だと改めて実感しました。

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