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ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ベニスに死す

2017年10月03日 | 星5ツです篇


マーラー第5交響曲第4楽章アダージョが流れる中、主人公グスタフ・アッシェンバッハ(ダーク・ボガート)の乗った汽船が朝靄のたちこめるベネチアに入港する・・・。モネの「日の出の印象」を見ているかのようなこの冒頭の絵画的シーンによって、観客は美しくもどこか退廃的なヴィスコンティの世界に引きずり込まれていく。

トーマス・マンの原作では小説家だった主人公が、作家の意図を汲み、映画の中ではよりグスタフ・マーラーその人に近い作曲家兼指揮者に置き換えられている。写真をみると、映画の中のアッシェンバッハが、かなりマーラーのそっくりさんなのがわかる。

美を制御することを主張するアッシェンバッハではあったが、ベネチア(正確にはリド島)でポーランド人一家の少年タジオを見たとたん、その完全な美の虜となってしまう。ホテル内でタジオを見かける度にドギマギするアッシェンバッハは、映画を観ていると情けなくなるぐらい哀れでしかも醜い。

ヴィスコンティはその醜さに追い討ちをかけるように、老マエストロに死化粧を施す。リドの海辺にたたずむタジオを、浜辺から見つめるアッシェンバッハの額から白髪染が溶けて混ざった黒い汗が醜く滴り落ちる。逆光を浴びながらタジオが指差した先は、天国だったのか地獄だったのか。その答えは、美をひたすら追い求めて息絶えた主人公にしかわからない。

ベニスに死す
監督 ルキノ・ヴィスコンティ(1971年)
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