
ハリウッドを席巻中の数あるリーブートムービーの中でも飛び抜けて出来がいいのが本シリーズ。今回バトンタッチされた映画監督云々よりも、脚本を担当しているリック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァーの手腕によるところが大と思われる。
猿インフルが蔓延し人類が滅亡。前作で研究所から逃亡した猿軍団が特殊な手話でコミュニケーションをはかりながら、強力なリーダーシップを発揮するシーザー(アンディ・サーキス)の元、森の中で平和なコロニーを形成していたが、そこに免疫を備えた人類の生き残りが表れて…
そんな人類の生き残りと猿たちが戦争を回避し共存の可能性を探るという、まるで保護主義の台頭でギクシャクしだした世界情勢を反映しているかのような本作のテーマ。裏を返せば集団の中に戦争の原因が形成される課程が描かれている作品といってもいいだろう。
生物学者ジャレド・ダイヤモンド博士によれば、ホモ・サピエンスとチンパンジーの遺伝子相違は全体のわずか1.6%。歴史的に繰り返される集団虐殺の原因も、動物から人間に移行する段階で祖先から受け継いだ本能にあるという説を唱えているユダヤ人学者だ。
人間に愛されて幼少を過ごしたシーザーと、その人間たちに研究材料として虐待を受け続けたコパ。シーザーとマルコム(ジェイソン・クラーク)がお互い信頼関係を築き手探りで何とか共存の道を探ろうとするものの、コパの裏切りによって集団の中に燻っていた怨嗟の炎が一気に燃え広がってしまう。
異説を唱える学者も多いこのダイヤモンド説に全面的に従うわけでもないが、信頼とか友情、愛情というプラス感情よりも、不信や疑惑、憎悪といった生命の危機に直結するマイナス感情の方がより本能に近い強いエモーションであることをまざまざと見せつけられた気がする1本である。
猿の惑星:新世紀(ライジング)
監督 マット・リーブス(2014年)
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