「しかし、ツァーリ」 「スズキくん」 「失礼しました、閣下。ここまで閣下がグローバリストたちに嫌われるのは一体なぜなのでしょう」 「エリツィン時代に国際資本家たちと癒着していたオリガルヒたちの資産を凍結したのは、この私だからね。ある意味、ユ○ヤ人の金融支配にこう然と歯向かっているのは、世界広しといえどもわがロシアだけなのだよ」 「トランプや日本の安倍元総理は、どうだったのでしょう」 「ナショナリズ . . . 本文を読む
「ツァーリ、ここからはオフレコでお聴きしたいのですが」「スズキくん、その呼び方をやめて欲しいと言ったはずだろう」「申し訳ございません、では閣下」「これまでも十分にオフレコ事項だったはずだが」「いいえ、とんでもございません。こらからが本番でございます。現在ウクライナにぞくぞくと集結しつつある“ネオナチ”についてなんですが....」「........」「ウクライナ国内にその数40と伝えられるネオナチ組 . . . 本文を読む
「ツァーリ、ご無沙汰しております、その節は」「スズキくん、その呼び方はやめてくれないかな。側近が誤解するだろう」
「では、閣下。率直に申し上げて今回の侵攻目的は何だったのでしょう?」
「君はどう思う?」
「少なくとも、西側のマスゴミが語っている閣下のロマン主義的懐古趣味ではないでしょう。目的はズバリ“EU解体”にあるのでは?」
「それを言い当てたのは君がは . . . 本文を読む
AIは人間の心を理解できるのだろうか。カズオイシグロの考えではあくまでもNOだ。が、あえてAIに人間らしい感情を持たせて書いてみた小説が本作だという。AI にはまだ人間が感動したり共感する物語が書けていないから、と作家は語っていた。しかし作品の受け手である読者の方が、フィクションや物語を求めなくなっている現代において、そんな方便がいつまでも続くとも作家自身思ってもいないようである。
パンデミック . . . 本文を読む
以前アルプス山中でハリウッド俳優のジェームス・クロムウェル夫妻にばったり遭遇し、「きみはクライマーなの?」と聞かれたことがある。その時は笑ってごまかしたことを覚えている。その後なんとなく山からは遠ざかってしまったのだが、本書を読んで我ながらその理由がわかったような気がするのだ。主人公の僕、その父親、そして根っからの山男ブルーノが山を通じて知り合い、絆を深めやがて別れを経験するという、 . . . 本文を読む
ねぇアリーチェ、私のこと何でお兄ちゃんに伝えてくれなかったの?ミケーレが見つかったってなんで言ってくれなかったの?お兄ちゃん絶対喜んだはずなのに。わざわざ遠いところからよびよせといて「あなたには関係のないこと」だなんて、冷たすぎるよね、スキー場の雪みたいに。私のこと知らせてくれればお兄ちゃんとよりを戻せたかもしれないのに、アリーチェはきっとそんなことしたくなかったのね。 . . . 本文を読む
ご両親とも小説家という家に生まれたミランダ・ジュライは、映画監督でもあるマルチ・アーティスト。彼女の処女作『君とボクの虹の世界』を見たことがあるのだが、ミランダ自身が演じる不思議チャンの妄想がキュートなとってもファンタスティックな作品だったように記憶している。
そんな彼女の処女短編集はといえば、ノンケから百合そして熟年ゲイの世界まで、妄想の範疇を飛び越えた、めくるめく“性”の世界が描かれている。 . . . 本文を読む
人はとかく権威には弱い生き物だ。かくいう私も、本書が英国ブッカー賞にかがやいていなければ、おそらく手にとって読むことはなかっただろう。社会のタブーを好んで題材に取り上げてきたイアン・マキューアンだが、本小説はそれにプラス緻密に張り巡らした伏線&明快なオチが魅力の一つになっている。本書執筆中筆者が好んで読んだというジェーン・オースティンというよりも、コナン・ドイル . . . 本文を読む
子供時代親に愛してもらえなかった全ての大人たちに贈る珠玉の短編集。内容が重なっているストーリーがいくつも登場することからも、作者ルシア・ベルリンが実際に体験したほぼ実話から編まれた短編集であることがうかがえる。背骨矯正具をはめられたのっぽのひねくれ少女は、鉱山技師だった父親の都合で、アメリカ国内の鉱山町、エルパソ、ニューメキシコ、チリと住居を転々とさせられる。貧民街からハイソなお嬢様 . . . 本文を読む
渋谷スクランブル交差点を見下ろすスターバックスでこの本を読んでいると、一人の男がボクに話しかけてきた。「お兄さん、奴さんに興味あるのかい?」「えっ?」「えっ?てノイマンだよノイマン。確か本名ナイマン・ヤーノシュとか言ったっけか。懐かしいなぁ」「マンハッタン計画にゲーム理論、天気予報にノイマン・アーキテクチャー…まさに天才ですよね。この本の受け売りですけど」男は一瞬てれた . . . 本文を読む
人類を滅ぼしたのは核戦争でも、ウィルスでも、隕石でもなかった。本格的な氷河期の到来を前に、人類はあっという間に地球から姿を消したのである。ある一人のロマンチックな科学者がその死の直前に今までの人類の偉業を全て記録したマイクロチップを発明。ノア・プロジェクトと呼ばれた地球規模の計画によって、そのマイクロチップが比較的長生きしそうな動物たちに次々と移植されたのである。ゾウガメやクラゲにも . . . 本文を読む
ノーベル賞受賞物理学者リチャード・P・ファインマンの自伝エッセイ「ご冗談でしょう、ファインマンさん」を以前手にとったことがあるのだが、これがまったくの期待外れ。途中で読むのをやめたくらいだ。しかし同じノーベル賞受賞博士キャリー・マリス直筆による本書は読みごたえ十分。しかも翻訳者があの文系生物学者?福岡伸一 ときたら、これが面白くならないわけがないのである。
コロナ感染発見機として現 . . . 本文を読む
同じユダヤ系の生物学者ジャレド・ダイヤモンドに比べると、経済思想家ダニエル・コーエンの主張には説得力がある。古代ローマからリーマン・ショックまで人類史を俯瞰しているという点では共通しているが、マルサスからトマ・ピケティまで全ての主張の裏付けともいえる出典がちゃんと明らかにされているからだろう。都合のいいデータと単なる思いつき程度のアイデアを各 . . . 本文を読む
〈Aiは将来労働者にf2f(face to face)=どうでもいい仕事しか残さない〉。直近のデヴィッド・グレーバー著『ブルシット・ジョブ』でも指摘されているようにそれは既に現実化しており、くしくもマルクスが『資本論』の中で予言した“労働内容から切り離された仕事”だらけの世の中になりつつある(かくいう私もブルシット・レイバーの一 . . . 本文を読む
第二次大戦中『死の鉄路』と呼ばれた泰緬鉄道建設に従事させられたオーストラリア人捕虜たちの物語。その生き残りである父親の証言を元に息子である筆者が創作したという。生々しい実体験から生まれたこの小説を読むと、同じ鉄道のクワイ河鉄橋を舞台にした『戦場にかける橋』が“興味本意の娯楽小説”と揶揄された理由がよくわかるのである。本小説には、軍医として従軍した主人公ドリゴ・エヴァンスをはじめ多くの . . . 本文を読む