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音楽を他人に語る時の視点

2004-09-22 22:22:53 | 音楽一般
音楽を言葉で人に伝える時に、大事だと思っている事がひとつある。
基本的に音楽を言葉で伝えるってのは無理なんですが、それでもこれは重要。
音楽を聴くに当たっての基本的なスタンスのお話。
今日はそれを書いてみようと思う。

先日、このブログをチョクチョク覗いてくださっている方と、Paco De Lucia(パコ・デ・ルシア、g)とAl Di Meola(アル・ディ・メオラ、g)、そしてJohn Maclaughlin(ジョン・マクラフリン、g)というビッグネーム3人で組んだスーパーギタートリオのアルバムで、どう聴いても1人だけビビリまくってるヤツがいる!!なんて話をしたんですね。ビビルというのは、ギター音がビビビビーって割れる「ビビリ音」を出しているという事。
その方に「犯人はMaclaughlinです」って教えてもらい、あらためて3者のリーダーアルバムを聴きなおしてなるほどと思う。
「犯人はこいつだ!」ってビッグネームの演奏を否定するような答えが帰ってきて、失礼かもしれないけど「ああ、この人演奏をきちんと聴いているんだなぁ」って思った。
正直僕は嬉しかった。
それでいいよね。それでいい。
ビッグネームであろうとなかろうとまずい演奏はまずいんだ。
そこはきちんと自分の耳で聴いて判断しないと、なに聴いても良いと思う「イエスマンリスナー」になっちまう。
僕はそれだけはなりたくない。
マニアとかオタクって呼ばれたほうがまだましだ。

で、最近その方と「音楽を言葉で伝えるにはどうしたらいいか」といった話しを頻々としているのです。
以前にも書いたけど、これは難しい事だよね。
不可能な事かもしれない。

「演奏をする」という事を少しでもかじった人って言うのは「演奏法から音楽を解そうとする」という落とし穴に陥りがちだと思う。
僕にもその傾向はあります。
演奏法上で良しとされているか否か、で音楽の良し悪しを判断しようとするのね。
正統な(クラシックを主とする)演奏法では良しとされていない音を好んで用いるような音楽はいくらでもあるし「上手い楽器の使い手」が必ずしも良い演奏をするとは限らない。(大抵は上手い楽器の使い手は良い演奏をしますが)
音楽を言葉で人に伝える時に、最終的に基本となる視点っていうのは「音を聴いた印象から音楽を解そうとする」だと思います。

上記のスーパーギタートリオの件ですが、僕が最初に聴いた時の印象は「凄いけどなんか1人だけ汚い音出してるやつがいる」だったんです。「音割れてるよね」って。
そのときはまだビビリ音という認識はなく、何故そういう汚い音がでてくるのか、その理由もわからなかった。
ギターの演奏法や構造上の特質なんてまったく知らなかったから(笑)。
あれが、押弦とピッキングの微妙なずれによって弦が暴れるから音が割れる現象だ、というのを知ったのはあとから興味を持って勉強したからなんですね。
例えばピアノでも、Oscar PetersonとKeith Jarrettを聴き比べてOscar Petersonの音のほうがどちらかというと無造作な音がすると感じたのね。で、それがなんでなのか興味を持って映像で見比べてみたりしたんですよ。
Petersonは手首から振り下ろすようにバシャッと弾いてる、Keithは手首は比較的固定して指先で引っ掛けるように弾いているというのがわかって、音の違いの原因はここにあるんだなと。(どちらのピアニストが優れているか、という話ではありませんよ)
どうしてこんなに弾き方の違いがでてくるのか・・・・・それは民俗による骨格の違いだったり育った環境だったり色々な要因があるんだけど・・・・・。

ちょっと横道にそれたかな。
音楽を聴く上で、演奏法から音楽を解そうとするのは基本的にあとにすべきだと思う。
まず「音を聴いた印象」がある。
どんな楽器を聴く時でもそう。
「綺麗な音だな」「硬い音だな」「柔らかい音だな」「暖かい音だな」「音割れてるよね」「音程外れてない?」とか、「綺麗なメロディだな」「楽しいリズムだな」「心地良い和音の響きだな」とかね。
音を聴いてどう感じるか、この一点から音楽を解するべき。
で、そのあとの野次馬的な興味で、「この楽器からなんでこんな音が出るんだろう?」とか「こういう音はこの楽器の奏法上は良しとされているのかな?、それとも本来はダメなの?」とか、調べてみたりするわけです。
基本的に「知識はあとにすべき」なのね。
この観点は演奏者としての僕が基本的に歌うたいで、楽器は興味本位や楽譜を理解するためにチョコッといじった程度であるというところからきているのかもしれません。

何も知らない人に音楽を言葉で伝えようとする時は、この「音だけ」の視点をきちんと守った上で伝えないと、楽器をいじる人、もしくは楽器の知識のある人以外には、大抵伝わらない。大抵というより絶対、かな。
音楽の素晴らしさを伝える時は「音楽の美しさ」「音楽の激しさ」「音楽の楽しさ」「音楽のせつなさ」、そういったものを言葉にして伝えてあげるのが基本。
自己満足に陥っちゃダメだ。

うわ、今日はまとまりのない文章だなぁ。横道に脱線しまくってるし・・・・・まぁ今日の投稿は自分への戒めのつもりで書きました。
偉そうに語ってごめんなさい(苦笑)。

本日の安眠盤、Paul Desmond(ポール・デスモンド、as)の「Bridge Over Troubled Water」
ではでは。

3 コメント

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よくわかりました。 (ヨックタイ)
2004-09-23 00:26:19
わざわざ取り上げて頂いてありがとうございます。こんなふうに褒められると気恥ずかしいですね。

クラシックを人前で演奏する時には、あらかじめどんな気持ちを伝えたいかを考えて、表現を作っていくようにしていました。聞き手はその逆なんですよね。どんなメッセージを受け取ったか、ノイズがメッセージ伝達の邪魔をしていないか、まずはそこだと思いました。TAROさんのお話しにとても納得しました。試してみます。
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いえ、こちらこそ (TARO)
2004-09-23 23:11:16
毎回覗いていただいて感謝しています。



ジャズの同好の士と話していると、なんというか「こいつなに言ってんだ?、さっぱりわからん」とか「ああ、ダメだこりゃ、話通じないや」って事、ありません?。

バババーッと語っちゃうと相手にドン引きされちゃったり、逆にガーっと語られて全然理解できなかったり・・・・・。

だからこの前のスーパーギタートリオの件は僕はホント嬉しかったんですよ。



演奏の知識から音楽を見るべきじゃないと書きましたが、ビビリ音の件を見てもわかるとおり、お互いの知識が届く範囲で話しをする分には通じるんですよね。

僕とヨックタイさんの会話において、接点多く話をしていけるといいですね。
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ジャズに限らず (ヨックタイ)
2004-09-24 01:00:35
音楽の話は感性の違いや、専門とする楽器の違いで、会話がかみ合わなくなりがちですね。



接点多く…そうですね。感覚をうまく表現されるTAROさんとの会話は、楽しいですし、心理家の卵としても学ぶところが多いです。
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