蒲公英の絮

四季折々の花や空の写真と、自己流俳句で日々を綴ります。

白い百日紅

2022-07-06 22:37:00 | 日記













       一歩づつ踏みしむる坂金糸梅























       姫女苑訪うものは吾と蝶



















       忘れたき忘れえぬ日の百日紅
















       夕立やり過ごす「百日白」の下




急に見たくなった。
何故だか、不意に浮かんだあの日の公園の百日紅。

二年前の夏。
五年生だった孫娘。夏休みが明けた翌日か翌々日の朝、学校へ行きたくないと言い、着替えもせず断固として動かなかった…。

その、約一年前から、そんな登校拒否が始まった孫。

長い長い苦悩の始まり、原因、経過などなどは、ここでは省略するが。

実際は、登校しない日は一度もなく、ただ授業に出られない。教室に入るのが怖くて出来ない。
つまり保健室登校。

両親も、じじばばも、青天の霹靂だった。
一体何故?何が起きたか、どうしてこの子がこんな事に…。

学校が嫌、そして家にいるのはなお苦痛。
闇の中を彷徨うこの子が、最終的に出した答えは、ばあばの家に住む。だった。ばあばの家からなら、登校する。ばあばの家なら、夜も安心して眠れるから。

両親は、ことに父親は納得しなかった。妻の実家に迷惑などかけられない、これは自分たち夫婦、子の親の責務。断じて賛成できない。

その本心は、この子は絶対に自分のそばに、懐に居させたい。
この子と離れて暮らすなんてあり得ない。この子の理解者はこの世で自分一人。
明白だった。だからこそ子は離れたがっていたのに。
深過ぎる愛情は、この子の闇の一因だった。

記さないと言って、ここまで書いてしまったが…。

ばあばの家に寝泊まりをする事、一年半。
だが週に1、2回は家に帰っていた。

その日の朝9時すぎだったろうか、父親から電話が入った。
⚪︎⚪︎が、学校へ行かないと言い、動きません。自分も、仕事が間に合わないので、そろそろ出かけたいのですが。
学校へ電話して、欠席する旨伝えたら、担任が来るそうです。
だけど⚪︎⚪︎は、嫌だ。それならばあばんちに行く、ときかないのです。お義母さん、お願いできますか?

一も二もなく、すぐに行くから、と、身支度もそこそこに孫の家へとんでいった。

父親は出かけた後。孫は虚な顔で、それでも、きちんと登校の準備はしている。

「ばあば、給食前には学校へ行くつもり。だけど、今すぐは無理。」
いいよ。ばあばんちに来る?それともドライブしようか?

すると、行きたい所がある、と言う。
助手席の孫に道案内され、着いた所は、小高い丘のそんなには広くない公園。

小さい頃、と言っても三年ほど前のようだが、父親に連れられ、妹と三人で来て遊んだ、と言う。
雰囲気や、周りの景色が好きなんだと、少し笑う。

ふた組ほどの、幼児と母親と遊ぶだけで、静かな公園。遊具でひとしきり遊び、周りを散策する。
咲き終わっていた百日紅の木が数本ある、公園の脇道。
まだ、身長もばあばを越してはいなかったその頃。
この子の苦悩が、痛いほどわかる。小さな胸に抱えきれない不安に日々苛まれ…不憫でならなかった。解決策は見いだせないまま。
ただ、とにかくこの子の側で、この子の思いや言いたい事を、全て聞く。それを心掛けた。

大丈夫、いつかきっとこの闇から抜け出せる。
元の明るい⚪︎⚪︎に戻る日が来る。

公園に小一時間居ただろうか、学校へ行くね、と言う孫。

学校へと送る道中は、何を話したかは覚えていない。
だけど、表情は随分柔らかくなっていた。

今現在、中学生になり、朝は自然に早く起きれるようになったようだ。
完全に回復した、とは言えないのかもしれないけど、あの頃のあの子とは思えない快活な学校生活。学校が、勉強が楽しい。という。

土日は、小学校の友達と何かしら約束していて、遊んだり、でかけたり。
日曜の夜はやはり、明日が不安と、毎回LINEしてくるが、月曜の朝はきっちり起きて、登校。夕方夕飯を届けるときには、何と晴れやかな顔。

だから、憂う事などない、だけど何故だかあの場所へ行ってみたくなった。

誰もいない公園。
初めて見る金糸梅。
姫女苑も沢山咲いている。
百日紅は、白い百日紅だった。
調べると確かにある。
漢字にすると「百日白」
写メを撮っていると、急に雨が降り出した。
白い百日紅、百日白の下で雨宿り。

ここに、もう思い出は置いて行こう。きっと雨が洗い流してくれる。


夕方、いつものように夕飯を届けに行く。
孫娘は、完成したイラストを見せてくれ、おやつのエクレアをパクつく。

明日は何がいい?
に、なんでも!と言う姉妹。ありがとう!と大きな声で送ってくれた。










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4 コメント

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Unknown (sancha)
2022-07-07 05:10:30
おはようございます。

朝から涙がにじんでしまいました。。

大切な思い出を書いて読ませていただき、
光栄です。

ありがとうございます。m(_ _)m
返信する
Unknown (Unknown)
2022-07-07 07:29:40
sanchaさん、おはようございます。

お聞き苦しい、楽しくもない話を
ダラダラ書いてしまいましたが、
最後まで読んでいただきありがとう
ございました。

こちらこそ光栄です。m(_ _)m

過去を捨てて来ました。多分そうしたかったん
ですね。いいタイミングで夕立もありました^^;

今日は朝から、お日様がギラギラです😵
猛暑の一日になりそう💦
sanchaさんのところは如何でしょう。
熱中症に気をつけて、楽しい一日を(^-^)v✨
返信する
Unknown (リタイアマン)
2022-07-07 20:27:24
こんばんは。
登校拒否などいろいろ
あったんですね。
いつも楽しいブログが多いけれど
そういった過去もあったようです。
でも、誰にでも忘れてしまいたい過去もありますね。
私なんか山ほどあります。
みんなどこかに捨ててしまいたい
けれど。(笑)
返信する
Unknown (Unknown)
2022-07-07 21:38:57
リタイアマンさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

いろいろありましたね。
誰もが、大なり小なり悩みを抱えて
生きているんだとおもいます。

孫は、それでも六年間で、欠席したのは
1年か2年の時に一日だけ。発熱で
本人は登校すると言ったのですが、学校側に
来ちゃ駄目と、言われ仕方なく休みました。
とても悔しそうでした。(笑)

保健室登校は、結果的に良い人生経験だった
と思います。教室以外の、友だちとの深い絆や
良き先生にも恵まれました。
ラッキーな出会い、選択だったと今では
思います。皆さんに感謝です。

今夜は七夕でしたね。曇天のこちら、空は
何も見えません。そちらは如何でしょう。
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