いつもこの季節になると本棚から取り出して読み返してしまうのがこの「ヤマタイカ」。そのたびにスケールの大きさ、大胆な構成、ストーリー展開、登場人物、知識、そして圧倒的な「画力」に引き込まれてしまいます。
卑弥呼、邪馬台国、神話といった古代史の謎をめぐる物語がしだいに発展し、仏教の四天王たちと対峙しながら東大寺大仏殿での壮絶な戦いに致る第1部「東遷編」。
超巨大銅鐸「オモイカネ」による戦艦大和復活、日本各地の火山の噴火、大和とアメリカ軍の対決、日本中の民衆を巻き込みながらの「火の民族」の「マツリ」が燃え上がるまでの怒涛の第2部「東征編」。
こうして書くと荒唐無稽に思えるかもしれませんが、むしろリアルにさえ感じるのは、諸学説をもとにした綿密な取材と作画のなせるわざでしょう(これは星野さんの他の作品にも言えることですが)。
伝奇、古代史、SF、そして邪馬台国好きの方には一読をお勧めします。
なお邪馬台国、卑弥呼などについてはすでに江戸時代から多くの学説があり、新たな発掘調査や発見も報じられているので、興味のある方はこちらをご覧ください
→http://yamatai.cside.com/index.htm
さて今回はストーリーや登場人物ではなく、自分が特に好きな場面(画)についていくつか紹介しておきます。
まずは随所に登場する「火山噴火」。これが素晴らしい。
自分は中学生のころ浅間山の麓の町で実際に轟音と立ち上る噴火を経験しました。ですからこれらの噴火シーンには血が騒ぎます(まさに火の民族?)
続いては第1部のクライマックス、東大寺での卑弥呼(神子)と広目の二人による空中戦の場面。
あの世界遺産東大寺の上空で卑弥呼と広目(天)がサイキックバトルをやるわけです。しかもこのあと大仏が動き出し東大寺は火に包まれて崩れ落ちるというとんでもない場面が。。。やはりこの卓越した画力あってでしょう。大友克洋氏の「童夢」に出てくる高層住宅での空中戦を思い出します。
そして物語の最後、東京湾ですべてのエネルギーが放出される場面。
このあと数ページに渡って東京が崩壊していく様が描かれるのですが、初めて読んだ時はこのページでしばらく手が止まって唸ってしまいました(この辺も大友さんのAKIRAを思わせますが)。
とにかく全編通して星野さんのこの作品にかける思いが伝わってくる傑作です。この作品の前身となる「ヤマトの火」(未完)も最近復刻されていますので合わせて読んでみるのもいいでしょう。
「ヤマタイカ」の流れをひく「宗像教授伝奇考」や星野さんのSFもの、恐竜ものも大好きなのですが、それはまたのちほど。