サクソフォン奏者の瀬川香織さんの招待で「テアトルサックス旗揚げ公演」というちょっと変わったタイトルの演奏会に行ってきました。
「テアトルサックス」はサクソフォン奏者の中村均一氏の門下生が集まって昨年結成された団体で、「子供から大人まで誰もが気軽に足を運べる劇場を、サクソフォンの音色で作り上げる」というものです。
前半は「一晩でサックスの歴史がわかる!?アドルフ・サックス物語」という朗読つきのステージ。アドルフの生い立ちからの一生を語りを挟みながらサクソフォンの名曲で紹介していくという内容で、アドルフが小さい頃父親の楽器工房で興味からしょっちゅう怪我をしたり薬品を飲んでしまって大騒ぎだった話とか、なかなか面白く聴けました。やはり天才というのは幼少期から違うんですね。
ステージ最後の曲はサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」のフィナーレでしたが、ソプラニーノからバスまで12本によるサックスの大合奏は壮大でした。
◆アドルフ・サックスは今年生誕200年
後半はまずサックス八重奏と四重奏の2曲が演奏されました。どちらも初めて聴いた曲ですが、サックスの音色や機動性を活かしたもので、アドルフサックスが作ったこの楽器がやはりよく考えられ完成度の高いものだということがわかります。
そして最後はこの団体のメンバーの師匠である中村均一氏をソリストに迎えての「ニューヨークからの4つの絵」。
中村均一氏の生演奏を聴くのは10年ぶりくらいで楽しみにしていました。初めて氏の甘く柔らかい音色を聴いたときは「なんでこんないい音がするんだ!」驚いたものです。
さて、ここまでもプロの皆さんの素晴らしい演奏で十分にサックスの響きを堪能したのですが、中村均一氏のソロは圧巻でした。伴奏は門下生全員10人以上による同じサックスによる伴奏(さらにドラムとピアノが加わる)なのですが、ソロがくっきりと浮かび上がってきます。
そして楽章ごとに順番にソプラノ→アルト→テナー→ソプラノと楽器を持ち替えていくのですがそれぞれの楽器の音色が際立っており、弱音から最強音までダイナミクスも素晴らしく広い。何よりメロディーの歌い方と官能的なまでの自由自在なヴィブラート(いやらしさ寸前 笑)が感動モノでした!知人もバックで演奏していたのですが「中村先生が吹き始めたら泣きそうになってしまった」そうです。
この演奏を聴けただけでも幸せでしたが、拍手に答えてのパフォーマンスを入れたミュージカル風アンコールがまたとても楽しく、いいコンサートでした。ぜひまた続きをやってもらいたいものです。
(2014.03.12)