玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

鳥類調査 2021年3月中旬

2021-03-14 23:35:52 | 調査報告

玉川上水の鳥類調査報告―2021年3月中旬―

 

大塚惠子・大出水幹男・尾川直子・黒木由里子・

鈴木浩克・高槻成紀・高橋 健・水口和恵

 

 玉川上水は東京を流れる貴重な緑地だが、植生の管理や元々の樹林の状態などにより、場所によって植生が大きく違う。この調査は玉川上水の、このような植生管理の違いが鳥類に影響を与えているかどうかを明らかにすることを目的とした。

選んだ4カ所は東から、杉並区、三鷹市、小金井市、小平市である。杉並は最も都心寄りであり、上水の緑地の幅は狭いが、状態の良い林も残っている。三鷹には井の頭公園があり野鳥保護の林もあるため、緑地の幅が最も広く、常緑樹林もある。小金井はサクラだけを残す管理をしているため、開けた場所が多い。小平には雑木林のような良い状態の林が残されており、緑地の幅も広い(図1)。

図1 鳥類調査をした玉川上水4カ所の景観

 

 調査は2021年3月14日と15日に行い、杉並は大塚、黒木、高橋、三鷹は大塚、小金井は鈴木、小平は大出水、尾川、高槻、水口が担当した。それぞれの場所で1.6 kmの調査範囲をとってゆっくり歩きながら発見したり、声を確認した鳥類の種類と羽数を記録した。玉川上水とその両側の緑道で植生が連続する部分を「内側」とし、それより外側の家屋や道路などがあって緑地が不連続になる部分の概ね30 mほどに鳥類がいたら「外側」として記録した。調査時間は午前7時から1時間から1時間半とした。

 

結果

<種数、羽数、多様度>

 種数は小金井が最少の12種、杉並と小平がこれに次ぎ、三鷹が21種と最多であった(図2)。

図2 出現種数

 

 合計羽数は三鷹と小平が150前後と非常に多く、小金井はわずか37羽であった(図3)。

 

図3 合計羽数の比較

 

 これらをもとに多様度指数を算出したところ、三鷹が最大で、小金井が最小であった(図4)。

図4 多様度指数の比較

 

<代表的な鳥類>

 4カ所の合計羽数が10羽以上であった鳥類について、場所の比較をすると、森林にいる鳥類はシジュウカラ、ヤマガラなどのカラ類が小平と三鷹で多く、小金井では非常に少なかった(図5a)。メジロ、ウグイスのような藪や常緑樹を好む鳥類は三鷹で多かった・

図5a 代表的な森林生の鳥類の羽数の場所比較

 

 オープンな環境にもいる鳥類では、ヒヨドリ、ハシブトガラス、ハシボソガラスなどは小金井で目立って少なかったが、ムクドリは小金井で多かった。杉並ではヒヨドリ、ハシブトガラスは三鷹、小平よりは少なかったが、ドバトとスズメは他の場所より多かった(図5b)。

図5b 代表的なオープンな環境にもいる鳥類の羽数の場所比較

 

<生息地の状態と鳥類>

 記録された鳥類を森林にすむ種、オープンな場所にもいる種水辺にいる種に分けすると、杉並と小金井ではオープンな場所にいる種が多く、三鷹と小平ではそれぞれが半々であった(図6)。水鳥は多くないが、小平だけがやや多かった。

図6 森林にすむ鳥(林)とオープンにもいる鳥の割合

 

 玉川上水の緑地「内部」にいた鳥類の割合(%)をみると小平で最も大きく、小金井が目立って小さかった(図7)。

図7 玉川上水「内部」にいた鳥類の割合

 

<まとめ>

 1月に行った調査でも基本的に同様の結果が得られたが、4カ所のうち小金井が種数、羽数、多様度指数がもっとも小さかった。また、「内部」にいる鳥の割合も最小であった。このことは小金井地区でサクラだけを残し、他の樹木を伐採するために、森林にすむ鳥類が少なくなったためと考えられる。それだけでなく、オープンな場所を好む鳥類も少なく、これらの鳥類にとってさえ、樹木も下草もない状態は退避場所も乏しい、すみにくいことを示していた。このように小金井におけるサクラを優先し、他の植物を皆伐する植生管理は鳥類の多様性にマイナスであることを示していた。このことを確認するために今後も調査を継続したい。

なお今回の調査で、三鷹ではオオタカ、小平ではカワセミなど生態系の上位種が、また小金井では侵略的外来種のガビチョウが確認された。

 

付図 撮影された鳥類(大塚惠子・豊口信行撮影)

 

付表 4カ所における鳥類記録羽数。F:森林、O:オープン、W:水環境

 

 

 

 

 


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