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Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

来日中の呉儀副首相、急遽帰国(3)

2005-05-25 07:29:15 | 国際
【毎日の記事で追う日中関係 2005年5月24日】
  1. 中国: 呉儀副首相、モンゴルに到着
        (2005年5月24日午後)
  2. 小泉首相: 話せば分かるのに 中国副首相の会談キャンセル
        (2005年5月24日午後)
  3. 中国副首相帰国: 小泉首相の参拝継続表明で 外務省局長
        (2005年5月24日21時33分)
  4. 中国副首相帰国: 関係抜本改善へ、中国側の「最後通告」
        (2005年5月24日22時09分)
  5. 中国会談キャンセル: 「内政干渉」引き金に
        (2005年5月24日23時37分)
  6. 《朝日》呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視
        (2005年05月25日12時10分)

毎日新聞
中国: 呉儀副首相、モンゴルに到着
2005年5月24日 東京夕刊

 【ウランバートル大谷麻由美】中国の呉儀副首相は24日正午すぎ(日本時間同)、モンゴル公式訪問のため、ウランバートル空港に特別機で到着した。モンゴル訪問は当初の予定どおり行うことが確認された。


毎日新聞
小泉首相: 話せば分かるのに 中国副首相の会談キャンセル
2005年5月24日 20時31分

 小泉純一郎首相は24日夕、中国の呉儀副首相が首相との会談をキャンセルした問題で、中国側が中止の理由を首相の靖国神社参拝など歴史問題だとの見解を示したことについて、「会談すればいいのにね。話せば分かるじゃない」と記者団に語った。「原因は日本側にあるのか」との質問に対しては「私はお会いすると言っている。私がキャンセルしたわけではないですからね。キャンセルした方に聞いてください」と反発した。

 一方、中国側の対応が靖国神社参拝に対する姿勢に与える影響については、首相は「私は適切に判断するつもりだ」と述べ、影響を受けることはないと強調した。


毎日新聞
中国副首相帰国: 小泉首相の参拝継続表明で 外務省局長
2005年5月24日 21時33分

 【北京・飯田和郎】 中国外務省の孔泉報道局長は24日の定例会見で、呉儀副首相が23日に小泉純一郎首相との会談を中止し、帰国したことについて「緊急の公務」としていた説明を撤回し、小泉首相が靖国神社参拝継続の意向を表明したためだとの見解を初めて明確に示した。歴史問題を最優先にした対応ともいえ、今後、中国が小泉政権批判を強める可能性が高い。日本が目指す国連安全保障理事会の常任理事国入りや、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の再開にも影響を与えそうだ。

 孔局長は呉副首相の帰国について「日本の指導者からA級戦犯をまつった靖国神社問題で誤った言論が相次いだ。会談に必要な雰囲気と条件がなくなったためだ」と述べ、会談のキャンセルが対抗措置であることを事実上、認めた。

 呉副首相は愛知万博の中国関連行事出席などのため17日から8日間の予定で訪日した。孔局長は会見で「17日以降の日本の指導者の靖国神社問題の発言に関する報道を読めば、(会談キャンセルの理由が)理解できるはずだ」と語った。

 小泉首相は16日の衆院予算委と20日の参院予算委で、自身の靖国神社参拝について「他国が干渉する問題ではない」「いつ行くかは適切に判断する」「大局的見地に立って参拝している」など参拝継続と受け取れる発言を繰り返した。中国側はこうした発言に強い不信感を抱き、呉副首相を帰国させる決断をしたとみられる。

 孔局長はまた、「私自身は『緊急の公務』とは言っていない。23日夜の私の談話が(中国政府の)公式見解だ」と説明した。孔局長は同談話で「遺憾なことに呉副首相の訪日期間中、日本の指導者が靖国神社参拝問題について中日関係改善に不利益な言論を立て続けに表明した。中国側は極めて不満である」と語っていた。

 中国からの靖国参拝中止要求に内政干渉との反発が出ていることについて、孔局長は「日本は戦後、平和の道を歩むと繰り返してきたのに、そのような意見が出ることには憤りを覚える」と反発、内政干渉に当たらないとの立場を示した。

 さらに、孔局長は小泉内閣の閣僚らが呉副首相の帰国を「非礼だ」などと批判していることへの見解を聞かれたのに対し、「日本の指導者は侵略の被害に遭った中国人民の感情を無視した発言を繰り返している」と答え、責任の所在は日本にあるとの認識を強調した。


毎日新聞
中国副首相帰国: 関係抜本改善へ、中国側の「最後通告」
2005年5月24日 22時09分

 中国が24日、呉儀副首相の帰国理由が靖国神社参拝をめぐる小泉純一郎首相の言動にあると明確にしたのは、小泉首相が靖国参拝への対応を変えない限り、日中関係の抜本的な改善はあり得ないという中国側の「最後通告」ともいえる。

 中国の胡錦涛国家主席は昨年11月、チリで会談した小泉首相に05年が「反ファシスト勝利60周年、抗日戦争勝利60周年にあたる」と指摘し、「敏感な年に、日本が敏感な問題を妥当に処理し、日中関係の健全な発展を保つことを希望する」と述べた。

 「敏感な問題の妥当な処理」とは、小泉首相が就任以来、継続してきた靖国神社参拝を見送ることにほかならない。今年4月のジャカルタでの首脳会談でも、それを念押ししていた。中国側によると、胡主席が歴史問題への反省を行動に移すことなどを求めた「五つの主張」に対し、小泉首相は賛同したとされる。

 しかし、4月の反日デモの嵐を経てようやく実現した呉副首相の訪日期間前後に、小泉首相は靖国神社参拝への中国の批判を「内政干渉」と表明し、参拝継続の意向を明確にした。中国はメンツをつぶされただけではなく、約束を破られたと受け止めた。中国側の衝撃は日本の予想をはるかに超えていた。

 呉副首相の帰国に対する小泉首相の発言にも中国側は怒りの交じった失望感を深めている。「会いたくなければ、会わなくてもいい」「野党の審議拒否が伝染したのかな」。いつもの“小泉語”は中国には「戦争被害国の痛み」(孔泉報道局長)に無神経な言葉としか映っていない。【北京・飯田和郎】


毎日新聞
中国会談キャンセル: 「内政干渉」引き金に
2005年5月24日 23時37分

 小泉純一郎首相と呉儀・中国副首相との会談中止から一夜明けた24日、中国外務省が靖国参拝をめぐる小泉首相の発言が会談キャンセルの理由だと正式に表明し、修復に向かいかけた日中関係はまたもや袋小路に入り込んだ。首相の靖国参拝を歴史認識問題とみる中国に対し、首相が「内政干渉」と反発し、さらに中国が態度を硬化させる悪循環。政府・自民内では反日デモの対応に続く中国の「非礼」に反感が募り、4月23日の日中首脳会談で確認した「友好重視」の機運もかすみ始めた。【平田崇浩、北京・飯田和郎】

 ◇日本、悪循環を懸念

 中国側を刺激したのは今月16日の衆院予算委員会での首相答弁だ。「戦没者に対する追悼の仕方に他国が干渉すべきではない。いつ行くかは適切に判断する」との発言は参拝継続への意欲表明であると同時に、中国の参拝批判を「内政干渉」と位置づけたものだった。翌17日に呉副首相が来日したが、首相は20日の参院予算委でも「大局的見地に立って参拝している」と強調した。

 中国側は16日夜、武部勤・自民、冬柴鉄三・公明両党幹事長に先週末の訪中を招請。与党筋は「呉副首相が会談する前に首相発言の真意を聞く狙いでは」と受け止めた。しかし、政府筋によると、21日に中国共産党の王家瑞対外連絡部長と会談した武部氏は中国の靖国参拝批判を「内政干渉だ。信教の自由にも反する」と指摘、王氏が「こういうことを言う政治家は初めてだ」と激怒した。武部氏は24日、「相互内政不干渉という考え方もあると言った」と説明したが、中国側は「内政干渉」が政府・自民党の統一見解と受け止めたようだ。

 中国側の強い反発を受け、これ以上の関係悪化を懸念する公明党からは「首相には大局観を持って行動してもらいたい」(神崎武法代表)と参拝中止を求める声も強まる。ただ、首相本人は24日夕、記者団から「靖国参拝にこだわることが国益か」と質問されても「中国側がこだわっていると思わない? 両方の言い分があるからね」と参拝継続の方針は変えない構えを示している。

 靖国問題が泥沼化すれば「歴史認識問題を処理できない日本」への国際的な風当たりが強まる恐れもある。細田博之官房長官は24日の会見で「(双方が批判し合う)悪循環に入るようなことはすべきでない」と事態の沈静化を図る姿勢を強調。「内政干渉」についても「一国の主権を侵すような干渉が厳密な意味での内政干渉。(靖国参拝批判が)それに当たるとは思っていない」と否定した。

 しかし、その後に中国側が「緊急の公務」としていた会談中止の理由を撤回。「外交儀礼」(外務省幹部)として「公務」の内容を問い合わせなかった日本政府も、ただちに中国側に真意を照会する手続きを取った。「中国は靖国問題を駆け引きに使っているだけ。日本の国連安保理常任理事国入りを阻止するための揺さぶりだ」(政府関係者)といった反感も募っている。

 今月末には東シナ海のガス田開発をめぐる日中実務者協議が北京で開かれる予定。政府はこれを中国の今後の対日スタンスを確かめる機会とみている。政府・与党内には「対中外交はこれからが本番」(外務省幹部)との意見がある一方、「小泉首相の任期中の解決は難しい」(自民党幹部)と日中関係の行き詰まりにあきらめムードも広がっている。

 ◇中国、強硬論に傾斜

 「中国における抗日戦争の意味をご存じですか。8年間の戦争で死傷者3500万人、直接的な損失は1000億ドル、間接的な損失は6000億ドルに達した」

 中国外務省の孔泉報道局長は24日の会見で「(小泉首相との会談取り消しで)日本に謝罪しないのか」との米国人記者の質問に、日中戦争の無残さを強調した。日本では否定的見解が多い数字だが、中国当局者が具体的に中国側の被害を語るのは異例だ。

 「緊急公務のため」との帰国理由を覆すことは会談取り消しに続く外交上のルール違反だ。それでもあえて、日本と世界のメディアに日中関係悪化の原因が日中どちらにあるかを問いかけた。

 「こうした歴史的背景がありながら自らの約束を破り、国際社会に表明した反省も顧みず、A級戦犯を祭った靖国神社問題で誤った発言を繰り返す日本の指導者がいる。どうして被害国の国民の気持ちが理解できないのか」。名指しはしないものの、小泉首相を非難する孔局長の言葉には怒気さえ含まれていた。

 中国は反日デモを受けたジャカルタでの日中首脳会談以降、関係改善にかじを切った。日中外相会談、次官級政策協議で対話を積み重ね、呉儀副首相の訪日成功に結びつける段取りだった。

 しかし、靖国参拝を内政問題とする小泉首相の一連の発言がその前提を崩した。A級戦犯を祭る神社への参拝は中国の国民感情を傷つけ、軍国主義者と一般の日本人を区別してきた中国の対日政策の基本方針を動揺させる。内政を超えた問題というのが中国の見解だ。

 胡錦涛指導部があいまいな態度を取れば、軍や政権内の対日強硬派のみならず、一般市民からも激しい突き上げを受けるのは確実。呉副首相自身にも傷が付きかねない。指導部は、あくまで対日関係重視の姿勢を続けるか、会談キャンセルかの選択を迫られることになった。小泉首相との会談について、19日の時点でも孔局長が「重要な会談で、議題も相当に広い」と期待感を示していたのは、指導部の方針がまだ固まっていなかったことをうかがわせる。

 その後も胡国家主席が自民党の武部幹事長らとの会談に応じた経緯から見ると、対立する意見の集約に時間をかけ、胡主席が最終的に強硬論に軍配を上げた構図が透けて見える。

 ■日中関係をめぐる最近の主な動き■

4月2日  中国・成都市で日本の国連安保理常任理事国入りに反対する若者ら数十人が日系スーパーを襲撃

  9日  北京で大規模な反日デモ。日本大使館が投石被害

  10日 町村信孝外相が反日デモで王毅駐日大使に抗議

  16日 上海で大規模な反日デモ。日本総領事館が投石などの被害を受ける

  17日 町村外相が北京で李肇星外相と会談

  23日 小泉純一郎首相と胡錦涛国家主席がジャカルタで会談

  27日 王毅大使が自民党外交調査会で講演。中曽根内閣時代に「首相、官房長官、外相は在任中に靖国神社を参拝しないという紳士協定があった」と発言

5月7日  町村外相が李外相と京都で会談。中国側は愛知万博出席のために来日する呉儀副首相を政府の賓客として迎えることと、小泉首相との会談を要請

  13日 北京で日中外務次官級の総合政策対話を開催

  16日 小泉首相が衆院予算委で靖国神社参拝について「戦没者に対する追悼の仕方に他国が干渉すべきではない」と発言、参拝継続への意欲を表明

  17日 呉副首相が来日

  20日 小泉首相が参院予算委で靖国神社参拝について「大局的見地に立って参拝している」と発言

  21日 自民党の武部勤幹事長と公明党の冬柴鉄三幹事長が北京で中国共産党の王家瑞対外連絡部長と会談。武部氏の「内政発言」に対し王部長は「日中平和友好条約の新しい見解を示すのか」と反発。武部氏は後に発言の真意を説明

  23日 呉副首相が緊急帰国


朝日新聞
呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視
2005年05月25日12時10分

 中国の呉儀(ウー・イー)副首相が小泉首相との会談をキャンセルして帰国し、外交問題になっている事態について、各国のメディアは「中日、国際マナー舌戦」(韓国・東亜日報)、「中日関係は厚い氷結期に」(英フィナンシャル・タイムズ)などと報じ、強い関心を示している。しかし、英国では4月に起きた中国の反日デモ報道に比べ扱いは小さく、米国やアジア諸国では悪化する日中関係の流れに位置づけ、日中の主張をほぼ等距離で伝える報道が目立つなど、冷静な分析が主流なようだ。

 米ワシントン・ポスト紙は、靖国問題を巡る両国の感情的な対立が東アジアにおける「戦略的なライバル関係の拡大意識」によって激化していると指摘。ニューヨーク・タイムズ紙は、中国側の対応は日本側には「明らかな侮辱」としたうえで、「中国側の行動は恐らく裏目に出て、反中強硬派の安倍晋三幹事長代理の小泉後継を手助けするだろう」とするロビン・リム南山大教授の分析を引用した。

 韓国の東亜日報は、「日中間には、歴史だけでなく、台湾、釣魚島(日本名・尖閣諸島の魚釣島)問題、日本の安保理常任理事国入りなど地域の主導権を争う問題が多く、しばらく冷却状態が続くだろう」と、状況の改善に悲観的な論者の見解を紹介した。

 朝鮮日報も日中の「冷たい政治関係が熱い経済関係まで悪化させることはないだろう」としながら、「軍事・経済の覇権をめぐる競争が激しくなり簡単には解消されない」という専門家の見方を伝えている。

 戦後60年で歴史認識を巡る日本と周辺諸国の摩擦に注目が集まるドイツでは、多くのメディアがこの問題を取り上げた。フランクフルター・ルントシャウ紙は、中国は「キャンセルする以上、理由をはっきりと示さなければならない」と中国政府の外交手法を批判した。

 ロシアの主要各紙も一斉にこの問題を報道。「日本の首相は中国の怒りを恐れていない」(新イズベスチヤ)などと、日中間の険悪な空気を伝えている。

 日中双方の立場を等距離で伝える論調が目立つ中、中国に批判的な意見が目立つのがマレーシア。「マレーシアでは補償もすんだ話とみなされており、問題視されない」(地元大手紙幹部)。

 台湾では、呉副首相の突然の帰国は中国の「外交失態」(自由時報)と位置づける見方が目立っているが、中国時報は「副首相訪日に込められた『関係改善の手がかりに』という北京のメッセージが分からない小泉外交の愚かしさ」と書いている。


【参考】

中国情報局
日中首脳会談:中国メディア「5つの主張」伝える
発信:2005/04/24(日) 11:43:06

日本の小泉純一郎・首相と中国の胡錦涛・国家主席による日中首脳会談がインドネシアのジャカルタにて、現地時間23日夜行われた。対話促進で一致した今回の首脳会談について、中国新聞社では、「胡・主席が日中関係の困難な局面を極力速く好転させるための五つの主張を提示」という角度で報じた。

その五つの主張は、
  • 第一に、「日中共同声明」、「日中平和友好条約」、「日中共同宣言」の三つの文献を遵守し、実際の行動をもって、21世紀の日中友好協力関係の発展を目指すこと。
  • 第二に、「歴史を鑑(かがみ)として、未来に向かう」という考え方を堅持すること。日中間の近代史上において、「日本の軍国主義が発動した侵略戦争が、中国人民に大きな災厄を与えたこと、また日本人民もその害を深く受けたこと」とし、正確に歴史を認識し、相対すことは、あの侵略戦争に対して示す反省を実際の行動に移さなければならず、決して、中国とアジア諸国の人民の感情を傷つけてはならない、とした。
  • 第三に、台湾問題を正確に処理すること。「台湾問題は中国のコアの利益であり、13億の中国人民の民族的感情に関連する。日本政府は、『一つの中国』政策の堅持と『台湾独立』への不支持を何度も標榜してきており、日本側が実際の行動をもって、その承諾を表現することを希望する」とした。
  • 第四に、対話を通じて、対等に協議を重ね、日中間の溝を妥当に処理、溝を解決するための方法を積極的に模索し、日中友好の大局が新たな障害や衝撃を受けることないよう回避すること。
  • 第五に、相互理解を増進し、共同の利益を拡大、日中関係の健全かつ安定的な前向きの発展を促すため、双方が広範囲の領域における交流と協力をさらに拡大し、民間の友好的交流を強化すること。
この文面から読み取れるように、22日に小泉・首相が行った「村山談話」を踏襲した演説について、直接的に触れられておらず、むしろ「実際の行動」を強調している。特に第二項目では、小泉・首相の靖国神社参拝を、第三項目では、日台間の要人往来などを、それぞれけん制した形だ。(編集担当:鈴木義純)

日本政府、中国報道官発言に説明要求

2005-05-25 06:58:20 | 国際
NHK
中国報道官発言で説明要求へ
2005年5月25日 04:57

日本を訪れていた呉儀副首相が、小泉総理大臣との会談を取りやめ、急きょ帰国した理由について、中国外務省は、24日、孔泉報道官が、靖国神社参拝をめぐる日本の指導者の発言を挙げ、強い不満を表明するためだったことを明らかにしました。これについて小泉総理大臣は、「話せばわかるのだから、会談すれば良かったのにと思う」と述べ、中国政府の対応を批判しました。こうした中、政府は、この問題で非難の応酬に発展する事態になれば、友好関係を重視し発展させるとした、先月の日中首脳会談の合意を揺るがしかねないとして、冷静に対処すべきだとしています。ただ、孔泉報道官の発言は納得しがたいうえに、指導部の見解をそのまま反映したものと言えるかは疑問だとしており、政府は外交ルートを通じ、中国政府に十分な説明を求めることにしています。

NHKテレビ報道

小泉首相の靖国参拝発言

2005-05-24 20:50:48 | 国際
呉儀副首相を訪日途中で帰国させるというまでに中国政府を怒らせたのは、与党の武部勤、冬柴鉄三両幹事長と中国共産党・王家瑞対外連絡部長との会談で、武部氏と王部長が「内政干渉」という言葉を巡ってやり合ったことが原因と見る向きもあるようだ。

武部幹事長は帰国後、「私は中国共産党の王家瑞対外連絡部長との会談で、靖国神社参拝で「世論調査などに見られる国民の考え方に相互内政不干渉というものがある」という話はしたが、私が内政干渉だと申し上げたことはない」と述べ、自分の発言が呉副首相帰国の原因となった説を否定した。

私も武部発言に原因があったとは、俄かには信ずることができない。そういう衝突があったのは確かだろうが、もともとの原因は、2005年5月16日、衆議院予算委員会で小泉首相が仙石由人委員の質問に答えた「靖国発言」であることは間違いないところだ。中国政府と中国共産党は、今回の「小泉発言」に反撃を加える機会を、5月16日からの一週間、ずっと探り続けてきたのだろう。

中国政府や中国共産党の意志がそれほど堅いものなら、呉儀副首相が小泉首相と会見したとき、彼女は顔を合せている小泉首相に対し、苦情の言葉をぶつけなければならなかっただろう。けれども、直接顔を合せている相手に、その感情を害するほど喧嘩腰の言葉をぶつけるのは、外交関係を損なう重大な非礼行為となる。そこで、中国政府は苦肉の策として、呉儀を帰国させたのではなかろうか。小泉首相との会見を土壇場でキャンセルするのも非礼な行為ではあるが、中国が外交上および対日経済関係上蒙るダメージは遥かに少ないものとなる。

そこで、5月16日の衆院予算委員会における小泉首相の「靖国発言」のどの箇所にいかなる理由で彼らが怒りを抱いたのか、私たち日本人としても冷静な態度で検証しなければならないわけだ。

だが、私たち日本人としては、小泉首相のこの国会発言を隅から隅まで読んでみても、いままで小泉首相が述べていた以上のことと思われる箇所は見当たらないのである。目を凝らして何度読んでもそのことは確かだろうと思うしかない。そればかりか、論旨はいままで通りまことに単純明解であって、彼の過去の発言とのいささかのぶれがあるとも感じられない。

小泉首相の発言の中で唯一思い当る箇所は、「(質問者の仙谷由人氏は)一部の外国の言い分を真に受けて、外国(中国政府)の言い分が正しいといって、日本政府の、私の判断を批判するというのは、(質問者の仙谷由人氏は野党の民主党所属で)政党が違いますから歴史的な認識も違うかもしれません、(質問者の仙石由人氏がどういう歴史認識を持とうと)御自由でありますが、私は、これ(首相の靖国参拝、あるいは靖国参拝を続けるという自分自身の歴史認識)は何ら問題があるとは思っておりません」と述べたくだりである。

この箇所は、質問者の仙石氏の追求そのものが、理屈に合わないと指摘しているだけである。つまり、いわば質問者をからかっているのだ。だが、仙石氏の追求を理屈に合わぬと指摘することを通して、間接的にではあるけれども、我国に対する中国側のやり口が内政干渉に当ることを色濃くほのめかした発言となっている。小泉首相の今回の「靖国発言」の中で中国側を刺激したのは、この「内政干渉」のくだりだったのではあるまいか。

国会で小泉首相がこのような内政干渉発言をしたと伝えられた中国政府は、この小泉発言に対しどう反撃しようかと内々議論を進めていただろう。ちょうどその矢先に、そんな中国側の内部事情をつゆ知らずのまま訪中してきた武部自民党幹事長が、王家瑞対外連絡部長に向って「日本では世論調査でも中国側の内政干渉と感じているという比率が高まっていますよ」といった。だから、王家瑞としては面子上、たとえ表敬訪問を受けていた場とはいえ儀礼的配慮を捨てて、武部発言に噛みつかざるを得なかったのではなかろうか。

あるいは、次のように推論することもできよう。もちろん、この推論が正しいかどうかはわからない。

中国側としては、こういうところまで踏み込んで小泉発言に文句をつけると、逆に日本側から「内政干渉」といわれはしないかとひやひやしていたのではあるまいか。そこへ、たまたま武部幹事長が乗り込んでいって、「日本の国民の多くは中国は内政干渉をしていると感じているようですよ」と一言ぶつけた。つまり、彼は中国側が気にしていた「事実」をずばりと衝いたわけだ。ずばりと衝いたことは衝いたが、それは中国側の迷いを断ち切って実行動へと踏み出させる契機となった。

こんな単純なものではないかもしれない。だが、小泉首相の国会発言から呉儀副首相帰国まで、ちょうど一週間という期間があった。その間、中国政府や中国共産党の動向はあまり伝えられてはいないが、反撃の契機を慎重に探っていたことは間違いない事実だろう。


第162通常国会衆議院予算委員会会議録
(全文)


衆議院会議録
第162通常国会衆議院予算委員会 (2005年5月16日午前9時開議)

小泉首相、仙谷由人氏の質問に答えて

  1.  国民の中でも、(靖国参拝は)すべきである、しない方がいい、した方がいいといろいろな議論があります。しかも、中国が、胡錦濤国家主席との間でも、あるいは温家宝首相との会談でも、靖国の問題が出ました。靖国参拝はすべきでないというお話もありました。しかし、今のような理由(注; 小泉首相自身の言葉による理由説明は、「戦没者の犠牲の上に今日の日本の平和と繁栄がある。その戦没者に対して心からの追悼の誠を捧げるのがなぜいけないのか」)を私は申し上げました。現に東条英機氏のA級戦犯の問題がたびたび国会の場でも論ぜられますが、そもそも、罪を憎んで人を憎まずというのは中国の孔子の言葉なんです。

     私は、日本の感情として、一個人のために靖国を参拝しているのではありません。心ならずも戦場に赴いて命を犠牲にした方々、こういう犠牲を今日の平和な時代にあっても決して忘れてはならないんだ、そういう尊い犠牲の上に日本の今日があるんだということは、我々常に考えておくべきではないか。現在の日本というのは、現在生きている人だけで成り立っているものではないんだ、過去のそういう積み重ねによって、反省の上から今日があるわけでありますので、戦没者全般に対しまして敬意と感謝の誠をささげるのが、これはけしからぬというのはいまだに理由がわかりません。

     いつ行くか、適切に判断いたします。

  2.  私が靖国神社に参拝することと、軍国主義を美化しているととられるのは、心外であります。なぜ靖国神社を参拝することが軍国主義を美化することにつながるんでしょうか。全く逆であります。

     日本は、戦争に突入した経緯を踏まえますと、国際社会から孤立して米英との戦争に突入した。国連も脱退した。二度と国際社会から孤立してはいけない。そして、軍国主義になってはいけない。だから、戦後、戦争中の敵国であった国とも友好関係を結んできた。そして、国際協調というものを実践によって示してきた。

     軍国主義、軍国主義と言いますが、一体日本のどこが軍国主義なんですか。平和国家として、国際社会の平和構築に日本なりの努力をしてきた。この周辺において、戦争にも巻き込まれず、戦争にも行かずに、一人も戦争によって死者を出していない。平和国家として多くの国から高い評価を受けている。そういう中にあって、なぜ私の靖国参拝が軍国主義につながるんですか。

     よその国が言うから、けしからぬ、よその国の言うことに従いなさい。それは、個人的な信条と、両国間、国際間の友好関係、これはやはり内政の問題と外交関係の問題におきましてはよくわきまえなきゃいけませんが、私は、こういうごく自然の、過去の戦没者を追悼する気持ちと、二度と戦争を起こしてはいけないという政治家としての決意、これを六十年間、みんな日本国民は反省しながら実践してきたじゃないですか。それを、(質問者の仙谷由人氏は)一部の外国の言い分を真に受けて、外国の言い分が正しいといって、日本政府の、私の判断を批判するというのは、(質問者の仙谷由人氏は)政党が違いますから歴史的な認識も違うかもしれません、御自由でありますが、私は、これ(靖国参拝)は何ら問題があるとは思っておりません。

毎日新聞
中国: 呉副首相の緊急帰国 靖国問題で激論、一因?--武部・王会談で
2005年5月24日 東京夕刊

 政府内では24日、中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を取りやめて帰国した理由をめぐり波紋が広がっている。中国を訪問した自民党の武部勤、公明党の冬柴鉄三両幹事長が21日に北京で中国共産党の王家瑞対外連絡部長と会談した際、小泉首相の靖国神社参拝問題について激論を戦わせたことが理由との見方が浮上している。

 政府筋によると、21日の会談で武部氏は、靖国問題について中国側が持ち出すのは「内政干渉だ」と発言。これに王部長が激怒して撤回を要求し、武部氏は「撤回します」と答えたという。

 武部氏は24日の会見で「(会談では)『国民の考え方の中に相互内政不干渉がある』という話はしたが、私(自身)が内政干渉だと申し上げたことはない」と述べ、自らの発言が帰国の理由との見方を否定した。


讀賣新聞
中国副首相帰国、武部幹事長が自身の発言原因説を否定
2005年5月24日13時7分

 自民党の武部幹事長は24日午前の記者会見で、中国での武部氏らの発言が呉儀副首相の帰国につながったとの見方について、「靖国問題については中国側が示した意見については率直に小泉首相に伝えると言ったので、それで日中関係が後退するとか、呉儀副首相が帰ったとは全く考えられない」と述べた。

 また、「私は中国共産党の王家瑞対外連絡部長との会談で、靖国神社参拝で『世論調査などに見られる国民の考え方に相互内政不干渉というものがある』という話はしたが、私が内政干渉だと申し上げたことはない」と指摘した。

来日中の呉儀副首相、緊急帰国(2)

2005-05-24 18:27:53 | 国際
呉儀副首相が帰国することは、帰国当日の5月23日朝になって日本政府に伝えられたらしい。帰国の理由は、細田官房長官の説明では、「国内の緊急公務が生じたため」ということであった。

ところが、翌5月24日午後の中国外務省定例記者会見で孔泉報道局長は、「日本の指導者の最近の言論によって会談に必要な雰囲気がなくなったため」として、前日掲げていた理由をあっさり撤回した。ある記者が、「国内の緊急公務が生じたためだったのでは?」と疑問を呈すると、孔局長は、「私は「緊急の公務」という言い方はしていない」とうそぶいた。

今日掲げた「帰国理由」は中国国内向けであろうが、前日掲げた「帰国理由」は日本向けだったのだろう。日本向けに掲げた「帰国理由」の裏には、日本の言論界と経済界に向けた中国政府のメッセージが籠められている。隠されたそのメッセージというのは、「私たちは日本政府を見限りましたけれど、あなた方言論界と経済界のことは忘れてはいませんよ」という内容だったのではないか。

日本の言論界と経済界はまだ自分たち中国の味方だと中国政府は思っているようだ。それはそうだろう。日本の言論界の多くは長年にわたり歯の浮くような中国礼賛・中国経済礼賛を続けてきた。日本の経済界もまた、中国特需で一段の潤いを見せている。低賃金を武器にした中国の競争力でやられてしまった企業も多いのだが、中国ビジネスに成功して社業を躍進させた日本企業も数多く見受けられる。だからこそ、呉儀副首相は小泉首相との会見はすっぽかしても、日本経団連との昼食会はすっぽかさずに出席したのだろう。もともと呉儀副首相の来日目的は経済的なものだった。

それにしても、中国政府は日本国民全般をあまりにも甘く見過ぎているのではなかろうか。こういう強引かつ自己本位な外交を続けていけば、やがて日本の世論は急速に中国から離れていくだろう。日本国民の間に次第に反中国感情が醸成されていき、それが日本社会全体を覆う日がこないとも限らない。

その一方で、小泉首相の靖国参拝を非難する声は、これからは確実に減っていくのではないだろうか。その反対に、小林陽一郎(Xerox)や北城恪太郎(IBM)が発言してきた、「中国ビジネスのため、小泉首相は靖国参拝をやめるべきだ。小泉首相はなんて外交音痴なんだ!」などという声は、これからはあまり通じなくなっていくのではなかろうか。

小林陽一郎や北城恪太郎に代表される一部財界人たちは、これまでもアメリカの大企業の中国ビジネスをあまりにも代弁し過ぎている感があった。彼らはれっきとした日本の財界人ではあるが、あまりにも特殊な境遇に育った財界人だったようだ。靖国神社へのこだわりがあれほどまでに希薄なのは、彼らの持つ感情がほとんどアメリカ人の感情そのものだったからだろう。

特殊境遇で育った小林陽一郎や北城恪太郎などとは異なる、純粋な日本育ちの、ごく普通の企業経営者たちは、今回の中国政府の独裁国家的外交姿勢を目の当たりにして、「小泉首相よ! 我々の中国ビジネスの安泰のため、中国政府を怒らせることだけはやめてくれ」とか、「中国で稼いで日本経済に尽しているのは我々なんだ。その我々のことをもう少し考えてくれてもいいじゃないか」などといかにも「ビジネスマン的口利き」をするのは、ちょっと憚らざるを得なくなったのではなかろうか。

今回、中国政府がここまで強引かつ自己本位な外交を見せつけた後は、中国ビジネスを擁護するこういう「ビジネスマン的口利き」は、「それでは日本という国家がなくなっても、対中国ビジネスが残ればよいというのか!」などという誤解を受けかねない。日本社会全般の社会意識がそういう段階にまで立ち至ったかもしれないということだ。

中国政府は日本のナショナリズムの導火線に火をつけたのではなかろうか? 企業経営者はナショナリズムからの攻撃には極めて弱い。日本の対中ビジネスには、今後、何らかの変調の兆しがみられるのではなかろうか。


ロイター
小泉首相と中国副首相の会談、中国側の「緊急公務」により中止
2005年 05月 23日 11:46 JST

 [東京 23日 ロイター] きょう午後に予定されていた小泉首相と呉儀・中国副首相の会談は、中国側が「緊急公務」を理由に中止することが決まった。細田官房長官は、午前の記者会見で、具体的な理由については承知していないとしている。

 細田官房長官は、「けさ、中国側から呉副首相が本国からの指示により、国内の緊急公務が生じたので、(きょう(注;5月23日))午後帰国せざるをえず、小泉首相との会談を中止せざるをえないと通告があった」と説明した。同長官は、公務の具体的な内容について、「承知していない」と答えた。

 また、小泉首相が先に、国会審議の中で靖国参拝に関し、「いつ行くかは適切に判断する」と参拝を示唆したが、これが影響しているかどうかについて、「そのようには考えていない」と否定した。

 今回の呉副首相の来日により、中国人旅行者の観光ビザに関する協議も予定されていたが、これに関して、細田官房長官は、特に影響はしないとしている。同長官は、「国民レベルの交流が、相互理解に役立つ」と語った。

 自民党の武部幹事長と公明党の冬柴幹事長は22日、中国を訪問し、北京で胡錦濤国家主席らと会談。きょう午後、両幹事長が小泉首相に帰国報告する予定。


朝日新聞
呉副首相、経団連首脳には「友好」 昼食会であいさつ
2005年05月23日13時27分

 来日中の中国の呉儀副首相は23日昼、日本経団連主催の昼食会に出席し、冒頭のあいさつで「中国政府と人民は中日関係を重視し、日本との平和共存、子々孫々の友好、互恵協力、共同発展を願っている」と強調した。あいさつでは小泉首相らとの会談中止については言及しなかった。

 呉副首相は「日本は中国の隣人として強固な経済的基盤を有している。中国のように日々拡大する市場で活躍する余地があると信じている」と語り、経済関係の強化に期待感を表明した。一方で「今日の中日関係は厳しいチャレンジに直面しているが、改善と発展のチャンスにも直面している」と述べ、日中関係が不健全な状態にあるとの認識も示した。

 昼食会には奥田碩経団連会長(トヨタ自動車会長)のほか経団連副会長などを務める主要企業のトップが十数人出席した。


共同通信
歴史問題が理由と表明 中国外務省、会談中止で
2005年5月24日 17時:21分

 【北京24日共同】 中国外務省の孔泉報道局長は24日の会見で、呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を中止して帰国したことについて「日本の指導者の最近の言論によって、会談に必要な雰囲気がなくなったためだ」と説明、中止の理由が首相の靖国神社参拝を含む歴史問題であることを初めて明確にした。

 中国側はこれまで「緊急の公務」が帰国の理由と説明していた。孔局長はこれについても「私は『緊急の公務』という言い方はしていない」と事実上撤回。自らの立場は「23日夜の発言で示した」とし、「日本の指導者が靖国参拝問題で日中関係改善のためにならない発言をしたことは非常に不満」とした同日の発言が政府の公式見解であることを強調した。


朝日新聞
中国副首相帰国、「靖国が原因」 緊急公務存在せず
2005年05月24日22時12分

 中国外務省の孔泉(コン・チュワン)報道局長は24日の記者会見で、呉儀(ウー・イー)副首相が小泉首相との会談を取りやめて帰国した理由について、「日本の首相、指導者が呉副首相の訪日期間中、連続して中日関係の発展に不利な発言をしたことが、会談に必要な雰囲気と条件をなくした」と述べ、小泉首相の靖国参拝をめぐる発言などが原因となったことを認めた。「緊急の公務のため」としていた当初の説明については事実上撤回した。

 孔局長は23日夜、国営新華社通信を通じて「呉副首相の訪日期間中、日本の指導者が、靖国神社の参拝について連続して中日関係改善に不利となる発言をしたことは大変不満だ」との談話を発表した。

 24日の会見ではこの談話が中国政府の正式な態度表明だと説明。23日午後に出した談話では「緊急の公務」を理由にしていたが、会見では「私は自分の口から『緊急の公務』と言ったことはない」と述べ、「緊急の公務」が存在しなかったことを認めた。

 孔局長は、靖国問題をめぐって「日本の指導者は抗日戦争勝利60周年という状況で、歴史を反省するという約束を破った。A級戦犯がまつられた靖国神社について再三誤った発言をすることは、大変な被害を受けた多くの人々の感情を全く考慮していない」と批判した。ただ、「訪日期間中の日本の指導者の発言」が具体的に何を指すのかは説明しなかった。

 自民党の武部勤幹事長が中国共産党対外連絡部の王家瑞(ワン・チアロイ)部長との21日の会談で、靖国参拝に対する中国側の批判を「内政干渉だという人もいる」と指摘したことについては、会談の具体的内容については触れなかったものの、「日本は戦後、平和の道を歩んできたと何度も言ってきたのに、今になってこのような発言が出るとは大変意外だ」「非常な憤慨を感じる」などと強い口調で非難した。

 会談取りやめについて日本政府内から「おわびがない」などと批判が出ていることについては、「靖国神社について誤った発言をした人は、心の中で少しでもすまないと思っているのか」と応じた。

「コーラン冒涜」誤報事件の結末

2005-05-24 16:29:21 | 国際
ニューズウィーク誌が犯した誤報「グアンタナモ米軍基地におけるコーラン冒涜疑惑」は、アフガニスタンをはじめ各地で暴動が起こるなど、大きな事件を誘発したが、リチャード・スミス会長兼最高編集責任者(Richard M. Smith、Chairman and Editor-in-Chief)の名前で「読者への手紙」(A Letter to Our Readers)を出したことで決着ということになりそうだ。

私のブログではいままで何のコメントもしてこなかったが、そもそもどうしてこういう誤報が報道されることになったのか、強い関心を抱いてきたことは事実である。そういう意味で、リチャード・スミスの「読者への手紙」原文を後日のための資料としてコピーしておくことにしたい。


朝日新聞
匿名情報源を見直し、編集長許可制に ニューズウィーク
2005年05月23日12時01分

 米ニューズウィーク誌は米軍によるコーラン冒涜疑惑を報じた問題で22日、最新号(電子版)でリチャード・スミス会長兼最高編集責任者の「読者への手紙」を掲載し、再発防止策を明らかにした。匿名の情報源を記事に使用したことが問題になっていたが、こういう手法は、編集長か編集者、特に任命する編集者の承認がなければ許可しない、とした。

 問題の記事は9日号に掲載され、キューバのグアンタナモ米軍基地で、収容者を動揺させる狙いから、米兵がイスラム教の聖典コーランをトイレに流したとの内容。情報源は「米政府高官」の匿名だった。反米デモでアフガニスタンで多数の死傷者が出た後、同誌は16日に記事に間違いがあった、として撤回した。

 「読者への手紙」のなかで同誌は、情報収集の過程全体を見直すことを表明。匿名の情報源を使う場合は;
  1. いかに情報を知りうる立場にあるか
  2. なぜ名前を明らかにできないのか
  3. 情報を提供する動機
などを「できるだけ読者に説明する」とした。

 記事のテーマが「慎重な取り扱いを要する問題」の場合、匿名情報が不可欠ならば、その取材元とは別の独立した情報源に確認を求めることを徹底する。取材先が高い地位の人物であっても、記者の確認にコメントしないことを「無言の了解」とは認めない。問題の記事に用いた「複数の筋によると」という表現も使わない、などと約束した。

 「正確さをすべての価値の上に置く」としており、事実を確認するまで記事の発信を可能な限りとどめる。競争に不利になっても、「仕方がない」とした。匿名使用は「これまで重要な記事を打ち出すきっかけになった」としながら、乱用は読者の不信と記者の不注意につながる、と位置づけた。

 同誌に寄せられた2700の電子メールの大半は批判的なものだった。問題になった記事では、コーランをトイレに流した事実が米軍報告書に含まれているという情報の確認を、2人の国防総省当局者にも求めた。1人にはコメントを拒否され、1人はコーランの部分について何も指摘しなかったため、同誌は確認されたと受け取った。


NEWSWEEK
A Letter to Our Readers
Newsweek

May 30 issue - In the week since our Periscope item about alleged abuse of the Qur'an at Guantanamo Bay became a heated topic of national conversation, it will come as no surprise to you that we have been engaged in a great deal of soul-searching and reflection. Since cutting short a trip to Asia on the weekend we published our account of how we reported the story, I have had long talks with our Editor Mark Whitaker, Managing Editor Jon Meacham and other key staff members, and I wanted to share my thoughts with you and to affirm—and reaffirm—some important principles that will guide our news gathering in the future.

As most of you know, we have unequivocally retracted our story. In the light of the Pentagon's denials and our source's changing position on the allegation, the only responsible course was to say that we no longer stand by our story.

We have also offered a sincere apology to our readers and especially to anyone affected by violence that may have been related to what we published. To the extent that our story played a role in contributing to such violence, we are deeply sorry.

Let me assure both our readers and our staffers that NEWSWEEK remains every bit as committed to honest, independent and accurate reporting as we always have been. In this case, however, we got an important story wrong, and honor requires us to admit our mistake and redouble our efforts to make sure that nothing like this ever happens again.

One of the frustrating aspects of our initial inquiry is that we seem to have taken so many appropriate steps in reporting the Guantanamo story. On the basis of what we know now, I've seen nothing to suggest that our people acted unethically or unprofessionally. Veteran reporter Michael Isikoff relied on a well-placed and historically reliable government source. We sought comment from one military spokesman (he declined) and provided the entire story to a senior Defense Department official, who disputed one assertion (which we changed) and said nothing about the charge of abusing the Qur'an. Had he objected to the allegations, I am confident that we would have at the very least revised the item, but we mistakenly took the official's silence for confirmation.

It now seems clear that we didn't know enough or do enough before publication, and if our traditional procedures did not prevent the mistake, then it is time to clarify and strengthen a number of our policies.

In the weeks to come we will be reviewing ways to improve our news-gathering processes overall. But after consultations with Mark Whitaker and Jon Meacham, we are taking the following steps now:

We will raise the standards for the use of anonymous sources throughout the magazine. Historically, unnamed sources have helped to break or advance stories of great national importance, but overuse can lead to distrust among readers and carelessness among journalists. As always, the burden of proof should lie with the reporters and their editors to show why a promise of anonymity serves the reader. From now on, only the editor or the managing editor, or other top editors they specifically appoint, will have the authority to sign off on the use of an anonymous source.

We will step up our commitment to help the reader understand the nature of a confidential source's access to information and his or her reasons for demanding anonymity. As they often are now, the name and position of such a source will be shared upon request with a designated top editor. Our goal is to ensure that we have properly assessed, on a confidential basis, the source's credibility and motives before publishing and to make sure that we characterize the source appropriately. The cryptic phrase "sources said" will never again be the sole attribution for a story in NEWSWEEK.

When information provided by a source wishing to remain anonymous is essential to a sensitive story—alleging misconduct or reflecting a highly contentious point of view, for example—we pledge a renewed effort to seek a second independent source or other corroborating evidence. When the pursuit of the public interest requires the use of a single confidential source in such a story, we will attempt to provide the comment and the context to the subject of the story in advance of publication for confirmation, denial or correction. Tacit affirmation, by anyone, no matter how highly placed or apparently knowledgeable, will not qualify as a secondary source.

These guidelines on sourcing are clearly related to the Guantanamo story, but this is also a good time to reaffirm several larger principles that guide us as well. We will remain vigilant about making sure that sensitive issues receive the discussion and reflection they deserve. While there will always be the impulse to get an exclusive story into the magazine quickly, we will continue to value accuracy above all else. We are committed to holding stories for as long as necessary in order to be confident of the facts. If that puts us at a competitive disadvantage on any particular story, so be it. The reward, in accuracy and public trust, is more than worth the price. Finally, when we make a mistake—as institutions and individuals inevitably do—we will confront it, correct it quickly and learn from the experience.

I have had the privilege of being part of NEWSWEEK's proud editorial tradition for nearly 35 years. I can assure you that the talented and honorable people who publish NEWSWEEK today are dedicated to making sure that what appears on every page in the magazine is as fair and accurate as it can possibly be. Based on what we know now, we fell short in our story about Guantanamo Bay. Trust is hard won and easily lost, and to our readers, we pledge to earn their renewed confidence by producing the best possible magazine each and every week.

Richard M. Smith
Chairman and Editor-in-Chief

来日中の呉儀副首相、急遽帰国(1)

2005-05-24 15:20:52 | 国際
中国政府は外交儀礼にもとる極めてえげつない態度を示した。

与党の武部勤と冬柴鉄三両幹事長の訪中と中国の呉儀副首相の訪日が、たまたま同じ時期に重なっていた。だが、中国側が今回見せたこの神経質な動きは、直接的原因が何にあるか、いまのところよくわからない。

いずれにせよ。5月16日の国会予算委員会における小泉首相の靖国発言が中国政府を刺激したのであろうことは間違いない。

この「来日中の呉儀副首相、急遽帰国(1)」では、関係記事の貼付だけに止める。今後、新しい情報が入ってくるであろうから、そういうものをもひっくるめて分析し、改めて別に「来日中の呉儀副首相、急遽帰国(2)」を作り、そこで今回の外交トラブルについての私の考察を述べることにしたい。

【朝日の記事で追う日中関係ー2005年5月22日~24日】
  1. 靖国参拝、改めて慎重な対応要求 中国の唐国務委
       (2005年05月22日01時30分)
  2. 靖国参拝・歴史教科書「目にしたくない」 胡主席が批判
       (2005年05月22日22時02分)
  3. 呉副首相、経団連首脳には「友好」 昼食会であいさつ
       (2005年05月23日13時27分)
  4. 呉副首相、小泉首相との会談中止 「緊急の公務」と帰国
       (2005年05月23日21時48分)
  5. 中国、靖国対応に強い不満 副首相帰国の「原因」と示唆
       (2005年05月24日11時48分)
  6. 「常識はずれのマナー」 中国副首相帰国を閣僚が批判
       (2005年05月24日12時12分)
  7. 「内政干渉」発言に中国が反発 訪中の武部幹事長と応酬
       (2005年05月24日13時09分)
【他紙よりの補足情報】
〈讀賣〉 首相と会うリスクより外交的ダメージ、中国選ぶ?
      (2005年5月24日14時6分)
〈産経〉 「おわびのひと言もない」町村外相が批判
      (2005年5月24日)
〈毎日〉 副首相帰国: 日本の政府閣僚から批判噴出
      (2005年5月24日 13時50分)
〈日経〉 中国副首相の帰国、閣僚から批判相次ぐ
      (2005年5月24日)


朝日新聞
靖国参拝、改めて慎重な対応要求 中国の唐国務委
2005年05月22日01時30分

 中国を訪問中の自民党の武部勤幹事長、公明党の冬柴鉄三幹事長らは21日夜、北京の釣魚台国賓館で、唐家璇(タン・チアシュワン)国務委員(副首相級=外交担当)と会談した。武部氏や出席者によると、唐氏は、小泉首相の靖国神社参拝問題を念頭に「継続して参拝されるのはいかがなものか。信念や信仰、伝統、文化ではなく日本の将来にとって重大な問題だ」と述べ、改めて慎重な対応を求めた。両幹事長らは22日には胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席とも会い、日中関係改善の糸口を探る。

 唐氏との会談で両幹事長は、靖国問題や中国各地での反日デモなどで冷え込んだ日中関係などについて意見交換した。

 靖国問題に関する唐氏の発言に対し、武部氏は「戦没者の慰霊と不戦の誓いのためであって、直接、軍国主義の美化にはつながらない。(日本は)60年間、平和国家として歩んできた」と説明し、理解を求めた。

 また、唐氏は、台湾をめぐる問題について「一つの中国」の原則を守るよう日本側に求めた。

 この会談に先立つ中国共産党対外連絡部の王家瑞(ワン・チアロイ)部長との会談では、武部氏が反日デモについて「日本人の心を和らげるメッセージがあってしかるべきではないか」と述べたが、王氏からの反応はなかったという。冬柴氏は、過去の問題に関連し「過去に政策の誤りがあり、大変な損害や苦痛を与えたという事実はおわびしないといけない」と述べた。

 王氏は、日中の政党間交流について、すでに設置で合意している政策担当者レベルの協議会に加え、「毎年1回、定期的に幹事長レベルで会合を持ちたい」との考えを明らかにした。

 また、王氏は北朝鮮の核問題をめぐり、先にニューヨークで行われた米朝の接触について「評価する。米朝のさらなる歩みを期待する」と述べた。


朝日新聞
靖国参拝・歴史教科書「目にしたくない」 胡主席が批判
2005年05月22日22時02分

 中国訪問中の自民党の武部勤、公明党の冬柴鉄三両幹事長は22日夕、北京の人民大会堂で胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と約1時間会談した。胡主席は日中関係改善を重視する立場を示したうえで、「目にしたくない動き」として、小泉首相の靖国神社参拝、歴史教科書、台湾問題の3点を具体的に挙げ、日本政府の対応を批判した。

 両幹事長によると、胡主席は「日本の指導者がA級戦犯をまつっている靖国神社に参拝すること、侵略を美化する教科書の問題、日米の(安全保障の)共通戦略目標に台湾を書き込んでいること」について、「中国人民を含むアジアの人民の感情を傷つけ、長期安定的な日中関係の発展に悪影響を及ぼす」と指摘した。

 昨年11月のチリ・サンティアゴでの小泉首相との会談で、05年が戦後60年にあたることから、日中関係への配慮を求めたことにも言及。「日本側は約束を守っていない」と不満を表明した。また、「中日関係の発展は大きなビルの建設だ。れんがを一つひとつ積み上げないとできないが、そのビルは一瞬で壊すことが可能だ」とも述べた。

 一方、胡主席は会談の冒頭、「政権与党が対話と意思疎通を強化することが、中日関係を健全で安定した発展の方向に推し進めるうえでとても重要な意義を持つ」と両幹事長の訪中を歓迎。政党間の交流の重要性を強調した。

 武部氏は「首相から『胡主席と合意したことは着実に進めたい』というメッセージを受けてきた」と伝え、「日本は平和国家として歩み続けてきたことを自負している。胡主席の発言は、与党として真剣に受け止め、首相にもしっかりと伝えたい」と応じた。台湾問題については「『一つの中国』という立場に、いささかも変わりはない」と指摘。冬柴氏は「中国に侵略で多大な迷惑をかけた。この侵略の時代を日本国民は忘れてはならない」と伝えた。

 日本側の説明では、北朝鮮の核開発や日本の国連安保理常任理事国入りの問題は取り上げられなかったという。


朝日新聞
呉副首相、経団連首脳には「友好」 昼食会であいさつ
2005年05月23日13時27分

 来日中の中国の呉儀副首相は23日昼、日本経団連主催の昼食会に出席し、冒頭のあいさつで「中国政府と人民は中日関係を重視し、日本との平和共存、子々孫々の友好、互恵協力、共同発展を願っている」と強調した。あいさつでは小泉首相らとの会談中止については言及しなかった。

 呉副首相は「日本は中国の隣人として強固な経済的基盤を有している。中国のように日々拡大する市場で活躍する余地があると信じている」と語り、経済関係の強化に期待感を表明した。一方で「今日の中日関係は厳しいチャレンジに直面しているが、改善と発展のチャンスにも直面している」と述べ、日中関係が不健全な状態にあるとの認識も示した。

 昼食会には奥田碩経団連会長(トヨタ自動車会長)のほか経団連副会長などを務める主要企業のトップが十数人出席した。


朝日新聞
呉副首相、小泉首相との会談中止 「緊急の公務」と帰国
2005年05月23日21時48分

 23日午後に予定されていた小泉首相と中国の呉儀(ウー・イー)副首相との会談が、「国内の緊急の公務のため」とする中国側の申し入れで急きょ中止になった。細田官房長官が同日の記者会見で明らかにした。副首相は河野衆院議長との会談など昼までの日程を予定通りこなした後、同日午後に帰国した。首脳級の会談が直前で中止されるのは極めて異例。小泉首相は記者団に「会いたくないのを会う必要はない」と述べ、不快感を示した。

 呉儀副首相は今月17日に来日し、愛知万博(愛・地球博)のナショナルデー記念式典などに出席。24日に日本からモンゴルへ向かう予定だったが、これを変更し、23日に遼寧省・大連に入った。モンゴル訪問の予定変更は伝えられていない。

 細田官房長官によると、中国側は同日朝、「呉儀副首相は本国の指示により、国内の緊急公務のため、本日午後に帰国せざるを得なくなった」と伝えてきたと説明。副首相も同日昼、記者団に「国内に用事がある」と述べた。

 中止になったのは、午後4時過ぎから予定されていた小泉首相との会談のほか、その後の岡田民主党代表との会談。一方で副首相は同日午前、河野衆院議長と議長公邸で会談し、昼には日本経団連の奥田碩会長らとの会食に臨んだ。

 小泉首相の靖国神社参拝に関する発言が影響したのではないかとの見方について、首相は記者団に「わかりません」と述べ、「私は悪い影響を与えないように今までしてきた。何で中止したのか。私はいつでもお会いしますよと言ってきた」と語った。

 細田長官も靖国問題の影響について「そのように考えていない」と否定。外務省関係者によると、中国は中止の理由について「靖国ではない」と説明しているという。

 小泉首相は、呉副首相との会談が実現すれば中国人団体観光客への査証(ビザ)発給の対象地域拡大を伝える方針だった。これについて細田長官は「日中担当者間で十分話を進めている。国民レベルの交流は相互理解に役立つ」と述べ、当初の方針通りに実施する考えを示した。


朝日新聞
中国、靖国対応に強い不満 副首相帰国の「原因」と示唆
2005年05月24日11時48分

 中国外務省の孔泉(コン・チュワン)報道局長は23日夜、呉儀(ウー・イー)副首相の訪日に関連して「呉儀副首相の訪日期間中、日本の指導者が、靖国神社の参拝について連続して中日関係改善に不利となる発言をしたことは大変不満だ」と、小泉首相の対応を批判する談話を発表した。呉副首相が小泉首相との会談を取りやめて帰国したのは、小泉首相の靖国参拝をめぐる発言などが原因であることを示唆した。国営新華社通信が伝えた。

 孔局長は「中国政府は中日関係を大変に重視しており、関係改善と発展のために努力をし、呉儀副首相の訪日はそれを十分表していた」とし、呉副首相の訪日中の対応に誤りはなかったことを強調した。小泉首相との会談取りやめの事実には触れなかった。

 中国共産党関係者は、呉副首相の対応について「外交の常識からみるとはずれているが、それだけ強いメッセージを送った。日本に真剣に受け止めてほしいという信号だ」と語り、中国側は会談を取りやめることによって、靖国参拝問題に対する強い不満を表明したとの考えを示した。


朝日新聞
「常識はずれのマナー」 中国副首相帰国を閣僚が批判
2005年05月24日12時12分

 中国の呉儀(ウー・イー)副首相が、小泉首相との会談予定をキャンセルして帰国したことについて、24日の閣僚の記者会見では、対応を批判する声が相次いだ。町村外相は「おわびの一言もない。『外交的なマナー』なんて言葉を使わなくても、人と人とのつきあい方、信頼すべき人間同士のつきあい方がこういうことか、という思いがする」と強い不快感を示した。

 麻生総務相も「この種のマナーとしては常識を外れているし、対中感情が悪くなるのを助長するのに貢献したと感じる」。小池環境相も「理由が明確でなく、外交上、中国にとってはマイナスだ。対話が重要なのだが、意に沿わない発言をするからと対話を切ってしまえば、ますます(関係改善が)遠のいてしまう」と語った。

 一方、呉儀副首相と会談した中川経産相は「率直にいって大変びっくりしている。個人的にはショックを受けている」と述べ、東シナ海のガス田開発問題などについての今後の中国側との話し合いについては「決してプラスにはならない」と語った。


朝日新聞
「内政干渉」発言に中国が反発 訪中の武部幹事長と応酬
2005年05月24日13時09分

 自民党の武部勤幹事長が先の北京での中国共産党対外連絡部の王家瑞(ワン・チアロイ)部長との会談で、小泉首相の靖国神社参拝に対する中国側の非難を「内政干渉だという人もいる」と指摘、これに対し王氏が激しく反発していたことがわかった。与党関係者が24日、明らかにした。政府・与党内では、中国の呉儀(ウー・イー)副首相が23日に小泉首相との会談を当日になってキャンセルし、帰国した原因のひとつではないかとの見方が広がっている。

 関係者によると、武部氏は21日に行われた会談で、「首相の靖国神社参拝に対する中国側の批判は、内政干渉だという人もいる」と述べた。

 これに対し王氏は「それは(内政不干渉の原則を確認している日中平和友好条約の)新しい解釈なのか」と激しく反論。さらに、靖国神社にA級戦犯が合祀(ごうし)されていることを念頭に、「(A級戦犯という)国際的に決着したことを内政干渉の範囲に入れる解釈を、与党の幹事長がするのか」と詰め寄った。

 武部氏は、王氏の反論には直接には答えなかった。これ以外は会談は和やかに進み、こうしたやりとりがあったことは、公表しないことで双方が合意した。この内容は、23日に武部氏らから小泉首相にも報告されたという。

 これについて武部氏は24日の記者会見で、王氏とのやりとりについて「『世論調査等にみられる国民の考えの中に、相互内政不干渉がある』ということは話したが、私が内政干渉だと申し上げたわけではない」と説明。「約2時間の会談で、いろいろなやりとりがあったのは事実。率直な意見交換の後、最後には2国間関係を発展させることが大事だと一致した」と述べ、呉副首相の帰国との関係については「靖国問題が理由ではないと受け止めている」と語った。

 これに関連し、外務省幹部は24日、「相当激しいやりとりだったと聞いている」と語った。また、細田官房長官は同日午前の記者会見で、これが呉副首相の帰国の原因かどうかについては、「どういう影響を与えたのか、よく承知していない」と述べるにとどめた。




讀賣新聞
首相と会うリスクより外交的ダメージ、中国選ぶ?
2005年5月24日14時6分

 【北京=末続哲也】呉儀副首相が小泉首相との会談を中止したのは、胡錦濤指導部が、会談を行う政治的リスクの大きさは、突然の会談キャンセルに伴う外交的ダメージよりも大きいと読んだためと見られる。

 小泉首相が衆院予算委員会で、靖国参拝について「いつ行くのか適切に判断する」と述べたのは16日だった。この発言は17日、中国主要紙が報じ、呉副首相は、この日、微妙な雰囲気の中で日本に到着した。

 ただ、呉副首相は、表面上は穏やかに、「愛・地球博」(愛知万博)の記念式典など日程をこなす。中国側はその間、訪中した自民党の武部幹事長らに対し、参拝中止に向け説得を試みた。22日には胡国家主席が会談、中国側にすれば最も重みのある対応を取った。だが、中国側には、武部幹事長から返ってきたのは、理解を求める声ばかりに映った。

 中国指導部は、経済発展に極めて重要な日中関係の改善を望んでいる。しかし、靖国問題では、先月激しい反日デモにまで発展した強い反日世論の圧力を前に、強硬姿勢を崩せない状況にあると見られる。

 中国は、いま呉副首相が小泉首相に会えば、小泉首相が「参拝継続」を言明したままでも、首脳級の相互訪問が可能との「誤ったシグナル」を日本側に送る恐れがあると見ている模様だ。それ以上に、自国民に「弱腰」の印象を与えかねない。党内外の対日強硬派から指導部の責任を追及する声も上がりかねない。

 一方、中国の対応について日本の外務省幹部も24日、「副首相が日本に来て、首相に会って靖国参拝の話をされたらたまったもんじゃないと中国側は考えた。そのリスクと会わないリスクを比べ、会わない方を選んだのだろう」との見方を示した。

 日中両国は4月23日に小泉首相と胡主席が対話強化で一致し、関係改善に踏み出したばかりだった。会談キャンセルで、「再び、日中関係は冷却化しかねない」との見方が広がっている。


産経新聞
「おわびのひと言もない」町村外相が批判
平成17(2005)年5月24日

 中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を土壇場でキャンセルしたことについて、町村信孝外相は二十四日の記者会見で、「先方から小泉首相に会いたいという希望があったから日程を入れた。連絡はあったが、おわびのひと言もない。人間同士でも都合が悪くなるとかいろいろあるが、ひと言悪かったとか言わないと人間社会は成り立たない」と中国側の対応を改めて強く批判した。

 また、在京の中国大使館から二十三日午前にキャンセルの申し入れがあった際、「靖国神社参拝問題が原因ではない」と説明されたことを明らかにしたうえで、中国外務省の孔泉報道官が首相の靖国神社参拝に関する発言が会談中止につながったとの考えを示唆したことについて、「それは彼ら(中国)が否定している」と述べた。

 これに関連して、細田博之官房長官は会見で、中国報道官の指摘に対し「特にコメントすることは控えたいと思う」と述べるにとどめた。中国側が表向きの帰国理由を「緊急の公務」としていることについても、「(本当の理由の)確認をわざわざする必要は感じていない」などと、事態を荒立てない姿勢をみせた。

 一方、自民党の武部勤幹事長は会見で、自らの訪中時に靖国問題への中国側の対応を「内政干渉」と指摘したことがキャンセルの原因とする見方について、「国民の考え方の中に内政干渉(との認識)があるということは話したが、私が内政干渉と申し上げたことはない」と釈明。キャンセルの原因も「靖国問題を理由としたものではない」と強調した。

 政府内では、中国の姿勢について「中国らしい(やり方)。北朝鮮と通じるものがある」(政府筋)とみる一方、反日デモで日本大使館が破壊活動を受けたことなどを踏まえ「中国に対する国際世論は厳しいものになっている」(外務省筋)と分析している。


毎日新聞
副首相帰国: 日本の政府閣僚から批判噴出
2005年5月24日 13時50分

 町村信孝外相は24日午前の記者会見で、中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を中止して帰国したことについて「(緊急の)用があるのは仕方ないが、一言、悪かったと言わないと人間社会は成り立たない」と述べ、中国側から謝罪のないことに不満を表明した。会談中止の理由に関しては「分からない。問い合わせをする気にもならない」と語った。

 麻生太郎総務相は「この種のマナーとしては常識を外れている。(日本国内の)対中感情が悪くなることを助長するのに大いに貢献した」、中山成彬文部科学相も「礼を失している。もともと中国は礼の国だった」と会見で皮肉まじりに中国側の対応を批判。小池百合子環境相は「外交上、中国にとってマイナスではないか」と指摘した。

 一方、細田博之官房長官は会見で「いろいろな都合で日程を切り上げて帰国するケースは外交上あるので、そのことをもって何かを申し上げるつもりはない」と冷静に受け止める姿勢を強調した。


日本経済新聞
中国副首相の帰国、閣僚から批判相次ぐ
2005年5月24日

 中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を直前に中止し帰国したことを巡って、24日の閣議後の記者会見で閣僚から批判する発言が相次いだ。麻生太郎総務相は「マナーとしては常識を外れている。対中感情が悪くなるのを助長するのに貢献した」と指摘。中山成彬文部科学相は「礼を失したことだ」と非難した。

 町村信孝外相は「おわびの一言もないのが実態だ。普通の人間同士でも一言『悪かった』とか言わないと人間社会が成り立たない」と重ねて批判。中国外務省の孔泉報道局長が首相らの靖国問題発言が原因と示唆したことには「推測することは差し控える」と述べるにとどめた。

韓国紙が伝える北の状況

2005-05-23 10:12:02 | 国際
南北次官級協議では、春蒔用肥料20万トンを韓国から北朝鮮に緊急援助することが決り、協議終了後ただちに陸送が始められたらしい。

朝鮮日報は、協議が始まった初日の5月16日、北朝鮮側は「主に肥料が急を要するという話だったが、「切迫」という表現は異例だ。現在北朝鮮はどんな状況なのだろうか」という表現で記事の冒頭を切り出し、北朝鮮の現在の窮状を紹介した。

だが、紹介されたその内容(下記にその記事を掲げる)はといえば、私たち日本人にはそれほど耳新しいものとはいえず、かえって韓国人は北朝鮮の窮状をあまり詳しく知っていないのではないかと疑わせる内容であった。

そういえば、私たち日本人も、北朝鮮のあれほどの窮状をはっきり認識するようになったのは、横田めぐみさんなどの日本人拉致事件が、被害者家族の方々が長年主張してこられた通り、”事実”であったと信ずるようになり、更に小泉首相が平壌に乗り込み、5人の拉致被害者を連れ戻してきた頃からのことだった。

韓国の場合、日本で実際に起ったこういう劇的な真実開陳と新規世論形成が、いまだおこなわれていないわけだ。金大中前大統領、盧武鉉現大統領と、2代10年にわたる「太陽政策」は韓国国民に北朝鮮の窮状をほとんど知らせず、夢のような「南北融和」、「南北統一」を煽っているのだ。


朝鮮日報
「切迫した状況」の北朝鮮は今…?
2005/05/22 17:51

 南北次官級会談の初日の16日、北朝鮮側は「切迫した事情を説明」しながら、肥料とコメ支援を要請したと李鳳朝(イ・ボンジョ)統一部次官が伝えた。

 主に肥料が急を要するという話だったが、「切迫」という表現は異例だ。現在北朝鮮はどんな状況なのだろうか。

 最近北朝鮮を脱出した脱北者と中国の北朝鮮消息筋は、飢えに対する住民の不満などにより北朝鮮社会が戦争のような状況だと伝えた。金正日総書記の危機とまで言われている。最近北朝鮮を脱出した人々の話を集めて見た。

平壌市民のコメ供給も中断

 平壌外郭の市民は今年初めから、平壌中心部の市民は4月初めからコメの確保が難しく、大変な状態だという。住民たちがコメを買っている供給所のコメが底をついたためだ。

 供給所とは、国が決めた価格(1キログラムあたり46ウォン)でコメを売る所だ。供給所にコメがないため、チャンマダン(農民市場)の価格は急騰している。

 労働者の1か月の給料が2500ウォンなのに、今平壌の市場のコメ価格は1キログラムあたり1000ウォンを突破している。これに対し、国家情報院の某関係者は「供給制が正常に運営されているが、季節的要因により一部蹉跌をきたしているようだ」と話した。

軍人もコメ確保できず

 咸鏡(ハムギョン)北道・清津(チョンジン)に司令部を置いている第9軍団幹部らも、3月からコメを確保しようと必死になっている。第9軍団軍官(将校)に会ったという某脱北者は「3月からコメが切れ、トウモロコシも十分でないため、15日分ほどしか買えない状態だ」と話した。この脱北者は「先軍政治を標榜している国で軍人がコメを確保できないというのは、大変な事件」とした。

武装脱営まで

 3月初め、前方の軍部隊の隣近で発生したことだ。監察に出た保衛司令部第5処長(大佐・韓国の大領)が銃弾に撃たれ死亡する事件が発生した。

 第5処長は車に乗っていたが、道路で武装した兵士を乗せいろいろと話をした。この兵士は武装した脱営兵だった。第5処長が逮捕しようとすると、脱営兵が先に拳銃を発射したのだ。この事件以後、非常事態となった。

 前方で一人で歩いている兵士に対する大々的な取り締まりが行われた。最近この地域の軍人に会った某消息筋の説明だ。
 
 この消息筋は「後方地域でも、飢えに耐え切れなくなった兵士らが脱営し、民家を襲う事件まで発生しており、頭を抱えているという話を聞いた」と話した。

義賊団出現のうわさも

 北朝鮮当局は4月初め、全国人民班に講演資料を送った。資料は「盗賊団を暴力組職とみなし、これに加担したり、これらを支援する人は厳しく処罰する」という内容だった。

 最近、江原道の北部地域で実際に義賊と名乗る若い盗賊が多く出沒しているという。これらは党幹部や富裕層の家を襲い、財物を盗んでは、貧しい人々に配っているという。

 このため、一部住民らはこれを洪吉童(ホン・ギルトン)のような義賊と呼んでいる。元山(ウォンサン)地域では義賊が組織的に活動中だといううわさまで流れていると、同地域出身の脱北者は伝えた。

体制不安防ぐための諜報隊運営

 金総書記は最近、中国延辺の延吉を危険地域として特定したと伝えられた。延吉が北朝鮮内体制の不安の前哨基地化する可能性があると判断したというのだ。

 北朝鮮当局はこのような要素を事前に探し出すため、女性たちを延吉に送り、情報を収集するよう指示したと消息筋が伝えた。この女性たちはホテルやサウナなどを始め、人々が多く集まる所で働きながら、反北朝鮮情報を収集するのが任務だという。

北朝鮮も「ニューヨーク・チャンネル」活用示唆

2005-05-23 09:51:28 | 国際

朝日新聞
北朝鮮、「米朝対話」を公式に認める
2005年05月23日01時09分

 北朝鮮の外務省報道官は22日、ニューヨークで13日に行われた米朝対話の事実を初めて公式に認め、「我々は米国側の態度を引き続き注視し、時がくれば我々の立場をニューヨークでの接触を通じて米国側に公式に伝達するだろう」と述べた。北朝鮮の朝鮮中央通信が同日、伝えた。

 同報道官は同通信記者の質問に答える形で「米国務省の代表が、ニューヨークの北朝鮮国連代表部を訪れ、我々に対する主権国家の認定と、侵略の意思がないことなどを公式に伝達した」と述べた。

 だが、ライス国務長官ら米政府高官がその後、北朝鮮の核問題の国連安保理への付託の可能性や制裁措置などについて発言していると非難。「米国が真に6者協議を通じて問題を解決しようとするならば、協議を開催できる条件と雰囲気を実際に作るように動かなければならない」と指摘した。


讀賣新聞
北朝鮮「時が来れば立場を米に公式伝達」
2005年5月23日1時1分

 【ソウル支局】 北朝鮮の朝鮮中央通信によると、同国外務省スポークスマンは22日、今月13日にニューヨークで米朝接触があったことを確認するとともに、「米国側の態度を引き続き注視し、時が来れば、(6か国協議への参加いかんに対する)我々の立場をニューヨークの接触ライン(チャンネル)を通じて米国側に公式に伝達する」との談話を発表した。

 談話は、米朝接触の際に米国側から北朝鮮を「主権国家」と認め、「侵略の意思がない」ことを伝えられたとした上で、「米国が6か国協議を通じて問題を解決しようとするのであれば、会談が開かれうる条件と雰囲気を実際に整える方向で行動すべきだ」と主張した。

モンゴル国と中国

2005-05-22 19:41:18 | 国際
5月12日に書いた「連戦・宋楚瑜訪中の意外な効果」の中で、中国各地でおこなわれた先日のデモ中に、「反日プラカードに混じって「外蒙古を併合せよ!」と書かれたプラカードがあったことを見逃すわけにはいかなかった。内モンゴルばかりか、外モンゴルをも中国領土だとするのが、愛国主義教育を受けた現代中国人の心情なのだろうか」と記した。

このプラカードの「外蒙古」とは、かつては「モンゴル人民共和国」と呼ばれていた現在の「モンゴル国(Mongol ulus、《英》The State of Mongol、Mongolia)」のことだ。1992年、モンゴルはそれまでの社会主義憲法を捨てて民主憲法を採用し、国号も「モンゴル国」と改めた。

反日デモに参加した中国の若者たちは、その「モンゴル国」を中国に併合せよと要求していたのだ。あの激しいデモの矢面に立たされた日本政府は大変だったが、モンゴル政府当局にとっても、反日に併せてモンゴル併合要求まで出てくるという事態は由々しいことではなかろうか。

しかも、中国の若者たちは正式国名ではなく「外蒙古」などと呼んでいた。「外蒙古」は中国では慣用されているのか。私たち日本人も「中国」、「韓国」などといっているから下手なことはいえない。けれども、「内蒙古自治区」に対して「外蒙古」というわけだから、いかにも「外蒙古」は中国領土だと主張しているようにも聞こえる。歴史的にみると、「外蒙古」は18~19世紀を通してずっと清の版図に入っていたのだ。

1696年、清の康熙帝はみずから外征し、ジュンガル王国のガルダン・ハンを大敗させ、その王国の地を清の版図に加えた。清朝はモンゴル王公やラマ僧などを保護して封建領主化させた。そのため、モンゴル遊牧民たちは彼ら封建領主の搾取を受け、古来からの遊牧社会の基盤を崩壊させていった。また、19世紀に入ると漢人商人が大量に進出し、モンゴルの地全域に商業網を張り巡らした。彼らは商業のみならず、金融高利貸資本としても浸透していった。「内蒙古」、「外蒙古」という地理的概念が成立したのは清朝時代といわれている。

一方、「モンゴル国」という現在の国号は、我国の外務省が使っている日本語だが、我国の外務省が国号を「○○国」とするときは、いったいどういう政治形態を指しているのだろうか。あるいは、民族としての「モンゴル」と国家としての「モンゴル」を区別するため、後者を「モンゴル国」としているだけだろうか。

なにしろ、モンゴル国の人口は僅か240万人であるが、その一方で、中国国内にはおよそ480万のモンゴル系の人々がいる。しかも、そのうちの340万人ほどは「内モンゴル自治区」に住んでしている。「モンゴル民族」と「モンゴル国」はまったく別物なのだ。

我国の場合、正式国号は「日本国」だ。だが、例えばマレーシアの場合、単に「マレーシア」と呼ばれていて、「マレーシア国」とは呼ばれない。マレーシアは連邦国家であるが、同時に立憲君主制国家でもある。元首である「マレーシア国王」は、西マレーシア9州のスルタンたちの互選で選ばれるが、国王選挙に関与しない州もあるらしい。要するに、国号に政体まで表現するのが難しいのだ。

その点、モンゴルの場合は日本と同じように「モンゴル国」としているわけだから、その政治形態は日本人にもわかりやすい。

そこでモンゴル国の政治形態である。元首は直接選挙で選出される任期4年の大統領だ。立法機関は一院制で、「国家大会議」と呼ばれる議員76名の議会である。そして、内閣は我国と同じような議員内閣制だ。

1996年6月実施された総選挙では、民族民主党と社会民主党を機軸とする民主連合が大勝し、1921年のいわゆる「モンゴル人民革命」以来ずっと政権の座にあった人民革命党が下野した。しかし、このとき誕生した民主連合政権は安定することがなかった。2000年7月の総選挙では野党の人民革命党が政権を回復し、新首相にエンフバヤル人民革命党党首が指名された。

2001年5月、大統領選挙がおこなわれ、与党の人民革命党の推薦するバガバンディ大統領が再選された。2004年6月の総選挙では祖国党と民主連合の祖国・民主連合が躍進し、人民革命党との大連立政権が形成された。だが、2005年に入ると、この年実施される大統領選を睨んで、祖国・民主連合の一部が院内の人民革命党会派に合流する動きが見られ、人民革命党会派が多数議席(76議席中61議席)を占めるに至っている。

モンゴルというと、大相撲では幕内だけでも、横綱朝青龍、関脇白鵬を初め、前頭には、旭天鵬(3枚目)、朝赤龍(8枚目)、安馬(9枚目)、旭鷲山(9枚目)、時天空(15枚目)など、大勢のモンゴル出身の関取たちがいる。だから、彼らの祖国の地として、モンゴルのことがテレビなどで紹介されることが多く、私たち日本人にはなじみ深い。だが、私たちはモンゴルの政治制度などについてはほとんど何も知らないし関心も薄い。

いま「東アジア・サミット」が話題になっている。日中韓3ヶ国とアセアン10カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)がこの構成国と想定されており、この他に、インド、オーストラリア、ニュージーランドが参加する見込みと伝えられている。

ところで、モンゴルはここに含まれていなくても問題ないのだろうか。中国の経済的属国の扱いをされているような心配はないのか。(ここまで2005年5月22日記)

注目されていた大統領選の結果は、人民革命党から出馬した国民大会議議長のエンフバヤル氏の勝利であった。従来路線が継承されるのか。(2005年5月23日追記)


朝日新聞
モンゴル大統領選、「中国」争点に投票
2005年05月22日19時28分

 バガバンディ大統領の任期満了に伴うモンゴル大統領選挙が22日、投開票された。一党独裁を放棄した90年の民主化後、4回目となる。国民大会議(国会)の最大勢力である人民革命党の党首、エンフバヤル国会議長(46)を、民主党のエンフサイハン元首相(49)が激しく追い上げる展開となった。だが、候補者間に政策の差はほとんどなく、モンゴルに対して影響力を強める中国との関係が争点となった。

 ジャルガルサイハン共和党党首(45)とエルデネバト祖国党党首(45)も立候補した。23日朝にも結果が判明する見通しだが、半数を獲得した候補がいない場合、6月5日までに上位2候補による決選投票が行われる。

 同国は1人あたりの国民所得が約600ドルで、伝統的な牧畜と鉱業以外にめぼしい産業は育っていない。各候補は総選挙の時と同様に、国民生活向上と市場経済発展を訴えた。そこで浮上したのが、経済的な結びつきが強まる中国との関係をどうするかだった。

 中国は経済成長のため周辺国との安定した関係を維持する戦略から、モンゴルとの関係発展をはかってきた。胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席が就任後初の外遊先の一つにモンゴルを選んだり、無償資金協力を続けたりしている。また、中国はモンゴルにとって最大の貿易パートナーで、モンゴル人の利用する生鮮食品や日用品のほとんどは中国産だ。

 中国産品の普及で、モンゴル国民の暮らしぶりは向上した。しかし、モンゴルが清朝の間接支配など長らく中国の影響下にあったことや、中ソ対立でソ連側に立ったことなどもあって、モンゴル人の嫌中感情は根強い。

 一方で、出稼ぎや商売のためモンゴルに長期滞在する中国人は増え続け、今では1万2000人と外国人の6割を占める。ウランバートル市内には中国語の看板も珍しくなくなった。「ソ連の『16番目の共和国』といわれたモンゴルが『第2の内モンゴル自治区』になりかねない、という危機感が国民に広がっている」(ウランバートルの外交官)

 大統領は外交面で大きな権限と責任があるため、エンフバヤル氏が「中国とのハイレベルの関係は貴重で維持しなければならない」と話すなど、各候補とも表向き、対中政策をめぐる発言は慎重だ。しかし、国民の対中感情は無視できず、エンフバヤル陣営でも幹部が内輪の集会で「本当は日米との関係を強化するが、中国を刺激するのはまずい」と有権者をなだめたという。

 選挙戦が終盤に入ると、劣勢が伝えられる候補ほど、中国についての発言が過激になってきた。ジャルガルサイハン氏は「モンゴルは食べさせてもらうために中国に依存している。このままだと独立が保てない」、エルデネバト氏は「中国からの食糧輸入を食の安全保障という点から見直す必要がある」などと訴えた。

 一方、各候補は「中国の台頭」と、来年がチンギス・ハーンによるモンゴル帝国建国から800年であることを踏まえて、「国を愛することがなければ、国を発展させることはできない」などとそろって愛国心の強化を呼びかけた。

 モンゴルでは昨年6月の総選挙で、社会主義時代から与党だった人民革命党が過半数割れし、民主党を軸とする野党連合と初の連立内閣(エルベグドルジ首相)を9月から組んでいる。


毎日新聞 (2005年5月23日追記)
モンゴル大統領選: 人民革命党のエンフバヤル党首が当選
2005年5月23日 8時23分

 【ウランバートル大谷麻由美】 22日投開票のモンゴル大統領選で、旧共産系の人民革命党から出馬した国民大会議(国会)議長のエンフバヤル氏(46)は23日未明、「得票率が51%を超えた」と発表し、勝利宣言した。対抗馬と目された民主党候補のエンフサイハン氏(49)も敗北を認めた。中央選挙管理委員会は同日中にも開票結果を正式発表する見通し。エンフバヤル氏は、2期8年務めた人民革命党のバガバンディ大統領の路線継承を強調し、政治の安定と国民融和を訴えており、国民が現実路線を選択したといえそうだ。

 モンゴルでは首相に権限が集まり、大統領は名誉職的色彩が強い。社会主義放棄から13年が経過して民主化、市場経済化路線が定着しており、各候補に大きな政策の違いはなかった。中央選挙管理委員会が発表した推定投票率は約70%で、前回の82.9%を大きく下回り、4回目の大統領選に対する国民の関心の低下が表れた。

 昨年6月の国民大会議選挙後、新議会を2分することになった人民革命党と、民主党など中道右派の野党連合・祖国民主同盟による大連立内閣が初めて樹立された。しかし、昨年12月にエンフサイハン氏が民主党首を解任され、同党の新主流派らが野党連合から一方的に脱退し、人民革命党会派に参加するなど政治の混乱が続いた。

 現在の議会構成は、人民革命党会派が62人、祖国民主同盟の残留組である無会派が13人。人民革命党は大統領ポストを引き続き確保したことで、政治基盤を強めることになりそうだ。

 モンゴルでは92年の社会主義放棄から13年が過ぎ、市場経済化が進んでいる。04年の国内総生産(GDP)は前年比10.6%増を記録し、1人あたりのGDPも605.5ドル(前年比18.3%増)となった。しかし、失業や貧困が深刻化しており、投資促進に向けた法整備や国内産業の発展に向けた構造改革を迫られている。

核拡散防止条約再検討会議

2005-05-22 06:03:15 | 国際
核拡散防止条約(NPT)再検討会議が終ろうとしている。再検討会議は5年に1度開催されることになっているので、次回は2010年ということになる。今回の会議では北朝鮮の条約脱退・核保有宣言への非難は盛り込まれるが、現在纏められつつある最終文書の中では、それがトーンダウンしそうだという。

会議が最終段階に来たところで、北朝鮮とアメリカ政府との不規則接触がおこなわれた。そのため、他の諸国がアメリカと北朝鮮の交渉の行方を見守ろうという姿勢に転じた。

ここへきてアメリカが突然「ニューヨーク・チャンネル」を活用して北朝鮮と接触したことは、6ヶ国協議の主催国であった中国を愕然とさせたに違いない。だが、その中国は会議期間ブッシュ大統領が金正日をえげつない言葉で個人攻撃したことを理由に、「6カ国協議の再開は中国一国の努力だけでは手に余る」と啖呵を切った。

一方、「限定核戦争は現実化しつつある」でも触れたように、今回の再検討会議の課題には「限定核兵器の制限」という重要問題があったはずだ。この限定核兵器制限は、現在のところは兵器のハイテク化を勧めるアメリカを主たる対象と考えていたのであるが、最終文書ではいったいどういう扱いになったのか。

今後、北朝鮮が核実験に踏み切り、弾道ミサイルに核弾頭を搭載するようになれば、アメリカは北朝鮮への攻撃に踏み切る可能性がある。そのとき使われるのは、ピンポイントで地下施設を狙ったりする限定核兵器であろうと考えられている。

こういう事態がやってくる時期はいつ頃なのだろうか。2010年に開催が予定される次回の再検討会議で間に合うのだろうか。


毎日新聞
NPT会議: 最終文書ではトーンダウン? 北朝鮮非難
2005年5月21日 21時10分

 【ニューヨーク会川晴之】 核拡散防止条約(NPT)再検討会議で27日の閉幕時に採択を目指す最終文書について、北朝鮮のNPT脱退や核保有宣言などを非難する文言のトーンが薄まる可能性が出てきた。中国が19日に「6カ国協議の再開は中国一国の努力だけでは手に余る」と明言、金正日総書記の個人批判に踏み込んだブッシュ米政権に柔軟姿勢を求めたからだ。「強い懸念」を表明する文言の明記を求めてきた日本代表団も「中国の立場にも配慮する必要がある」との見解を示した。

 中国は19日の核不拡散委員会での演説で、6カ国協議で中国が果たした役割を強調するとともに、対話による解決を目指す同協議の重要性を改めて強調した。その上で、同協議再開には「特に北朝鮮と米国双方の努力が必要」と指摘した。

 北朝鮮の核保有宣言をめぐっては、国際原子力機関(IAEA)が3月の理事会で、「すべての核開発を検証可能な形で完全廃棄し、できるだけ早期に無条件で6カ国協議に復帰する」ことを求める議長総括を全会一致で採択している。

 日本は、北朝鮮が寧辺の実験用減速炉から使用済み核燃料棒を取り出したうえ、核実験を示唆する発言を繰り返すことを重視。今回のNPT再検討会議でも「強い懸念」を表明し、非難色の濃い文言の採択を参加国に働きかけていた。

 しかし、6カ国協議再開に向けて米国も北朝鮮と接触するなど政治的に微妙な段階にあり、北朝鮮非難を強めることへの各国の支持が得られるかどうか微妙だ。

 高須幸雄・在ウィーン国連代表部大使は「まったく非難色のない文書採択は容認できない」と語り、文言を巡る調整を活発化させる意向だ。

北朝鮮で山火事? もし核実験だったら!

2005-05-21 22:01:31 | 国際
北朝鮮で山火事といわれても、これまでだとそれほど関心が湧くことはなかっただろう。だが、昨今、北朝鮮での核実験が取り沙汰されているわけだから、この山火事は放射能が漏れた場合の重要なシミュレーション実験と考えることもできる。

NASAが発表した衛星写真を見ると、核実験で一定量以上の放射能が漏れた場合、日本上空にはすぐにやってくることがわかる。

それにしてもNASAのこの発表は今月3~4日頃だったらしいが、ニュースにするのが遅過ぎるのではないか。


朝日新聞
北朝鮮で山火事か、煙が日本に届く NASAの衛星撮影
2005年05月21日17時39分

 北朝鮮の東岸一帯で広範囲に煙が発生し、日本海を越えて、日本付近まで流れている様子を、米航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星「アクア」がとらえた。

 北朝鮮上空の写真は今月3日に撮影。焼き畑によるものが多いようだが、大きな帯状の煙は大規模な山火事が原因だと、NASAはみている。

 日本上空の写真は翌4日の撮影。煙が能登半島から新潟付近まで漂っている様子がわかる。

北朝鮮で発生した煙は能登半島北端から新潟方向にかけて帯状に流れた=NASA提供

北朝鮮の東岸一帯から煙が発生している様子。地上の点は発生場所を着色した=NASA提供


もっと詳しく見るには、次のリンク「NASA提供の映像」をクリックしてください。

なお、写真に見える数多くの赤い点は農業の野焼きと考えられる。しかし、刷毛で描いたように流れる煙は森林火災か、類似の天然火災であろう。

NASA提供の映像(横幅900ピクセル)

NASA提供の映像(横幅2,600ピクセル)


NASA
Fires and Smoke in North Korea

On May 3, 2005, the Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer (MODIS) on NASA’s Aqua satellite captured this image of smoke pouring from dozens of fires (marked in red) in North Korea. These fires could be related to agricultural burning; however, the huge plumes of smoke blowing eastward from some of the coastal fires suggest that those blazes are forest or other wildland fires. Much of the Korean Peninsula’s precipitation falls between June and September during the “wet” monsoon phase. Therefore, these fires are burning at one of the driest times of the year.
Image courtesy Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team, NASA-GSFC

対北朝鮮外交、アメリカは手詰まりか?

2005-05-21 17:23:54 | 国際
主権国家論争を脱し、新展開へ?」でも書いたように、アメリカ政府が北朝鮮外交では昨年(2004年)12月4日以来久し振りに「ニューヨーク・チャンネル」を使ったことは、中国政府と韓国政府にインパクトを与えたであろう。両政府はかなり動揺しているのではないか。

問題は北朝鮮の次の手である。北朝鮮は再び「ニューヨーク・チャンネル」を通じてアメリカと接触を試みてくるだろうか。あるいは「ニューヨーク・チャンネル」を黙殺するのか。

ここに核専門家の興味深い見解がある。

産経新聞が伝えるところでは、韓国国防研究院の金泰宇氏は北朝鮮の核実験の可能性について、「北朝鮮に二つの動機がある。第一の動機は、北朝鮮は核保有の野心を、50年間絶やさず燃やし続けてきた国家であること。第二の動機は、金正日政権を維持していこうとする強い意志だ。ブッシュ再選後、北朝鮮はみずからを取り巻く国際環境に強い不安を感じ、その結果、「我々の体制に触れるな」というサインとして「核保有」を表明した。ミサイル輸出や核開発の歴史から見れば、核実験の能力は十分にある」と述べた。

一方、北朝鮮の核戦略について金泰宇氏は、「大国は堂々と核実験をおこない核保有国となってきた。だが、弱小国は国際場裡に核を見せないことが核戦略の基本だ。イスラエルもそうだ。なぜなら、見せた途端、弱小国の核は制裁の対象となるからだ。北朝鮮がそうした基本を踏み外して「核保有」を宣言したのは、金正日政権がいま捨て身で、生きるか死ぬかと考えているからだ。だが、長期的には核保有宣言は自らの体制を脅かすだろう。北朝鮮の核への執着はアヘンと同じで、いまは魅力的だが、今後、対北制裁がおこなわれ、北朝鮮を締め付けるのは間違いない。従って、北朝鮮の崩壊が始まったとみるべきだ」と語った。

金泰宇氏このような見解に基づくなら、北朝鮮は「ニューヨーク・チャンネル」を黙殺すうるのではなかろうか。


毎日新聞
米朝接触: 「6カ国協議への復帰促した」と国務省報道官
2005年5月21日 0時00分

 【ワシントン笠原敏彦】 バウチャー米国務省報道官は19日、米国と北朝鮮の政府当局者が13日にニューヨークで行った実務レベルの接触について、「米国の(北朝鮮に対する)全体的な立場を伝え、6カ国協議への復帰を促した」と説明した。北朝鮮を「主権国家」と認め、攻撃する考えはないという米政府の立場を伝えたことを暗に認めたと言える。接触には、北朝鮮を協議の場に引き出すという当面の目的のほか、外交努力を示すことで協議が崩壊した場合の「他の選択肢」に関係国を結束させたいとの思惑もありそうだ。

 バウチャー報道官は、接触が米国の働きかけによるもので、「特別なことは何もない。さまざまなことが言われる中で、北朝鮮に米国の立場を理解してもらうことが目的だった」と接触の狙いを語った。

 しかし、北朝鮮が寧辺の実験用黒鉛減速炉から使用済み核燃料棒を取り出し、核実験準備情報すら飛び交う中で、米側から接触に乗り出すことは、ブッシュ政権の「脅しには屈しない」という原則に触れ、北朝鮮に譲歩したと受け止められるリスクを伴う。

 それでも、北朝鮮との接触に動いたのは、あくまで6カ国協議での事態打開を目指すブッシュ政権内現実主義派の危機感と、6カ国協議のパートナーである中国、韓国、ロシアから米政府への不満が強まっているからだ。

 デトラニ北朝鮮担当特使は18日、北朝鮮が協議復帰を確約すれば、2国間対話に「極めて柔軟」に応じるとのアメを示した。一方で、北朝鮮があくまで復帰を拒否すれば、「他の選択肢を検討しなければならない」とムチをちらつかせたが、中国はすでに安保理付託に反対を表明するなど、各国をムチで結束させるのは厳しいのが現実だ。

北の舞姫 「明愛(チョ・ミョンエ)」

2005-05-20 17:15:15 | 国際
この2日間程、韓国の記事ばかり読んでいる感じで、ちょっと飽きがきているのだが、先程、朝日新聞が「北の舞姫、韓国CMお目見え ファンサイト会員1万人」という記事をアップした。それでついついまた書く気分になった。

「北の舞姫」ってどんな美女かと写真を見たら、これがまた典型的な「北の美女」なのだ。ここで思わず「典型的な」という言葉を使ってしまったが、金正日総書記の女人趣味とも思える「しあわせ組」の美女群、スポーツ大会の応援のために韓国にやってきた「美女軍団」の美女たち、そういう系統に属するという意味での「典型的な北の美女」なのである。



韓国の若者たちはこういう北独特の美女を見せられると、定めしうっとりとするのだろう。そして、それがサムソン電子の携帯電話の販売増に結びつく程度なら無害であるが、ウリ党による北朝鮮との融合工作の推進などと結びつくと、多少国家的な問題が出てくるのではなかろうか。もちろん、日本もその余波を受けるだろう。

無粋なことを呟いていてもしょうがない。けれども、この明愛という美女も、北朝鮮万寿台芸術団の2002年韓国公演で広く知られるようになった。つまり、北朝鮮側の民族芸術攻勢の先鋒隊のひとりということもできよう。

サムソン電子のこのテレビ・コマーシャルも、放映回数が多くなれば、韓国国民の中に「祖国統一」という動きを拡大する方向に大きな影響力が出てくるのではあるまいか。それでなくとも、5年前に金大中前大統領が平壌に飛んで締結した「南北共同宣言」の記念日が近づいてくる。国を挙げて「祖国統一」へと大いに気分が高揚していくのではないか。とりあえずは、それが反日運動などと結びつくことを恐れなければならない。

鄭東泳統一部長官は、2005年6月15日平壌で開催される「六・一五南北共同宣言5周年記念式式典」に、韓国政府代表団の団長として赴くとしている。この式典では、式典そのものの他に、スポーツイベントや「民族自慢大会(芸術公演)」など、多彩な行事が予定されているようだ。

そのようなさまざまな機会を捉えて、北朝鮮側の芸術攻勢は大いに盛り上っていくだろう。だが、与党ウリ党は、北朝鮮のこういう芸術攻勢をみずからの党勢拡大に利用しようとしている。そして、こうして醸しだされる民族統一というムードに、抵抗感なく惹き込まれていくのが現代韓国の若い人たちだ。流動していく韓国社会。いったい今後どのような変貌を遂げていくのか。私たち日本人は、まさに息を呑むような思いで、悲しい歴史を背負うこの隣人たちを見守っている。


朝鮮日報
「チョ・ミョンエと李孝利が上海で対面、会話はなく」
2005/05/19 11:59

 北朝鮮の舞踊家明愛(チョ・ミョンエ)さんがサムスン電子の携帯電話「Anycall」のCMモデルにキャスティングされたことが明らかになり注目を浴びている中、先月はじめ、この広告の前半部分の撮影が行われた中国・上海の現場で、チョさんと韓国側の出演者である歌手の李孝利(イ・ヒョリ)さんが顔を合わせたことが18日に確認された。

 撮影スタッフとして同行した第一企画関係者はこの日、聯合ニュースとの電話インタビューで「明愛さんと李孝利さんが共演するシーンはまだ撮影していないが、同じ現場でそれぞれ撮影することになり、顔を合わせた」と伝えた。

 しかしこの関係者は「2人は特別な話はしなかった」とし、「撮影の途中、食事の代用として現地で調達した“カップラーメン”を食べもした」とした。

 一角では明愛さんが最初は消極的な態度で撮影に臨んでいたものの、間もなく「やはり私たちは同じ民族です」という言葉などを連発し、活気に溢れる姿を見せたという話もあるが、この関係者は「特別確認するようなことはない」とだけ伝えた。

 この関係者は「現在まで2回分の前半程度の撮影を終えた状態」とし、「このコマーシャルのストーリーとして見れば、2人がが会う直前までの状況。残った撮影も上海で行われる予定」と付け加えた。


朝日新聞
北の舞姫、韓国CMお目見え ファンサイト会員1万人
2005年05月20日11時21分

 北朝鮮の人気女性舞踊家明愛(チョ・ミョンエ)さん(23)が、韓国のサムスン電子の携帯電話のテレビコマーシャルに出演することになった。亡命していない北朝鮮の現役の芸能人が韓国の広告に出るのは初めて。共演するのは韓国の女性人気歌手李孝利(イ・ヒョリ)さん(26)で、メディアの話題をさらっている。

 ソウさんは、北朝鮮の万寿台(マンスデ)芸術団の看板スターで02年に公演で韓国を訪れた際、チャング(伝統的な打楽器)と踊りを披露して注目された。韓国のインターネットではファンサイトもあり、1万人を超える会員が登録している。

 韓国内でのテレビCMやポスターなどに6月末からお目見えする予定。すでに中国の上海などで撮影を始めたという。広告会社によると、CMの基調は「出会いと希望」。離れ離れの2人が携帯電話を通じて、友情をはぐくんでいくストーリー仕立てになりそうだ。

 ソウさんとの契約に携わった広告会社は北朝鮮の芸能関連を扱う企業を通じて同芸術団と接触、契約に成功した。出演料は明らかにしていない。北朝鮮では、携帯電話の使用は規制されており、サムスンの携帯電話も北朝鮮で発売される予定はないという。

剣道の起源は韓国?

2005-05-20 14:28:15 | 国際
今日(2005年5月20日)の産経新聞は、このところ、インターネットで、やや騒然とした様相を呈するようになってきた「剣道(Kumdo)の起源は韓国」という話題を紹介している。インターネットサービス・プロバイダーの中には、実際に関係サイトの削除を求められたりして、厄介な問題に巻き込まれているところもあるようだ。

まずは今朝の産経新聞の記事から;―

産経新聞
「剣道の起源は韓国」ネット書き込みで広がる波紋
2005年5月20日 07:13

≪問い合わせ、抗議殺到…全剣連は火消しに懸命≫

 「剣道の起源は韓国」、「“韓国剣道”を五輪種目に」-。こんなインターネットの書き込みや「記事」が相次ぎ、波紋を広げている。竹島(韓国名・独島)の領有権問題や歴史認識をめぐって日韓関係が微妙な時期だけに、全日本剣道連盟(全剣連)には、問い合わせや抗議が急増。全剣連は火消しに追われている。(関厚夫)

 国際剣道連盟によると、剣道の競技人口は世界中で約200万。日本(130万人)と韓国(60万人)でその大半を占める。

 “韓国起源説”は以前から韓国内の一部で主張されてはいたが、中韓両国で反日感情が高まるなか、こうした説が武道関係の日本語サイトなどで紹介されると、関心が一気に高まった。

 ネット上では韓国系の団体が、「韓国の古武術コムドが日本に伝わり、現在の竹刀や防具が生まれた」と記したり、日本の剣道の歴史にふれず、『剣道』がコムドの日本語訳であるかのような記述(実際は剣道の韓国語訳がコムド)をしている。

 また日本語のサイトでは、「世界40カ国の代表団とともに、韓国剣道連盟が世界剣道連盟を設立。日本の代わりに韓国伝統剣道が『世界化』に着手」とする「記事」も紹介されている。

 よく読むと、4年も前の出所不明の話なのだが、全剣連には、「“起源が韓国”とは何ごとか」、「このままでは剣道が韓国に乗っ取られてしまう」などとする叱責や質問のメールやファクス、電話が多いときで1日数十件にものぼった。

 剣道は武士の生活の中から生まれたもので、大正年間に各種の剣術や撃剣が「剣道」に統一された。そのルーツが日本にあるのは疑う余地がない。全剣連はホームページで剣道の歴史を日・英両国語で紹介し、「日本の歴史の中で生まれ育ったもの」と改めて強調。打ち消しに懸命だ。このような説が飛び出す背景には韓国で大小100もの「剣道団体」が乱立し、勢力争いを展開していたり、韓国古来の剣術やコムド、剣道が混同されている事情もある。

 韓国最大の組織である大韓剣道会の徐丙●(金へんに允)専務理事は、競技・スポーツとしての剣道の起源が日本にあることを認めた上で、「韓国で『剣道』の名称を使用する団体には大韓剣道会を破門されたところもある」と話す。

 「剣道団体」には韓国式の防具を使ったり、独自の段位を認定したりしている所も多い。「会員20万人」という統一世界海東剣道協会は、「われわれの組織は漢字で『剣道』をあてるが、日本の剣道とは関係はない。韓国古来の武道の一つだ」と主張する。

 こうした動きに、全剣連の竹内淳常任理事は「全剣連としては歴史的事実を広く伝えるとともに、剣道が国際的に認知されるよう働きかけてゆきたい」としている。【2005/05/20 東京朝刊から】

インターネット世界を話題にした新聞記事はいつもそうなのだが、記事中にURLが書かれていないから、「書き込みが相次ぎ」とか「抗議が殺到」などと書かれても、読者は後追いすることができない。インターネット世界を実感することができず、お茶の間だけのつまらない話題に留まってしまうのだ。

しかも、産経のこの記事は韓国人を取材していない。唯一、大韓剣道会専務理事という肩書を持つ徐丙●(金へんに允)という人物が出てくるが、彼は日本航空ソウル支店の幹部でもあり、おそらく親日家であろう。大韓剣道会役員の発言を求めるのは悪くない。けれども、日韓世相の昨今のギャップを知ろうとするには、日本航空職員の韓国人にインタビューしても、まともな応えは得られまい。

この問題を全般から理解するには、私が2005年3月31日日に友人に書き送ったメールを読んでいただくのが一番だと思う。このメールの中には韓国語の文献の和訳が載っている。この和訳はインターネットで探し当てたものだが、いまはもう読むことはできない。そのときの韓国語の文章が、現在はもっと過激な反日感情の文章と置き換っているからだ。そこで翻訳者の了解を得ぬままではあるが、私のメールともども掲載させていただくことにしたい。

もちろん、皆さん方も本年3月末時点の文章ばかりではなく、現在掲載されている「もっと過激な反日感情の文章」の和訳も併せてお読みいただくことが望ましいと思う。それは現在、「韓国語のホームページを日本語で読む」というサイトで読むことができる。だから、過日、反日の嵐が荒れ狂ってから、これらの文章がどう書き改められたか、そのあたりを比較しつつ読みくらべていただくとよいのではなかろうか。


送信者 : Takahiko Shirai
宛先 : ○○○○ (私の古い友人たちです)
送信日時 : 2005年3月31日 15:52
件名 : 剣道の起源は韓国か?

このところ、インターネットの世界では「韓国に剣道が乗っ取られつつある」などという意見が散見されますので、いったいこれはどういうことなのかと調べてみましたら、大韓剣道協会(KKA)のウェブサイトで次のような一文を見つけました。

といっても、私はハングルが読めません。次に示した日本語訳は、韓国においていま起こりつつある由々しい事態を日本人に知ってもらうため、ある人物がわざわざ訳したものです。

まず冒頭から読んでいただきましょう。驚くなかれ、「あなたは剣道の起源が日本だと思っているかもしれない。しかしながら、それは明らかに間違いである。日本は剣道をスポーツとして発展させたが、剣道の起源は韓国にある」というのですぞ。

何を荒唐無稽なことをいってるのかと思うでしょう。けれども、これは我国の全日本剣道連盟(All Japan Kendo Federation)の韓国版に相当する組織で、国際剣道連盟(International Kendo Federation)にも加盟している大韓剣道協会(KKA)のウェブサイトの中の記述なのです。


剣道(Kumdo)の歴史
(日本語訳)

大韓剣道協会(KKA)

 剣道(Kumdo)とは剣術である。

 あなたは剣道の起源が日本だと思っているかもしれない。しかしながら、それは明らかに間違いである。日本は剣道をスポーツとして発展させたが、剣道の起源は韓国にある。

 韓国には固有の剣術である「朝鮮勢法(Cho Sun Se Bup)」と「本国剣法(Bon Gook Gum Bup)」があった。
 
 まず、世界最古の剣術である「本国剣法」を紹介したい。約2000年前の三国時代は、高句麗(Koguryo)、百済(Paekche)、新羅(Shilla)が互いに争いを続け、また中国の漢(Han)とも東アジアの覇権を求めて闘争状態にあった争いの時代と記録されている。

 その時、新羅の領土を守る花郎(Hwa Rang)という武士により、33種の動きで構成される「本国剣法」が開発された。

 「本国剣法」に加えて韓国が誇るのは、中国の「武備志(Moo Bee Jee)」という本において紹介されている「朝鮮勢法」である。1621年、茅元儀(Mo Won Eui)という中国人が約2000冊の軍事戦術の本を研究した後、「武備志」という著書を刊行した。
 
 「武備志」の中で茅元儀によって紹介されている唯一の剣術は「朝鮮勢法」であった。「朝鮮(Cho Sun)」とは韓国の古名である「朝鮮王朝」を意味する。茅元儀は、精錬された剣術は中国にはなかったが、朝鮮王朝にあったといっている。

 15世紀の朝鮮王朝初期、政治的およびイデオロギー的土台が劇的に変わった。これらの劇的変化は武士階級とその母胎の消失という結果をもたらした。剣術はこのようにして、文官階級より劣っていると見なされた武官階級(国軍)の中にだけ徐々に限定されていったのであった。

 近代化の時代の1896年、剣術は新設された警察学校の必須訓練課目に選ばれた。後にはスポーツとして、あるいは人格形成や精神鍛錬のためにおこなわれるよう、剣術の近代的混合物である剣道(Kumdo)が開発されたのである。

何か韓国のナショナリズム丸出しといった感じの文章ですが、同じ大韓剣道協会(KKA)のウェブサイト中では、「剣道とは」という次に示す詳しい解説があります。ここでも剣道は日本発祥のものという記述は見られません。けれども、必ずしも「剣道の起源は韓国にある」とは断じてはおりません。

つまり、上に掲げた「剣道の歴史」という小文は、韓国でいま盛り上がりつつある反日ナショナリズムに応じて、後からウェブサイトに挿入されたものと推測されるのです。

こういう各国の国情の違いにこだわっているべきではないかもしれません。けれども、「韓国よ、君の国はいったいどうなってるんだい?」と言いたくなるような感じではあります。


剣道とは
(日本語訳)

大韓剣道協会(KKA)


 剣道とは言わば刀剣の戦いだ。 近頃はほとんど探すのが難しいほどに影を潜めてしまったが、町内の子供たちが集まって木の棒で戦いの遊びをしていたこと、それがまさに剣道の原形である。 その歴史は数千年あるいは数万年前に遡れるが、我が国では子供たちだけでなく大人たちの試合で、甚だしくは宮中でまで棒戯や撃剣という名前で行われていたのだ。

 エジプトではBC1500年頃に既に棒戦 (stick fighting) が大きく流行していて、いまだに当時のレリーフが残っていて見る人を驚かせている。 また、新羅の花郎徒において撃剣が必須の修練科目だったことはよく知られた事実であり、その根拠がまさに「本国剣法」である。 この「本国剣法」は現存する世界最古のものであり、また別の驚きであると同時に誇らしい我々の遺産でもある。 これと共に、中国の茅元儀によって伝えられた「朝鮮勢法」もまた古代剣法の精髄であり、現代剣道の母胎になるものだ。

 刀(木・石・鉄などの材質に関係なく)は動物の狩りから使われ始め、戦争で殺傷用にあるいは護身用に数万年間使われてきたし、時代や国によって形態と技法も多様に発展してきた。 しかし、幼い頃の純粋だった刀の戦いの遊び、もちろんそれが本能的で、摸倣的な行動の表出であっても、それ自体の楽しみと懐かしさ、そして人間だけが持つ馴致能力などが複合的に交わって、刀の戦いを殺傷目的でない心身の修練のための教育的武戯または体育競技として定着し、今日に至るのである。

 現在の剣道競技が作られたのはわずか100年余り前であり、いまだに世界的なスポーツとして定着していない。 今後は用具をもう少し科学的に改良し、競技方式も現代化して、より健全で価値ある体育競技として活性化し、全人類から愛されるようにすべきだろう。

 1) 剣道の由来

 剣の歴史は人類の歴史と共にする。 文明の発達にしたがって、剣は石剣から銅剣,鉄剣へと進化した。 特に朝鮮正祖14年(1790年)に刊行された武芸図譜通志に収録されている本国剣法は、新羅花郎である黄倡郎から起源した世界最古の剣法だ。

剣道という用語は、中国の漢書芸文志に初めて現れ、我が国では1896年に治安の必要性から警察の教習科目として実施されたのが現代剣道の嚆矢だ。

2) 剣道の定義

 剣道は体育競技の一種目であり、その名称だ。 刀剣の力学的原理を応用して競技を行ない、定められた競技・審判規則によって勝敗を分ける格闘技的個人競技だ。

 巧芸と競技の区分によって、刀剣(刀・剣・木刀・竹刀)は区別して使用する。

 3) 剣道の目的

 剣道の目的は;

 ① 礼儀を正しくする。 礼儀は人間が守るべき最も根本的で規範になる相対的行為だ。 剣道から礼儀を失えば、ただ刀剣を使用する闘争ばかりが強調されるおそれがあるから、これを警戒しなければならない。

② 心身を健康にする。 体と心を健康にしようとするなら、修練を通じて力と技量を養い、苦難に耐えてこれに打ち勝つことをやりがいと楽しみとしなければならない。 ③ 信義を守る。 刀剣は正しいことのために使うものだから、これがまさに活人剣である。 不当なことをなくし、信頼で付き合い、献身的に社会に奉仕する人間になるように自ら努力し、これを実践しなければならない。

 4) 剣道の特性

① 精神的伝統文化の継承である。 韓国剣道は、仙道にともなう尚武精神や、風月道に立脚した世俗五戒など、固有の精神世界から始まった忠・孝・礼・道・徳の伝統思想を含んでいる。

② 心身の調和である。 気剣体一致,心気力一致の修練過程で、高度な集中力と忍耐心,果断性,落ち着きなどの強靭な精神力と共に、全身の平均した発達と特に心臓と肺機能の強化で、持久力,瞬発力,敏捷性の養成に優れている。したがって、成長過程の青少年たちの健全な情緒育成と礼節教育に大きな助けとなる。

 5) 剣道用具および競技方法

 剣道用具には、道服,護具,竹刀,木剣などがあって、道服は白色または紺色、上衣と下衣に区分される。 護具は頭と顔を保護する護面,手首を保護する護腕,胸と胴を保護する甲、腰の下に巻く甲裳に区分され、半永久的に使用することができる。 竹刀は年齢と性別によって、その長さと重さが規定されていて、(大学,一般の場合、長さ120cm,重さ500g以上),競技場の規格は9~11mの長さの正方形だ。

 剣道競技は団体戦(5人組、7人組)と個人戦に区分される。 勝負は竹刀で相手の有効撃刺部位(頭,手首,腰,のど)を正確に撃刺すれば得点として認められ、制限時間(5分原則)内に二本を先取した者が勝利する。

 6) 剣道の段

 剣道に入門して3ヶ月になると、基本を習得して護具を着用できる。 剣道の段には初段から9段まで単位があり、一日平均1時間ずつ1年ほどを着実に修練すれば、初段に入段できる。 現在、国内の有段者数は約10万人に達し、女性の有段者数も3,000人に迫っている。

 7) 世界の中の剣道

 現在、剣道はアジア・アメリカ・ヨーロッパなど世界40ヶ国余りに普及しており、第1回世界剣道選手権大会が1970年に日本で開催されて以来、3年ごとにアジア・アメリカ・ヨーロッパの順へ回りながら開催されている。

 世界的に国際剣道連盟 (I.K.F、International Kendo Federation) が組織されていて、世界剣道選手権大会の開催および主管、学術研究およびセミナー開催、剣道普及、情報交流などの主要事業を計画して管掌している。

 我が国は世界剣道選手権大会に第1回大会から参加し、1988年(第7回韓国)、1991年(第8回カナダ)、1994年(第9回フランス)、1997年(第10回日本)大会で、4連続団体戦準優勝を取るなど、団体戦・個人戦で着実に入賞して剣道強国として成長してきた。

 また、去る2000年3月、米国のサンタクララでの第11回世界剣道選手権大会で、我が国は個人戦でホン・ソンス(富川市役所)選手が個人戦3位に、そして団体戦では決勝で日本に惜しくも連敗し、準優勝を取った。

 8) 社会体育としての剣道

 今日、余暇時間の増加,生活の質的な向上,そして健康に対する新たな認識によって、スポーツをストレス解消,精神鍛練など、個人的な満足を得るための手段などとして認識されるようになった。

 最近、生活体育として脚光を浴びることになった剣道も、こうした側面から生活体育として大きな脚光を浴びるようになった。 剣道は元々激しい運動だが、保護装備が確実であり、負傷の危険が少なく、各自の力に合うように運動強度を調節でき、子供から老人に至るまで誰でも楽しむことができるという点が、生活体育人たちに大きな好評を得ている。

 現在、我が国には約60万の剣道人口が各道場および社会センター、同友会などで活動している。 本会に登録されている団体チームだけでも400チームを越える。 また、全国的に約400余りの私設道場で剣道を教えている。 各道場では、剣道入門者の数が大きく増加していて、韓国剣道の将来を明るくしている。

南北次官級協議、「想定済みである」

2005-05-20 02:52:55 | 国際
このエントリーのタイトルで、思わず南北次官級会談の結果を「想定済み」としてしまったが、この「想定済み」という言葉は、今年2月、3月の頃、ライブドアの「ホリエモン」こと、堀江貴文代表がしばしば口にしていた決り文句だった。彼は正確には「想定済みである」という言い方をしていたので、ここでも「想定済みである」と改めることにした。

あの頃、ライブドアは、この決り文句をプリントしたTシャツを販売していた。「Tシャツコミュニケーション」という企画だったように思う。

いまそのサイトを覗いてみると、ホリエモンの決り文句は「想定済みである」だったのではなく、チェックボックス付きの「想定済みである」、つまり、「Checked Checkbox想定済みである」だったらしい。

記者からの質問を受けたとき、ホリエモンの頭の中には、まず、「No-checked Checkbox想定済みである」という1行の映像が浮かびあがってきていたのだ。その映像のチェックボックスの中に、彼自身は心の中でチェックマークを付けたり、外したりしていたのだ。だからこそ、あのとき彼特有ともいえる、ちょっと夢想するような感じの虚ろげな表情が表われていたのだろう。

ホリエモンは、少なくともチェックマークを付けようか、付けまいかと考えて迷っていたのだから、ぶっきらぼうに「想定済みである」としか言わなくとも、それなりに大真面目だったのだろう。テレビで彼の姿を目にする機会が減ってくると、かえって懐かしい感じがしてくるものである。

そして、下に掲げた「決まり文句Tシャツ」のデザインは、「ホリエモンそのもののモチーフだけでなく、ホリエモンスピリッツのメタファー、新しいメディアのありかた、など、広い意味での応援デザインとなっています」というコピーで高らかにうたっている。凄まじいといえばまことに凄まじいばかりの商魂だ。多分、このコピーの中の「ホリエモンスピリッツのメタファー」というのが、チェックボックス付きの「想定済みである」ということになるだろう。




その後、このTシャツ販売はどうなったか見てみると、「残念ながら」というべきか、「想定済み」というべきか、「販売中止」となっていた。

考えてみると、この Tシャツコミュニケーション」という事業はなかなか面白いと思う。確かに、Tシャツは衣装というよりコミュニケーションの道具だ。だが、どうせならこの「Checked Checkbox想定済みである」のTシャツも、チェックマークの部分は付けたり外したりできるようにしておいたほうがよかったのではあるまいか。

それにしても、南北次官級会談の結果については「想定済みである」というしかない。初めからチェックマークの部分を付けたり外したりできる外交交渉だったのか、それとも初めからチェックボックスなど付いていなかったのか。

そもそも金正日総書記の独裁国家北朝鮮との外交交渉は、次官級、閣僚級などといった協議・会談の類はほとんど意味がないのではあるまいか。

小泉首相が突然のようにしてみずから平壌に飛び込んでいったのも、いまさらながら、よくわかる感じがする。彼は外交についてはあまり知らないかもしれないが、人の心の機微には通じている。しかし、まあ、そんなことなら小泉首相に限らず、一般人にとっては「あったりまえのことじゃないか」といいたくなる。だが、韓国の外交官たちには、そこのところがわかっていないのだろう。(2005年5月20日記述)

今回の次官級協議の結果について鄭東泳統一部長官は、「気持ちが明るく(なり)、うれしい」と述べたそうだ。その華やいだ気持は、自分の華やかな出番(6月に予定される南北閣僚会談と南北共同宣言5周年記念行事への韓国代表団団長)を作ることができたからだろう。

鄭長官は今回の次官級協議を自分の政治的足場を固めるために利用したのだ。そのことは誰の眼にも明白な事実であろう。鄭長官のこのような行動ひとつにも、韓国の政治土壌がまだまだ未熟であることを垣間見ることができる。だから、朝鮮日報は社説で「こんな南北会談が何がうれしいか」とした上で、「鄭長官は南北会談で先公後私の姿勢を失ってはならない」と釘をさしているのだ。(2005年5月21日追加)


朝鮮日報 (2005年5月21日追加)
【社説】 こんな南北会談が何がうれしいか
2005/05/20 19:54

 鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官は20日、南北次官級会談の結果を説明しながら、「明るい気持ちで報告できることをうれしく思う。国民の気持ちも同じではないかと思う」と述べた。

 今回の会談で合意された内容は、韓国が北朝鮮に20万トンの肥料を支援する上、南北長官級会談を再開し、平壌(ピョンヤン)で開かれる6.15南北共同宣言5周年行事に長官クラスを団長とする代表団を派遣するというもの。

 現在の南北関係において、もっとも急がれる核問題については合意文に一文字も盛り込まれていない。核の脅威による非常事態下で、今回の会談を見守っていた国民や世界が失望するほかない結果だ。

 にもかかわらず、鄭長官は気持ちが明るく、うれしいと言っている。鄭長官は別として、どうして国民はうれしがっているというのか。

 今回の会談に関して国民が感じる虚脱感について担当長官がこのように無頓着では、どうやって国民と共に南北関係を切開いていくのか。

 鄭長官は、ひたすら自らの平壌入りや自らが代表となる長官級会談を開催できるという事実が、感無量かもしれない。もちろん、鄭長官自らの政治的足場を固めるためにも追い風になるだろう。

 しかし、鄭長官が北朝鮮入りし、長官級会談が開かれるとしても核問題に突破口が切開かれる可能性はほとんどない。

 今回の次官級会談の進み具合を見れば、長官級会談でも北朝鮮は核問題に対してずる賢く原則的な点に触れるだけに終わり、追加の肥料支援を取り付けようとするだろう。

 このように政府が核問題を南北会談の決まり文句にしてしまえば、南側が北朝鮮の「韓半島非核化共同宣言」破棄を認めたも同然になってしまう。

 今回の会談を控えて内外の専門家たちは、政府が人道的な観点から肥料支援をしても、「会談を通じて韓半島に立ち込めた核の暗雲を吹き飛ばすためには南北対話と協力の暫定的中断も辞さない」という強いメッセージを北朝鮮に送らなければ、核問題に関連した国々が韓国を見るいぶかしい視線は変わらないだろうと警告してきた。

 現在、南北会談の最大の目標は、韓半島の首を締めている核脅威を取り除くことだ。従って、核問題が排除された南北会談とは、南側の政治家が自らの政治的位置を際立たせるためのアクセサリーに過ぎないのだ。

 鄭長官は南北会談で先公後私の姿勢を失ってはならない。


朝鮮日報
 (2005年5月21日追加)韓国頼み、知られたくない? 肥料支援、北朝鮮伝えず
2005年05月20日23時09分

 韓国政府は21日、南北次官級会談で支援に合意した20万トンの肥料輸送を開始する。種まき期に間に合うよう早期支援を訴える北朝鮮側の事情を考慮した異例のスピード発送だが、北朝鮮の国営メディアは20日現在、肥料支援合意に触れていない。「韓国頼み」を国民に知られたくない事情があるようだ。

 韓国統一省によると21日からトラックで毎日1250トンずつ、計1万トンを南北連結道路で輸送。残り19万トンは25日から海路で運ばれる。早く手に入れたい北朝鮮側の要望で韓国船11隻のほか、北朝鮮貨物船10隻も韓国の港に入り、肥料を積み込む。費用は900億ウォン(約96億円)で、6月中に運び終える予定。

 ラヂオプレスなどによると、北朝鮮メディアは次官級会談後、共同報道文の肥料支援部分には触れず、「人道主義と同胞愛的立場から協力事業を積極的に推進することにした」(朝鮮中央放送)とだけ伝えた。専門家は「韓国なしでは立ちゆかない実情を明らかにしたくないのではないか」との見方だ。


毎日新聞
南北次官級会談: 合意文発表も北朝鮮反発で核問題抜きに
2005年5月19日 22時34分
 
 【ソウル堀信一郎】韓国と北朝鮮の次官級会談は19日朝、北朝鮮の開城(ケソン)で再開し、同日夜、3項目からなる合意文を発表した。韓国側は合意文に北朝鮮の核問題を盛り込もうとしたが、北朝鮮の反発で「核問題」抜きの合意文となった。

 合意文は、まず00年6月の南北首脳会談から5周年を迎えることに触れ、「南北関係を積極的に改善し、朝鮮半島の平和のために共に努力することにした」と会談を評価した。

 続いて、(1)平壌で6月15日に開かれる南北首脳会談5周年記念行事に、韓国は閣僚級を団長とした代表団を派遣する(2)第15回南北閣僚級会談を6月21~24日までソウルで開催する(3)韓国は5月21日から20万トンの肥料を北朝鮮に提供する--の合意事項を挙げた。南北閣僚級会談は昨年5月の第14回会談以降、中断している。

 韓国同行取材団によると、韓国側首席代表の李鳳朝(イボンジョ)統一省次官と北朝鮮側代表の金万吉(キムマンギル)祖国平和統一委員会書記局副局長は、断続的に協議を続けた。


讀賣新聞
南北閣僚級会談再開で合意、6月21日からソウルで
2005年5月19日23時11分

 【ソウル=福島恭二】北朝鮮・開城(ケソン)で開かれていた韓国と北朝鮮の南北次官級会談は19日、中断している閣僚級会談を6月21日から24日までソウルで開催することなど3項目の合意を盛り込んだ「共同報道文」を発表し、終了した。

 韓国側が求めていた朝鮮半島の非核化共同宣言の順守など核問題への取り組みは、北朝鮮側が拒否したため共同報道文に盛り込まれなかった。

 共同報道文はこのほか、北朝鮮が要求した肥料50万トンのうち、韓国が20万トンの支援を今月21日から実施することをうたった。6月14日から17日まで平壌で開かれる「南北共同宣言」採択5周年記念行事に韓国側が閣僚級を団長とする代表団を派遣することも盛り込まれた。韓国側は鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相が団長を務めるとみられる。会談は北朝鮮の核問題などを巡って難航し、会期は2日延長された。