Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

主権国家論争から脱し、新展開へ?

2005-05-20 02:24:30 | 国際
ブッシュ政権のやり方は、アフガニスタンやイラクなどという国家の「主権」を果たして認めているのか、という疑問を抱いている向きはかなり多いだろう。

北朝鮮は、そこをアメリカ外交の弱点として、これに噛みついた。アメリカ側に手強い一球を投げ込み、核疑惑追求に対する時間稼ぎに成功したのだ。

そのような北朝鮮に対し、去る5月9日、ブッシュ大統領と同行してモスクワに滞在していたコンドリーサ・ライス国務長官は、モスクワの米大使館でCNNのインタビューに答えて、「当然、北朝鮮は主権国家よ!」と発言して北朝鮮にボールを投げ返したのであった。

しかしながら、ライス長官のこの一球は北朝鮮までは届かなかったらしい。美人女優が始球式で投げたボールのように地面を転々とするばかりで、北朝鮮に対して果たして効果があったのかどうか疑問だった。もっとも、主権国家論争などというものはリアリズムそのものといえる国際外交舞台では神学論争の類いに過ぎないから、元々自分が投げたボールとはいえ、北朝鮮としてもそれをそのまますぐ投げ返されても困るのである。

そこで、アメリカ政府としては、デトラニ北朝鮮担当大使と国務省のフォスター朝鮮部長が、5月13日、ニューヨークの北朝鮮国連代表部を訪れ、朴吉淵大使と韓成烈次席大使と直接会談して、ライス国務長官がモスクワで投げたボールを丁重に手渡したというわけだ。

北朝鮮の6ヶ国協議復帰に向けての交渉は、アメリカが頼みにしてきた中国政府も韓国政府も動きが悪く、むしろブッシュ政権のやり方に無言の反抗を示しているようにも見えていた。だから、ブッシュ政権が突然このような「ニューヨーク・チャンネル」を活用したことは、中国・韓両政府に対してある程度の動揺を与えたのではなかろうか。アメリカと北朝鮮が直接話し合うようになれば、北朝鮮の核疑惑は中国政府や韓国政府の思惑を大幅に越えた着地点に向う危険性がある。

今回のアメリカ側からの接触に対して北朝鮮が何か回答を示すかどうか、いまだ予断を許さない。

ニューヨーク・チャンネルか! 第二次世界大戦の揺るぎない戦勝国家であったアメリカは、他国にはあり得ない外交舞台を持っている。北朝鮮はアメリカと国交がない。だから「駐米大使館」はないが「国連代表部」ならあるのだ。

でも、ニューヨーク・チャンネルを使うアメリカのこういう外交のやり方は、果たして北朝鮮を「主権国家」として認めていることになるのだろうか?


朝鮮日報 (2005年5月20日追加)
韓米、北の6か国協議復帰向けた作戦あり?
2005/05/20 19:31

 北朝鮮の核問題をめぐり、南北と米国の動きが尋常ではない。作戦に従って動いているかのように見られるほどだ。一部では、6か国協議の再会につながる可能性も予想されている。

 米ホワイトハウスは20日(以下韓国時間)「ニューヨークで北朝鮮側と接触したことがある」とし、「核問題に関する米国の立場をはっきりさせる機会だった」と発表した。

 北朝鮮の外務省スポークスマンは今月8日、「米国が、わが国を主権国家として認めるというのが事実かどうか、直接会って確認したい」と述べた。米朝接触はこれに対する答えだ。

 政府当局者は当時の北朝鮮の発表を「協議復帰の可能性を示唆したものと受け止めた」と述べた。その翌日の9日、ライス米国務長官は「北朝鮮を主権国家として認める」と述べた。

 その頃、モスクワでの戦勝記念行事で韓米中ロの首脳たちは「6か国協議の枠組みを保ちながら、外交的努力を強化する」ことで合意を見た。強硬な態度を取っていたブッシュ大統領も一歩引いた。

 宋旻淳(ソン・ミンスン)、クリストファー・ヒル次官補などの実務者たちは「さらに強い外交措置を取る予定」と発表した。その後の14日、ニューヨークでの接触が実現したのだ。政府当局者は「南北会談が実現したのも、その1~2日前」と述べた。

 これを肯定的なサインとして受け止めれば、「北朝鮮の協議復帰打診、米国の強硬対応の保留、南北の接触、米朝の接触再開、南北当局の会談再開」という順で進んできたのだ。日本政府のスポークスマンである細田官房長官も20日、6か国協議再会の可能性が高まったと見られると述べた。

 しかし、楽観視するのはまだ早い。北朝鮮はニューヨークでの接触以降も、毎日のように米国を非難した。祖国平和統一委員会(朝平統)は19日、「米国が6か国協議云々するのは、当てにならない」とした。朝鮮中央通信は「主権国家認定は上辺だけ」と非難した。

 真意がどうであれ、依然として北朝鮮の態度は「復帰はできない相談」と見える。

 韓国政府当局者は「北朝鮮が2週間以内に返事をすることにしたという、日本側の報道は事実ではない」とし、「北朝鮮は南北会談の結果を総括したうえで、近いうちに公式立場を発表するものと見られる」とし、「どっちに賭けるかと訊かれたら、私は発表する方に賭ける」と述べた。

権大烈(クォン・デヨル)記者 dykwon@chosun.com


朝日新聞 (2005年5月20日追加)
北朝鮮との直接対話を確認 米報道官
2005年05月20日10時14分

 バウチャー米国務省報道官は19日の定例会見で、ニューヨークで13日に米朝高官による半年ぶりの直接対話が行われたことを確認した。米国側の提案で実現したことを認めたうえで、「米国の政策の全体像」を北朝鮮側に理解させ、6者協議への復帰を促すための会合だったと説明した。

 国務省高官は「私たちの政策を北朝鮮が私たちの口からストレートに理解すべき段階」との判断が背景にあったことを明らかにした。

 バウチャー報道官は、米国側が北朝鮮側に「6者協議が核問題を解決するための最善の道」と述べ、6者協議への復帰を求めたと説明した。また、ブッシュ政権が北朝鮮の主権を認めることや、北朝鮮を攻撃する意図がないことなどを説明したことを示唆した。

 同報道官によると、直接対話後、北朝鮮側からは連絡がないという。


毎日新聞
米朝接触: NYで実務レベル 米が6カ国協議復帰を促す
2005年5月19日 20時38分

 【ワシントン笠原敏彦】 米国務省は19日、米国と北朝鮮の政府当局者が13日にニューヨークで実務レベルの接触を行ったことを明らかにした。両国の接触は昨年12月以来、約5カ月ぶり。交渉筋によると、米側は北朝鮮が求める米朝2国間対話に柔軟な姿勢を示し、昨年6月以来中断している6カ国協議への復帰を促した模様だ。

 国務省は、今回の接触が北朝鮮国連代表部とのいわゆる「ニューヨーク・チャンネル」で行われ、「米国の政策を伝えるもので、交渉ではない」としている。米朝の接触は昨年12月3日以来で、米国のデトラニ北朝鮮担当特使らが朴吉淵(パクキルヨン)大使らと会った。

 韓国の聯合ニュースによると、デトラニ特使は北朝鮮側に、北朝鮮を主権国家と認める▽北朝鮮を攻撃する考えはない、と伝えた。また、交渉筋によると、米側は北朝鮮が6カ国協議へ復帰すれば、現在は実務的な連絡経路であるニューヨーク・チャンネルを実質的な対話の場に格上げする考えがあることも示したという。

 北朝鮮の外務省報道官は8日、6カ国協議復帰の条件として米国に主権国家認定を求めていることを確認。「6カ国協議で(米朝)2国間協議をする準備があるのか、米国と直接会い、確認してから(協議復帰を)最終的に決心する」との方針を示している。今回の接触は、この呼びかけに米側が応じた可能性が高い。

 米側は、ライス国務長官が3月の東アジア歴訪で北朝鮮が「主権国家」であることをすでに認めている。6カ国協議の枠内での北朝鮮との2国間協議にも応じる姿勢も繰り返し表明しており、今回の接触ではこうした米国の方針を直接説明することで、協議再開問題でのボールを北朝鮮側に投げたとみられる。


讀賣新聞
米政府、北朝鮮を「主権国家」と容認 直接対話で明言
2005年05月19日17時49分

 【ワシントン=菱沼隆雄】 米国のデトラニ6か国協議担当特使が13日にニューヨークの北朝鮮国連代表部を訪れ、韓成烈(ハン・ソンリョル)次席大使らに対し、北朝鮮を「主権国家」と認めることや同協議の枠内で米朝協議を行う用意があることなど米政府の方針を直接伝え、6か国協議への復帰を強く促していたことがわかった。米政府筋が19日、明らかにした。

 北朝鮮側は本国政府と連絡をとり「可能な限り早く」返答すると応じたという。ホワイトハウスのスポークスマンも米朝接触があったことを同日、認めた。米朝接触は、2004年12月以来、約半年ぶり。

 北朝鮮の外務省報道官は8日、「米国が北朝鮮を主権国家と認定し、6か国協議の枠内で米朝協議を行う用意があるとの報道を確認してから(協議復帰について)決定する」としていた。特使らは北朝鮮が求める「安全の保証」については、核放棄に応じた場合、6か国協議参加国による多国間で行う用意があると説明した。


朝日新聞
米政府、北朝鮮を「主権国家」と容認 直接対話で明言
2005年05月19日17時49分

 北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の再開を目指し、米国務省のデトラニ担当大使が先週末の13日に北朝鮮国連代表部を極秘に訪れ、金正日体制下の北朝鮮を「主権国家」と認める方針を直接対話で初めて明言していたことがわかった。ブッシュ政権は北朝鮮を攻撃する意図がないとも強調。核の放棄を前提に休戦状態の終結や米朝関係の正常化の可能性に言及し、6者協議への復帰を促した。

 複数の6者協議関係者が明らかにした。同代表部は米国側のメッセージを平壌に伝えることを約束したという。米政府高官は朝日新聞記者に「やるべきことはやった」と話し、米政府としては外交努力を尽くしたとの立場を強調した。北朝鮮の出方次第では、今回の米朝対話が6者協議の存続がかかった最後の岐路になる可能性もある。

 デトラニ大使と同省のフォスター朝鮮部長が13日、ニューヨークの北朝鮮国連代表部を訪れ、朴吉淵大使、韓成烈次席大使と会談した。双方の顔合わせは昨年12月初め以来、約半年ぶり。

 会談の中でデトラニ大使は、6者協議への復帰と核の放棄を求めた。その際、ライス国務長官が3月以降、北朝鮮が「主権国家」であるとの認識を何度も示していると指摘。ブッシュ政権は北朝鮮の主権を認め、同国を攻撃、侵略する意図がないと明言した。

 また、北朝鮮が核を放棄する交換条件のひとつに「安全の保証」を挙げていたことを踏まえ、北朝鮮が6者協議の再開に応じれば、その枠組みの中で米朝2国間協議を行い、北朝鮮の安全保障上の懸念の解消に向けた話し合いをする用意があるとも表明した。

 さらに、昨年6月の6者協議で米国側が示した解決策を改めて説明し、北朝鮮が核の完全な放棄を確約すれば、周辺諸国から重油などのエネルギー支援が得られることなどを強調した。ただし、米朝関係の正常化にはミサイル輸出や人権弾圧、麻薬や偽札の密輸などの問題の包括的な解決が前提になるとも付け加えた。

最新の画像もっと見る