Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

対北朝鮮外交、アメリカは手詰まりか?

2005-05-21 17:23:54 | 国際
主権国家論争を脱し、新展開へ?」でも書いたように、アメリカ政府が北朝鮮外交では昨年(2004年)12月4日以来久し振りに「ニューヨーク・チャンネル」を使ったことは、中国政府と韓国政府にインパクトを与えたであろう。両政府はかなり動揺しているのではないか。

問題は北朝鮮の次の手である。北朝鮮は再び「ニューヨーク・チャンネル」を通じてアメリカと接触を試みてくるだろうか。あるいは「ニューヨーク・チャンネル」を黙殺するのか。

ここに核専門家の興味深い見解がある。

産経新聞が伝えるところでは、韓国国防研究院の金泰宇氏は北朝鮮の核実験の可能性について、「北朝鮮に二つの動機がある。第一の動機は、北朝鮮は核保有の野心を、50年間絶やさず燃やし続けてきた国家であること。第二の動機は、金正日政権を維持していこうとする強い意志だ。ブッシュ再選後、北朝鮮はみずからを取り巻く国際環境に強い不安を感じ、その結果、「我々の体制に触れるな」というサインとして「核保有」を表明した。ミサイル輸出や核開発の歴史から見れば、核実験の能力は十分にある」と述べた。

一方、北朝鮮の核戦略について金泰宇氏は、「大国は堂々と核実験をおこない核保有国となってきた。だが、弱小国は国際場裡に核を見せないことが核戦略の基本だ。イスラエルもそうだ。なぜなら、見せた途端、弱小国の核は制裁の対象となるからだ。北朝鮮がそうした基本を踏み外して「核保有」を宣言したのは、金正日政権がいま捨て身で、生きるか死ぬかと考えているからだ。だが、長期的には核保有宣言は自らの体制を脅かすだろう。北朝鮮の核への執着はアヘンと同じで、いまは魅力的だが、今後、対北制裁がおこなわれ、北朝鮮を締め付けるのは間違いない。従って、北朝鮮の崩壊が始まったとみるべきだ」と語った。

金泰宇氏このような見解に基づくなら、北朝鮮は「ニューヨーク・チャンネル」を黙殺すうるのではなかろうか。


毎日新聞
米朝接触: 「6カ国協議への復帰促した」と国務省報道官
2005年5月21日 0時00分

 【ワシントン笠原敏彦】 バウチャー米国務省報道官は19日、米国と北朝鮮の政府当局者が13日にニューヨークで行った実務レベルの接触について、「米国の(北朝鮮に対する)全体的な立場を伝え、6カ国協議への復帰を促した」と説明した。北朝鮮を「主権国家」と認め、攻撃する考えはないという米政府の立場を伝えたことを暗に認めたと言える。接触には、北朝鮮を協議の場に引き出すという当面の目的のほか、外交努力を示すことで協議が崩壊した場合の「他の選択肢」に関係国を結束させたいとの思惑もありそうだ。

 バウチャー報道官は、接触が米国の働きかけによるもので、「特別なことは何もない。さまざまなことが言われる中で、北朝鮮に米国の立場を理解してもらうことが目的だった」と接触の狙いを語った。

 しかし、北朝鮮が寧辺の実験用黒鉛減速炉から使用済み核燃料棒を取り出し、核実験準備情報すら飛び交う中で、米側から接触に乗り出すことは、ブッシュ政権の「脅しには屈しない」という原則に触れ、北朝鮮に譲歩したと受け止められるリスクを伴う。

 それでも、北朝鮮との接触に動いたのは、あくまで6カ国協議での事態打開を目指すブッシュ政権内現実主義派の危機感と、6カ国協議のパートナーである中国、韓国、ロシアから米政府への不満が強まっているからだ。

 デトラニ北朝鮮担当特使は18日、北朝鮮が協議復帰を確約すれば、2国間対話に「極めて柔軟」に応じるとのアメを示した。一方で、北朝鮮があくまで復帰を拒否すれば、「他の選択肢を検討しなければならない」とムチをちらつかせたが、中国はすでに安保理付託に反対を表明するなど、各国をムチで結束させるのは厳しいのが現実だ。

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